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第24話 魔界編 想い

酔い潰れて、ゴロゴロ雑魚寝するリビングに平然とした顔で青龍が静かに酒を飲んでいた 金龍は酔いが醒め辺りを見渡した すると静かに酒を飲む青龍と目が合った 青龍はニコッと微笑み 「もうお酒はダメですよ」と炎帝のお酒を取り上げた 「もう要らねぇよ! それより青龍…眠い…」 「寝て良いですよ ずっと側にいますからね」 炎帝はうん。と言い青龍の膝に丸くなった 青龍は炎帝の髪を撫でながら、金龍に目を向けた 金龍は優しい瞳で炎帝を見る息子を見ていた 誰よりも優しく 誰よりも愛して 誰よりも律して炎帝を止める 「青龍…お前とは…こうして酒を交わす事もなかったな」 父なれば、成人した息子と酒を交わす夢を見る 「ええ。僕は…距離を取ってましたからね」 「お前とこんなに酒を飲み、話が出来るとは想ってもいなかった…」 「僕も…こんな風に父さんと時間が過ごせるとは思いもしませんでした」 「変わったな青龍 お前を変えたのは炎帝の愛か こんなにも…お前は我に近い存在だとは知らなかった…」 「僕も…炎帝と出逢わねば…解りませんでした 炎帝が側にいればこそ…僕はどんな試練にも困難にも打ち勝つ事が出来ました 幾度生まれ変わろうとも…僕は炎帝を見つけ出し愛しました 僕の炎帝への想いは…募るばかりです」 青龍の話す言葉が重かった 共に逝く二人を… 影から見守っていた 「我は…今のお前が…愛しい 生身の男の顔をしたお前が…誰よりも愛しい そんな顔も出来るのだな…知らずに通り過ぎなくて良かった…」 「父さん…親不孝をお許し下さい 僕は誰よりも…金龍の息子に相応しい子でいようとしました ですが炎帝に恋をして…その思いが募れば募る程…心を殺して生きていました それが距離を取る事にも気付かない程に… 僕は…炎帝しか見れなかった」 青龍の苦しい心の内が…父に語られる 「僕の初恋は…炎帝です」 青龍は金龍にそう告げた 炎帝を愛し… 炎帝を想い… それでも…青龍として生きて行こうと… 結婚した 結婚は失敗に終わった 当たり前だ 青龍は炎帝を愛していたと言うのだから… 結婚事態…成立しない だけど、敷かれたレールの上を走ろうとしていたのだ 金龍の子として…踏み外す事なく… 「初めて黒龍が家に炎帝を連れて来た日に 恋をしました…」 息子の長らくの片想いが実って本当に良かった 金龍は立ち上がり…青龍を抱き締めた 「我はお前の何も見ていなかった…許せ…」 「父さん…許してもらねばならぬのは、僕の方です」 青龍は炎帝を優しく撫で… 言葉は裏腹な台詞を吐く 「この瞳が…他の誰を見るのを潰して この手が…他の誰を抱くならべし折り この足で誰かの所へ行くのなら…僕は息の根を止めます 炎帝が死ぬ時、僕は一緒に逝きます」 息の根を止めます…と言いながら 一緒に逝きます…と言う矛盾 自分でもどうしたいのか解らない そんな自分をもて余した想いを抱え 青龍は愛に生きている 金龍は息子を誇りに想った 「青龍、お前は父さんの誇りだ!」 金龍は我が子に最高の言葉を贈った 青龍はその言葉を受け… 瞳から涙が零れ落ち…炎帝の頬を濡らした 頬に滴を受けて…炎帝は目を醒ました 「青龍…青龍…」 炎帝の腕が青龍を掻き抱く 二人はこうして共に幾多の転生を繰り返し生きてきたのだ 「泣くな…青龍…」 強く青龍の背を掻き抱き縋り着く 「青龍…青龍…泣くな… 愛してるから…泣くな」 炎帝が精一杯の愛で包み込む 「炎帝…愛してます 愛してる…愛してる…愛してます! 君しか愛せません…君しか要りません」 青龍はそう言い炎帝の胸に顔を埋めた 「炎ちゃん…」 金龍は炎帝を呼んだ 「金龍…我が夫を…虐めたか?」 優しく微笑み問い掛ける 「息子と酒を交わす夢を見ておった… それが叶って…生身の男の顔をした息子を見れた こんな顔を見れるとは想いもしなかった 青龍は我が誇りだ!」 金龍は微笑み炎帝にそう言った 「良かったな…青龍」 炎帝はそう言い青龍を撫でた 優しい時間が流れていた 「魔界に来るなら総てを白日の下に晒す気だった それで青龍を失おうとも…オレにはやらねばならねぇ事がある オレの存在理由…それを話せば…逃げて行く 誰もオレの側にいようとは思わねぇ…そう想っていた」 炎帝はそう言い儚げに笑った 「我が息子は、君を愛してます その様な事で怯む男ではない筈!」 金龍は誇らしげに胸を張った 「……金龍…オレは産まれて良かったと想ったんだ 青龍さえいてくれれば…オレはそれだけで良かった 青龍に愛されて…生きて行けるならば オレは何も望まねぇ…と想っていた だが…本当のオレを知れば… 離れて行くが当然 オレは覚悟を決めた… 死刑台に乗って裁きを待つ囚人の気持ちだった だが青龍はこんなオレでも愛してくれた 青龍の愛に報いる それがオレの存在理由だ!」 「炎ちゃん、君が在る姿は息子の愛すべき姿と忘れないで下さい!」 炎帝はポロッと涙を溢し 「ありがとう…」と言葉を振り絞った 「最高に上手い酒が飲めました!」 「………金龍、今回はお前に我慢ばかりさせたな」 「いいえ。 我が息子が幸せなれば、こちらこそ感謝すべき事! 息子達とこうして飲める日など2度と来ないと思っておりました なのにこうして楽しい時間を持てた 妻も我も本当感謝しておる!」 炎帝は静かに金龍の話を聞いていた だが寝たフリする存在に気付くと 「金龍、そこで寝たふりしてる息子をくすぐって起こすしかねぇぞ!」 金龍を焚き付けた 金龍は言われ横に寝ている赤龍を見た 言われた通り赤龍の脇をコショコショとくすぐった すると赤龍は飛び上がり 「辞めてくれ…俺は脇が弱ぇ~んだよ!」 と、降参した 金龍は瞳を輝かせ 「ほほう!脇が弱いと申すか! これよりお前はそれで起こすとするか!」 と、豪快に笑った 「父さん…それは辞めて下さい」 赤龍は降参のポーズをして訴えた 「金龍、赤いのには子供がいるんだ その子は…女神の血と龍の血を濃く受け継ぎ生まれ出た 後に…赤龍に還り力を解放すれば、次代の赤龍の上を行く 赤いのの子はそれで終わる… 愛に生き…愛を貫いた男だ…見届けてやってくれ!」 金龍は赤龍を抱き締めた 「炎帝と共に在るか?我が子よ」 人の世に堕ち… 炎帝と共に在ろうとした息子を止める事すら出来なかった 「親父…親不孝してる息子を許してくれ…」 赤龍は辛そうに言葉にした 「お前も父の誇りだ! 四龍の息子は父の自慢!父の誇りだ! それは今も昔もかわってはおらぬ!」 金龍はそう言い息子を抱き締めた 黒龍は炎帝き抱き着いて、泣き真似してる青龍をベシッと叩いた 「痛いです、兄さん」 「何時までもイチャイチャしてるな」 「バレましたか?」 と、しれっと言う青龍の首に黒龍は抱き着いた 「青龍、お前って本当にイイ性格してるよな?」 本当に腹黒い… 炎帝以外はどうでも良い 「そうですか?」 「お前の場合…知っててやってるからなタチが悪い」 青龍は何も言わず笑った 言われなくても知っている 性格の悪さなら誰にも負けない 「見抜かれてますね…残念です」 黒龍と青龍は笑った 炎帝は青龍の膝から降りると、首をコキコキ動かした 「なぁ、女神の湖に奇襲かけねぇか?」 上手くやったのか… 撃沈しているのか? 気になる なんたって…地龍だから… 「おう!炎ちゃん乗った!」 金龍はやけに乗り気で 「おっ!それ良いな!」と赤龍も乗った 「俺も気になってたんだよ!」と黒龍と乗り 青龍も立ち上がった 「親父殿と兄者は魔界大集会もあるしな 待っててくれ! 戻って来たら戦力はゴロゴロ要るんだからよぉ!」 炎帝が言うと閻魔は 「待っておる!行って来るが良い」と後押しした 建御雷神も 「見事銘の婿殿に収まる事を陰ながら御祈りしております!」と頭を下げた 「親父殿、兄者、今回は無理な事ばかりさせた 魔界に来たついでにな、一掃出来るもんはしたかったからよぉ! 無理にでも駒を進めた!悪かったな」 閻魔は「お気にならず!我は魔界の行く末が軌道に乗り、お前が幸せなら…他はどうでもよい!」と言い笑った 建御雷神も「我も閻魔が魔界を見事に統治し、それを支えるのが炎帝であり、炎帝が誰よりも幸せなら他はどうでもよいからな!」と豪快に笑った 二人は炎帝を一頻り抱き締めると帰って行った 銀龍も、私は総て決まったら受け入れますから…と言い帰って行った 金龍と黒龍、赤龍、青龍と炎帝とで、女神の泉に向けて家を出た 外に出て、馬に乗る時、炎帝はチョイチョイの人指し指で来い来い、と合図した 炎帝の側に行き自然と円陣を組むかのように集まる 「地龍にも銘にも気付かせずに行くかんな!」と炎帝は声を押さえて言った 全員静かにコクコクと頷いた 「幸い女神の泉には結界が張ってある 奇襲をかけても気付きはしない」 炎帝がニャッと笑うと、全員ニャッと笑った 「なら、行くもんよー!」 炎帝はそう言い馬に乗り込むと、全員馬に乗り込み駆けて行く やけに楽しそうに駆け行く 黒龍は炎帝に「上手くやってるかな?」と問い掛けた 「地龍だからな…どうだろ?」 炎帝が言うと…全員頷いた 何処か詰めが甘い地龍だから… 赤龍が「フラれておしまい」と呟いた 金龍が「赤いの…僻むな」とたしなめ 黒龍が「欲求不満かよ?最近犯ってねぇのかよ?」と真顔で聞いてきた 「欲求不満じゃねぇし…俺は性欲はあんましねぇんだよ!放っておいてくれ!」 と赤龍がボヤくと、全員笑って馬を飛ばした 女神の泉に近付くと、馬から降り、そーっと歩いた 女神の湖の側に建つ、銘の自宅は質素だった その家の前に立ち、炎帝はドアをノックした コンコン ノックしても…シーンっと静まり返っていた 次は黒龍がコンコンっとノックした 耳を澄ましてみる 物音1つしない 青龍もノックしてみた ………起きて来る気配すらない 「……寝てるのか?」と炎帝が呟く 黒龍が「犯り疲れか?」と下品な事を言った 「それはねぇだろ? 青龍は幾ら犯っても誰か来たらドアを開けるぜ! なぁ赤いの?」 炎帝が思案して赤龍にふる 赤龍は「地龍だからな…」と呟いた それで全員納得した 失礼な話を…地龍は知らない 金龍は「おぉぉぉぉぉぉぉい!地龍!!」と怒鳴った するとバタンッ…ドタンッ…バタバタ… ドスンッ…バタバタ…と音がした 「すげぇ…慌てよう…」と黒龍が肩を竦めた 暫く待つとドアが開けられた そこには… 疲れ果てた地龍が顔を出した 盛んだったのが伺える 赤龍は「何か腹が立つ!」と地龍を蹴り上げた 「痛い…兄さん…止めて下さい」と地龍が情けなく…懇願した 炎帝は赤龍を止め 「家に招いてくれねぇのかよ?」と言い 地龍は「……ええ??」と躊躇してる間に… 押し退けられ…部屋へと入られた 部屋に入るとシーツを纏った銘がいた 艶を含み…色気を増した銘が… 炎帝を見上げていた 「抱かれたか?」 炎帝が聞くと 「焚き付けたのは…炎帝ではないか…」と銘は愚痴った 「お前をこのまま…この地に置きたくねぇんだよ」 「………なれど…我はこの地を離れられはせぬ…」 銘はそう言い俯いた 「だからよぉ!オレが来たんじゃねぇかよ!」 炎帝はそう言い、全身から紅い焔を燃え上がらせた 「動くな銘!」 炎帝が言うと銘は大人しく炎帝の言葉を聞き入れた 「唯の唯一の存在になるか?」 「無理だ…我には…この地を護る義務がある」 「義務とか責任とかじゃなく おめぇの言葉を聞かせろ!」 ボッと紅い焔を滾らせ炎帝が叫ぶ 「四の五の言うな!銘!」 「唯一の…存在になる」 銘は…言った さよなら…炎帝 貴方を思い続けた日々に… 別れを告げる 炎帝… 炎帝… 貴方が…唯一無二の…我の存在でした 貴方がいれば…他は…何も要らなかった 銘は…目を瞑った 炎帝は剣を出すと呪文を唱えた 「さよなら…銘!」 炎帝は銘に向けて…刃を向けた 「止めてくれ!!炎帝!!!」 地龍が炎帝を止めようと叫んだ 青龍と赤龍に押さえ付けられ…動きを封じられ…地龍は泣き叫んだ 「銘!銘!!!」 炎帝は優しく微笑むと… 「昇華ぁぁぁぁぁ!」と叫んだ 辺りは閃光に包まれ 目が眩んだ 地龍は…崩れ落ち…泣いた 銘を抱いた朝 幸せ一杯で信じられなかった 銘は地龍が来るのを知っていた そして抱き締めた地龍に応えた 初めてだと言う銘を優しく抱いた 壊れてしまうんじゃないかって…触るのも怖かった でも…ヴィーナスの如く…美しい銘を目にしたら止まらなかった 夢中で抱いて… 細心の注意を払って…銘を蕩けさせ…解した そして1つに繋がれた至福の時に 地龍は泣きながら…銘を抱いた 止まれなくて…何度も何度も銘を抱いた こんな幸せで良いのかと… 頬をつねった それ位の至福の時だった… なのに… 銘… 銘… 地龍は泣きじゃくった 炎帝は銘を立ち上がらせると抱き締めた 青龍は銘をシーツで包み… 「……地龍のが流れて来るでしょ? 浴室に行って洗って来なさい」と囁いた 銘は赤面して…部屋の奥へ駆けて行った 赤龍は、うっうっ…と泣く地龍を起こした 「メソメソ泣くな! 所帯を持つなら…泣くんじゃねぇ!」と怒鳴った え…所帯?? 誰と?? 地龍は泣きながら、兄に問い掛けた 「てめぇ!銘とは遊びなのかよ?」 炎帝は地龍を殴り飛ばした 殴り飛ばされ…ぶっ飛ぶ地龍を支え金龍は睨み付けた 「話を聞かせて貰おうか!」 金龍に言われれ…地龍は泣くのを止め背筋を正した 「銘を愛しております! 俺は銘を妻に娶ります!」と誠心誠意込めて言葉にした 炎帝は「うし!」と納得し 「銘は何も持たぬ女になった その力と引き換えに…今の姿を手に入れた」 炎帝の言葉に、地龍は 「え…???」と理解出来なかった 青龍は溜め息を着いて説明してやった 「女神の力は炎帝が昇華しました 今の銘は何も持たぬ唯の女となったんですよ!」 「嘘…」 「銘の命は炎帝が握ってました 銘は…炎帝に総てを預け、この地の女神になったんですよ」 炎帝はソファーに座ると足を組んだ 「銘は誰よりも自分の存在を憎んでいた 当たり前だよな? 母である女神が不貞で産んだ子供だもんな 誰も言わずとも…噂は耳に入る 閻魔は銘を我が子として愛した…それが余計に銘を追い詰めて行った そんな頃…子を成さない閻魔の跡目に銘を駆り出して跡目争いに勃発させようとした輩が出て来たからな、銘をこの地に住ませ 跡目争いから関係なきモノにした 閻魔は…銘を不憫に想いつつも… 閻魔としての役務を全うした それが総てだ!」 愛した娘だと…閻魔は言った 愛せなかった母に変わって… 精一杯愛した娘だったのに…閻魔は泣いた どれだけ娘を不憫に想っても 閻魔と言う職務を全うする為だけに在る存在だった 女神を愛せず放っておいたのは…自分なんだから…と閻魔は自分を責めた 過去に囚われる閻魔を、次代の跡継ぎを作れ!と、発破をかけ 結婚させたのは炎帝だ 炎帝は苦しそうに…眉を顰めると 「総てはオレが悪い!」と呟いた 魔界の絶対的存在、炎帝として兄の人生に介入した 銘の人生も左右した そして赤龍と女神に傷を負わせた 青龍は優しく炎帝を抱き締めた 黒龍は「運命だ!おめぇの所為じゃねぇ!」と叫んだ 誰よりも傷付き… 誰よりも重い荷物を背負っているのは… 炎帝だから 解っているから 解っているから…苦しむな 黒龍は友を支えて来たのだ 誰よりも炎帝の側で苦しむのを見てきた 「おめぇは苦しまなくて良い…」 黒龍はそう言い…炎帝を抱き締めた 二人の間には… 誰も割り込めぬ友情が在った そこに身形を整えた銘がやって来た 「炎帝、我は誰よりも貴方に護られ愛された 貴方のくれた無償の愛があればこそ…我は歪む事なく…来れました 炎帝、やはり我は…誰よりも貴方を愛してる…」 銘の台詞に炎帝は笑った 「銘、言う相手が違うぜ!」 「嫌…合ってる!」 「おめぇの相手は地龍だろ? 地龍の愛に生きるんじゃねぇのかよ?」 「地龍の愛に生きるが、やはり我の特別は…炎帝、貴方だけだ」 炎帝は笑って黒龍と青龍を抱き締めた 「青龍、ライバルだせ?」 「大丈夫です!僕の愛の前に誰も勝てません!」 青龍は宣戦布告したも同然の台詞を吐いた 「銘、おめぇは何の力も持たぬ女になった 解るだろ?今のおめぇは何もねぇ」 「解る…もぉこの湖を守れるだけの力は存在せぬ」 「おめぇが望んだ事だろ?」 「……やはりすり替えが得意だな…炎帝は」 「すり替えじゃねぇだろ? おめぇは地龍と生きる、それを選択した だからオレは望みを叶えてやった!違うか?」 「違わない…」 「地龍、おめぇの妻だ! 持って帰れ!」 地龍は何が起こってるのか…パニックになりつつ… 「はい!」と返事をし、銘をもらい受けた 銘が地龍の腕の中に収まる 炎帝はそれを見て微笑んだ 「誰よりも幸せにして貰え」 「……炎帝…」 銘は涙をためて頷いた 金龍が「我が見守っています!」と名乗りを上げた 「金龍、頼むな。オレはまだ人の世に在らねばならねぇかんな!」 「任せてくれ!銘は我が娘になったのだからな!」と金龍は楽しそうに笑った 炎帝は立ち上がると 「そろそろ来るな!」と外に出て行った 青龍は後に続き、金龍、黒龍、赤龍も外に出て行った 地龍と銘も慌てて後を追った 湖の前に炎帝は立つと待ち構えていた ゴボゴホ…ゴボゴホ…と湖に気泡が浮かんでいた 「おし!来るな!」 炎帝は気配を感じて叫んだ! 湖の気泡が激しく立ち上ぼり… その中から… やけに…イケメンが出て来た 真っ白な足首まである髪を靡かせ、その男は湖水の中央に立っていた 「悪かったな水神!」 炎帝が呼び掛けると、その男は皮肉に嗤い 「お前は何時も突然だな」と愚痴った 「お前が暇してるだろうと想ってな!」 悪びれずに言う炎帝に 「あぁ暇すぎて…百年の眠りに着いておった」としれっと返した 「この地がお前の聖地となる」 「不足はないわ!」 「やってくれるのかよ?」 「やる気がなくば姿を現しはせぬ」 「なら頼むな!」 「頼まれてもやっても良いが、この地の名前は変えろよ! お前と我との仲であるから引き受けてやったが…我は…女神ではないからのぉ…」 「黄泉の湖で良いか?」 「別名、水神ヶ淵がよい」 「なら魔界大集会で宣誓してやる」 「では、この地に根を下ろすとするか」 水神はスーっと水面を移動して岸へとたどり着くと炎帝の側にやって来た そして炎帝を抱き締めると 「久方ぶり過ぎて…忘れる所で在った」と愚痴った 「お前が睡蓮に行ったきり還らねぇのがいけねぇんじゃねぇかよ?」 冥土の花咲睡蓮の地に移り住み…姿を消した水神 「お主のいぬ魔界に魅力もないからな…」 「オレは還るぜ!」 「なら我も還るとするか!」 「頼むな!」 「頼まれずともよい。 我もそろそろ還ろうかと想っておった」 魔界の動きを誰よりも敏感に感じていた 炎帝の匂いがする その動きに…血が騒いだ 「この魔界の結界など要らぬ!」 水神はそう言い水飛沫を撒き散らし… 空気の浄化をした 澄み渡る浄化に結界も切れた 「あ~切っちまった…」 夏海の為に掛けた結界も…見事に切った そして黄泉の湖は聖なる地と化し生まれ変わった 「金龍、夏海を連れ帰り…俺の代わりに護ってくれねぇか?」 次代の金龍となる子を身籠る夏海を案じていた 金龍は「我が預かり新居に移す!心配するでない!」と約束してくれた 「銘、この地は水神の地と化した もうおめぇの居場所はねぇ! 心置きなく地龍の所へ行きやがれ!」 炎帝が言うと銘は泣き出した 地龍が銘を抱き締め…炎帝に深々と頭を下げた 「なぁ炎帝!」水神が不満そうに言う 「あんだよ?」 「……我に…あの家に住めと言うのか?」 質素な…掘っ立て小屋に近い住居に… 水神はボヤいた 「…そう言うと想ってな、新居は建てる事にした それまでは近くに家が用意してある そこに住んで通えば良いかんな!」 「……建ててから呼べば良いのに…」 ぶちぶちと水神が言う 「文句を言うと犯すぜ!」と炎帝は水神に迫った 「……ゃ…止めてくれ!!」 後退り…水神は抵抗した その様が…あまりにも緊迫していて… 青龍は「犯した過去がおありか?」と問い質した 炎帝は肩を竦め「まさか…少し襲っただけだ!安心しろ!」と言葉にした ………安心…出来ないのですが… 青龍は複雑な心境になった 黒龍が「炎帝だからな…」と慰めにもならぬ言葉を贈る 赤龍が「堪えろ…弟よ…」と弟をたしなめた 金龍は青龍を見て…拝んだ やる事は…親子して同じだった 炎帝は、そんな外野は気にせず 「水神、また飲もうぜ!」と誘った 「スワンも一緒なら♪」と水神は刹那い胸の内をボソッと漏らす 「スワンはダメ!」 「ケチ…」 「諦めろ!」 「嫌です!」 水神と炎帝は肩を組み、何やらボソボソ、ゴニョゴニョ、ヒソヒソ…と語ってる 青龍は妬けて…蒼い妖炎を撒き散らした んとに…面倒臭い… 金龍は自分を見ているみたいで…冷や汗をかいた 「じゃあ、頼むな!」 「任せておけ!」 水神が微笑む 炎帝は水神に手を上げ別れを告げると 青龍に抱き着き 「妬くな!」とキスした 「炎帝…」 青龍は確かめる様に炎帝を抱き締め 息も着かない接吻を送った 目の前で暑苦しい…事をやる青龍に赤龍は 「旦那…そいつはお前のもんだ! 後で確かめれば良いから離せ!」と諭した 「一生…」 想わず青龍は呟いた 兄と知らずに過ごした日々 緑川 一生は榊原伊織に誠実だった 何時も榊原を支え、導く存在 知らずと頼っていた 当たり前だ…兄だったのだから… 「なっ!炎帝はおめぇしか愛してねぇ!」 赤龍が弟を抱く この手に支えられていた 「兄さん…大丈夫です」 「そうか。良かった」 赤龍はニカッと笑った 「兄さん…」 「あんだよ?」 「僕は兄さんが好きですよ」 赤龍はギョッと青龍を見た 「記憶を封印していた頃から…僕を支えてくれたのは貴方だ」 「俺の誇りだからな!青龍は」 兄は胸を張って誇りだと言う 遥か昔から…贈ってくれる言葉だった 『おめぇは俺の誇りだからよぉ!』 赤龍の口癖だった 当時は受け流して来た言葉が… 今は重い 「んな顔すんじゃねぇよ!」 赤龍はそう言い青龍の肩を叩いた どんな顔をしてるかは解らない でも情けない顔してるんだろうな…と青龍は苦笑した 「さてと、還るとするか!」 炎帝はそう言い青龍の腕の中から抜け出し 歩き出した 慌てて青龍がそれを追う 炎帝の動きを決して止めない 暴走するなら… この命を薙ぎ倒して行けばいい 青龍の想いは1つだった 炎帝は少しだけ立ち止まり青龍を待つ 風を切って歩く…炎帝の後ろには 青龍が離れる事なく歩いて行く 金龍はそれを見守り 何時までも…見ていた

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