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第26話 魔界編 魔界大集会①

魔界大集会 当日の朝 炎帝と青龍は支度をすると閻魔の邸宅に向かった そこには既に閻魔と建御雷神、黒龍、赤龍、地龍、金龍、銀龍、雅龍に黄龍 素戔男 尊と宇迦御魂、転輪聖王、が待ち構えていた 「皆、揃って、あんだよ?」 炎帝が笑って言うと転輪聖王が立ち上がった 「魔界大集会当日を迎えました 会場へは貴方と共に…それが我等の想いです」 炎帝に深々と頭を下げた 「弥勒…」 「なんだ?」 「取り敢えず…飯を食わせろ!」 炎帝はそう言い笑った その顔は穏やかで、慈愛に満ちていた 転輪聖王は覚悟を…緩めると爆笑した 「ったく…お主は…」 そして、少しだけ肩を落とした 「飯食って来るかんな!」 炎帝はそう言い、青龍と共に食堂へと向かった すると全員…食堂へと着いて来る… 「あんだよ?」 振り返り問うと 「皆も食事前ですから、ご一緒に」と閻魔が答えた 食事も取らずに炎帝が来るのを待っていたと言う 炎帝は相当お腹が空いてるのか…食堂へと駆け込んだ 炎帝は席に座ると、青龍が用意してくれた料理をガツガツと食らい付いた 何日も食べてないかの様に…一心不乱に食べる姿に… 誰も何も言えなくなった 「金龍よぉ!」 飯を食いつつ炎帝は金龍に声をかけた 「何だ?炎ちゃん」 金龍もガツガツ飯を食い始め、聞く 「夏海は安全な場所に移してくれたのかよ?」 「夏海は我の家にいる 銘と夏海は一緒におる 心配はなかろう!」 「そうか。なら安心だな」 そう言ったきり、炎帝は黙々と食事を取る 腹一杯食べると、食後の珈琲を啜り、落ち着いた 「黒龍…」 「何だ?」 「オレが魔界から去った後、おめぇは崑崙山へ閻魔と出向いてくれ」 「閻魔と??何故??」 「閻魔はお前を置いて帰るが1週間後 迎えに来てくれるからな、それまでは崑崙山で過ごしてくれ」 「だから!!何故だと聞いてる!」 黒龍は少しだけご機嫌斜めになり、炎帝に問い掛けた 「子を成す為だ! お前が四龍の子を成さねば四龍はお前たちの代で終わる そうさせねぇ為に子を成しに行け!」 黒龍は絶句した! 「子供を作れ!黒龍!」 「………俺は…種馬かよ?」 「総ては決められし理なり もぉな違えられねぇ所にいるんだよ!」 「お前が言えば俺は総て聞いて来た! 1度でも違えた事があるのかよ!」 「ねぇよ!でもな…今度ばかりはおめぇの意識に背いて進めたからな…」 「それは決められし理なんだろ? 違えられねぇ現実なんだろ?」 「そうだ…」 「ならやるしかねぇじゃねぇかよ?」 炎帝は儚げに笑い… 「すまねぇな…黒龍 我が友よ…」 と、謝った 黒龍は立ち上がると背後から炎帝を抱き締めた 「んな顔するんじゃねぇ!」 「黒龍…」 「んとによぉ!狡いんだからよぉ…」 そんな泣きそうな顔されたら…怒れない そもそも炎帝の言う事を今まで違えた事など一度もないのだ 「おめぇは俺のかけがえのねぇ友だろ! 昔も今も、それに変わりはねぇんだよ」 炎帝を支えて来た黒龍との時間が解る 「黒龍、四龍の為に…種馬になってくれ」 「解ってる!おめぇの果ては狂わせる事なく続けて逝く… それが俺の存在理由だろうが!」 「黒龍…」 黒龍は炎帝の肩に顔を埋めた そこへ毘沙門天が十二天を引き連れてやって来た 「炎帝、我等に閻魔殿の家の美味しい料理を馳走してくれ!」 毘沙門天は十二天に閻魔の家で飯を食って来たと話したら、狡い!お前だけ何故! と、責められた それで毘沙門天が十二天を引き連れてやって来たのだった 「よぉ!毘沙門天、食って行けよ!」 炎帝は笑って十二天に声をかけた 毘沙門天は 「炎帝、張り付けているのが違う気がするが?」 と、炎帝の後ろに抱き着く…黒龍を見て揶揄した 「友に無理を言って泣き付かれてるんだよ」 炎帝はそう言い、黒龍の腕を撫でた 「炎帝、我等十二天揃いました」 毘沙門天は十二天全員揃ったと炎帝に報告した 日天、月天、帝釈天、火天、閻魔天 羅刹天、水天、風天、毘沙門天 伊舎那天、梵天、地 天 十二天が魔界を去ってから… その姿を見る者はいなくなった 今、魔界の地に十二天は降り立ち 閻魔や皆の目の前に姿を現した 梵天が炎帝の前に立つと、深々と頭を下げた 「炎帝、我等十二天は貴方と共に!」 炎帝はそれを受け、唇の端を皮肉につり上げた 「共に在れ!十二天! その前に飯を食えよ うめぇんだぜ!閻魔の家の飯はよぉ!」 「それを聞き参りました! 毘沙門天だけ、狡いじゃないですか!」 炎帝は何も言わず笑った 十二天は席に着き、給仕の出してくれる食事に瞳を輝かせ… 炎帝ばりに食事を始めた うめぇ…うめぇ…と言いながら 食べる姿に 黒龍は「飢えてねぇ?」とこっそり炎帝に耳打ちした 「魔界の食べ物を…1000年食ってねぇんな…目を瞑ってやれ」 黒龍は肩を竦めて、席へと戻った 貴族の王子様の様な服を着せられた夏生が、食堂に姿を現すと、炎帝はにこやかに笑った 「夏生、良い服着てんじゃん」 炎帝が声を掛けると、夏生は眉を顰めた 「炎帝の母上が…これを着ろ…と。」 天照大神がフリフリの王子バリの服を持ち、夏生にこれを着なさい、と迫った 夏生は「え…ええ…僕ですか…」と狼狽え…後ずさった その夏生を掴むと、服を脱がせた 「ギョェェェェェェェ~」と夏生の声が… 閻魔の邸宅のリビングに虚しく響いた そうして着せられたのが… この王子バリの服だった 似合っているから…良いものだが… 銀色の髪の夏生に似合う…純白の燕尾服 袖にレースをふんだんにあしらい 服には銀糸で贅沢な刺繍が施されていた 「脱ぎたい程に嫌なら脱げば良いぞ」 浮かない顔の夏生に声を掛ける 「嫌ではないのですが…派手じゃないかと…」 「似合ってんじゃん! お前にピッタリだ!」 炎帝が言うと閻魔が 「この服は母上が刺繍を入れた服です 夏生が魔界に還る事があれば着せたいと 日々作っていた服ですからね、夏生に似合わない筈がないんですよ」 と、補足を入れてやった 「ほほう、母者が刺繍を入れたのか…」 「夏生が人の世にお前を追って行った日から母上は銀糸を紡いで始めた 今回、お前が来ると知ったので作らせたのでしょう」 天照大神の気持ちが痛かった スワンは炎帝が人の世に落ちてから…閻魔に引き取られ…閻魔の邸宅で過ごした 人のカタチになれるスワンだが、湖も恋しいだろう…と庭に池も用意してスワンを育てた 天照大神は炎帝を恋しがるスワンを不憫に想い、何かと世話を焼いた そのスワンが我が子と還って来ると聞けば、ちゃんと魔界大集会には恥ずかしくない格好をさせたい と言う母心にも似た想いだった 「母者の想いだ、受け取ってやれ」 炎帝が言うと夏生は「はい!」と返事を返した 炎帝は手に九曜海路が描いた水晶盤を出すと 呪文を唱えて昇華した 総てが軌道に乗った今、不要の長物だから。 「兄者、オレ等が還って3日後に九曜神を人の世に送ってくれ。 水神には話は通してある!」 「解った。お前が還って3日後に九曜神を人の世に送ってやろう」 「おし!行くぜ!」 総ては準備万端整ったと炎帝は掛け声を上げた そして立ち上がり唇の端を吊り上げて不敵に嗤った 髪を靡かせ風を呼ぶ 勝機を呼ぶ 総ては炎帝の手に握りし魔界の未来だった 「行くぜ!」 炎帝はそう言い歩き出した その後を青龍が続き、夏生、黒龍、赤龍、地龍が続く 共に在れ その想いは揺るがない 十二天が炎帝と共に逝く その姿を瞳に焼き付け 転輪聖王、建御雷神、素戔男 尊が続いた 共に闘った盟友だった これからもそれは変わらない 転輪聖王は建御雷神と素戔男 尊を見た 「「「我等の想いは1つ 魔界の存続、我等は魔界の礎になる」」」 天魔戦争の時に誓った言葉を再び口にする 拳を合わせて、3人は炎帝へ続いた 閻魔は… 総てを見届け 炎帝 我が弟よ お前が作る魔界を護ると決めて半世紀 私はこの日を待っていたのだ… 何時か還ると信じていた 何時か… 炎帝の指し示す方向へ 魔界は軌道修正されると信じていた 今 その時が来た 炎帝は身を引き締め… 後へと続いた 魔界大集会開始を告げる合図を告げると 朝から広間には沢山の魔族が集まって来ていた 広間に入りきらない程の大にぎわい 広間に面した屋根に上がって参加している者まで出て来てる始末だ 朱雀は広間にやって来た炎帝を見て 「おい!遅せぇぞ!」と文句を言った 「腹ごしらえしてたんだよ!」 炎帝が言うと 「おめぇは緊張感の一つもねぇのかよ?」と 呆れて肩を竦めた 「緊張?食えねぇもんは要らねぇんだよ!」 炎帝は嗤って歩きだす 広間中央の壇上目指して歩き出した 壇上の前には玄武や白虎、我龍、水神、五智如来の姿もあった 炎帝はそれを横目で納め、壇上へ上がった 壇上中央に仁王立ちして広場を見渡す ニヤッと唇の端を吊り上げ皮肉に嗤うと 「待たせたな!」 と、叫んだ 広間から割れんばかりの歓声が上がった 炎帝の未だ衰えぬ人気を伺い知る事となる 壇上には炎帝が立っていた その横に閻魔と青龍が左右に立っていた 青龍の横には四神が並び その後ろには四龍が並んだ 閻魔の横には建御雷神、素戔男 尊、転輪聖王が並んだ その横には十二天が並んだ そうそうたるメンバーが立ち並ぶ 壇上の前には金龍夫妻、黄龍夫妻、雅龍、水神、太古の神々が並んでいた そして壇上の上の炎帝を搦める様に 黄泉の国の八雷神が纏わり着いていた 「魔界は1つだ! 魔界に身分など必要ねぇ!」 炎帝は叫んだ 炎帝と同調した八雷神も超音波を放ち… 炎帝の声が神がかりなものになる しーんと物音1つしない 誰もが壇上の炎帝に釘付けとなった 「違うのかよ?」 炎帝が悪戯っ子みたいに笑って問い掛けると 「そうだぁぁぁぁぁ!!!!!」 と歓声が上がった 割れんばかりの歓声が大集会の広間を揺るがす 「貴族制度は撤廃する!」 声を高らかに宣誓する 天之御中主神達、太古の神々は群衆を静かに見て、微笑んでいた そこには神々しい神の姿が在った 慈愛に満ち 尊厳に満ち 悠久の頃から在りし姿で、そこに在った 貴族制度の覇者として君臨していた姿はない その姿を見れば、貴族制度は撤廃され 天之御中主神達は在るべき姿に戻ったのだと解る 「魔界は身分の格差など必要ねぇ 適材適所、オレが配置した姿こそ 魔界の在るべきカタチとなる!」 炎帝は毅然と胸を張り、そう宣誓する その宣誓に、誰も意義を唱える者などいなかった 「そして今回の謀叛の首謀者…聖の神! 彼は既に処罰を受けている! 魔界は生まれ変わった! これで幕引きにする!異存はねぇな!」 炎帝が問い掛ける もう今回の首謀者が処刑為れていると言うのに… 言葉など出る訳もなく 広場は水を打った程に静まり返った 「魔界は違う事は許さねぇ! オレは適材適所配置するが為に存在する! 魔界の在るべき姿を示す! それがオレが在るべき存在! それこそが神がオレを配置する本意! 魔界は一族一丸となって、これからの役目を担う! 魔界に在るべき総てが担わねばならぬ仕事が在る こき使われると思ってくれ!」 炎帝が言うと広場は笑い声が響き渡った 「そして、素戔嗚尊から話がある! 素戔嗚尊の系図は素戔嗚尊が冥土に渡ると同時に消滅する 素戔嗚尊の名声は本人のモノ その親族や縁者のモノではない! 叔父貴、宣誓するといい!」 炎帝に言われ、素戔嗚尊が前に出て来た 「我は素戔嗚尊に在り!」 年を逐えても尚、人気は絶大で名声を持つ 凜として天魔戦争の覇者として君臨していた 「我の系図は、我が消滅する時に消える 名声とは一族のモノに非ず! 我は愚かな一族を遺す気は一切なし!」 声高らかに宣誓する 素戔嗚尊の姿がそこに在った 素戔嗚尊の一族のモノは驚愕し打ち震えた 魔界の絶対的な後ろ盾が在ればこそ出来る事がある それがなくなる 魔界で生きて行く特別になれぬと言うのか? 素戔嗚尊は一族のモノを見下ろし 「我は愚かな一族しか遺せなかった 愚かな堕とし合いをするものなど要らぬ 聖の神は…その犠牲に合い… 総てを潰すつもりだった それを作ったのは…我の名声に有り付きたいと堕とし合う愚かな… 我が一族のモノだ! ならば! そんな愚かな一族など要らぬ! そんな悲しい者を出す一族など在ってはならぬ! 我は冥土に渡る時、総てを昇華して消し去って逝く! 名声は自分で掴み取るモノなり! 名声に有り付こうと言う輩など要らぬ! それを此処で宣誓する! 素戔嗚尊 亡き後は 素戔嗚尊の名声は閻魔に返上する!」 素戔嗚尊は清々しく晴れやかに笑った 炎帝は素戔嗚尊に傅いた 膝を折り、素戔嗚尊の前に傅いた 「叔父貴、立派な宣誓でした!」 素戔嗚尊は嬉しそうに顔を綻ばせた 「お主がいればこそ、宣誓出来たのだ! 礼を言うぞ…炎帝!」 炎帝は素戔嗚尊の言葉を胸に納め立ち上がった 「人の袈裟は着られねぇ! 自分を磨いて這い上がれ! 可能性は無限大だ! 魔界は生まれ変わる! 魔界は1つだ! 誰にも負けねぇ! 皆で作り上げる! それを忘れるな!」 炎帝は叫んだ その叫びは… 罪を孕み 悲しみを孕んでいた 聖の神… おめぇの哀しみを… 無駄にはしねぇ! そんな想いを込めて訴えた 素戔嗚尊はその気持ちが誰よりも解った そして素戔嗚尊も叫んだ 「魔界は炎帝が変える! 閻魔が統治する! 皆の者が作って行くのだ!」 おおおおおお! と、群衆は感銘を受けて声を張り上げた 魔界が一体になった瞬間だった 炎帝は立ち上がると 「種族を超えて、魔界は団結を固めた 魔界は絶対だ!揺るぐことはない!」 両手を天に広げ…炎帝は呪文を唱えた 天空を切り裂き閃光が走る 魔界の厚い空間が引き裂かれ時空が裂ける その裂け目から眩い光が差し込む 魔界に在ってはならぬ光だった 神々しい一条の光が炎帝めがけて差し込む 炎帝は待ち構えて嗤っていた 炎帝に纏わり付く八雷神が構えて唸る 時空の裂け目から…眩い光と共に…熾天使が降りたった 熾天使は九枚羽根を持つ、天使の九階級のうち最上とされている最高位の天使だ 「私を呼んだのは貴方ですか?」 天使が問う 「大天使ガブリエル、おめぇが来たのかよ」 「……私の他を所望でしたか?」 「おめぇは絶対に来ねぇと想ってたからな…意外だった」 ガブリエルは炎帝の横に静かに立つスワンに目を向けたまま 「魔界に…懐かしい気配を感じました故…参りました」 ガブリエルの言葉に、炎帝は何も言わすに笑った 「魔界は軌道に乗った! 歪みはなくなった 後はおめぇら天界の歪みを直す番だぜ!」 不敵に唇の端を吊り上げ嗤う 「流石…神が一目置く存在… 我等は貴方の存在が脅威でした 神は言いました 炎帝と言う存在は脅威ではない…と。 共に在れば導く者なり! 神はそう言い…貴方の存在を容認した…」 大天使ガブリエルは炎帝に手を差し出した 炎帝はその手は取らなかった 「オレは神の駒だ! 違えれば明日はねぇ! それが解ってるから在るべき存在になるだけだ! ガブリエル、おめぇもそろそろ本気出せよ!」 「……炎帝…本当に貴方は容赦がない 10000年前より厳しくなられておいでか?」 「切羽詰まっているかんな! あっちもこっちも分岐点なんだよ!」 炎帝はそう言い嗤った 明日へ踏み出す者の顔付きだった 破滅ばかり夢見る空っぽの神‥‥だった筈 なのに今は自信に満ち溢れ力強く大地を踏み締めて立っていた 「貴方の…そんな顔を見る日が来るとは… 想いませんでした…」 「去年の年末にミカエルに逢ったぜ! アイツはオレが誰か解らなかったけどな!」 「……天界は‥‥幸せ惚けした者が増えておりますからね 天界に還ったら…一段堕としましょうか?」 大天使ガブリエルは眉を顰め…唸った 炎帝は天空を指差し 「大天使ガブリエル!見届けろ!」 と、叫んだ 「これが魔界の在るべき姿だ! オレが軌道修正し、閻魔が統治する魔界だ!」 膿は総て絞り出し 回復させる そして魔族の自覚を植え付け適材適所配置する 誠…見事な手腕にガブリエルは脱帽した 「はい!確かに!この目で見届けさせて戴きます」 炎帝の髪が揺れる 勝機が頭上で莫大な力を運び込み、導いて行く 「魔界は在るべき姿になる ならなければオレが狩りに逝く! 総てを『 無 』にすれば良いだけだ 『 無 』にした魔界を神が再生すれば良い」 駄目なら無にすれば良いと簡単に言う それこそが炎帝の強さであり 怖さだった 「天界も貴方に負けず軌道修正致します!」 「平和ボケしてる天界だかんな 大変かもな!」 炎帝は遥か彼方を見つめながら言う まさに、その通り 天界は天魔戦争の傷跡を忘れ去ったかの様に、平和ボケしてる 「その時は炎帝、天空に降り立ち 軌道修正お願いしますね!」 ガブリエルはちゃっかり炎帝にお願いした 「天空に降り立つのは許されねぇかんな ガブリエル頑張るしかねぇぞ!」 「特別に許可を取ってあげますから!」 「厭だ…オレは青龍と離れて暮らす気はねぇかんな!」 「それはまた話し合いましょう! 今回私が降り立つたった本来の仕事を致します」 ガブリエルは天を仰いで呪文を唱えた 「天界と魔界は1つの世界に在った 今後争う事なく共に在る事を誓う」 争いは無くすものばかりを創った もう2度とそんな愚かな闘いなどしないとガブリエルが宣誓のルーンを魔界に刻んで行く 炎帝はそれを見届けた これこそがガブリエルが魔界に降り立った要件なのだから… 「炎帝、神の愛し子 貴方の存在はこの世界総ての恐怖だった 神は貴方の存在を許し託した 貴方は…どんな世界を創るのですか… 私はそれを見届ける者になりたいと思います」 炎帝は何も言わず嗤った 「魔界と天界は…2度と愚かな闘いはしない」 天界も魔界も打撃は大きかった ガブリエルだとて無傷ではなかった だが天界を護る為に己の身を賭して闘った 天界の為に… 共に生きたルシファーの息の根を止める事こそ… 友としての務めだと想ってきた   悲しき…堕天使 我が友…ルシファー ガブリエルはスワンを見詰め…背筋を正した スワンは微笑んでいた 天使の第九階段で微笑んでいた当時のように… 穢れなき存在 銀色の妖炎を風に靡かせ微笑んでいた その妖炎がガブリエルに纏わり付いて、優しく包む 忘れてないよ そう言っているみたいに スワンの気は落ち着いて優しさに満ちていた 無だった堕天使はいない 友として側にいた… ルシファーがいた ガブリエルはその姿を瞳に焼き付けた 「炎帝…一つだけお教え下さい…」 その言葉が何を指すか炎帝には痛い程に解っていた 「教えてやるから、大集会が終わるまで待ってろ!」 炎帝はそう言い、一歩前に出た 「魔界に十二天が還ってきたぜ! 十二天!挨拶しろよ!」 炎帝の声を受けて腕を組んで待ち構えていた毘沙門天が不敵に嗤った 「宣誓!我等十二天は炎帝と共に在る! 魔界の為に還って来たんじゃねぇ! 炎帝が在るから還って来たんだ! 炎帝が創る魔界の礎に我等十二天はなる! その為にだけ還って来た!」 毘沙門天はそう言い炎帝に向き直り 深々と頭を下げた 他の十二天も炎帝に頭を下げた そして姿勢を正すと 【共に在ろう炎帝!】 と、十二天が声を揃えて言った 梵天が「魔界は変わった!我等はこの先の魔界に関わりを持つ!」と宣誓した 圧倒的な存在感だった 十二天の存在が魔界で名実共に刻まれた瞬間だった 炎帝は更に魔界の者達に言葉を放った 「女神の泉の女神がこの度伴侶を得て泉を出られた 女神は何も持たぬ者になり女神の泉を出られた 女神の後継は水神がなってくれる事になった 10000年振りに黄泉の泉は…水神が納める事になった ………水神は気紛れ故…気を付けろよ!」 炎帝はそう言い水神を紹介した 水神は嫌な顔をして前に出た 「我が納める湖に来るなら覚悟をしろ! 我は容赦などしない!」 水神は宣戦布告した 炎帝は笑っていた 気難しい水神を良くも呼び寄せたな…と閻魔は眩暈を覚えていた ひねくれ者で一癖も二癖も在る捉え所のない性格で、魔界の者は…関わりを持つのを極力避けていた 水神もそれを知っていて関わりを持つ気すらなかった だが炎帝は違った 直球ストレートで何時もやって来るから水神の調子が狂っていた 側にいて自然でいられる存在だった 唯一、魔界で自分を解ってくれる存在だった だから炎帝が人の世に堕ちた時… 水神は【 無 】の世界へ旅立った 眠るには長い1000年の眠りについた そこへ炎帝から呼び出しが来た 『何時までも眠ってんじゃねぇよ!』 揶揄して嗤う皮肉な憎らしい事を言うのは一人しか思い付かない  水神は1000年の眠りから醒め 炎帝の呼び出す所へと現れた 水神は炎帝に抱き着いた 「お主が還るまで我は何があっても湖を護る!」 炎帝は笑って水神の背を撫でた 毘沙門天が「狡い…」と言い炎帝に抱き着いた 十二天が炎帝に抱き付く 炎帝は流石と…たらーっと冷や汗を垂らした まるで犬並みに毘沙門天は炎帝に懐いていた 炎帝が呼べば尻尾を振って炎帝の側に逝くだろう 十二天が認めた存在 それが炎帝だった 青龍は炎帝を、水神と十二天から引き剥がした 独占欲を隠す事なく炎帝を抱き締める青龍に、閻魔は苦笑して 「この度、炎帝は伴侶を得た!」 と、声を高らかに宣誓した 「炎帝の久遠の伴侶は青龍! 此処に皆に報告しよう!」 広間の皆の瞳が、炎帝と青龍に釘付けになる 青龍は静かに笑って 「この度、炎帝を伴侶に迎えました!」 と、宣誓した とても幸せそうな笑みだった 堂々と胸を張り伴侶を宣誓する 魔界にいた頃の… 秩序を織り成す法の番人の厳しさはなく 愛に満ちていた 広間から拍手が湧き起こる 皆が炎帝と青龍の婚姻を祝うかの様に拍手が響き渡った 「我が妻は未来永劫唯1人!」 青龍はそう言い炎帝を引き寄せた 対の存在が壇上に在った 青龍は清々しく笑って 「僕から炎帝を奪うモノは…容赦はしません!」 と、脅すのも忘れていなかった 魔界の化け物 神々が集まり禁断の魔方陣を引いて創らせた破壊神 魔界の恐怖 魔界の問題児 そんな姿は何処にもなく 凜として佇む姿は凜々しき戦士だった 炎帝はスッと天に向け指を指した 「魔界は未来永劫我等が創る!」 と、宣誓した 「我等は共に在る 共に魔界を創って行こうぜ!」 炎帝はニカッと嗤うと 「魔界大集会の地にそれを誓う!」 と、声高らかに宣誓した 閻魔が前に立つと 「魔界大集会は大成功を収めた 魔界は変わる 我等が創る魔界へと変貌を遂げる 我等は総てやるべき事を持っている! それを忘れてはいけない! 魔界よ!永遠なれ!」 と、締め括った 転輪聖王がスッと前に出た すると閻魔は後ろへと引き下がった その横に建御雷神が立ち、素戔嗚尊が立った 先の天魔戦争の覇者が3人 壇上を見下ろしていた 彼等は皆の前に立つ事は皆無だった 自分達の存在は、天魔戦争を想い出させる と、公の舞台に顔出す事を極力避けていたからだ その3人が壇上にいた 広間にいたモノ達は固唾を飲んだ その姿を瞳に焼き付けるかの様に 壇上を一心不乱に見ていた 涙を拭う事もなく… 3人の姿を… 皆見ていた 建御雷神が「我は建御雷神なり!」と名乗った 転輪聖王が「我は転輪聖王なり!」と続き 素戔嗚尊が「我は素戔嗚尊なり!」と声高らかに宣誓した 建御雷神が「友よ!久方ぶりだな!」と笑い 転輪聖王が「ええ。友よ!」と答え 素戔嗚尊が2人を抱き締め 「友よ!永遠に変わる事のない盟友よ!」 と、共に生きて来た友に贈った 建御雷神が「我等の想いは一つ!」と言うと 素戔嗚尊は2人を離し 「我等は魔界の礎になる!」と叫んだ 転輪聖王が続き 「魔界は炎帝が適材適所配置し 閻魔が収める! 我等はその方程式を崩すモノは許さない! この身を賭けて我は炎帝を護る 我は炎帝と共に!それしか望んではおらぬ! 炎帝…愛しきモノよ… お前の荷物を私は持って逝く それしか望んではおらぬ」 転輪聖王の瞳が炎帝を射抜く 炎帝は不敵に嗤い 「着いて来いよ! 共に逝くなら目を逸らすんじゃねぇぞ!」 あぁ…炎帝しか吐かぬ台詞だ 転輪聖王は慈愛に満ちた笑みを浮かべた 「魔界よ!不滅なれ!」 大天使ガブリエルが唱えた その言葉を合図に 魔界大集会は幕を閉じた 魔界大集会が終わると炎帝はガブリエル等と共に会場を後にした

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