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第32話 確かなモノ ①

一生は榊原の横へ来ると歩きながら話した それを受け一生は榊原に何故康太がこうも強引に踏み込んだのかを話した 「白馬の不穏な空気は春頃からあったんだよ 決定的な証拠が出るまで捨てておいた 地元の建築会社が躍起になって、このホテルの買収に手を染めてる その息の掛かった社員もいて…接客態度はめちゃくそ悪い…会社の上の方まで苦情が上がって来てる リニューアルオープンした頃からな目をつけられてたみてぇだ 康太は叩き潰す勝機を狙って放っておいた 今動くなら叩き潰すつもりだろうな」 一生から説明を受け榊原は 「僕は白馬の事は知りませんでした」と告げた 「俺も知らなかった… 聡一郎が陵介と動いていた 多分夏生も出て隠密に調べて動かぬ証拠を掴んでたんだろ? 旦那…おめぇだけじゃねぇ…俺も慎一も知らなかったんだ」 榊原は何も言わず歩き足を速めた 「旦那、康太は誰にも解らず動く時もある」 「知ってます。 気にしてませんから安心してください」 榊原も早足で康太の元に一生達を連れて歩いた ホテルのフロントに行くと、客の大移動が始まっていた この近くの従兄弟のホテルに客を全員移すと言うのだ 社員はこのホテルで一番大きな部屋に一同に集められ… 動く事を禁じられていた 動けば……警察に痛くない腹を探られる 出入り口には警察が立っていた 用意周到! そこへ兵藤がやって来た 康太を見つけると 「よぉ!役にたったかよ?」 と、声をかけた 警察を動かしているのは兵藤だと解る言葉だった 「悪かったな貴史」 「白馬に来る気配ねぇからな 今日は動かねぇのかと思ったぜ!」 「根回しに時間が取られた 須賀の身内も追い詰めねぇとな それで動くのが遅くなった」 「須賀の会社も摘発受けて踏み込まれてる所か?」 「だろ?筆頭株主無視して強行に出ればな」 「あっちは三木が動いてるんだろ? なら任せとけば良い!それよりこっちだ!」 「…………こんなに腐っちまって…んとによぉ!」 康太は……ため息交じりに零した 兵藤は康太の背中をバシッと叩いた 「ため息着くのは早い! 片付ける事が山積で零してんじゃねぇ!」 「解ってんよ! んもによぉ~お前は!」 榊原は兵藤と康太を見ていた その視線に気づき兵藤は 「よぉ!伊織。 貸しは返せと酷使されてるんだよ! お前の妻は容赦のねぇ取り立て屋だぜ!」 と、笑った 榊原は兵藤を見て 「貴史…酷使されましたか?」と優しく微笑んだ 「おう!須賀の捕り物の後、蹴り上げられ白馬に行けと言われた 客として泊まったがな…こんなホテルには二度と泊まりたくねぇよ!」 「そんなに酷い?」 「飯はまずい! 従業員は横柄… 客を客と思っちゃいねぇ… リピーター期待出来ねぇホテルだな」 榊原は言葉もなかった 「アイツに散々地獄だぜ此処は! と、メールと動画送ってやったぜ!」 と、兵藤はガハハッと笑った 康太が最近PCを離さないのは…… ホテルの情報収集もあったから…… 二つを平行して抱えれば… 考えるだけでも目眩がする 康太はそれをやったのだ 適材適所配置し違える事なく動かして追い詰めた 康太は準備が出来るまでPCを起動させなにやらやっていた そして何処かへ電話を入れた 「繁雄、助かった」 その一言で三木繁雄の所だと解る 『総てはお前の想いのまま完遂した!』 三木は叫んだ 「その事務所は閉鎖してくれ! その中の荷物は総て倉庫に運び込んでくれ! 東青が動いてるからな、そこのタレントは一時的に相賀が預かってくれてる その場所は“無”に返す!」 『了解!記者会見、早まめるつもりかよ?』 「明後日まではオレは白馬を動けねぇ」 『なら明明後日なら大丈夫だな?』 「繁雄、それを東都日報の今枝浩二に伝えろ! 東都日報の今枝浩二が記者会見の場をセッティングする手筈になってる」 『東都日報の今枝……あの容赦のない悪魔…』 三木は今枝に手痛い想いをさせられていた 今枝の一撃は大きな反響をもたらすが…… かなり容赦がなかった 「知ってんのかよ?」 『そりゃあ…よーく存じてます! 記者会見では何時も手痛い目に合ってますからね!』 「アイツの記者魂に杭を打ったのはオレだ」 『…………それはそれは! 怯まない男は貴方が作りましたか… 解りました!今枝に連絡を取り手筈を整えます!』 三木は電話を切った 康太は今の現状に頭を切り換えた 榊原が「三木ですか?」と声をかけた 「おう!繁雄を動かしてたからな」 「康太、そろそろ捕り物も終わりますよ」 警察と検察の手入れが手早く行われ 段ボールに証拠を詰められてゆく 佳境を過ぎたと榊原は言う 康太はゆっくりと立ち上がった 康太は立ち上がると社員前に立った 「社員の皆様、従業員の皆様 お疲れ様でした! 貴方達は今日で解雇とさせて戴きます」 と言い深々と頭を下げると 「このホテルは明日から新しいスタッフが入り軌道させます 貴方達の席は御座いません! 我がホテルはお客様をもてなし、また来て戴きたいホテルを作るつもりです! 横柄に客に接する者など要りません! オーナーが若くて、あまり観に来ないと、横領する社員も要りません! オレは此処にはあまり来ないかもしれないが 飛鳥井家真贋の眼を持つ者がいる事をお忘れなき様に! 来なくてもオレは手に取る様に見えている そして、オレは駒を動かし何度も何人もこのホテルの視察はさせている 何人動かしても答えは同じ 2度と来たくないホテルだな! と言う言葉が返ってくる この様なホテルを目指した訳ではない お前達は雇用主の信頼を失墜させた よって全員解雇させて戴きます! 解雇通告を渡す! それが厭なら自主退職しろ! 使う気はねぇ!ゴミクズ以下の社員などオレは要らねぇ!」 康太が言うと全員頭を垂れた 「このホテルに働く人材は既に用意してある 明日から来てくれると言うしな その準備に忙しい 慎一、この方達を早く排除してくれ!」 康太の命を受け慎一は動いた その手には解雇通告が握られていた 康太は一生の方を向くと 「買って来てくれた?」 と声をかけた 「おう!俺のお握りと義母さんがおかずを作ってタッパに入れてくれた! 途中でスーパーに寄って食えるもんは入れて来た お前のプリンとゼリーは確保してある安心しろ!」 「一生!」 康太は一生に抱き着いた 一生は困って榊原を見た 榊原は笑っていた 慎一が社員を追い返すのに手間取っていると榊原と一生が出た 榊原は毅然と構え 「あなた方はそれなりの仕事をしなかった 会社は仕事をせぬ社員など要らぬ! 景気の良い頃なら寝言も言えたかも知れません この不景気な御時世に寝言は言えませんよ!」 と、言い放った 一生も「解雇は覆らない!」と叫んだ 社員は、解雇通告を受け取って帰って行った ホテルに誰もいないか警備員に確認に行かせ その警備員もこの日で解雇した 翌日から蔵持善之介の会社の警備員が配置される事が決まっていたからだ 康太は慎一と一生に総ての入り口の施錠を頼んだ そして1階の適当な部屋を見つけ入って行った 「腹ごしらえをしょうぜ!」 康太が言うと一生が「駐車場まで取りに行く」と言った 「慎一、一生と行ってくれ! 入り口の前に車を停めれば良い」 一生は頷いて駐車場まで車を取りに行った 榊原は康太を抱き上げるとそのまま座り 膝の上で抱き締めた 「明日は佐伯が瑛兄を連れて来る」 「義兄さんはホテルの現状は知ってたんですか?」 「苦情が上がってたからな 厭でも知るだろ?」 「今夜は……お預けですね……」 こんな状態で甘い時間など……… 期待する方が間違ってそうだ 「嫌だ!こんなに酷使して働いた褒美は貰わねぇとな!」 「………康太…」 「1階の適当な部屋に入って伊織と過ごす! 明日の朝までは誰にも邪魔されたくねぇ!」 康太が言うとPCを見ていた聡一郎が 「誰も邪魔しないし… ……邪魔したって伊織は康太を抱く時は抱く 邪魔するだけ無駄でしょ?」 と、愚痴った 康太は笑って「聡一郎」と呼んだ 「何ですか?」 「このホテルは悠太が引いた 悠太の初仕事がこのホテルだ!」 と、聡一郎に言った 「え……?」 「悠太が引いて、誠一が見た あまり手直しする事なく悠太は引いたそうだぜ」 「そうですか……悠太が……」 聡一郎は感嘆として呟いた 一生が慎一と一緒に車を前に停め荷物を持って来た 何故か再び兵藤も着いてきてた 「康太、廻りの警戒も完了だぜ!」 「貴史ありがとう」 康太はそう言いニコッと笑った 兵藤はそっぽを向いて 「火をつけられたら堪らねぇからな! このホテルに手を下させるかよ!」 と、怒鳴った 火をつけられたら……の台詞に全員ギョッとなった 「馬鹿はやる事も稚拙だからな!」 兵藤はそう言いドカッと椅子に座った 大きなテーブルに慎一は料理を並べた そして全員に取り皿と飲み物を渡した 榊原が康太の皿に適当に料理を置いて渡す 一生スペシャルを手に取ると康太に渡した 榊原も、一生スペシャルを手に取り料理に箸をつけた 兵藤が「何時見てもすげぇな!このお握り!」と頻りにデカいお握りに感心していた 腹が膨れ、デザートのプリンを食べ終ると 「皆好きな部屋に寝てくれ! んでダミーで他の部屋も電気つけといてくれ!」 と、言い康太は榊原に手を伸ばした 榊原は康太を抱き上げ 「僕達は隣の部屋にします。 何かあったら電話してください」 呼びに来て下さい……じゃないのが笑える この後何をするか…解ってて邪魔をするなと付箋を張った 一生は手を上げふった 後は黙々と食事に専念した 榊原は康太を抱き上げたまま部屋を出て行った 康太と榊原が出て行ったのを見計らって兵藤は 「新婚抜けねぇな」と零した 「言うな…」 一生は友の肩を抱いた 永らくの友の片想いを知っていた だが赤いのは何時も弟の味方だ 「赤いのは…何時も蒼いのの味方だもんな」 「俺は炎帝の為に在るからな」 炎帝の望むことしかない 一生はそう言い笑った 苦しみも喜びも……共に分かち合い 無償の愛で支えられた 「一生、今夜は何処で寝るんだよ?」 「康太達の寝てる部屋の正反対 聞かされたらたまらねぇからな!」 と、苦笑した 「雑魚寝か?」 「そう!康太がいなきゃ被害は皆無だ」 一生はそう言い笑った 「アイツは寝相すげぇからな… 昔は…雑魚寝した事ねぇからな…知らなかった」 「俺等兄弟は知ってるぜ だが…被害を一番に受けてたのは我が兄黒龍だな アイツの面倒を見てたのは黒龍だ」 黒龍は大切に…大切に、炎帝を守った 羨ましい位に… 二人の間には…割り込めない信頼関係があった 「この前見た んとに仲良いな、あの二人は 一時は噂になってただけあるな」 「俺も…アイツは兄貴とデキてると想ってた」 それ程黒龍と炎帝は仲良かったのだ 「あの堅物だと聞いた日の衝撃は忘れねぇぜ!」 兵藤は笑いながら言った 人に墜ちた炎帝と共に青龍も人の世に墜ちた 青龍は炎帝と抱き合い人の世に墜ちた…と閻魔は言った 『炎帝は罰しましたが…青龍は自ら進んで人の世に堕ちたのです…』 閻魔は魔界大法廷に役職を集め、そう言った 朱雀は言葉もなかった 何故? 二人は付き合ってたのか? そんな痕跡一切感じさせず…四神の一角を失った 半世紀…四神は一角を欠いた 半世紀四神は青龍を欠いた 今世朱雀が青龍を呼びに行くと言い人の世に堕ちる赤龍と共に人の世に来た それで見えてくる真実があった 康太を敵視する執行部の鬼は… あの頃の様に康太を目の敵にして…取り締まっていた だが康太を見る瞳は… 康太に惹かれている現実を映し出していた そして何より、康太が榊原を見る瞳は… 恋して焦がれる色があった 間近に来ればこそ解る現実があった 一生と兵藤は昔話に花を咲かせ 夜が更けるまで話していた 聡一郎は優しい瞳でそれを見て… 「赤いのと朱い鳥との…刹那い片想い大会ですか?」 と、しれっと言った 「昔からあなた方は寄ると触ると刹那過ぎです‥‥変わりませんね」 聡一郎の言葉に… 兵藤と一生は驚愕の瞳で…聡一郎を見た 「あ!僕の事はお気にならさず!」 聡一郎は笑って無関係を装った 兵藤は「誰だよ?」と一生に問い掛けた 一生は「聡一郎だろ?」とまともに受けて言った んなのは百も承知の事だった 「あんで、朱雀と赤龍の過去を知ってるんだよ!」 と兵藤は噛み付いた そう言われてみれば……そうだと一生は納得する 「俺は知らねぇよ! 知ってるとしたら康太だけだ」 一生は兵藤にそう言った 「聞けねぇな…」 兵藤は諦めの境地で一生に言った 「名乗る奴じゃねぇしな…」 聞いても答えないのが聡一郎だった だが試しに… 「聞いてみろよ?」と兵藤は言った そして肘で一生を突っ突いた 「俺かよ?」 兵藤は頷いた 一生はチェッと舌打ちし聡一郎に 「あなた様は何方様なんですか?」 と、問い掛けた 総一郎は笑って 「四宮聡一郎」と答えた やっぱし……と肩を落とすと 聡一郎は笑って 「司命(しみょう)と司録(しろく)が一人 司命に御座います」 と答えた 兵藤は飛び上がった 司命(しみょう)と司録(しろく) 閻魔大魔王の書記官 司命は 人間の寿命をつかさどる神だった 人間の寿命台帳を管理し,人間の行為の善悪を監視する三尸虫(さんしちゆう)や竈神(かまどがみ)の報告に基づいて寿命の増減を行う神とされていた 何故…その様な神が……人の世に??? 閻魔の腹心中の腹心 魔界で欠いてはいけない存在だった 聡一郎は笑って 「弥勒が言ってませんでしたか? 今世は…何故か…人の世に…人のなりした神が多く…潜んでやがる! …………と。そう言う事です」 兵藤は「康太は知ってるのかよ!」と問い掛けた 「無論。」 その返事を聞き一生に 「お前知っていたのかよ?」と問い質した 「康太しか知らねぇだろ?」 と零した 兵藤は「何故今言う?」と聡一郎に問い掛けた 「明日、九曜神をこの地に下ろせと通達が有りました なれば、呆気なく解ってしまうでしょ?」 と総一郎は肩を竦めた 「九曜神をこの地に下ろす… 封印を解きお迎えするのです 簡単には戻りませんからね…」 そうなったら一発で聡一郎でないものだとバレる その前に種明かししておくのも手だと聡一郎は手の内を明かしたのだ 兵藤は「なら司録も人の世に堕ちて来てるのか?」と問い質した 「無理でしょ?そしたら魔界は閻魔の手には負えませんよ?」 聡一郎はそう言い笑った 「まぁ今は僕は四宮聡一郎! それ以外のモノになる気はない!」 一生は「よくも閻魔が出したな…」と閻魔の溺愛を想った 「我等司命 司録は閻魔に仕えていた訳ではない 炎帝に仕えて閻魔のサポートをしていた 僕等は閻魔のモノではない!炎帝のモノなのです 今世は僕が人の世に来た こうして僕等は主の傍に順番にお仕えしているのです」 「青龍は知ってるのかよ?」 一番の疑問を聡一郎に投げ掛ける 「……知ってると想います ですが彼は言葉にして言う人じゃない」 あるがままを受け入れる 榊原は康太に関しては寛容だった 康太の総てをあるがまま受け止め守る 彼の強さに救われた 兵藤は「おめぇは四宮聡一郎!そうだろ?」と笑った 一生も「我等四悪童!それは変わらねぇよ!」と笑った 聡一郎は微笑んだ 「当たり前です! さてと寝ますか? 明日は朝から大変ですよ?」 聡一郎が言うと一生は 「明日何かあるのかよ?」と聞いた 「明日は此処に働く社員が朝から入ります! その後に瑛太さんと佐伯が来る 慎一なんてもう寝に行ってますよ?」 兵藤と一生は「「嘘!」」と辺りをキョロキョロ見渡した 聡一郎は立ち上がると「適当に寝て来ます」とスタスタ歩き出した 一生と兵藤も慌てて立ち上がり寝に行った 雑魚寝の場所には… 慎一がスヤスヤと寝ていた その横に滑り込み、一生と兵藤は寝た 聡一郎も静かに電気を消し寝た 皆が寝静まっても榊原は康太の中にいた 何度出して止まれない 「……ぁ…康太…締め付けないで…」 康太を体の上に乗せ、下から康太を突く 蠢く腸壁が榊原を搦め離さなかった 下から締め上げる様に腸壁が蠢く 搾り取る様に刺激され…榊原は嵩を増した 「ぁっ…あぁっ…伊織…伊織…」 康太は仰け反って喘いでいた 榊原は結合部分をなぞり、康太の性器触れた 「もっと君の中を味あわさせて…」 榊原が苦しげに言う 性器に刺激を受け…体躯は弛緩する はぁ…はぁ…荒い息づかいから部屋に響く ぬちゃ…と湿った音が…鳴り止まない 「ゃ……伊織…触らないでぇ…ねがっ…ぁ…ぁ…」 榊原は康太のプクッと尖った乳首を舐めて 「君が絞めすぎるからですよ?」 「知らない……ねぇ…伊織…」 「もっと君の中にいたいのに…」 榊原は限界を迎え… 抽挿を早めた 康太の中へ滾る精液を注ぎ込み 中から抜いた 肉棒を引き抜かれた康太のお尻の穴はまだ開いて中が見えていた 閉じきらない穴から榊原の精液が流れてゆく 紅い腸壁が煽動して蠢き止まらなかった 榊原は康太の穴に舌を挿し込んだ ぴちゃぴちゃ…音を立てて舐める 指を挿れ皺を伸ばして舐めると康太は鳴いた 「……ゃ…伊織……舐めないでぇ…ぁぁ…」 終わらない快感に翻弄される 「君の中から僕の匂いがします」 確かめるように穴を覗かれる 恥ずかしくて、康太を股を閉じようとした が、榊原が寝そべりそれを阻止する 何度も繋がった穴がもの足らないと催促を始めると 榊原は欲情に染まる瞳を康太に向けた 「欲しいですか?」 肉棒を握り、亀頭を康太のお尻の穴に擦り付け康太に尋ねる 「欲しい…伊織のが欲しい…」 康太は、榊原の性器を捕らえると舌を這わせた 「オレは何時だって伊織が欲しい」 そう言い榊原の性器を舐める 総て吸い尽くしそうな康太を持ち上げると榊原は肉棒の上に下ろした 双丘を左右に開き穴を狙う 康太のお尻の穴は美味しそうに榊原の性器を咀嚼する 二人でしか味わえない快感を求め 狂ったように求め合った 朝が白む頃、康太は榊原の上に乗って胸に擦り寄った 優しい時間が好きだった 榊原の心臓がドックン ドックンと脈打つ それを確かめる様に康太は榊原の胸に擦り寄った 榊原は康太を抱き締め 「無理させましたか?」 と問い掛けた 「欲しかったから…」 仕方がないと康太は笑った 止まれなかったのは榊原の所為じゃない 「僕も康太が欲しくて狂いそうでした」 「伊織 愛してる」 「僕も愛してますよ!」 「今日は九曜神が来る… 神野は来るかな? 四季も…来るかな?」 「心配しなくて良いです! 来なければ連れて来て差し上げます」 来なければ連れてくれば良いと榊原は笑った 「ん。腹減った」 「なら起きて食べに行きますか? 慎一が冷蔵庫に片づけてくれてると想いますよ」 「プリンもあった!」 「ええ。では支度をします」 榊原は康太を抱き上げると浴室に行き 中も外も洗った 浴室から出ると髪を乾かし康太の支度した その後自分の支度して、シーツを剥がした 「行きますか?」 「おう!お腹ペコペコだ!」 康太は榊原に促され先ほどの部屋に戻った 榊原は康太を椅子に座らせると、冷蔵庫の中を探し 食べ物を見付けると康太の前に置いた 康太は出された食べ物をガツガツ食べていた その時部屋に慎一が入ってきて、その光景を見ていた 「おはようございます」 と榊原と康太に声をかける 康太は片手を上げただけで一心不乱に食べていた 榊原は慎一に「おはようございます」と返し 静かに食べていた 「今日は瑛太さん達が来るのですね」 慎一は佐伯を思い浮かべ…肩を竦めた 「僕も…仕事を片付けてないから…怒られますね…」 榊原は苦笑した そこへ聡一郎と一生と兵藤が起きてきて食事へとありつこうとした なんせ康太がいるから…放っておいたら全部食べられる 康太は聡一郎の顔を見ると 「海路は今日来るんだよな?」 と問い掛けた 「ええ!準備万端送り出すそうですよ!」 「なら、お前が迎え入れるのかよ?」 「ええ。そう言う指示が来ましたからね!」 「そうか…なら人払いしねぇとな…」 「…瑛太さん達が来るのですよね?」 「おう!お前は出ない方が良いだろ?」 「そうですね…」 康太と聡一郎の会話を聞けば…… 康太は全部承知しているのが解る 康太は予定を想い浮かべて 「今日は神野も隼人を連れて来るしな」と呟いた 聡一郎は 「何時間位で戻りますかね?」と問い掛けた 「…………オレは変身とかせんからな…予測はつかねぇな‥‥」 そう言われ聡一郎は榊原に顔を向けた 「龍は即座に姿を変えられますが、君の場合…予測がつきません…」 聡一郎は初めての事に不安を抱きつつも 「取り敢えず部屋にこもります 差し入れお願いします!」と頼んだ 「解りました。 君には本当に無理させます」 「仕方ないです!康太ですからね」 聡一郎はそう言い笑った 兵藤が康太の横で眠そうに食事を取っていた 「貴史は帰るのかよ?」 「おう!帰って選挙の遊説で連れて行かれる 美緒が俺に総てやれ!と言うからな… 当分は帰って来られねぇな」 「そうか…選挙の根回しか 地元の祭りや遊説で気が抜けねぇな」 「しかも今回危ねぇ雰囲気が否めねぇかなら…」 ボヤく兵藤は康太はジーッと視ていた 「貴史、自分に還す闘いだ 手を抜くなよ!」 「あたりめぇじゃん! お盆過ぎまでは闘って来る! その後ゆっくり過ごすとするわ」 「おう!燃え尽きるまで頑張って来い! 陣中見舞いしてやっからよぉ!」 「それはありがてぇな! メシ食ったら帰るわ!」 「誰かに送らせようか?」 「要らねぇ 美緒が車を寄越してる それに乗って美緒の所へ行く!」 慌ただしく食事を終えると兵藤は帰って行った 康太はそれを見送り 「選挙かぁ…」 と呟いた そろそろ三木の所へ出向き動く時期が来たのだと思案する その前に……九曜海路と神野と隼人と四季を合わせねばならない その後、 須賀の件もある 「体躯が3個は欲しいな…」 と康太は呟いた 一生は「それは良いな!それなら俺も欲しいぜ!」と爆笑した 慎一は「…………現実逃避…」とぼやいた 聡一郎は「康太止めときなさい!」と言った 康太は聡一郎に視線を向けた 「伊織は喜んで3体抱いちゃいますよ? 君のコピーが伊織に抱かれちゃいますよ?」 と返した 「それは嫌かもな‥」 康太は榊原に、訴えた 「……………康太、3体同時は体力が持ちません! 僕はオリジナルの、君だけで満足です」 と、真面目に答えた 慎一は額を押さえ 一生は大爆笑 聡一郎は言うんじゃなかった…と後悔した 「でもなやることばっかし増えてな 体躯が足りねぇ事は事実だしな…… 今日も目が回る位に忙しいぞ!」 とボヤいた 慌ただしく朝食を取ると戦闘準備に入る 今日も過酷な1日の始まりだった 朝早く観光バス3台がホテルの敷地に停まった バスの中には飛鳥井瑛太と佐伯明日菜が乗っていた 康太は出迎える為に駐車場まで出て来ていた バスから降りると瑛太は 「ホテルの従業員を連れて参りました!」 と言いバスから降りた 「瑛兄、悪かったな」 康太が言うと瑛太は 「お気にならさずに! 苦情は上まで達してました 遅かれ早かれ動かねばならなかった事でです」 バスの中の社員は飛鳥井康太自ら集めた精鋭ばかりだった ホテルニューグランドの副社長に声をかけて口をきいて貰い集めた 良い社員を集めるには、それなりのネームバリューが必要だ 素人が奔放しても得られる人材ではない それなりのパイプが有ればこそ繋がる人材もあるのだ ホテルニューグランドの副社長は、康太の期待に応えて、ホテル業界全体に口聞いてくれた 白馬のホテルで働いて下さる方 と、ホテル業界全体に求人を出してくれた シェフからドアマン、ベルボーイ ホテルの従業員、総てホテルニューグランドの副社長が集めてくれた それで今日の日を迎えられる事となった バスから降りた従業員はプロの顔つきをしていた 自分のスキルを誇りに持ち 新天地で自分の手腕を試したい そんな社員が名乗りを上げてくれたのだ バスから降りると慎一が待ち構え社員を誘導していった ざっとホテルの中の説明をしすると社員を集めた そこで飛鳥井康太、ホテルのオーナーの挨拶をした 「飛鳥井康太だ! このホテルのオーナーだ! このホテルは買収されかかった 故に社員は総て退職して貰った だから君達は今日、この日から働いて貰う お客様はそんな事は知らずに泊まりにおみえだ 君達はプロの仕事でお客様をお迎えして下さい それでは各自持ち場に散らばって仕事をしてください」 康太が言うと、皆礼をして着替えに向かった 従業員の制服は事前に渡しておいた それに着替えて各自持ち場に着いた 閑散としたホテルに活気が戻った 忙しそうに準備に疾走する社員がいた 康太はそれを確かめてから、厩舎へと向かった 厩舎は観光客に見せる様に壁が撤去されていた 調整中の馬を観光が客乗っていた 馬は興奮し… 調整所の騒ぎではなかった 宮瀬蓮司が横浜市内の飛鳥井の厩舎に出向いて   その窮状を訴えに来ていた だから宮瀬蓮司は、あんなに近い場所にいたのだ 康太は厩舎に入ってゆく すると篠崎青磁が康太を待ち構えていた 康太は有無を言わさず篠崎を殴った 篠崎は吹き飛び壁にぶつかった 「青磁、馬の調教が出来ねぇなら おめぇなんて要らねぇじゃねぇかよ?」 篠崎は口から流れ出た鮮血を拭って 康太に頭を下げた 「康太…言い訳はしません! ですが……私には止める術など有りません!」 飛鳥井康太がいればこそ… 罷り通る道もある 篠崎が何を言っても… 聞き入れる体制が出来てなくば…… 阻止など出来ないのだ 「此処は関係者以外立ち入り禁止だ! より頑丈なフェンスをつける! そして風通しは良くする様に、此処にオレの眼を置く オレの意思を寸分違わず動く駒を配置する 室生夏生だ! 後で合わせよう!」 康太はそう言った後に篠崎を抱き締めた 「お前は調教師にしかなれねぇんだ! 誰が何と言おうと聞かなくて良い オレの声さえ聞こえてればそれで良い」 篠崎は息を吐き… 「はい……そうでした」 と康太を抱き締めた 「藍崎は役に立ってるか?」 「ええ。彼の馬を見る眼は確かです」 「お前のために用意した人間だ!」 篠崎は何も言わず康太を抱き締めた そこへ藍崎一樹がやって来て、康太の顔を見て驚いた 「康太君!」 藍崎は康太を見るなり抱き着いた 「藍崎、どうよ? 此処での生活は慣れたかよ?」 「ええ!慣れました! 康太君に拾って貰って、僕は新しいスタートを切れました! 本当にありがとう」 藍崎は泣きながら康太に言った 「厩舎に防犯カメラを着けて 警備会社に警備させる そして此処は関係者以外立ち入り禁止にする 静な環境で勝てる馬を育てろ!」 藍崎は姿勢を立たし 「はい!貴方の様に強い馬を育てます!」 と、宣誓した 康太は藍崎の肩をポンッと叩くと厩舎を後にした 厩舎を後にしてホテルへと戻る道すがら康太は榊原に声をかけた 「伊織」 「何ですか?」 「仕事大丈夫なのかよ?」 「………仕事します でも君を抱いた翌朝位目を瞑りなさい 君が怠いんじゃないかと心配で…手に着きません」 「オレは大丈夫だ 九曜海路が来れば親子水入らずで別邸へ連れてゆく そこで過ごさせる 今夜からオレ等は飛鳥井家専用の部屋に移る」 「妨害の手が伸びなきゃ良いんですがね…」 「…………地元の建設会社は潰さねぇとな!」 やはり体躯が3個は欲しい… 康太はそう想う 「やっぱ体躯が足らねぇ…」 「僕もね何時もそう思いますよ 君を送り出し仕事をする時、体躯が二つあれば君と行けたのに…と何時も想います」 康太は嬉しそうに榊原を見た そんな想いを閉じ込めて、この男は康太を出してくれる 動きを止める事なく榊原伊織は康太を動かす 「伊織、そんな事言ったらオレはおめぇを離したくなくなる」 康太はそう言い笑った 「惚れまくってんだからよぉ!」 榊原は康太を抱き寄せた 「愛してます! 君が動くなら僕は共に行きます! 仕事をしてても声を掛けて下さいね!」 置いて行かれたくなどないのだ 置いて行かれたら………狂う 不安と心配で壊れる 「解ってんよ伊織 動く時はお前に声を掛ける それでなくても勝手に動くと一生と慎一が煩い 伊織に言ってから……と容赦ねぇ…」 「君の動きを止める気は有りません 側にいたい僕の我が儘です 愛する男の我が儘です。 少し位目を瞑りなさい」 康太は榊原を見つめた そして嬉しそうに微笑むと榊原に手を伸ばした 榊原はその手を取り繋いだ ホテルに戻るとホテルは正常に動いていた 康太は飛鳥井の為にある部屋に行く為にエレベーターの前に立った 直ぐにやって来たエレベーターに乗り7階の飛鳥井専用の部屋のある階に止まった エレベーターから降りると康太は、ゆったりとした雰囲気を醸し出してるラウンジのソファーに座った 「伊織、この階が飛鳥井専用だ」 「ゆったりとした空間ですね 去年来た時と断然違いますね」 榊原は周りを見渡して言った 聡一郎が康太の側にやって来て 「そろそろお迎え致します! どこで下ろせば宜しいですか?」 「源右衛門が住んでた別邸には広い庭を作った そこに行き海路を迎え入れてくれ オレも行くからよぉ!」 飛鳥井専用の部屋を出ると康太は今乗ってきたエレベーターに乗り込んだ そしてホテルを出て坂道を上り、源右衛門の邸宅へと向かった 源右衛門の邸宅は建て替えられてモダンな洋館へと生まれ変わっていた 煉瓦造りの塀に囲まれ、外からは見えない様に配慮されていた 重厚な門を開けると玄関へは向かわず、庭へと出た 「聡一郎、此処なら目立たず部屋に行ける」 聡一郎は庭の真ん中へと歩を進めると 瞳を閉じ集中していた 一生と慎一が康太の姿を追って源右衛門の別邸に来た時、聡一郎は瞑想に入っていた 康太はしーっと二人に合図した 聡一郎が封印を総て解き放つと、黄金の妖炎で身を包んだ 金色の髪がみるみる間に腰まで伸び、顔立ちも変わった 康太と榊原はそれを驚く事なく見ていた 一生と慎一は固唾を飲み込んで目が離せなかった 足元に五芒星の印を出すと黄金に燃えていた 手を天高く伸ばし聡一郎は呪文を唱えた 金色の髪が風に舞う とても美しい光景だった 五芒星の中心から光が裂け…浮き上がって来ると 地面から人のカタチをした九曜海路が、スーッと姿を現した 完全に地上に降りるまで、聡一郎は総結界を張り続けた 九曜海路が、五芒星の中心に立つと康太を見付け頭を下げた 九曜海路は人として生きていた時の姿になった 子供の記憶に遺ってるカタチになろうと願った そして現れた姿だった 「炎帝、そして青龍殿 この度は本当に世話になります」 九曜は深々と頭を下げた 聡一郎は五芒星を消し去った 久し振りに力を使い、総一郎はガクッと崩れそうになった それを支えたのは榊原だった 九曜は聡一郎にも礼を言った 「司命…手間をお掛け申した」 聡一郎は九曜に 「お気になさらずに! 閻魔兄弟にこき使われるのが僕の仕事ですから!」 と返した 「庭でする話じゃねぇ! 中に入るぞ!」 康太はそう言い玄関へと回った 鍵を開け、ドアを開くとさっさと中へと靴のまま入って行った 玄関脇のドアを開ける そこが応接間だった 康太は応接室に入るとソファーに座った 「伊織、聡一郎の髪を持ち上げてくれ」 長い髪は直ぐには戻らない これだけ長いとソファーに座るのも困難で…… 榊原は聡一郎の髪を持ち上げると康太の横に座らせた 康太が聡一郎の金の髪を持ち上げ接吻を落とした 「久し振りだな、この髪」 「ええ。何時も貴方は僕の髪で悪戯してましたね 勉強を教えに行くと椅子に僕の髪を結び付けたり 何時も僕の髪を持って歩いてましたね」 ………分が悪かった そんな遥か昔の事を言われても… 康太は苦笑した 榊原は九曜海路を座らせ、一生と慎一も座らせ お茶を入れに行った 「一生、神野と隼人、そして神楽四季はまだ来ねぇのかよ?」 と、問い掛けた 一生は胸ポケットから携帯を取り出すと電話を入れた 『もしもし一生君ですか?』 電話に出たのは小鳥遊だった 神野の携帯に電話をして、出たのは小鳥遊…… ひょっとして最中だった??? 一生は冷や汗をたらした 『もしもし!一生君どうしました!』 小鳥遊が一生を呼ぶ 一生は気を取り直して 「神野の到着を待ってる!」 と告げた 『あと少しで到着します』 「なら駐車場で待ってるよ」 一生はそう言い通話を切った 「小鳥遊が出たから…最中だったらどうしょうと焦った…」 と零すと聡一郎が 「最中はわざわざ電話に出ませんよ、あのカップルは!」 と補足してやった 聡一郎ならではの台詞に 「何故それを言える?」 と、聞いて後悔するような言葉を投げかけた 「1度、鳴らしっぱなしにしたんですよ 一発出し切るまで電話は繋がりませんでした そこが伊織と違う所でしょうね 伊織なら繋がってても電話に出ます そしてわざと康太を鳴かせ…切らせるんですからね」 とサラッと言い放った 一生は聞いて後悔した 「神野を迎えに行くわ」 と、ヨレヨレになり出て行った 慎一は苦笑して神楽四季に電話を入れた 「四季さん今どこら辺ですか?」 四季がこっちに向かってる前提の台詞を吐いた 『慎一、途中で迷った…』 「迎えに行くのでどこら辺か教えて下さい」 すると四季は電柱の番号と下に書かれた住所を読み上げた 「解りました!そこに行きます動かないで下さい」 慎一はそう言い立ち上がった 「迎えに行き連れて参ります!」 と言い出て行った 海路はそれを見て 「君の廻りは何時見ても忠実な配下が多いな」 と、羨ましそうに言った 康太はフンッと鼻で嗤うと 「仲間だ!友だ!配下なんかじゃねぇ! オレのかけがえのねぇ友だ! 共に在るから彼等はオレの為に骨身を削る オレは彼等の為なら、この命、惜しみなく擲つ覚悟は出来てるんだよ!」と言い捨てた 羨ましい程の信頼関係だった その信頼関係があればこそ…… 炎帝を追って…… 人の世に堕ちた神がいるのだ 海路は赤龍を見た 朱雀も人の世に堕ちた そして堕ちてはならぬ司命すら…炎帝の側にいた 「羨ましいです」 海路は心底呟いた 「おめぇはよぉ昔から断つ事ばかりしかしねぇからな そろそろ築く事も覚えねぇとな 孤独な神など要らねぇんだよ!」 康太は言い捨てた 誠…真髄を突いた一撃だった 「炎帝…我に築けるでしょうか?」 「出来なくてもやれ! そすればお前の廻りは強硬でなくなる 人に慕われる神になれ 神が一目置く神になれ それには受け入れて開かれねぇとな、なれねぇんだよ 解るだろ?海路?」 康太の言葉に苦悩を滲ませ 「ええ。我は頑な過ぎて… 神ですら存在の解らぬ存在に為りすぎた…」 海路は瞳を瞑って己を悔いた 康太は総一郎に 「そろそろ来るからな、部屋に行くか?」 と問い掛けた 「見届けたら不味いですかね?」 「構わないだろ? そのうち元に戻るしな 姿は変わってもお前は四宮総一郎! おめぇにしかなれねぇ!」 康太の言葉に総一郎は嬉しそうに笑った 榊原は総一郎に 「総一郎、こっちのソファーに来なさい そこだと目立つでしょ?」 康太の横だと一番に目が行く 端っこだとそうでもないと榊原は言った 総一郎が立ち上がると榊原は髪を持ち上げ世話を焼いた そして康太の横に座ると抱き寄せた 暫くすると一生が神野と小鳥遊、そして隼人を連れてやって来て 少し遅れて慎一が神楽四季を連れてやって来て 四季は部屋の中に入ると…… 立ち止まった ソファーには生前、1番輝いていた時の姿のまま… 父、神楽海路が座っていたから…… 「父さん……」 呼ぶと同時に涙が溢れた 何故こんなに涙が出るのか解らないが… 父親が涙で揺れた 海路も泣いていた 時を止めた我が息子がいた 哀れで儚くて……頑なだった 父と息子との距離は……遠く 消して重なる事はなかった 仲が悪いとか……ではなく 互いを遠ざけていたのだ 四季は背筋を正すと凜として父親に一礼した 「父さん…僕は父親になります ですから時を止めては生きて行けないのです 飛鳥井康太が言いました 父親になるなら貴方を知れ…と。 ですから貴方を知るために来ました」 海路は我が子を見た 止まった時は動き出し今を刻んでいた もう海路が危惧した…存在ではない 1本芯が通った強さを秘めていた 「四季……」 海路は、我が子の名を呼ぶだけで…精一杯だった 四季は父親に近寄ると、その胸に飛び込んだ 子供の時だって、父親に抱かれた記憶はない 海路は我が子を抱き締めた 罪ばかり作って… 黄泉に旅立った 我が子を想わぬ日はなかった 九曜の血を引く我が子の落とし種を想わぬ日はなかった 神野讓二…… 我が子を顧みる事なく… 気付いた時には…その命潰えて消滅していた 力の使い過ぎだった 哀れに想っても…… その魂は…消滅してしまい 輪廻の輪に入る事すら叶わなかった なれば……我が子の落とし種だけでも幸多き日を… と願って止まなかった 一頻り四季と抱き合い分かち合うと、ソファーに座った 「海路、お前の孫だ! 神野晟雅と一条隼人だ この二人はお前の息子神野讓二の落とし種だ」 康太は神野と隼人を紹介した 神野は康太に 「この方は何方なんですか?」 と尋ねた 「九曜海路!神野讓二の父親だ お前等には祖父に当たる」 「え………」 神野は唖然となった 「九曜海路は婿に行く前の名前だ 婿に行って神楽海路となって子を成した それが神楽四季だ お前達は血の繋がりのある叔父と甥になる」 神野の思考は停止した フリーズする神野に康太は情けない……と零した 「待って下さい… 現実に頭が着いて行けません…」 「オレはな神野、天涯孤独なおめぇに解らせたかったんだ 天涯孤独だと四季も、おめぇも嘆いてた だからな繋がりを明確にしてやりたかったんだ」 「……康太…」 神野は涙ぐんだ 「隼人だって解ってるさ あの時は…そう言わねぇと、おめぇの側にもいられねぇと…そう言った 社長なら離れて行かないと区切りをつけた 身内は隼人から離れて行くからな… 兄弟になりたくなかったんだよ…解ってやれ」 神野は蹲って泣いた 罪を作った 復讐を…… 無関係な罪もない子にした でも憎めない… 憎むこと事態無理だった だからこそ…躍起になって… 隼人を壊した その罪深さから解放してくれたのは 飛鳥井康太だった 神野の罪も…総ての柵も解放してくれ 背負ってくれた 神野は壊れそうな魂を救われた 返しきれぬ恩があった なのにまた康太は…… 一人じゃないと教えてくれた そして隼人と…… 繋がっても良いと言ってくれたも同然の台詞だった 「お前の祖父だ 何時もお前達を案じてる存在だ側に行け」 康太は神野の背を押した 神野は海路の側に行った 海路は神野を優しく抱き締めた 隼人は黙ってそれを見ていた 「隼人、もう総てを受け入れ もっと大きく成長しろ!」 康太は笑って隼人に声を掛けた 「あるがままを受け入れろと言うのか?」 「そうだ! 自然に身を任せ…生きて行かねぇとな」 「オレ様は任せてないか?」 「任せてるがな、そろそろお前は繋がって生かされてると教えてやらねぇとな おめぇは一人じゃねぇ! そうして血は受け継がれておめぇの中に流れてると教えてやりたかったんだ」 「オレ様は繋がり生かされてるのか?」 「そうだ!おめぇの中には九曜海路の血が受け継がれてる その目で確かめて来い!」 隼人は康太に背中を押されて九曜海路の側に行った 海路は隼人も抱き締めた 神野と隼人を抱き締めた 「隼人、晟雅、お前達の罪は我も持とう だから仲良く生きて行け 柵の向こうを行け そすれば人は繋がり、その先へと逝ける 人は許した先に、道は出来る 炎帝が我に贈ってくれた言葉じゃ 炎帝と共に……何所までも逝かせて貰え 我は何時もお前達を想っている」 神野は言葉もなく海路に縋り着いて泣いた 隼人も言葉もなく海路に抱き着いて泣いた 一頻り泣くと、清々しい気分になった 神野は隼人を抱き締めた 「カタチは何だって良い… お前は俺にとってかけないのない存在だから…」 神野は…言えなかった台詞を、やっと言った 隼人は神野の背を抱き締め 「神野…お前とは兄弟だと最近特に想う こんな近くに兄がいて…オレ様は幸せだ…」 菜々子を亡くして… 気を遣い、護ろうとした神野の存在が… 康太の次に嬉しかった 総ては康太が1番だが… 神野の存在も捨てたもんじゃない…と想っていた 神野と隼人は互いを見て 海路を見た 確かな繋がりがそこに在った 海路は四季と神野と隼人をもう一度抱き締めた 「繋がりし子達よ!」 4人は何時までも… 分かち合い…確かめていた 小鳥遊は、それを見ていた 康太達は部屋を出て行き動き出した 聡一郎の髪は戻っていた 「髪も戻りましたし、動きますか?」 「おう!地元の建設会社に御礼に行かねぇとな!」 康太達は別室に入るとソファーに座った 康太は携帯を取り出すと何処かへ電話を入れた 榊原は皆にお茶を入れに立ち上がった 一生と慎一は康太の腹を満たすべく調達に出掛けた 「飛鳥井康太です。 お久し振りです」 電話の向こうでは康太の電話が相当嬉しいのか 『康太!本当に康太ですか!』 と叫んでいた 「少し頼みがあるのですが…」 『良いですよ!師匠! 貴方の頼みなら、何でもお聞きします!』 「蔵之介は速水建設とは親しいとお聞きした」 『………速水建設……ですか? 代替えした今は全然です』 「でも効果は大きいと想うんですけど?」 『ええ。効果抜群ですよ?まだ! 先代は他界した訳じゃないですからね』 「ならば、白馬に来て力を貸して下さい!」 『急ですね……貴方は何時も……』 「それがオレだからな!」 と言い康太は笑った 『解りました! 速水建設の先代を拾って白馬に行きます! 着いたら御連絡します!』 と言い佐々木蔵之介は電話を切った 榊原は「佐々木さんですか?」と問い掛けた 「おう!勝機が来てるからな、こんな近くに速水建設に打って出る材料が転がっていた」 材料を手繰り寄せるのは貴方でしょう… と、榊原は心の中で呟いた 「では、腹ごしらえですね! 一生達が調達に出てます 帰って来たら食べましょう。」 榊原はそう言い康太と聡一郎の前に紅茶とお菓子を出した 自分の前にお茶とお菓子を置くと、静かに紅茶を味わっていた 聡一郎は「美味しい!」と感激して紅茶を飲んでいた 「でしょ?この前通販で見付けて買ったのを持って来ました」 怪しげなグッズを購入した後に見ていた買ったのだ 榊原の通販好きは健在だった 聡一郎は気にする事なく 「お茶は美味しいし動きたくありませんね」 とのどかに言った 「ええ。こんな時間は貴重ですね」 優雅にティーソーサーを持ちながら紅茶を飲んでいた 康太は茶菓子に食らい付いていたら

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