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第42話 待つ②

熱が冷めると榊原は康太に声を掛けた 「起きて、何か食べに出ますか?」 康太は頷いた 榊原はベッドから下りると康太を抱き上げ浴室へと向かった 中も外も綺麗に洗ってシャワーを浴びた 浴室から出ると康太の支度をして、榊原も支度をした 支度が整うと部屋から出た 部屋から出ると一生が 「ホテルの方に力哉が来てるぜ」 と告げた 康太は榊原を見上げた 「……う~メシ……」 康太の視線を受け…… 「一生、デリバリで良いです 何か持って来て下さい!」 「食う前に犯るからでっしゃろ……」 一生は少しだけ愚痴を言った 榊原は苦笑した ホテルに向かうと飛鳥井の部屋のフロアに力哉が座っていた 力哉は康太の姿を見付けると飛び付いた 康太は力哉を抱き締め 「悪かったな……」 と、背中を撫でながら言葉をかけた 力哉は首をふった 「逢いたかったです……康太……」 力哉が訴える 康太が還って来ても…… 逢えなかった 任された仕事を……目処を着けねば…逢えない 自分を律して力哉は耐えた メールを打てば 『君の場所へ還りたいです……』 と何度も打ってしまい……消した 電話をしても……還りたい……と訴えてしまいそうで…… 電話を我慢した 耐えて 我慢して 力哉は与えられた役目を完遂する為だけに踏ん張った 力哉にとって、この世で唯一無二の存在は康太だけだから…… 役に立つ為に生きている それだけを心の支えに…… 力哉は踏ん張った 「力哉、メシ食ったか?」 力哉は首をふった 康太は力哉を立たせると、自分の部屋に力哉を引っ張って行った 榊原は力哉の前に冷たいお茶を淹れた 「一生が今、何か調達してくるかんな! 少し待て、オレも腹ペコなんだ」 「康太がずっと指示を出してくれたから…… 一人でも遣り遂げる事が出来ました」 「暫く休んで一生とイチャイチャしてくれ!」 力哉は足元から鞄を取り出すと、分厚い書類を康太の前に出した 「総て君の想いのまま整えて来ました」 飛鳥井康太の秘書の顔をして力哉は謂った 康太は「仕事は終わったかんな、暫しゆっくり過ごしてくれ!」と労を労った 「康太、花火がしたいです!」 力哉は康太に少しだけ我が儘を謂った 「一生は?」 「…………後で良いです どうせ一生も康太の側を離れないでしょ?」 康太は力哉の言い草に笑い 「花火しょうな! 後で買いに行こうぜ!」 「悠太は? 帰って来ましたか?」 「おう!帰って来たぜ! オレが今……構えねぇ状態だかんな…… まだ顔は合わせてねぇけどな……」 康太は力哉に渡された書類に目を通して話していた 「花菱は起動に乗ったか ‥花菱組も活躍してるみてぇだな」 「ええ。君の描く先に逝けてますか?」 「おー!バッチしだ! 通販もトナミの倉庫をフル活用して動いてるな」 「はい。総て整ったので還って来ました!」 力哉は自信に満ち溢れた顔をしていた 「康太はもう夏休みですか?」 「須賀が今……気が抜けねぇ状態だからな…… 何かあったら動かねぇとならねぇな‥‥」 「今回の契約や事業の立ち上げ等、相賀さんが須賀さんの穴を埋める如く動いてくれました」 「そっか……悪い事したな……」 「総て軌道に乗りました 若旦那も契約の席に着いて下さり 莫大な荷物を運び込める倉庫を確保しました 花菱デパートのブランドを高める為に記者会見も開きました 舞台装置やデパート内のショーウィンドーは統べて道明寺豪が手腕を発揮して作っています」 「そうか。 なら力哉もう帰ってこい!」 軌道に乗せるには、康太は多忙すぎた それで総てが軌道に乗るまで力哉を康太の名代として派遣していた 力哉は康太に抱き着き 「………やっと帰れます……」 と、泣いた 魔界へ行く前に力哉を派遣した 力哉は康太のスケジュールの管理をやりつつ 花菱デパートの再生に日々費やしていた 康太の命を受けたのだから…… 下手な仕事は出来ない…… 道明寺が用意した部屋で連日缶詰に合い 打ち合わせに奔走した 康太は力哉の涙をペロペロ舐めた 一生が料理を運び込み、榊原が康太の朝食を取り分け食べさせる 力哉の前にも取り分けて 榊原は力哉の頭を撫でた 「食べなさい力哉 モリモリ食べないと倒れちゃいますよ」 榊原に言われ力哉は 「康太の盲腸は…大丈夫なのですか?」 と問い掛けた 康太は力哉の顔を見た 「誰から聞いた?」 「一生です ……それ以前に……あの記者……」 力哉は悔しそうに泣いた 「泣くな力哉 飯が塩辛くなる…」 「だって……康太……」 『何でも見えるんでしょ? その目で何で助けられなかったんですか?』 悔しくて……力哉は… 帰ろうと思った その時……一生からメールがあった 『絶対に帰って来るな! 康太は会見の後倒れた 盲腸で入院中だ! 一番悔しいのは旦那だ…… 力哉……堪えて仕事を完遂しろ』 とメールがあったのだ 力哉は康太に一生からのメールを見せた 康太はそれを見て……榊原に渡した 榊原は………静かに見て……聡一郎に渡した 「恋人へ送るメールじゃねぇな」 康太はボヤいた 榊原も聡一郎も、うんうん!と頷いた 「オレはもう大丈夫だ!」 「なら良いです!」 力哉は静かに食事をしていた 「…………康太、慎一を動かしてます?」 「あんでだ?」 「新潟に行った時、慎一を見ました 慎一は僕を見てましたが……誰かと一緒で… 何処かへ行ってしまいました」 「おう!今慎一はオレの用で動いてる オレが動けれねぇかんな……」 「康太は的確に指示を出してくれます 離れていても、僕の動き易い様に指示を出してくれた だから凄く動きやすかったです きっと慎一も貴方の想いのまま動くと想います」 康太は力哉を撫でた 「あと半月、オレは白馬を出ねぇ 力哉も白馬にいれば良い」 「そうします。」 「オレもな少し休むわ! ずっとPCと向き合って過ごしたかんな! まだ手放せねぇけどな、今日は花火をやるからな、楽しむ事にする!」 康太はそう言い伸びをした そして思い立った様に部屋を出て行った 「旦那、良いのかよ?」 「ええ。戻って来るから支度をしますよ」 榊原はラフな白い綿のシャツに着替えた 一生と聡一郎も着替えに行き 力哉は躊躇した 「力哉、待ってなさい 一生が君の着替えを持って来ます」 白馬に行く前には力哉はいなかった 一生が力哉の着替えを荷造りして持って来ていた 暫くして一生が力哉の着替えを持ってきた その時康太が清四朗達を連れて部屋に戻って来た まだ着替えなかった力哉を見ると、康太は力哉を脱がし始めた 力哉の上に乗って……脱がず様子は…… 淫靡で…目のやり場に困った 聡一郎は康太を持ち上げると榊原に渡した 「この子がやると卑猥で仕方がない」 とボヤいた 笙は榊原から康太を奪うと…父親に渡した 「清四朗さん花火をするかんな!」 「楽しみですね! 私は線香花火がやりたいです」 「悠太と一緒に楽しんで下さい」 「え?悠太と? 悠太は線香花火好きなの?」 「アイツは線香花火しかやりません 悠太を育てのはオレです… アイツは親の謂う事を聞いて花火と言えば……線香花火しかやらねぇ奴にしちゃいました」 「なら今年は悠太は大きいのにレベルアップだね」 清四朗は笑った 皆でホームセンターに行き、花火を大量に買い込んだ 夕方は、皆で流しそうめんを食べに行った 康太の所まで流れて来ないと…… 店の人に山盛りそうめんを貰い……康太は食べた 瑛太は「…………流れてませんよ?」とため息をついた 清隆は「……腹が膨れれば、過程はどうでも良いんですよ」とフォローをする 清四朗は「……清隆、フォローになってません…」と清隆にツッコミを入れた 玲香も山盛りそうめんを抱え食べていた 流れて来るのを待つより…… 食いたい派だった 源右衛門は「似た者親子じゃ」と笑った 康太と玲香は仲良く、チュルチュル食べていた   真矢はその仲間に入るべく山盛りそうめんを貰った 「流れて来るなんてまだるっこしい」 と真矢は言い、チュルチュル食べ始めた 榊原は康太の横に行き、山盛りそうめんを少しだけ貰って食べた 一生達も…待つのが馬鹿らしくなって…… 山盛りそうめんを貰って食べ始めた 一生は瑛太にも山盛りそうめんを渡した 皆して、流れて来る方に見切りをつけて…… 山盛りそうめんを食うあたり…… 風情とは程遠い…… 「あ~沢庵食いてぇ!」 康太は叫んだ 榊原は 「夕飯は僕が作ります! そしたら沢庵を食べさせてあげます」 とついつい甘やかして言ってしまう 「沢庵!」 ウキウキ、そうめんを啜る そうめんを食べ終わると、皆で花火を買いに行った ワイワイ花火を買い選んで買う そして大量に線香花火も買った 悠太の為に、手持ち花火も買った 清四朗は「これは悠太の分ですよ」と悠太に言った 「え……俺…線香花火……」 「線香花火は卒業しなさい!」 清四朗は楽しげに言った 「…………夏は線香花火しかやらせて貰えなかった」 悠太は呟いた 康太はバツの悪い顔をして… 「オレはちぃさいからな……手持ち花火は足に掛かるんだ だから夏は線香花火しかやらなかった」 と白状した 一生は、そうだったな!と爆笑で 聡一郎は、地味な夏でしたね!と腹を抱えた 清四朗は悠太を抱き締め 花火を終えても康太は皆といた 瑛太は「この後、どうなさるつもりなんですか?」 と問い掛けた 「寝る!」 「…………伊織とのエッチの予定が?」 「エッチは朝から抜かずに頑張ったかんな! 一生を構って寝ようかと思ってる」 朝から抜かずに……… もう頑張ってらしたんですね…瑛太は苦笑した 「雑魚寝しますか?」 瑛太が言うと康太は榊原を見た 「………被害が出ますよ?」 「構いません! 悠太もいます 力哉もいます 和室二つを開け放ち 布団を敷けば寝られない訳ではない」 「なら、寝るかんな!」 康太は楽しそうに言った 和室を開け放ち布団を敷く 榊原達がせっせと動く中、悠太も働いていた 布団を敷くと皆布団に寝っ転がり、電気を消した 康太は携帯でゲームをしていた 一生は覗き込み 「fgoやってるのかよ? あっ……お前マーリン持ってたんだな」 と呟いた 「課金してるからな!」 と、一生を止めた 「何時から始めたのよ?」 「伊織がゲーム全般やってると勝手に切っちまうかんな 携帯でちまちまやってんだよ マーリンはめちゃくそ欲しくてな、でも出ねぇから、課金したんだよ 宝具を5にしようともっと課金しようとして……伊織にバレた」 「幾ら注ぎ込んだんだよ?」 「………短期間で30000……」 「そりゃあ怒られるわな」 「伊織はゲームにも妬くかんな!」 ブツブツ言いながらやってると、榊原にポチッと切られた 「………あ~伊織……」 「目が悪くなりますよ」 「…………一生……鬼だ……」 「だから旦那は鬼だと言ってるでっしゃろ?」 康太はうんうん……と頷いた 静まりかえった部屋が闇に包まれる 康太は、すんすん……と泣きながら… 榊原に縋り付いて寝た 榊原は康太を強く抱き締めた 静まり返った部屋に虫の音が鳴り響いた 夏の終わりを告げてる様に 虫は綺麗な音色で鳴いていた

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