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第43話 再生 ①
翌朝、被害者はゼロだった
康太は榊原の胸に納まり寝ていた
榊原の服を握り締め、胸に縋り付き眠っていた
目を醒ました一生は想わず
「今日は子猫の様ですがな…」
と零した
榊原は苦笑して康太を抱き締めた
清四朗も目を醒まし息子を見た
「本当に……今朝は子猫の様に愛らしい…」
と榊原の胸に収まる康太を見た
真矢は「可愛いわ!」と微笑ましい姿に喜んでいた
笙も「改めて見ると君達は誰よりも夫婦ですね」と新婚の抜けない弟に……言葉を掛けた
服を握ってた康太が、伊織…と首に腕を回した
「どうしたんですか?」
「伊織、伊織……」
康太が縋り付く
榊原は体を起こすと、膝の上に康太を抱き締めた
「康太」
榊原が康太を落ち着かせようと声をかける
康太は震えていた……
「一生、安定剤を」
榊原が言うと一生は薬を取りに行き、薬と水を汲んで来た
「口の中に入れて」
榊原が康太の顔を上げた
涙で潤んだ康太の口を開かせ、錠剤を口の中に入れた
それを見届けて榊原は口に水を含み、康太に接吻した
ゴクン……と康太が錠剤を嚥下する
すると水を一生に渡した
そして康太を、抱き締める
優しく頭を撫でて、落ち着かせる
家族は………何が起こったのか解らなかった
一生は小声で家族に説明した
「康太を襲った事件は皆さん知ってますよね?」
「康太の部屋に押し込まれた……事件ですよね?」
瑛太が苦しげに一生に問い掛けた
「FlashBackですよ
脳が……時々、忘れられない傷を思い浮かばせる
そうすると康太は震えて……あぁなります」
切り刻まれ…
殴打され
一時は記憶喪失になりかけた
恐怖は……計り知れない
忘れたとは想っていなかった
だが、康太が飄々としていたから……
乗り越えたのかと想った
乗り越えれる……訳ないのに……
清四朗は顔を覆った
瑛太は「医者には?」見せてるのですか?と問うた
「定期的に病院には行ってます
薬も貰って来てます……
カウンセリングも受けてます………」
一生が苦しげに語った
「それらを一手に引き受けてやってたのは慎一です」
こんな状態になる主の側を側を離れるのは……
断腸の思いだったろう……
それでも慎一は主に言われれば
主に応える為に寸分違わず動くだろう……
「俺は知りませんでした……
慎一が此処を出る時、俺に薬を託して行きました
その時……初めて知りました
それまでは旦那と慎一しか知りませんでした」
一生は悔しそうに呟いた
隠していた訳ではない
それでも逝かねばならないのだ
恐がって怯んでも
自分を奮い立たせて……康太は逝く
明日の飛鳥井を築く為
康太の歩みは止まらない
それを支えるのは……榊原伊織
そして康太に仕える緑川慎一
影のように康太に仕える男なれば……解る事だった
榊原は康太を落ち着かせ、撫でていた
「伊織、もう大丈夫だ……」
「もう少し撫でたいので、こうしていなさい」
「ん。伊織、愛してる」
「僕も君だけを愛してます」
「伊織にしか触られたくない……」
「僕しか触りませんよ!勿体ない
誰も僕の康太は触らせません!」
榊原はそう言い康太を強く抱き締めた
康太は榊原に胸に顔を埋め……
愛する男の匂いを嗅いでいた
愛してる
この命を懸けて
愛してる
「………伊織……怖かった…」
「僕がいるからもう大丈夫です」
康太はうんうん…と頷き榊原の服を握り締めた
落ち着きを取り戻すと、何時もの康太だった
「僕がいます!」
「伊織、もう大丈夫だ」
「無理しなくて良いですよ?」
「落ち着いた……お前がいればオレは闘える」
だから大丈夫
なくさないのなら大丈夫
立っていられる
歩いて行ける
「お腹減ってませんか?」
「…………要らない」
「食べないと闘えませんよ?」
「今食べると吐く……」
「なら後で食べますか
康太の好きなのを作ってあげますよ」
「ん。」
「それか寝ますか?」
「…………いやだ……」
「僕がいます
恐がらないで…」
康太は指が白くなるまで…榊原の服を握っている
時間を掛けて落ち着かせる
一生は飛鳥井の家族と榊原の家族を応接室に移動させた
「着替えられるなら、着替えを先にどうぞ!」
聡一郎が家族に声をかける
康太が気になって……
動かない家族に
「康太の事は伊織がする!」
と言った
慎一がいれば慎一がやる
今はいないから……榊原がやる
家族は着替えに向かった
一生はソファーに座ってため息をついた
「慎一 どこにいるんだろ?」
想わず呟く
離れたくないだろうに……
聡一郎はソファーに座る一生を背後から抱き締めた
「慎一を動かしてるのは康太ならば…
あの男は完遂するまで……歯を食いしばり…
堪えている……だから……言うな一生……」
「聡一郎……」
口に出せる程軽い想いじゃない……
解っている
解っているが……
「慎一は俺の兄さんだからな……」
この世で唯一血の繋がった兄弟
一生は父を憎んだが……
その父が慎一を一生に遺してくれたと想えば…
この世の天涯孤独になる淋しさから開放された
慎一の存在は大きかった
知らないうちに慎一に甘えていたのか?
「康太がくれた君の肉親ですからね……」
一生は何も言わず……聡一郎の腕に顔を埋めた
聡一郎は一生を抱きしめて旋毛に顔を埋めた
その光景を着替えて来た家族が見た
力哉と悠太が見ていた
絶対の信頼がそこに在った
割り込めない友情が……そこに在った
瑛太は、ソファーに座った
続いて飛鳥井の家族も榊原の家族も座った
康太と榊原の座る席だけは……空けて座った
聡一郎は「少し見てきます」と言い席を外した
悠太はそれを目で追った
一生も「布団を畳まなきゃ」と言い応接室を出て行った
力哉もそれを目で追い……諦めた様に……瞳を閉じた
和室に行くと康太は起きていた
「もう良いのかよ?」
と一生が問い掛けると
「おう!心配掛けたな!」
康太はそう言い笑った
何時もの康太の顔だった
榊原は布団を畳んでいた
一生も聡一郎も手伝って、布団を畳み始めた
「一生、今日は隼人が来るぞ
夏休み返上で仕事してたらしいからな…」
朝一番のメールのチェックをしてたら、神野からメールが来た
一生は布団を畳み、甲斐甲斐しく動いていた
「隼人が帰るのか……
タイミング悪くねぇ?」
「………だな。
神野に……も少し面倒見させてとくか?」
康太が呟くと聡一郎が
「隼人は何が何でも来ると想いますよ……」
と隼人を想い言った
榊原も布団を畳み終えて康太を持ち上げ
「隼人ですからね」と言った
一生は「まぁ…何とかなるだろ?」と呑気に言った
「一生」
「力哉と少しは過ごせ!」
康太に言われ……恋人を蔑ろにし過ぎだと反省した
「解ってる
時間を作って過ごす」
一生の答えを聞き聡一郎を見た
「聡一郎、おめぇもな
少しは悠太を構ってやれ」
聡一郎はバツの悪い顔をして
「解りました!
夜は悠太と過ごします
他の時間は康太から目を離す気はないです」
と、しれっと答えた
「聡一郎、一生
お前ら少し恋人のフォローに行け
でねぇと見放すかんな!」
康太は言った
聡一郎は立ち上がり
「悠太を満足させれば良いんですね!」
と駆けて行った
一生も肩を竦め
「力哉を満足させれば良いんだよな?」
と言い駆けて行った
康太は腹を抱えて笑った
康太のPCが新しいメールの合図をすると
康太はPCを開いた
そして嬉しそうな顔を榊原に見せた
榊原もPCを覗き込むと……
「良かったですね」
と康太を撫でた
康太は榊原と応接室に行くと、そこには力哉と悠太の姿はなく
当然、一生と聡一郎の姿もなかった
康太はソファーに座り
「メシ食おうぜ!」
とニカッと笑った
瑛太が
「………一生が力哉を、聡一郎が悠太を連れて行きましたが…?」
と問い掛けた
康太は笑って
「サービスしろと発破をかけたかんな!」
と榊原に抱き着いた
瑛太達は成る程……と納得した
榊原が笙に康太を預けた
「僕は朝食を作って来るので
兄さん、康太を見ていて下さい!」
榊原はそう言いキッチンに向かった
玲香と真矢が手伝う為に着いて行った
ついでに清四朗も支度をしに和室に向かった
瑛太も清隆も、清四朗の手伝いをすべく和室に向かった
笙は康太を抱き上げ抱き締めた
「もう、大丈夫なの?」
「……一時的なものだ……気にしなくて良い……」
「気になりますよ……」
康太は笙の胸に顔を埋めた
流石兄弟だけあって体臭が似ていた
そして笙の首にネックレスがなくなってるのを……確かめた
「笙……」
「何ですか?」
「誰よりも幸せになれ…」
笙は康太を強く抱き締めた
「幸せですよ僕は」
「もっとだ!
もっともっと!幸せになれ!」
笙は笑って「はい。なります」と言った
愛を知れば……
その愛の先の……幸せを感じる
自分の血を分けた子を手にすれば
もう二度と離したくない……と笙は変わる
康太はそんな必死の笙が見たかった
何処か余裕で生きている……
そんな榊原笙など見たくはなかった
余裕なんかじゃない
何も持たないだけなのだ
何も持たないから……
笙は……
幸せが解らない
形振り構わず欲しがれ……
そしたら……道が切り開かれる
榊原笙と言う役者の領域が広くなる
そんな男になれ……と康太は願っていた
榊原が食事を作り、応接室にやって来ると
康太は笙の胸に顔を埋めていた
榊原はバリッと康太を引き剝がした
「康太、君の愛する男は僕だけですよ!
さぁ、僕に抱き着きなさい!」
康太は笑って榊原に抱き着いた
笙は呆れて……
「焼きもちですか?」
と、弟に問い掛けた
「ええ。愛する男は嫉妬深いのです」
榊原はそう言い康太の唇にキスを落とした
そして笑顔で和室へと向かった
笙は呆れて……
それでいて羨ましかった
こんなに人を愛せる弟が羨ましかった
形振り構わず……
人を愛した事がない
…………命を懸けて護りたいモノがない……
笙はやっとそれに気付いた
笙が和室に行くと、皆 食事をしていた
康太の前には和食が並んでいた
そしてテーブルの中央には珈琲とサラダとクロワッサンが並べられていた
「これ……伊織が作ったの?」
笙は想わず聞いた
玲香は笙に
「伊織はかなりの料理の腕前でな、お節も作るのじゃ」
とさらっと言った
「……お節……」
「康太の食べるモノには手は抜かない
康太の歩く所は掃除は欠かさない
誠、夫の鏡だと我は何時も感心しておる」
玲香がしみじみ言うと……
出来ない瑛太と清隆は肩身が狭かった
真矢は
「料理だけは…我が夫、清四朗に似たのかしら?」
と呟いた
清四朗は妻のためなら料理も作った
掃除は……苦手だが……
料理は得意だった
ポリポリ康太の沢庵の音が響く
笙はテーブルの上に置かれた……
真っ黒の塊を見付けると
「これは?」と尋ねた
応えたのは清四朗だった
「一生スペシャルですよ!」
と、楽しく答えた
「美味しいんですよ」
清四朗は笑顔で、美味しさをアピールしてた
笙は「……誰が食べるのですか?」
と言い……この場にいない一生達を思い出した
「一生達が頑張って恋人を満足させて帰って来ますからね……」
と榊原は嗤った
「………二発が妥当でしょ?
もうじき帰って来ます」
悪魔のような……嗤いだった……
二発が妥当……
二発すれば立派だと……笙は心の中で想った
食事を終えると康太が
「母ちゃん、食事を終えたらじぃちゃんを映画に連れて行ってくれ!
そしてショッピングモールで買い物して一日じぃちゃんに付き合ってくれ!」
と頼んだ
玲香は笑顔で
「解った!我も源右衛門とは初めて買い物に行く
映画も初めてじゃ……想い出を沢山作ろうぞ」
としみじみ語った
「じぃちゃんは家族と距離を取り過ぎた
そろそろ家族と色んな事をしねぇとな!
清香の願いでもある……叶えてやってくれ」
「解っておる!
お盆が過ぎれば来週からは会社に行く
今はレストランと託児所は会社から離れておる
中々顔を見る事も少なくなる
その前に家族で過ごす時間を作って参る」
「父ちゃんや瑛兄も、行く
清四朗さん達はどうします?」
清四朗は康太に問い掛けられ
「康太は?」と聞いた
「オレはこの夏は仕事を白馬まで持って来ている
だから、この後は部屋に行き籠もる
あと少し……気を抜けねぇかんな!
今年は……本当に悪かったと想ってる」
「明日の飛鳥井へ繋げて行く為です
仕方がないです!
なら私達が康太に変わって、源右衛門と過ごします
康太は気にしなくて良いです!」
清四朗の心遣いは優しかった
康太の負担にならないように……言葉をくれた
「清四朗さん」
「何です?」
「今晩は、隼人が来ます
あの甘えん坊の長男が帰って来ます」
「なら出迎えないとね
夜遅くはなりません!
楽しんできますね」
「お願いします」
康太は清四朗に頭を下げた
清四朗は、それを止めた
「何か欲しいモノは有りますか?」
「冷たいアイス!
伊織はあんまし食わしてくんねぇ……」
「君の体躯を想ってです…
許してあげて下さいね」
康太は頷いた
「伊織」
清四朗は息子に声をかけた
「何ですか?父さん」
「私が買って来たアイスは文句は言わせませんよ」
何処までも……康太に甘い父だった
「父さん……3個以上は……止めますよ?」
3個以上は……清四朗は、絶句した
「康太は、10個でも平気で食べます
そしたらご飯がアイスに化けます
それはさせたくはないのです」
「3個以上は止めでも良いです……」
清四朗は脱力した
瑛太はそれを見て笑っていた
支度をして飛鳥井の家族と榊原の家族は源右衛門を連れだって出掛けた
康太達はそれを見送り、ホテルへと向かった
暫くすると一生が、康太の部屋のドアをノックした
すると正装した榊原が出て来た
部屋の中に入ると、正装した康太がいた
一生は「何処かへ行くのかよ?」と問い掛けた
「一生、お腹減ってるでしょ?
作ってあるので聡一郎と一緒に食べなさい」
榊原は笑顔で一生に言った
一生は怒って
「おい!何処へ行くんだよ!」
と怒った
「長野駅に行くんです
君達はお留守番です」
駅に皆で行けば目立つ……
「あんで駅に行くんだよ!」
榊原は怒りまくる一生に軽くキスして
「大人しく待ってなさい!」
と、言った
「康太、時間がないです!」
榊原は康太をせかした
康太は一生に抱き着き
「少しだけ待っててくれ!」
と言った
一生はふて腐れた
「待ってろと言うなら何年でも俺は待つさ」
と言った
康太は笑って一生の頭を撫でた
そして慌ただしく部屋を出て行った
聡一郎が部屋へと向かうと、康太と榊原は慌ただしく部屋を出て行く所だった
聡一郎は黙って康太と榊原を見送った
そして部屋へと入るとふて腐れた一生がソファーに座っていた
まるで飼い主に置いてきぼり食わされた……犬みたいに萎れていた
「一生、拗ねないの…」
聡一郎が声をかけると、一生は榊原が握った一生スペシャルを聡一郎に、差し出した
「………力哉と話してキスして来たら……置いてかれた」
「エッチは?」
「夜まで待ってください……って言われた
でも直ぐに戻ると康太が怖いからな…話してた
こんなんなら直ぐに戻れば良かった……」
聡一郎は呆れて……
「二発位…頑張ったのかと思いましたよ?」
と嘆いた
一生はふて腐れて聡一郎に
「お前はどうだったんだよ?
悠太を満足させて来たのかよ?」
一生に聞かれて聡一郎は黙った……
「悠太は今 製図を引いてます
一心不乱に……兄に捧げる図面を引いてます
僕が行くと……少しだけ休憩してキスしただけで……
図面をひき始めました……
………誘ったのに……悠太には効きゃあしねぇ!
無駄な体力使うんじゃなかった……」
「俺もなズボン脱がして頑張ったんだが……張り倒された」
「………君もですか……」
「僕も服まで脱いだのに……」
一生と聡一郎はため息をついた
「なぁ聡一郎、俺らって愛されてねぇな?」
「………愛されてませんね……」
「仕方がないですよ
お互いが康太が一番ですからね
僕は今まで悠太を構わなかった
君も力哉を構わなかった
康太に言われて構いに行っても……ね
はいそうですか……と勃起はしないと言う訳ですよ」
聡一郎は諦めの境地で言った
「…………流せる自身はあった……んだがなぁ……」
「僕も……その気にさせれる自身はありましたけどね……」
幾多の恋を経験して、泣かせた相手は数多かった
誘えば乗らない相手はいなかった
「俺さ…最近ゴムすら持って歩いてねぇぞ…」
一生がボヤく
「僕もね…臨戦態勢必要ないですからね……
最近は勝負下着……はいてませんね…」
と聡一郎が嘆いた
「ナンパしてやろうかな?」
このままでは男の尊厳が……
「康太が何時帰って来るか解らないのに?
ナンパに出れますか?」
「………うっ!………痛い所を!」
「辞めときなさい
挿し込んでる最中でも康太が呼べば
抜いて駆け付けるんでしょ?」
聡一郎が笑う
「うるせぇ!お前だって……そうだろ?」
「そうですね……挿れられてても……薙ぎ倒して行きます」
「………俺らって刺されても……文句言えねぇじゃんか!」
「……ですね」
「聡一郎、途中だったからな、こっち来いよ」
「犯りますか?」
「ヌく!二本合わせて抜くか!
後ろ欲しいなら丁度挿れてやんぜ!」
「では、久々に君の味を味わいますか
こう言うのを近親相姦って言うんですよ」
聡一郎は笑って服を脱いだ
一生はズボンの前を寛げると…中から性器を取り出した
「ズボン脱いで俺の上に跨がれよ」
「………ちゃんと解して下さいね!」
「おう!任しとけ!」
一生はそう言うと舐めて濡らした指を
聡一郎のお尻の穴に挿し込んだ
じっくりと解して行く
こうして一生は聡一郎を繋ぎ合わして来た
「どうよ?柔らかくなったな…」
「はぁ……んっ……シツコイよ一生……」
聡一郎の足を開かせ、舐めて解す
乳首を摘まんで弄る
二カ所同時にやられれば……聡一郎の体躯にも火が点く
聡一郎は一生の上に乗ると……
一生の肉棒の上に腰を下ろした
激しく腰を使い……一つに溶け合う
聡一郎は一生を抱き寄せ噛みつくキスをした
互いの熱を放出しても……何度も求め合い……
狂った様に互いを抱いた
熱が冷め……聡一郎は怠そうに腰を上げた
ズルッと一生の性器が抜け……
精液が溢れて来た
「一生、僕を綺麗に洗いなさい」
「怠い……聡一郎、俺を洗え」
「嫌です!何で挿れさせてやって、何で君を洗わなきゃならないんですか?」
「仕方ねぇな
洗ってやるから、洗ってくれ」
「それなら手を打ちましょう!」
聡一郎は一生をバスルームに引きずって行った
浴室で聡一郎の中から精液を掻き出し洗ってやる
聡一郎は一生を洗ってやった
「何か……二人でオナニーしたみたいですね」
セックスと言うには……愛は深すぎる
「まぁ昔は寝てたやんか」
「ですね。僕を繋ぎ合わせる為に抱いてた時は必死でしたよね?」
「………今もお前に触るのは必至だぜ!
だから最近稀に見る程頑張ったつもりだぞ!」
「一生、愛してます」
「俺もなおめぇを愛してんぜ!
お前をこの世に繋ぎ止めた責任があるからよぉ」
「僕は幸せですよ
康太がいて君がいる
そして皆がいて悠太がいる」
「俺も幸せだぜ
康太がいておめぇがいる
皆もいるし力哉もいてくれる」
「…………恋人が一番に上がらないのが……
僕達らし過ぎますね」
聡一郎は笑った
「だな……」
浴室から出て部屋の掃除をする
そして榊原が作った一生スペシャルを食べた
康太は長野駅にいた
部屋で始めた一生と聡一郎の姿を脳裏に映し
康太は笑った
横にいた榊原が訝しんで康太を見た
「どうしました?」
「一生と聡一郎が部屋で犯ってる」
康太は楽しそうに言った
榊原は思案して……
「犯る相手……違いませんか?」
と問い掛けた
「恋人を誘ったけど乗らなかったらしいからな…
一生は聡一郎を抱いた
恋人と犯る時以上の頑張りでな」
「聡一郎を抱いて繋ぎ合わせたのは一生ですからね…」
あの二人には……割り込めない愛がある
互いに走れば……他は負ける
「まぁ、オナニーと変わらねぇ行為だ
互いに行けば……破滅しかねぇかんな」
「破滅?」
「アイツ等は何も欲しがらねぇからな…
子供の頃に欲しがる事を諦めた
そんなアイツ等が求めあえば……互いを雁字搦めに際限なく求め合う……だから二人は距離を持つ
あの二人は……誰よりも愛し合い……
互いを壊し合った……
それが愛だと……言うかの様に……破滅に向かうんだ」
榊原は言葉もなかった
危うい均衡を支えて適材適所配置したのは飛鳥井康太だった
康太と言う枷が…
二人を引き留めていた
「それを一番解ってるのは一生だ」
「………一生ですか?」
「あぁ。一生は無くしたくない想いなら…
誰よりも強い…
聡一郎もな……無くしたくなくて…総て壊すんだ
あの二人は良く似てる
だから互いの事が手に取る様に解るんだ
そして手を取り合い破滅へと進むんだ……
何者も介入させず壊してゆく…試してゆく…
辿り着く先は破滅しかねぇだよ」
「…………哀しいですね…」
「…………愛……してるかんな…」
その愛を選択すれば……破滅しかないと言うのか……
「二人は……誰よりも弁え……
君を愛してますからね……」
「オレは伊織だけ愛してくれば生きて逝ける…」
「僕もそうですよ。
君だけ愛してくれば生きて逝けます」
康太は榊原を見上げた
愛に満ちた榊原の顔に……康太の胸は熱くなる
「康太、来ますよ」
「やっとか!」
……康太は呟いた
ホームに入って来る新幹線を……
康太は待ちかねて見ていた
新幹線がホームに入って来る
康太はドキドキとそれを見ていた
見知った顔が新幹線から降りて来ると
「慎一ぃ!」
と声を張り上げた
慎一は「………え?まさか……」と信じられぬ想いで主を探した
少し離れた所に康太は榊原と立っていた
慎一は康太の所へと歩いて行った
「お帰り……ご苦労だったな……」
康太が声を掛けると慎一は深々と頭を下げた
「貴方の想いのまま総て完遂して…
帰って参りました」
「……慎一、無茶言って済まなかった…」
「いいえ。貴方が動けないのなら俺が動くの必至
貴方の代わりに動けて良かったと想っています」
「ありがとう……慎一だから任せられた」
「………唯…俺は貴方が気になって仕方がなかった
………発作は……おきてませんか?」
慎一の問い掛けに……康太は榊原を見上げた
「今朝方…発作が起きたんですよ…」
「………っ!無理するから…ですよ…」
榊原は慎一の肩を抱き出口へと促した
そして駅を出て榊原の車へと向かった
康太は慎一と一緒に後部座席に座った
「貴史は予定通り堂嶋正義の所へ行きました」
「正義は何と言ってた?」
「『飛鳥井康太に頼まれれば、期待以上の仕上がりで返す気だ!返す時、逢いましょう!』と言う言葉を預かって来てます」
「そうか。貴史は行ったか」
「貴史も『お前のくれるチャンスだ!必ずや期待に応えて帰る』と言ってました」
康太は瞳を閉じ……頷いた
「ありがとう慎一
相手が堂嶋正義ならな……お前を差し向けるしかなかった…」
計り知れない……男の前に立たせる
隙あらば……漬け込まれる
そんな男の前に……一生は立たせたくなかった
一生は甘い
聡一郎だと……体躯を張りそうで……
適任は慎一しかいなかった
「気が抜けない男でした……」
「だろ?一生は行かせれねぇよな…」
「ええ。一生は弱点を隠さない……
アイツの弱点は貴方ですからね
貴方を守る為なら……堂嶋正義の駒にだって収まりそうですね」
「緑川一生は…喉から手が出る程に欲しい人材だろうからな……」
「堂嶋正義は言ってました
貴方の駒はどれも魅力的……だと」
康太は笑った
「駒じゃねぇ!
仲間だ!友人だ!
なくせねぇ大切な存在だ!
アイツは孤高の戦士だからな……貴史が解るだろう
孤高の戦士 兵藤貴史を育てるに十分な存在」
「俺は駒でも何でも良いです
貴方の側にいられれば……それで良い
俺が仕えるは飛鳥井康太、貴方だけです」
「慎一、腹減ってねぇか?」
「………減ってます
実際……気が抜けなくて食べた気がしませんでした」
慎一の言葉を聞き、榊原は
「ならレストランに向かいます」
と来た道の途中にあったレストランへと向かった
車を停め、レストランへと入って行き席に座ると
「何故…正装なんですか?」
と、慎一は問い掛けた
「お前が還って来るんだ
正装で迎えたかったんだ」
康太は、過酷な仕事を乗り切って還って来る慎一を、正装をして出迎える
それが主としての務めだと想っていた
「…………康太……堂嶋正義が愛し抜くのは……
少年だと……知っていましたか?」
「慎一に見せたのかよ?」
「…………見てはいけなかったのですか?」
「……嫌……アイツは警戒してる奴には見せねぇかんな
すげぇな慎一、おめぇはアイツの無条件の信頼を得てる……って事だ」
慎一は何も言わなかった
「政治家が……許されねぇ領域を守りながら…
堂嶋正義は貫いて行くんだ
愛を貫き……アイツは日陰に置かずに闘う
誠、見上げた根性だよな
孤高の戦士は死んでも護る為に生きてんだよ」
「康太、俺は貴方が心配でした」
「………お前は少し心配性過ぎんだよ」
康太はそう言い笑って慎一の頭を撫でた
「俺が心配するのは貴方だけですから!
本当に俺の寿命を縮める程に心配させまくりの主を想わぬ日はありませんでした」
「慎一、沢山食え!」
康太はニコッと笑う
そんな顔されたら……
文句も言えなくなる
榊原は康太と慎一を見つめ微笑んでいた
慎一を出して……平気な康太ではない
力哉を出して…平然となんてしていられない
でも、苦渋の決断をせねばならぬ時
康太は自分の代わりを出す
適材適所配置し……
違えず動く人間を配置する
食事を終えると、康太達は白馬のホテルへ向かった
「慎一」
「何ですか?」
「堂嶋正義の名前も貴史の名前も出すな」
「解ってます…一生は行く気満々だった
俺が変わって行ったとなると……怒るでしょ?」
「お前に甘えてんだよ」
「………可愛い弟ですからね……」
康太は腹を抱えて笑った
「可愛さが足らねぇのに?」
慎一はそれでも唯一の肉親として
「この世で唯一無二の存在
それだけで…アイツは愛しくて仕方がない」と言葉を紡いだ
康太は、慎一を撫でた
白馬のホテルの駐車場に車を停めると
車から降りた
車から降りた康太、慎一に腕を伸ばした
慎一が康太を抱き上げる
「……また軽くなられた?」
「気にするな!
こんなもんだろ?オレは」
笑う康太を部屋へとお連れする
康太と榊原の宿泊する部屋まで向かうと
榊原は部屋を開けた
一生と聡一郎はソファーに座って康太を待っていた
開けられたドアの方を見ると
榊原が立っていた
その奥から康太を抱えた慎一が姿を現した
一生は慎一に飛び付こう
………としたら康太の蹴りが飛んだ
「座らせろ!」
康太が言う
一生は仕方なく康太を座らせるのを待った
慎一は康太をソファーに座らせた
すると一生は慎一に抱き付いた
榊原は康太の正装を脱がして行く
「着替えますか?」
「………伊織、寝るわ…」
「疲れましたか?」
「おう!少し寝る」
「一生、聡一郎、康太は少し寝ます」
一生と聡一郎は部屋を後にした
榊原は康太の服を脱がせ
「何かありますか?」
と問い掛けた
「伊織、今夜少し消える」
「白馬から?」
「おう!瑛兄には言っておく
明日家族でラストを祝う」
「解りました。
何時……消えますか?」
「今 」
「着替えは要りますか?」
「要らねぇ……」
「スーツ?」
「嫌、ラフな服だ」
榊原は康太を着替えさせた
そして自分も身支度すると車のキーを持った
「慎一、一生達を頼みます」
榊原が声を掛けると慎一は
「解りました」
と深々と頭を下げ、康太と榊原を見送った
ホテルの駐車場まで行き、康太を助手席に乗せる
車を走らせると康太はメールを打っていた
「義兄さんにですか?」
「おう!瑛兄に言っておけば大体は押さえられる
一生達は慎一が何とかするだろ?」
「で、僕は何処へ行けば良いのですか?」
「義恭が静岡に来てる
静岡へまで行ってくれねぇか?
ナビに行き先を打っておく」
「義恭先生が……
須賀ですか?」
「おう!さっき携帯に連絡が入ってた
見に来て良いぞ……って
一生達を連れて大勢で行ける場所じゃねぇかんな
仕方がねぇ…」
康太はまた留守番で拗ねる一生を思い浮かべ‥‥溜め息を着いた
夕方になり一生は康太の部屋をノックした
すると部屋から慎一が出て来た
「え…………康太は?」
「主は何処かへ行かれました」
慎一の台詞に一生は興奮して叫んだ
「何処へ!何処へ行ったんだよ!」
「俺は解りません
伊織と二人であの後直ぐに出て行きました」
「何故!教えてくれなかった!」
一歩も引かずに一生が叫んだ
聡一郎が部屋へとやって来ると……
一生の怒りの原因をやっとこさ知った
「おめぇは今まで何処に行ってたんだよ!」
「俺を動かすは主の命令しかない」
「だから!何処に何をしに行ったんだよ!」
「それ言うと思うか?」
慎一は吐き捨てた
一生は……力尽きソファーにドサッと座った
その時一生の携帯が震えた
一生は…「…………」何も言わなかった
『一生か?』
「…………」
『夜遅くなっても帰るかんな。
良い子して待ってろ』
「………何で………今日は留守番ばっかしなんだよ……
もう……おめぇは……俺は要らねぇのかよ……」
一生の頬を涙がぬらした
『一生、要らねぇ訳ねぇじゃねぇかよ!
だがオレはお前らを置いてでも、逝かねばならねぇ時もあるんだ!』
「………康太……」
『今日はオレの部屋で帰りを待ってろ』
「待ってる……」
『昼間聡一郎と出し切ってれば…部屋に戻ると力哉の相手が出来るか解らねぇもんな』
康太は笑った
「………康太……俺らは踏み外しちゃいねぇ…」
『解ってんよ!
オレは関係者以外立ち入り禁止の場所に行く
だから連れて行かなかった』
「解ってる!解ってるから………
還って来てくれ……俺らの所に……」
『あたりめぇなことを言うな!
お前等がいて、伊織がいる
そして家族がいる
どれ一つだって欠かせねぇだろ?
だから八つ当たりをするな
良いな!良い子で待っててたら寝てやる』
一生は何度もうん…うん…と頷いた
電話を切っても一生は顔を覆っていた
慎一は優しく一生を抱き締めた
「…………すまねぇ…慎一」
「構わない……それが解ってたから主はオレを残された」
慎一はそう言い一生の頭を撫でた
「それより……聡一郎と犯るなら力哉を押し倒してらっしゃい
力哉は耐えて…踏ん張った」
「押し倒しに行ったら……相手にされなかったんだよ」
「今夜頑張れますか?」
慎一は一生と聡一郎を見た
「僕の場合……股開いてれば良いけど……
悠太が挿れても勃起しなきゃ……疑われるよね?」
「そりゃあそうでしょ!
自信喪失……しちゃうでしょうね」
聡一郎はガックシ肩を落とした
「今夜は……無理です……」
聡一郎が言うと一生も
「俺の場合…勃起しなきゃ力哉を満足させれねぇ…
今夜は……勃起は……しねぇかもな……」
と困り果て……言った
慎一は肩を竦め
「…………一生と聡一郎には誰も入り込めぬ絆と愛がある
口は出しませんが……不実だと怒っておきます!」
昔康太が……
一生も聡一郎も自分の体躯を武器に生きていた……
と言ってた
セックスは……そんなに重きがないのかも知れない
そんな二人が……互いしかなくなった時……
慎一は身震いした
康太は電話を切ってため息をついた
一生は暴動型だから……行き先も告げず行けば騒ぐと解っていた
解っていて置いても来た
康太は意識を切り替えた
慎一に任せたのだから……
榊原は康太の頭を優しく撫でた
「そんな顔しないの……」
榊原はそう言い信号待ちで停まると康太にキスをした
信号が変わり榊原の車が走り出す
康太は榊原の肩にもたれ掛かり瞳を閉じた
榊原の車がナビに導かれ目的地へと着く
一際目立つ白い建物の中に向かって榊原は車を走らせた
駐車場に車を停めると、康太は車から降りた
病院の中へ入って行くと榊原は病院のソーシャル受付へと向かった
連絡が入っているのか、病院の関係者が飛鳥井義泰のいる所まで案内してくれると言う
康太と榊原は病院の関係者に着いて行った
立ち入り禁止のドアを開けて奥へと進む
そこは静まりかえっていた
靴音が響く
コツコツ……歩く音が響く廊下を突き抜け
案内された部屋の前に立った
ドアをノックすると病室の中から飛鳥井義泰が顔を出した
飛鳥井義恭は無言で顎を杓った
康太と榊原は病室の中へと入った
そこには………須賀直人がいた
ベッドを起こして貰い
康太の方を見ていた須賀直人がいた
「…………須賀……」
康太は呟いた
須賀はニコッと笑った
顔は……大分治り見られる様になっていた
病院へ運び込んだ時は……
変形していた
「…………康太……」
須賀は康太の名を呼んだ
「オレが解るのか?」
「俺が貴方を忘れる事はない…
意識がない世界に……君の声が聞こえた
俺を助けてくれたのは……貴方でしょ?」
須賀……
康太は泣きながら須賀に近付いた
「康太……君に逢いたかった……
この世に未練はないけど……
君の力になれない自分は口惜しかった…
相賀と一緒に立ち上げるブランドに…参加出来なかった
俺は……君に会う前に……死にたくなかった……」
康太は須賀を抱き締めて……泣いた
「……須賀……もっと早く気づいてやれなくて…ごめん……」
「貴方は瀕死の俺を救って生かしてくれた…
また貴方に会えて……俺は幸せです」
須賀直人は……
気力で持ち越した……と義恭が言った
意識を取り戻してからは……奇跡に近い治りだった
と言った
どんな想いで……お前は耐えたんだ……
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