45 / 60

第45話 団欒

駐車場で待ってると、慎一が運転するレンタカーが駐車場に入って来た 車から降りて来る康太を待った そして康太を見付け飛び付こうとすると…… 隼人の妨害に遭った 一生が来るのを見越して… 一生の頭に空手チョップを見舞わせた 「痛ぇな!隼人!」 一生が吠える 隼人は知らん顔して笑っていた 「一生、お遣いに行かせてやろうか?」 康太は、一生に問い掛けた 「お遣い?」 「オレから離れて数日、オレの指図通り回ってくれ」 一生はぐっ!と息を詰めた 「解った。お遣いに行く」 「行くのかよ?」 「行く!お前の意思のまま動いてくる」 一生は踏ん張って言った 「ならな、一日早く此処を立ちやって貰いたい事がある」 「解った。何でも言うことを、聞く」 聡一郎はため息をついた 「康太、僕が変わりに行きますよ」 「聡一郎、おめぇは最後はコイツに、甘ぇんだな」 康太は笑った 「君の側を離れたくない…… その想いしか、この男には在りませんから……」 康太は聡一郎を見た 「なら、おめぇはオレの側を離れても大丈夫なんだな?」 「………っ!」 聡一郎は唇を噛み締めた ギリッと血が出る程……強く噛み締めた 「聡一郎、止めなさい」 慎一が聡一郎の血を拭った 「聡一郎、素直じゃねぇ子は要らねぇぞ」 康太が言うと聡一郎はポロポロ泣き出した 「今日の康太は意地悪です……」 「おめぇが意地張るからだろ?」 聡一郎は康太に縋り付いた 「聡一郎……抱き締めててやりてぇけどな…… 此処はめちゃくそ暑いわ 中に入ろうぜ!」 聡一郎の背中をポンポンと叩き、康太は歩き出した ホテルに向かうのかと想ったら別邸に向かって歩いて行った 「じぃちゃん、白馬に残っても良いんだぞ」 康太は源右衛門に声をかけた 「誰もおらぬ白馬になんぞいたくはない」 「なら、義恭が毎日点滴に来い、と言ってたかんな 毎日病院に通うんだぞ!」 「…………それは嫌だわい」 「じぃちゃん、この夏の暑さが堪えてるんだろ?」 「…………」 「倒れる前にケアしとけ! 無理は一切禁止だかんな!」 「解った……だから皆と帰らしてくれ……」 「たまにはクーラーを入れろよ」 「……最高に暑い時はそうするわい」 「さぁ中へ入るぜ!めちゃくそ暑いやんか!」 康太が言うと皆動き出した 康太は聡一郎をソファーに座らせた 聡一郎の膝の上に乗り、唇を舐めた 「唇を噛むな……」 口の中に鉄の味が広がった 「………康太の為なら僕は何でも出来ます」 「オレはおめぇが大切だ だからな、オレの為だからと誰彼なく寝るのは… 許せなかった」 「………康太……」 「この先、オレの為に……寝るな おめぇの犠牲の上にオレは守られたくねぇんだ」 「解ってます! だから誰とも寝てない……」 「好きな奴と体躯は繋ぐもんだ……」 「…………はい……」 「悠大!」 聡一郎を心配して見ていたら急に名を呼ばれ悠大は焦った 「おめぇ……恋人が服脱いで誘ったのに…… 何にもなしは……ねぇだろ?」 悠大は、萎れた 「力哉もな! 恋人が押し倒してるのに……張り倒すのはダメだ!」 力哉も萎れた 「力哉」 「はい」 「一生はイライラしてたかんな抜いといた」 「………え!!」 「オレ等が始めてもベッドから出ねぇからよ 仕方ねぇよな?」 康太はそう言い笑った 「悠大、おめぇが手を出さねぇからよぉ 一生が聡一郎のを抜いといた 当分……出来ねぇかもな」 悠大はそんなぁ……と項垂れた そして康太は悪魔の囁きをする 悠大の肩を抱き……耳元で 「聡一郎は股開いとけば良いんだからよぉ お前、溜まりに溜まったツケの回収をして来いよ イケなくても、おめぇがイケれば構わねぇからよぉ」 と、囁かれ 悠大は、聡一郎をズンズン引き摺って行った 康太は手を振って、見送った 「力哉、おめぇはどうするよ?」 「………イケないでしょ?絞ったのなら なら要りません…役に立たないじゃありませんか」 「なら力哉が挿れれば良いやんか」 「………遠慮しときます……」 「ならおめぇもヌいてやんよ!」 「………要りません……」 「気にするな!」 「……気にします!」 康太は笑っていた 家族と離れた所で、康太は楽しそうにしていた まさか………家族は康太が…… こんな会話をしてるとは… 思わないだろう 「伊織、2時間部屋に籠もろうか?」 「僕は出来ませんよ?」 朝まで止まれなかった 総て康太の中に出し切った 「構わねぇよ イクのはオレじゃねぇんだしよぉ」 悪魔のような……微笑みだった 力哉は、力なく……首をふっていた 「慎一、力哉をオレ等の部屋に連れて行ってくれ」 康太は慎一にそう頼み、瑛太に腕を伸ばした   瑛太は、康太を抱き上げた 「瑛兄、夜は会食に行こうぜ 明日はオレも横浜に帰るかんな!」 「………え?夏は白馬で過ごすんじゃないんですか?」 「横浜に帰らねぇとならなくなった」 康太はそう言い瑛太の耳にゴニョゴニョ、ヒソヒソ、カクカク、しかじか…と伝えた 「解りました。では、手配します 皆で帰りましょうか? 清四郎さん達は?」 「もう話した。一緒に帰るって言ってる 横浜に帰ったら清四郎さんと真矢さんと遊びに行く約束もしてる」 「そうですか。解りました。」 「なら2時間。部屋に行くわ。」 「解りました。」 「一生に予約取らせといて!」 「では手筈は総て一生にやらせます」 康太は瑛太の腕の中から下ろして貰うと榊原と共に別邸を後にした 「………伊織……」 「何ですか?」 「………オレ……力哉抜くだけの体力ねぇわ」 「僕も無理ですよ…… 朝まで…頑張りすぎて…勃起しません また勃起しても……力哉には使いません」 「当たり前だ! それはオレんだからな!」 「困りましたね……」 「……慎一に頑張って貰う?」 「それしかないですね」 榊原は、慎一に耐えて下さい……とエールを贈った 部屋に行くと、慎一が力哉を逃がさない様に見張ってた 康太はソファーに座ると   「……慎一、力哉の抜いてくれ……」 と頼んだ 「………え?俺が?」 「オレも伊織も朝まで犯ってて使い物にならねぇ」 慎一は絶句した 朝まで犯ってれば……使い物になりませんよね…… と、心の中で嘆いた 「慎一、おめぇのは飲んでやる」 「………!要りません!」 「遠慮すんな! オレのモノに触っても伊織は怒りはしねぇ」 「…………康太……」 「だから力哉のを抜いてくれ なんなら挿れても……構わねぇぜ」 「……ヌくだけにします」 慎一が言うと榊原は 「なら力哉の良い場所を教えます」 と言い力哉の服を脱がしに掛かった 力哉は後退った 「康太……冗談は…」 「冗談でやってねぇ! オレは何時も本気だ!」 「………康太……」 半泣きになり力哉は康太の名を呼んだ 「抜かれるのが嫌なら恋人と寝ろよ!」 康太の真意が痛い程に解った 「………ごめん……康太……」 「……あんで一生を拒んだ?」 康太の問いに力哉は涙を流して話した 「………いきなりズボンを脱がして… さぁ犯ろうぜ!って……嫌に決まってるじゃないですか…… 僕は性欲の処理係じゃない……」 康太はクラッとなり顔を覆った 「……伊織…」 「……康太、君の言いたい事は解ってます」 「舐めるなら……出来る……」 「…僕も舐めるなら出来ます」 顔を見合わせ頷き合う 慎一は目眩がした 榊原は力哉を全裸にすると執拗な接吻を送った 慎一は観念して服を脱いだ 康太は慎一の股間を見ると…… 手を伸ばした 「………康太…やめ……」 慌てて腰を引く… それよりも康太の方が素早かった 康太は慎一の性器を舐めた 榊原は慎一の手を取ると、力哉のお尻の穴を触らせた 「……慎一、力哉はココで鳴きます」 慎一の指を穴の中へ導き、場所を探る 「もう少し右に曲げて奥です」 手探りで探る その時引っ搔いた刺激に……力哉は勃起した 「……ゃん……ダメ……欲しくなる……」 力哉は、叫んだ 「慎一、オレがキスしてってから、力哉に挿れろ」 「……え、嫌です」 「おめぇはオレを見てろ」 「………康太……」 慎一を寝かせて、その上に力哉を乗せる   康太は慎一の目を隠した そして「………オナニーだと想え」と接吻した 康太に翻弄され、股間の刺激に…… 慎一は本能を剥き出しにした 榊原は力哉の性器を扱いて、導く 「……ぁん………ぁぁ……イくっ……」 力哉は榊原の手に白濁をまき散らした 慎一は、力哉の締め付けに……中に……欲情をぶちまけた 「伊織、まだ慎一は、硬い」 「ならもう一回出来ますかね?」 「このまま、イッとくか!」 暢気に呟き、康太は結合部分を舐めた その刺激に慎一も力哉も引かない熱に翻弄された 榊原が力哉の乳首を執拗に弄る 喘ぎっぱなしで力哉は意識が朦朧として来た 慎一も欲望に翻弄される ペロッと慎一の乳首を舐める康太の舌に…… 我を忘れて……腰を使った 引かない熱は………4回に及び…… 力哉は意識を手放した 力哉の中から抜くと、慎一はため息をついた 「慎一悪かった」 康太は服を着ていた その時やっとそれに気付いた 「………康太……」 「オナニーだ! 互いの体を使ってオナっただけだ! これはセックスじゃねぇ」 「………気持ちが伴わないですからね……」 康太は一生へのペナルティだと謂った 「一生だけスッキリして 耐えに耐えた力哉が……可哀相過ぎる」 「………一生は、そんなに馬鹿でないと…… 俺は想いたいです」 「オレも想いてぇよ!」 「………はい。」 「慎一、本当に悪かったな オレ等が朝まで犯ってなきゃ…… オレ等が力哉を抱けたのにな…」 「……康太は、力哉と寝たのですか?」 「おう!力哉の中に挿れてイカせた」 「………伊織は?」 「伊織がオレの中に挿れなきゃ、オレは勃起すらしねぇよ! 伊織が許したに決まってるやん」 榊原の想いが痛かった 再生するためなら…… 二人は身を擲って…… 総てをかけてくれる 榊原は康太のモノであれば寛容で…… それを総て受け止める そうして一生は、再生されて……生かされて来たのだと解る 「伊織」 「何ですか?」 「………お前のじゃないのは……嫌だ 洗って……ねぇ綺麗に洗って……」 康太は、榊原に抱き着いた 榊原は康太を抱き締め 「良いですよ。 綺麗に洗ってあげます ピカピカに洗えば僕の愛する康太の出来上がりです」 と囁いた 潔癖性な康太の性格を熟知して、榊原は愛を注ぐ 康太は服を脱ぐと慎一の手を引っ張った 榊原は服を脱ぐとフラフラの力哉を浴室に連れて行った 榊原は、康太を洗っていた 「慎一、力哉を洗ってくれませんか?」 「解りました。」 慎一は力哉のアナルに指を挿れ、中の精液を掻き出してから、綺麗に体躯を洗った 榊原に洗って貰った康太が慎一の体躯を洗った 康太は慎一の前髪を掴むと 「慎一、すまなかった……」 と噛み付く様なキスをした 「主の想いのままに…… それが俺の望みです 俺は誰も望んでません 主に仕える為だけに生きているのですから…」 「…頭も洗ってやんよ」 甘やかされ…… 労られる この主に仕えて良かったと想える 主の為に…… 主の望みの為だけに…… 100年の時超えてきたのだから…… 四人で入るには狭い浴槽に入って笑った そして仲良く浴室から出ると髪を乾かした そして服を着ると、別邸に向かった 別邸には一生が康太を待っていた 何も言わず一生は康太を抱き締めた 「一生、横浜に帰るぞ」 「……え?早くないか?」 「予定が変わったんだよ」 「……なら帰る準備をする!」 「おう!頼むな」 一生は康太を抱き締め胸の内を吐露する 「俺等はこの命がある限りお前共に行きてぇんだ 何処へでも共に逝く」 「決まってるじゃねぇかよ! 共に逝くなら軌道は外れるんじゃねぇぞ!」 一生は頷いた 「帰るなら荷造りは?してあるのかよ?」 一生はそう言い榊原に声を掛けた 「僕達のは直ぐに出来ます」 「他のは?」 「自分達でやるでしょ?」 「明日は何時立つんだよ?」 「早朝には立ちます 昼には飛鳥井の家に着いて ゆっくり過ごしましょう」 榊原はそう言い康太を抱き寄せた 「一生、飯食って来いよ!」 康太が言うと榊原が 「お弁当を買って来てます 聡一郎………は来たら食べるとして一生食べてらっしゃい」 「………いいや」 一生が言うと康太が立ち上がった 「弁当食わねぇ奴いるかんな! オレが食ってやる!」 と言い慎一に弁当を運ばせた そして康太は蓋を開くと……食べ始めた 一生は唖然となった 「………康太、一口…くれよ」 「要らねぇんだろ?」 良い匂いを側でさせれば……空腹を感じずにはいられない 「……すまん…要る」 「一生、一口と言わず全部食いやがれ!」 と言い康太は慎一に新しい弁当を持って来させた 「………え??聡一郎の分は?」 心配する一生に慎一は 「康太の腹減り対策として余分に買って来てます」 と答えた それを聞いて安心して一生は食べ始めた 康太は榊原の膝の上で食べていた 「伊織、あ~んしてみ」 榊原は口を開けた するとおかずをポンッと入れた 「美味しい?」 「美味しいですよ でも君のお口の方が僕は美味しいです」 そう言い康太の口にキスを落とした 「慎一、食いたいの言え食わしてやるぞ」 「………康太……」 慎一は困る 康太は適当におかずを摘まむと慎一の口に入れた 隼人の口にも入れ 仲良く摘まむ そして弁当を完食すると榊原に跨がり抱き着いた 何時もの光景だった 笙は康太を見ると……寝ていた 甘えているのかと想ったら…… すーすーと寝息を立て榊原に縋り付いて寝てた 寝てても離れたくないと抱き着く 榊原は康太を抱き締め静かに座っていた 榊原に抱かれた康太を…… 皆は静かに見守っていた 康太の眠りを妨げない為に…… 「……た………康太……」 愛する男の声がする   康太はニコッと笑った 「伊織……愛してる」 榊原はクラッとなった 無意識だからタチが悪い 「僕も愛してますよ 康太、外に会食に出掛ける時間です」 「………え?オレ…寝てた?」 「ええ。すやすやと寝てましたよ」 「伊織、直ぐに逝くのか?」 「………少し待って下さいね! 康太の淀で……濡れました」 榊原は康太をソファーに置くと着がえに行った 康太は、あ~と伸びをした 清四朗が康太を持ち上げた 「康太、舞台に見に来て下さい」 と清四朗が康太に声を掛けた 「舞台?清四朗さんが立ってるんですか?」 「はい。静流君も一緒に立ってます 後、神野の事務所の篁も一緒です」 「すげぇな!絶対に見に行く! 今からチケット取れるかな…」 「康太は招待します 伊織と関係者席に座って見てって下さい」 「是非行きます!」 「真矢も……その時一緒に連れて来て下さいね」 「真矢さんも?」 「………妻は私の舞台を見たことがないのですよ」 「……嘘」 「本当です 一人だと……目立つのと、私が家族を公表してませんでした……」 「真矢さんと一緒に見に行かせて貰います 差し入れは何が良いでしょうかね?」 「来てくれれば……それで良いです」 「初日と千穐楽は必ず観に行きます」 「……ありがとう……康太」 「母ちゃん連れてって良いかな?」 「ええ。玲香さんもご一緒で来て下さい」 「なら総勢…10人……は無理ですよね?」 「いいえ。君が見せたいと想う人を連れて来て下さい」 榊原が着替えから戻って来ると康太は父の膝の上にいた 楽しそうに康太が清四朗に甘える まるで親子の様だった 榊原は静かに、ソファーに座った 清四朗は笑って息子の膝の上に康太を置いた 「伊織!清四朗さんの舞台に連れてって欲しい」 「……父さんの舞台?」 「清家と一緒に立つそうなんだ」 「行きたいのですか?」 「おう!母ちゃんを連れてってやりてぇな」 「では行きましょう! 楽しみですね」 「美緒も誘うと母ちゃんと真矢さんはもっと楽しい」 「なら誘いましょう!」 「伊織……何時か夢を叶えろ……」 「………っ!」 榊原は燻り続ける夢を忘れてはいなかった だが康太を淋しくさせるなら……と我慢していた 「おめぇの夢はオレの夢でもある だから夢を叶えて欲しいんだよ」 康太は静かに語った 「康太‥‥」 「その時が来たなら、何者にも変えて優先しろ!」 「そんな事出来る訳ないじゃないすか!」 「やるんだよ!伊織 その時が来たら、飛鳥井の副社長の席から降りても良い」 「………康太!……僕はそんな事望んではいません!」 「伊織、オレは何時も想っていた おめぇが進むべき道を諦めさせてまでやる事じゃねぇって‥‥」 「嫌です!君が何と言おうと、副社長は辞めません」 「なら解任してやろうか?」 榊原は驚愕の瞳で……康太を見た 「…………嫌です…僕は……」 榊原は康太の肩に顔を埋めて泣いた 清四朗は康太に 「息子が何かしでかしましたか?」 と問い掛けた 「榊原伊織……幸田飛鳥として生きて来た伊織の願いは一つ 何時か父を使って、父の歴史を刻む事 その為だけに脚本家になった その夢は……飛鳥井にいちゃあ…叶えられねぇ…」 康太の言葉に瑛太が助け船を出す 「ならば、映画を撮る間 休職と言うカタチにすれば良いのでは?」 「この男は完璧を求める どちらも中途半端に出来ぬ性分 何時か伊織を飛鳥井から出さねばと想ってる」 「…………嫌です………康太と離れたくない…… 離れるなら……君の息の根を止めて… 共に逝きます……君がいなければ……意味がない」 榊原の体躯は震えていた 瑛太は 「康太……君も離れては暮らせないでしょ?」 と声を掛けた 「………オレは愛された……愛された思いさえあれば生きて逝ける……」 「…嫌です!………僕は君に触れないと… 生きてはいけません!」 康太は榊原を抱き締めた 「………お前の夢を何時か叶えさせてやりてぇんだ……」 愛だった 康太の愛だった 「………君がいなくては意味がない……」 榊原の想いだった 共に……この息が尽きる瞬間まで……… それしか望んでなかった 「……泣くな……伊織……」 「……君が意地悪言うから……」 榊原の声は……震えていた 「康太!結論を急ぐな!」 一生は、康太を窘めた 「………何時か………伊織は稀代の榊清四朗の代表作を創るんだ……」 康太の瞳は果てを映していた 瑛太は立ち上がると 「……解りました! その時が来たら伊織を副社長から解任します」 と告げた 「伊織、君を飛鳥井に繋ぎ止めておきたい訳じゃない 別に副社長を辞めても君は飛鳥井家真贋の伴侶だ 誰も引き離したりはしない」 「………義兄さん……僕は康太の総てを守りたいんです 康太の守る会社を守りたいんです…… 何時か……父さんの映画を撮りたい それは今も………消えてはいません でも改革半ばにして…嫌です」 ポロポロ……情けなく榊原が泣く 息子の泣く姿など…見たのは何時以来の事か…… 康太は一生に渡されたタオルで榊原の顔を拭いていた 「……君がいなきゃ……僕は夢を叶えたくない‥‥……」 「……悪かった……性急に話す事じゃなかった……」 「………康太と離れるなら僕は死にます 君とは魂を結んでます……そしたら2人で黄泉を渡りましょう……」 「………伊織……ごめん……」 「僕の瞳に映らぬ康太を見るのは嫌です それなら………君と共に………」 榊原が康太の首に手を掛ける 康太はニコッと笑った 愛する男のする事を康太は許してそれを受け入れた 瑛太には榊原の想いが‥‥‥痛い程に解って‥‥身動きすら出来ずにいた 一生は榊原を止めた 慎一が榊原に覆い被さった 「………伊織………俺から主を奪わないで下さい……」 切羽詰まった声に…… 榊原は……正気になった 「伊織、愛してる」 優しく康太は榊原の頬に手を当てた 目の前で………狂喜を滲み出した榊原を目にして…… 飛鳥井の家族も…… 榊原の家族も…… 言葉を失った 先に壊れるのは……榊原の方だった…… 康太は愛する男の手に掛かるなら…… 笑って逝ける…… とても優しい笑みだった 「……伊織、良い方法を考えよう……」 「………康太をなくさないのなら……」 「オレはおめぇのもんじゃねぇかよ!」 「………康太!」 「何時か……皆を唸らせる稀代の榊清四朗を撮れ」 「ええ。撮ります。 君と離れなくても良い方法があるなら……」 「泣くな伊織 男前が台無しだぞ」 「………大丈夫、直ぐに君の好きな僕になれます」 「伊織、聡一郎も来たし、会食に行くぜ」 「……少し待って……」 榊原は康太を離して……洗面所へ向かった 一生は康太の首を見た 少し紅くなっていた   「痛くねぇのかよ?」 「大丈夫だ!少し……虐めすぎたかんな」 「少しじゃねぇぜ! 旦那はおめぇとは死んでも離れねぇ… おめぇらはそうして生きてきたんじゃねぇのかよ?」 「愛すればこそ……だ、一生」 「………おめぇらの愛は命懸けだかんな…タチ悪い」 「……愛してるからな……夢を叶えてやりてぇ…」 「………急ぐな……皆が協力する 答えを慌てて見付けるな……」 「…………悪かった 清四朗さんと話してて……やっぱし伊織の夢を… と想っちまったんだ」 笙は康太を抱き締めた 「………康太…大丈夫ですか?」 愛に生きる姿だった 誰よりも愛し抜き…… 愛に生きていた 「………康太……弟を……許してください」 「……気にするな! オレは伊織にされて嫌な事は一つもねぇんだ 喩え……息の根を止められてもな オレは幸せだと笑ってられる…」 一生は「立てるかよ?」と問い掛けた 「大丈夫だ!」 康太は立ち上がり、榊原に腕を伸ばした 「……目が少し腫れてる……」 「……それは……大目に見なさい 君の愛する男になってませんか?」 「なってる。愛してる伊織」 「奥さん…僕も愛してます 会食に行くんですよね…… 聡一郎も来ましたし行きますか?」 「おう!行くとするか!」 呆気にとられた家族の尻を叩き チャーターしたバスに乗り込んだ   康太は、榊原の膝の上に座っていた 「伊織、プリン食いてぇ…」 「良いですよ。美味しかったら持ち帰りしましょう」 「伊織、んとに良い男だな」 うっとり榊原に見とれる 「君のモノです!全部君のモノです!」 「ん。オレんだからな 全部オレのもんだかんな!」 「……だから離れて行かないで……」 「んなもってぇねぇ事するかよ!」 新婚バリの甘い会話に……胸焼けがする 笙は一生に 「………この2人…冗談抜きで何時もこんな感じなの?」 と問い掛けた 「暇があればな……愛してるのオンパレードだ ………こんな時の康太には要注意だ…… 飽きねぇのかよ?なんて聞こうもんなら…… いかに榊原が素敵か……延々と語り出すからな……」 笙は絶句だった 「伊織が男といようもんなら…… 殺しに行くのは……康太……だな 俺等は何度も宥めるのに……苦労した」 更に絶句…… 笙は聞くのは諦めた 「でもな……離れねぇならな……安心だ あの二人は離れるなら……喜んで……この世を去る 本当にタチが悪い…… 命懸けの愛の前には……誰も太刀打ちできねぇよ」 全くそうだった こんなに求めたい… 惚れてる恋人同士を…… 誰が引き離せる…… 康太は榊原の膝の上で嬉しそうに笑っていた 康太は源右衛門に 「じぃちゃん!今から行く所は伊織がじぃちゃんの為に探して来た店だ 薬膳なのに美味い……伊織が探し歩いた店だ じぃちゃんや疲れてる家族の為に、見てけて来たんだ」と榊原の想いを話した 源右衛門は 「それは楽しみだわい」と笑った 清四朗も「薬膳……って初めてかも知れません」と会話に入り 楽しげに会話に花が咲いた バスが料亭で停まり、バスから降りる 店内へ一生が走ってゆく 「先程予約を入れました飛鳥井です」 到着を告げると、女将が部屋へと案内してくれた 「こちらにどうぞ!」 襖を開けて部屋の中に招き入れる 瑛太は康太と榊原を座らせると一生達を座らせた 向かい側に源右衛門を座らせた、後は適当に座った 榊原は笑顔で 「この店は地元で有名な薬膳料理のお店なんです 思い出の一時に遺る時間を送れると良いと思い選びました」 と言った もう……狂気の色はなかった 何時も通りの榊原伊織だった 薬膳と言われて…… 皆の頭には……精進料理が浮かんでいた なのに……ステーキはかなりの味で 皆舌鼓を打っていた 玲香は「……薬膳って…野菜しかないのかと想った…」と言い、榊原は苦笑した 瑛太も「薬膳と精進料理を一緒にしてました」と呟いた 榊原は何故薬膳料理にしたかを話した 「薬膳料理は栄養、効果、色、香り、味、形などすべてが揃った食養生の方法でなんです 目で見て、鼻で味わって、食べて味わえる 夏バテの家族や源右衛門には、最適かと思いました」 玲香は膳を見て 「なる程」と唸った 「女性の方は美容と健康に良いんですよ」 玲香と真矢は顔色を変えた 「美容と」玲香が言うと 「健康ですよ姉さん」と真矢は興奮して言った 「とてもヘルシーなんです」 榊原はそう言い康太の口にステーキを一切れ入れた 「美味しいですか?」 「うめぇ!伊織美味しい!」 「…………僕が美味しいの?」 「違っ……美味しい伊織……」 「まるで、僕のを飲んだ後みたいな台詞ですね」 榊原は笑う 康太も笑っていた 一生が「………そこそこ、卑猥なことは言わない」と釘を刺した 「一生、明日ばっかは寝坊したら置いてくかんな!」 「………一晩中寝ない!」 康太は笑って一生を抱き締めた 「雑魚寝すれば良いんだよ!」 「花火の残りも総て打ち上げとく?」 「おう!全部ぶっ放せ!」 家族団欒の時間を楽しむ 今日、この日しか味わえない日を楽しむ 食事を終え別邸に帰って、花火を総て打ち上げて 皆で雑魚寝した ………この夜は……子猫じゃなかった う! ぎょぇ~ ドスッ と言う音が響き渡っていた

ともだちにシェアしよう!