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第48話 すれ違い ①

新学期が始まって榊原は大学に顔を出していた だが康太は多忙で、大学処の騒ぎではなかった 大学と会社の両立している榊原より 康太は多忙だった 家に帰って来ない日も増えた 瑛太や家族は心配していた 一生や聡一郎は何も言えず… 康太を見守るしかなった 真贋の装いで出掛けて行く 付き添うのは力哉だった 朝……榊原が寝ている時間に起き出し 朝起きたら康太がいない…… と言うのはザラになった 電話しても繋がらない 力哉に電話しても……繋げてくれない 慎一や一生程、力哉は甘くなかった 榊原は……康太と話をしようと想った だけど摑まらない 榊原が寝てるベッドに潜り込み…… 寝てるかと想ったら次の瞬間……支度をして出掛けて行った 朝早くから夜遅くまで…… 康太は働き詰めだった この日、ベッドから抜け出す康太を榊原は掴まえた 「康太…何をしてるの?」 「離せ!支度をせねばならない」 「話をする時間を作って下さい!」 「あと少し待て……」 「何時まで?」 「今週末までは手が離せない」 「それまで待てません……」 「ならオレは帰るのは辞める お前に今邪魔されたくねぇんだよ!」 「……康太……何故?……」 「本当に時間がねぇ……」 康太は慌ただしく着替えて部屋を出て行った 榊原は呆然として…… 康太を見送るしかなかった…… 一生が部屋を覗いて榊原に声をかけた 「旦那、どうしたんだよ?」 「………康太が帰って来ない……って…」 「旦那……」 一生は榊原を抱き締めた 「旦那、康太は今真贋の仕事をしてるのか?」 「みたいです……」 「してなかったからな……」 「………でも何故?今?」 「須賀の入院費……かなり要ったんだろ? それでなくとも馬は金がかかる その馬も不調だ……金庫の管理は力哉がしてる 力哉が動いてるなら……金庫は空だったんだろ?」 「……え?………空?」 「それらを一手に力哉が管理していた 今、真贋の仕事を詰めてるのは…… そう言う訳だと想う」 「……知りませんでした」 「馬は飛鳥井の金では動かせねぇ 真贋の度量が問われる 金庫を空にすれば……そりゃあ…… 真贋として……働かねぇとな そう言う訳だろ?解ってやれよ」 「………一言……言って欲しかった……」 「言えば心配するだろ? まぁ、おめぇらは話し合いが必要だな」 「僕は会社を守ります! 僕は当分家には帰りません」 「旦那……」 「康太を責めてしまうなら仕事してます 論文も書かないとダメなので丁度良かったです」 この日から… 榊原は寝室で寝るのを辞めた 夜中に康太が帰って来ても榊原は寝室にはいなかった 康太は榊原を迎えに行きたくても…… 行けなかった 真贋として…… 役目を果たさず…… 金庫を空に近い状態にしてしまった 真贋 失格の今の現状に‥‥真贋の仕事を迫られた 榊原と共にいたい そんな思いは強かった だが榊原は自分の仕事はちゃんとしている ったく……自分は盲目過ぎて…… 周りを見ていなかった まさかの事態に、康太は真贋の仕事を再開させた かなりのペースで人を視た 星を詠み、運気を招いた 心身ともに疲れ果て…… 榊原の相手は出来なかった 榊原に我慢させているのは解っていた だが……誰にも何も言わせない成果を出さねば…… 真贋として意味がない 苦渋の決断だった それも、あと少しで終わる 今週末、やっとこさ調整が出来た馬が入る そしたら……少しは時間が取れる 金庫のお金も潤って、馬も成果を出せば…… その想いだけで…… 自分を立て直し……気張った あと少し あと少しで…… なのに榊原は…… 寝室には還って来なくなった 会社で寝ていると一生が言ってた 「話し合えよ!」 一生はそう言ったが…… やることを優先すれば…… 中々時間は作れなかった 伊織…… 伊織…… 今は……伊織が遠い…… ねぇ……抱き締めて…… ねぇ……愛してます奥さん……って言って ねぇ…… ねぇ………伊織…… 康太は自分を抱き締め……泣いた 週末に行われたレースで、イオリーブラウンは優勝した やっと……軌道修正出来て、康太は安堵の息を吐き出した 源右衛門は知っていて何も言わなかった 現真贋は康太だから……言うべきではないと黙っていた そんな祖父の想いも痛かった 不甲斐ない真贋でいたくはなかった 代替えして……墜ちた なんて言われたくなかった だから必死で闘った 脇目も触れず、真贋の仕事をして 金庫を潤し、馬を優勝させた 真贋の務めをやっと軌道修正させた だが……やっと仕事が片付いても…… 榊原とのすれ違いは……埋まっていたなかった 飛鳥井の家族は心配していた 榊原の家族も心配していた 今度ばかりは…… 家族は覚悟を決めた 榊原は大学に顔を出していた 旧友と仲良く談笑……して 大学生活を送っていた 本当なら放っておいて欲しい だけど……今は一生や慎一達と大学に来ている訳ではないから…… 寄って来る輩が多かった 一生達は飛び回っていた 康太が動かしてるのかも知れない と、想うと…… 大学に行こう……とは誘えなかった 旧友だと言う輩は馴れ馴れしく……榊原に抱き着いた ウザいけど捨てておいた 言うだけ……労力の無駄だから…… 楽しくない 何をやっても楽しくない…… 康太…… 康太…… 君の側に行きたい…… 君の声が聞きたい 康太…… ねぇ……君は僕の事を思い出したりしないの? 僕は…… 何時も君の事ばかり…… 何をするにも…… 君の事ばかり考えてる 君の側でなきゃ笑えない 君の側でなきゃ眠れない 康太…… 逢いに来て…… 僕を必要なら…… 逢いに来て…… 康太!! 君を息が止まる程 抱き締めたい 『一生、伊織はどこにいるよ?』 康太からの電話に一生は驚いていた 「康太!……」 『一生、悪かったな』 「俺等は……お前と共にいたい! 置いて行かれるのは不本意だ!」 一生は叫んだ 『悪かった……真贋としてピンチだった 金庫を危うく空にする所だった……』 やはりそうか…と一生は諦めた 「目処は立ったのかよ?」 『あぁ!やっとこさな』 「旦那は大学だ」 『ならそこに向かう』 「俺等も行く!」 康太は電話を切ると大学に向かい車を走らせて貰った 伊織…… やっとこさ逢えるな ごめんな……伊織 オレはお前に拒絶されるんじゃないかと 怖い もぉ要らない……と言われたら 生きて行けねぇ…… 怖いけど… 逢いたい…… 伊織…… 逢いたい 康太は逸る想いで大学に向かった 大学の駐車場で下ろして貰うと 榊原の覇道を辿る 手繰り寄せ……榊原の処へ向かう 駆け出したい想いを押し止め早足で歩く 途中で一生と聡一郎に出会い 榊原の処へ向かう 目の前に楽しげに談笑するグループがいた 榊原はその中にいた 想わず康太は足を止めた 「康太、気にするな」 一生は背中を押した だが、康太は動けなかった 榊原と一緒にいるグループの中の一人が康太に気づいた 「なぁ、アイツ、化け物の瞳を持ってるだろ?」 と言うと皆は爆笑した 「一緒にいたくねぇよな!」 「何でもお見通しなんてキモいだけだよな」 口々に……悪口を言う 榊原は康太を唖然として見つめ…… 何も言わなかった 康太は榊原から背を向けた 来るんじゃなかった…… 康太は後悔した 化け物の瞳…… 他の奴にとったら……化け物なのは嫌と謂う程知っていた 敢えて言われなくても 街を歩けば避けられた 榊原はやっと現実に返り 「康太!」 と名を呼んだ 「今後一切康太の悪口は言うのは許しません!」 と言い榊原は走った 康太は早足で…… 榊原から逃げようとした 榊原は康太を追った 走って 走って 思いっ切り走って 康太を掴まえた 康太を抱き締めようとすると、康太は抗った その腕を握り締め、逃げようとするのを封じると駐車場まで康太を引き摺って行った 榊原の車の助手席を開けると康太を座らせた 「逃げないで! 逃げたら僕は追いません!」 逃げたら終わりだと言われれば…… 大人しく座っているしかなかった…… 榊原は運転席に乗り込むと車を走らせた 康太は何も言わなかった 走り行く景色を見ていた 榊原はホテルニューグランドの駐車場に車を停めると 康太が車から降りるのを待った 康太が車から降りると、榊原はホテルの中に入っていった フロントで部屋を取ると、案内は断り部屋へと向かう 康太は黙って榊原の後を着いて来ていた 榊原はカードキーで鍵を開けるとドアを開けた 「どうぞ!」 榊原に言われ康太は部屋に入った 部屋に入り康太はソファーに座った 榊原は康太の前のソファーに座ると 「今まで何をしていたか聞きましょう」 と言った 「真贋の仕事をしていた」 「何故今?」 「真贋の仕事を蔑ろにしてしまったから……だ」 「金庫の資金が空に近くなってましたか?」 「そうだ。」 「で、軌道修正は出来たのですか?」 「………出来たから……逢いに行った」 「そうですか」 榊原は興味もない風に言った 「………他に聞きたい事は?」 「ないです!」 「………そうか……」 康太は瞳を伏せた こんな冷たい榊原は見たくなかったから…… 康太は何も言わず……瞳を伏せていた 榊原はため息をついた 「………君は……僕を何だと想ってるのですか?」 「………」 愛してる……と言う言葉が出て来なかった 「…黙りですか?」 「何が言いたい?」 康太は榊原を見た 「君にとったら僕は必要などない…… 違いますか?」 少しの意地悪位しなきゃ…… また勝手に行ってしまう 「…………違う……」 「君は伴侶である僕にすら何をしているか話さない なら何故僕達は一緒にいるんですか?」 「………もぉ……嫌いになったのなら…… そう言ってくれて良い……」 「僕はそんな事は言ってませんよ?」 「……オレは……真贋として生きて行かねばならねぇ この先も……それは変わらねぇ……」 「だから?」 「言える事もあれば、言えない事も出て来る」 「だから言わなくても良いと想ってるんですか…」 「違う!……」 康太は榊原を見た 冷たい……その瞳に…… 康太は総てを諦めた 「金庫の資金が底をついた 当たり前だよな……馬は不調で…… オレは真贋の仕事はしてなかった 軌道修正せねば……飛鳥井は馬を手放さねばならぬ状況だった じぃちゃんは……知っていて黙っていた…… 力哉に予定を組ませて……真贋の仕事をした 視れば……疲れて……お前の相手は出来なくなった 我慢させているのは解っていた でもオレは……真贋として責務を果たすしかなかった ………それが総てだ……」 康太は伏し目がちに……そう言った 真贋として生きねばならぬ定めがあった 「何故言ってくれなかったんですか?」 「………言える訳ねぇじゃんか…… お前と離れたくなくて……真贋の仕事をおろそかにしてました…… その結果……金庫の資金が底をつきました……なんて言えなかった……」 「なら、何故今は言うんですか?」 「………別れるなら、この場でオレを切ってくれ……」 康太の言葉に…… 榊原は驚愕の瞳を向けた 「……康太は別れられるの?」 「……こんな、化け物……別れた方が良い……」 康太は自嘲気味に笑った 「人間界でも……魔界でも…… オレは化け物にしかならねぇ……」 こんな化け物なんか別れろよ…… と康太は言った 榊原は慌てた お灸を据えるつもりが… 康太を追い込んだ…… 「化け物なんで言うのは僕が許さない!」 榊原は叫んだ 榊原は康太の頬に触れた 康太の体躯がビクンッと、震えた 「化け物なんて言わないで……」 榊原が康太を抱き締めようとすると… 康太はその手からすり抜けた 「………康太?」 「…………別れよう伊織……」 「何故!」 榊原は康太の腕を掴んだ 「君は本当に身勝手だ……」 「………ごめん……」 「僕と別れて君は生きられるのですか?」 「……生きられない…… だけど……要らないって言われたら……」 「要らないなんて言ってませんよ!」 「………伊織……」 「何時僕が要らないなんて言いましたか?」 「………言われても……恨めない……」 「答えて下さい! 君の答えの通りにしてあげます! 僕と別れて生きられるのですか?」 「……生きてゆけない……」 「僕を愛してますか?」 「……………愛してる……」 榊原は康太を強く抱き締めた 「僕も愛してますよ奥さん」 康太は驚いた瞳を榊原に向けた 「………伊織……ごめん……」 「隠し事はなしだと約束したんじゃないんですか?」 「………言えなかった」 「何故?」 「………伊織が責任を感じるから……」 「僕の責任でもあるでしょ? 君を動かせなかった…伴侶として僕のミスでもあるでしょ?」 「……違う……オレが離れたくなかったから…… 伊織の傍から……離れたくなかった……」 「康太‥‥」 「オレは‥‥真贋として源右衛門を悲しませたくなかった それと同時に、今世の真贋は落ちると言わせたくなかったんだ! ………真贋の伴侶は生涯唯一人…オレにはお前しかいない… オレの伴侶でいるお前も貶める事になるのが嫌だったんだ でも真贋の仕事を疎かにしてたら…… 本末転倒だけどな……」 康太の想いが痛かった 誇れる真贋でいたかったのが解る それは誰よりも伴侶を貶めない為に在った、康太の想いが‥‥ 誰よりも嬉しくて愛が募った 「僕も離れたくないんですよ?」 「うん。ごめん……」 「もう何日君に触ってないと想ってるんですか?」 「伊織……一番に逢いに行った……」 「僕はあんな馬鹿達に付きまとわれてました 追っ払うのも面倒臭くて……ね でも康太の事を知らずにあんな事を言うなんて許せません!」 「伊織……気にするな 他の奴にしたらオレは化け物にしかならねぇ……」 「僕の愛する康太を化け物扱いなんて許しません! 炎帝にしてもそうです! 僕の愛する炎帝を化け物呼ばわりする奴は許しません!」 「………伊織……伊織……」 康太は榊原の背中に腕を回し縋り付いた 「康太、真贋の仕事 今後は僕も付き添います」 疎かにしない為には……供に行けば良いのだ 「……え?良いの?」 「君が手を抜かない様にね 見張っててあげます」 「うん。うん……」 「共にいる時間は自分で作らないと、出来ませんよ!」 「………伊織、許してくれるの?」 「元々怒ってなんかいません! 君が話してくれれば、力になろうと想っていた 君が僕を拒絶したから離れてあげたんです」 「……伊織、拒絶はしてねぇ…… 視たり詠んだりすると体力が消耗して… その気にすらならなかったんだよ…」 「そう言う時は話して下さい」 「……ごめん……」 「君のサポートをする為に僕達はいます」 康太は頷いた 「所で君、一生達を使ってますか?」 突拍子もない事を謂われて、康太は驚いた顔をして 「え……使ってない……」と答えた 「大学も何時も一生か慎一か聡一郎が着いて来てたので、変な輩は近付いて来ませんでした 今回、彼等は忙しく掴まりません」 「………何をやってるんだ?」 「僕には解りませんよ」 「……オレも……今視たら… 伊織とする体力もなくなるから嫌だ……」 榊原は康太を抱き上げた 康太は榊原の首に腕を回した 寝室のドアを開け、そっとベッドの上に下ろされた 榊原はスーツの上着を脱ぐとソファーの背に引っ掛けた Yシャツのボタンを外し脱ぐと均整の取れた上半身が露わになった 榊原をじっと見ている康太に榊原は 「康太も脱いで……」 と言った 見とれてた事に気づき康太は頬を赤らめ、服を脱ぎだした 康太が全部脱ぐと榊原は康太の上に重なり抱き締めたい それで火が点く 如何に互いに餓えていたかを知る 榊原の熱く滾った股間が当たっていた 「………伊織……伊織……」 また抱いて貰えるなんて想わなかった 飽きられても……愛想尽かされても文句は言えない それだけの事をしたのだから…… こんなに熱い榊原の体躯を知れば…… 如何に我慢させていたのか……思い知る 「出してません…… 君がいないのに…そんな気になりませんでした」 血管が浮き出て隆起した肉棒が欲望を康太に教える 「伊織……欲しい……」 「僕も君が欲しくて堪りません‥‥ ねぇ康太、一人でいた時、僕を想い一人でしましたか?」 「疲れて吐いて、意識を失って‥‥だったから性欲はなかった でもお前の腕が恋しくて抱き締められたくて‥‥仕方がなかった‥‥ 」 「君は性欲そのものがなかったんですね? 僕も君を手にしなければ性欲など皆無です 君の温もりが欲しくて‥‥堪りませんでした」 「伊織の事を考えれば熱くなる…欲しくなる ………でも……次の瞬間……嫌われたら……と思うと怖かった……」 「僕と君は離れられないのに?」 「………オレは何時も怖い…… お前を惹き付けておける体躯をしてるか解らないからな……」 何故……こんなに自信がないのか…… 惹き付けて止まないのに…… 康太はまるで価値もないモノみたいに自分の事を言う 「康太しか要りません 他じゃ意味がない……解りませんか?」 ドクドク脈打つ股間が康太を欲して濡れて行く… 「………伊織だけいてくれれば良い…… 他は……要らない……伊織だけ……」 康太の瞳から涙が零れる 榊原はその涙に口吻をした そして火を点けるべく、康太に執拗な接吻を送る 火が点き化学反応を起こし大爆発しそうな勢いで 榊原は康太を欲した だが離れていたからこそ…… 時間をかけて……確かめたいと…… 想う 榊原の愛撫の跡が消えた体躯に 愛撫の紅い花を散らして行く チクッと痛みが走る それさえも快感に変換して榊原を求めた 腕を伸ばして榊原の昂ぶりに触れると…… 歓喜して……先っぽが濡れていた 先っぽに触れると…… 榊原は「……触らないで……」と止めた 言われて康太は傷付いた瞳をした その瞳に口吻を落とし 「今触ったらイッてしまいます」 性欲すらわかずに何日も来た 今…一気に快感が襲っていた 触られたら……イッてしまう 「何回でもイッて…… オレの中でイッて……」 「なら上に乗って……舐めて下さい お尻をこっちに向けて…… そしたら舐めてあげます」 康太は榊原の上に乗ると、お尻を榊原の方に向けた そして聳え立つ榊原の肉棒に触れた 硬く血管の浮き出た榊原の性器を愛しそうに頬ずりすると舐めた ペロペロとキャンデーみたいに舐めて、蜜で濡れた亀頭を口に咥えた 榊原は硬く閉じたお尻の穴の皺に触れた 硬く閉じたソレを見れば…… 康太の我慢の日々が解る 舐めて指を挿し込んでも……緩む事のない硬い蕾を解す 康太の心を解す様に、優しく蕩けさせ解してゆく 中に入れた指を康太のイイ所を擦ると 康太の体躯はビクンッと跳ねた 「……ぁぁ……伊織……イッちゃう……」 鳴きながら……哀願する康太は可愛かった お尻の穴と性器の2点責めに……康太は翻弄されて 榊原の口の中に射精した 「……ぁ……舐めないでぇ……」 イッたばかりの敏感な部分を舐められたら…… 「……ねがっ……またイッちゃう……」 康太はそう言い榊原の性器に吸い付いた 榊原も我慢の限界ギリギリ一杯だった そんな風に吸い付かれたら……イッてしまう 「……ぁ……康太……離して……」 康太の指が榊原の肉棒に搦み付き扱くと…… 榊原はイッてしまった 榊原は康太を起こし手を差し出した 「出して……」 康太は口を開き榊原の精液をドロッと吐き出した 榊原は康太を膝の上に乗せると それを康太のお尻の穴に塗り込み指を動かした 精液で滑るのを確認すると康太の中へ挿入した ゆっくりと焦らず…… 康太の中へ挿れて行く 康太の腸壁は久しぶりの感覚に…… 目覚め蠢き……震えていた 榊原に纏い付き締め上げて行く 榊原は康太が慣れるまで動かずにいた 康太の腰が動き始めるまで待っていた 榊原の存在になれると体躯は覚えている快感を導き出そうと煽動する 「……伊織……もう良いから動いて……」 「……痛くないですか?」 「……ん……気持ちイイ……ぁ……伊織のが動く……」 その刺激を合図に榊原は腰を動かし始めた 康太の中の榊原の肉棒が激しく中を擦り、腰を打ち付ける 康太は激しい動きに置いていかれまいと榊原に縋り付いた 快感に仰け反る康太の乳首を目にすると、榊原の唇が……康太の尖った乳首を吸った 榊原の愛の証のピアスを指で擦った 「君は僕のモノでしょ?」 ピアスごと甘噛みして引っ張られると……痛みが襲う 「……この証は僕の所有権の証じゃないんですか?」 榊原伊織のモノだと言う証 康太の総ては榊原伊織のモノだった 「……伊織の……オレの総ては伊織の……」 康太は魘された様に言葉にした 「僕のモノなのに…… 二度と別れ話は言わないで下さい」 「………ごめん……二度と言わない……ぁぁん……早い……」 榊原に思いっ切り突き上げられて康太は仰け反った 「愛してる…は聞いてあげます その他の言葉など……要りません!くっ……」 榊原は康太の中で弾けた ドクドクと熱い飛沫が康太の奥にかかる その熱さに身を震わせ……康太もイッた 終わらない熱に支配される 終われない欲情に駆りたてられる 射精したのに榊原は硬いままだった その硬さに康太は……終わらない情事を感じた 「……愛してる伊織……」 「僕も愛してますよ奥さん」 伊織……と首に回される腕が愛しい 隙間もなく抱き合う 離れていた時間と距離を埋めるかの様に…… 抱き着く康太が愛しかった 榊原は康太を抱きしめたまま押し倒すと足を抱えた 再開された抽挿に康太は翻弄されながらも榊原の背に腕を回した 腕も足を榊原に搦ませついて行く…… 離さないで……と縋り付く 止まれない欲情に翻弄されながらも着いてこようとする康太が愛しくて…… 愛が更に募る 愛してる その思いの上に更に愛してるが募ってゆく 康太は榊原の愛を全身で受け止めた 榊原は康太の中に募る愛を吐き出した そして何時まで離れずに抱き合っていた 榊原は康太の背にキスを落とした 汗で湿った背が……愛しい 榊原は康太を抱き締めるとゴロンッと転がった 榊原の胸の上に康太を乗せて抱き締めた 「痛くないですか?」 かなり太いのを挿れた自覚はある 一度出しただけじゃ……収まらなくて かなり太いのを挿れた 「……少し痛い……」 「切れましたか?」 「……ん……少し……」 エラが張り出てれば挿入に弊害になる それを挿れれば……切れて当然だった 「後で薬を塗ってあげます 明日は僕の側で寝てなさい」 何処にも行かずに寝ればいい……と榊原は言う 「……ん。伊織の側で寝てる……」 「真贋の仕事は週に2回 決めて動けば調整は取れます 総てに僕が付き添います」 「……伊織の仕事が……」 「今も大学に顔を出してます それを減らせば可能です」 「………留年するぞ……」 「君は留年覚悟でしょ? 僕だけ進級しても意味がないですよ 二人でならば、乗り越えられない壁はありません!」 「……伊織……」 「ハードルを上げてたのは君ですよ 上がったハードルをわざわざ飛ばなくとも 低いハードルを飛べば良いのです」 「………ごめん……」 「君一人では無理なら、僕がいる 僕達だけで無理なら一生達がいる それでも無理なら飛鳥井と榊原の家族がいます」 「……ん。伊織……愛してるから離さないで…」 「離れる訳ないでしょ? 僕は別れる気は皆無です 別れるなら君の息の根を止めます 僕達は魂を結びつけいる そしたら無理心中出来ます」 何という言い草…… 「………伊織に嫌われたら…… 伊織に飽きられたら…… 何時も不安になる……」 「不安になったら呼べば良いんです 不安にならない程に愛してあげますから! 離れるから不安になるんでしょ? なら離さなきゃ良いんです 僕は君から離れる気はありません 不安にならない程抱いて、僕の愛を注ぎ込みます そしたら僕だけの康太になれる 違いますか?」 「…………違わない……伊織……ごめん……」 「今回は真贋としてのピンチでした 許してあげます でも次はちゃんと言って下さい!」 「ん。ちゃんと言う……」 榊原は康太を強く抱き締めた そして言い聞かす様に言葉を続けた 言っとかないと…… 康太の不安はなくならないから…… 「君は僕の愛で満たされてないと不安になる 不安になると君は……僕の愛を否定する…… こんなに愛していると言ってるのに…… 君は愛されてない様な顔をする」 榊原は康太の頬を撫でた 榊原の胸を……熱い滴が流れて落ちた 「不安にならない程、僕を抱き締めなさい! そしたら僕は君に愛を注ぎ込み続けます」 「………伊織しか愛せない……」 「当たり前でしょ! 遥か昔から僕だけ愛していたんでしょ?」 「ん。蒼い龍しか見てなかった…… 蒼い龍だけ……欲しかった……」 「ならば、僕を離したらダメでしょ?」 「ごめん……伊織 もう離さねぇ……絶対に離さねぇ…」 「なら大丈夫です 君がいて僕がいる 離れないなら明日を紡いで逝けます」 榊原は康太の頭を優しく撫でた 「君を照らす光なんでしょ?僕は… なら離れないでいないと迷子になっちゃうでしょ? 闇に堕とさせなんかしません! 僕が照らし続けます!」 康太は榊原の胸から顔を上げた 「炎帝を照らす光になります  君の為にだけ在る一条の光になります!」 「………オレだけの……蒼い龍……」 「……そう。君の為にだけいる蒼い龍です」 「………愛してる……何度生まれ変わろうとも… お前しか愛せない…… 蒼い龍しか愛せない……」 「僕も炎帝だけしか愛せません 離れるなら息の根を止める それが僕達の愛でしょ?」 康太はうん……うん…と頷き……涙を流した 空が薄らと明るくなると榊原は康太を起こした ベッドの上から降りるとカーテンを開けた そして康太に手を差し出した 「おいで」 康太は鉛の入った様な体躯を起こし、榊原の傍に行った 榊原は康太を抱き締め、窓の外を見た 全裸で……窓の外を見るのは……恥ずかしい 窓の外は朝陽が辺りを染め始めていた 「康太、朝陽が昇ります 君と僕と始まる……始まりの朝です」 康太は窓の外を見た 榊原の精液が流れ落ちて内股を濡らした その感触にゾクッと身を震わせた 「君の内股に……僕のが出て来てます……」 撫でられると膝が崩れる 榊原は康太を窓に手を着かせると…… なんと……挿入した 「あっ!……伊織……無理……」 「君は朝陽を見てなさい」 そんなのは無理だった 「僕達の朝です 大きな壁を乗り越えた者だけが見られる朝陽です」 康太は朝陽を瞳に焼き付けた 榊原は腰を使い 「僕達に相応しい朝です 夜景でなく、朝日ですが……ね」 窓の外は……階下が見えた 落ちそうになる浮遊感に窓に縋り付いた 榊原は薄くなった精液を康太に注ぎ込むと抜いた 開いたアナルからは……入りきらない精液が溢れ出て 康太の内股を濡らしていた 榊原は屈むと、ペロペロと赤く腫れたお尻の穴を舐めた 「……ゃ……伊織……舐めないでぇ……」 「無理させました……切れてますね」 切れた襞を執拗に舐められると痛みが走る 精液が染みて痛いのに…… 榊原の舌が……傷を舐めた 「………伊織……もぉ立ってらんない……」 ガクガクと震える膝が今にも崩れ落ちそうだった 榊原は康太を抱き上げるとキスをした 「辛いですか?」 「伊織にされて辛い事は一つもねぇよ… でも……立ってるのは限界……」 「僕達の朝は始まりました もう二度と同じ過ちは起こさない 約束して下さい」 「もう、伊織に隠し事はなにもしない 約束する」 「僕達はなくしては生きては逝けません なくさない努力を怠らない様にしないといけませんね」 「ん。なくさない様に頑張る」 「体躯を洗ったら薬を塗ってあげます」 「………え?今?」 家に帰ってからだと思った ……そんな消炎鎮痛剤入りの薬を持ってるなんて… 思わなかったから…… 「さぁピカピカに磨いてあげます」 榊原はそう言いバスルームに向かう 浴室の床に康太を下ろすと、中も外も磨き上げ 何時も以上に丹念に洗った そして2人でジャグジーに入り満喫する 「愛しますよ奥さん」 榊原は康太の唇に口吻た 「オレも愛してる伊織…」 「下で食事してから帰りましょうか 君……肋骨が痛かったですよ? ご飯食べましたか?」 「…………視ると吐く…… 力を使うと…食欲はねぇ 伊織がいないのに……食べる気はおきなかった… 抱き心地悪かった?」 康太は心配そうに榊原を見た 「………こんなに痩せて……」 榊原は康太を抱き寄せた 「僕はどんな君でも満足です  でも……こんなに痩せてると心配になります」 「………伊織がいるなら食べれる……」 「沢山食べなさい 艶々の康太になって  僕だけに美味しく食べられなさい」 「ん。頑張る」 榊原はジャグジーから出ると康太を拭いた そして何時もの様に支度をした 榊原は支度をすると、伴侶の腕時計を着けた 忘れ物を確認すると、康太に手を差し出した   「行きましょうか?奥さん」 「おう!お前とオレの家に帰ろ…」 顔を見合わせニコッと笑って榊原の手を取った そして部屋を出た 下まで降りてフロントに行き精算しようとすると  「既に精算は終わっています」 と言われた 榊原は康太を見た   康太も榊原を見た 「誰なんでしょうね?」 榊原はそう言いフロアを探した   康太は支払った犯人を見付けると…… 「清四郎さん……笙も…真矢さんもどうされました?」 と問い掛けた 清四郎は笑っていた   真矢も笙も笑っていた やっと一安心……と胸をなで下ろした 「昨日、此処で仕事の打ち合わせをしてました そしたら伊織が康太を連れて部屋に行くのが見えました 話し合いが終わるまで……ホテルにいました まさか……夜が明けるとは思いませんでした…」 心配していた 飛鳥井の家族も 榊原の家族も 離れている康太と榊原を危惧していた 離れるなら…… どうなるか解らぬ不安に襲われた そんな時、榊原と康太を見た 清四郎は妻に電話を入れた   妻は息子を連れてホテルに来た そして部屋を借り……康太を待った フロントに康太達が帰るなら連絡を入れてくれる様に頼んだ そしてフロントから電話が来た 「只今、ご子息の榊原伊織様がチェックアウトのご連絡をなさいました」 と連絡を貰い精算をして、康太達を待っていたのだった 「康太……」 清四郎が名を呼ぶと…… 赤く泣き腫らした様な瞳で清四郎を見た 首には……榊原の愛の分だけ紅い跡が着いていた 「………清四郎さん……ご心配をお掛けしました」 清四郎は康太を抱き締めた 「君達が離れないでいるなら…… 私達は安心していられます……」 真矢も康太を抱き締めた 「……一生が何時も離れねぇなら安心だ……と言っていた それを身をもって知りました…… 貴方達が離れないなら……安心です」 真矢は息を吐き出した 不安だった どっちか一人しかいない姿は…… 恐怖しか抱かなかった 榊原は父に頭を下げた 「父さん……心配をかけました…」 清四郎は榊原を抱き締めた 「2人が一緒なら安心だ…… もう……離さないで……掴まえときなさい」 「ええ。父さん、離れたりしません 康太の体躯には言い聞かせました 離れようとは想ったりしません だから大丈夫です」 …………かなり酷使されたに違いない 康太が可哀相になり真矢は康太を撫でた 康太は幸せそうに笑っていた そのキラキラした瞳には榊原だけを映していた 「父さん達は朝食はお済みですか? 僕の康太に食べさせなければなりません」 榊原が聞くと清四郎は 「私達もまだです ご一緒して良いですか?」 「構いません!」 榊原は康太の肩を抱くとレストランの方へと向かった レストランの席に座りオーダーを入れる 榊原はミルクと珈琲、サラダとオムライスを一つずつと言った 康太がいるのに……それで足りるのかと…… 清四郎は息子に問い掛けた 「康太は食べてませんからね…… 肋骨が当たる程でした…… 多分何時もの量は無理です」 言葉もなかった…… 離れていると……食事すら……しなくなるのは2人ともなのか…… 「康太はそれで足りるのですか?」 「多分オムライスは全部は無理なので僕が食べます ですから大丈夫です」 飲み物が先に運ばれ、康太は静かにミルクを飲んでいた そして料理を運ばれると…… サラダを少し……オムライスは半分も食べれなかった 残りを榊原が食べて行く 榊原はサラダのエビを康太の口に入れた 康太はハムスター並にモグモグと食べていた 食事をしているとホテルの副社長がやって来て、康太に頭を下げた 「康太様、当ホテルの御用命ありがとうございます」 康太は副社長を見上げた 「康太様に正式に御依頼があって顔を出させて貰いました」 副社長は優しげな笑みを浮かべていた 「……依頼?」 「そうです。後ほど正式に申し込みます その前に康太様のお耳に入れておきたいのです 康太様は真贋のお仕事を再開されたとか。 で、当ホテルを真贋に視て戴こうと正式に依頼する予定で御座います」 「………副社長……誰に聞いた?」 「安曇勝也氏は当ホテルの常連様です 他にも貴方の親交のある方は当ホテルをご愛用なさって下さいます その方々全員が……最近は康太様は掴まらない…と嘆いておいででした 全員が真贋のお仕事を再開されてからの康太様は姿すら見えない……と仰って心配なさっていました 再開なさったのでしたら、一度正式に貴方の目に当ホテルの未来を視て戴きたいのです」 「正式に?」 飛鳥井家真贋 飛鳥井康太として視て欲しいと言う事なのかと尋ねた 「そうで御座います。 正式に視て下さいと秘書の方にご依頼しました 秘書の方は真贋の仕事は康太と話し合ってペースを落とすので後ほど……と、申されました」 榊原は胸ポケットから名刺を取り出すと副社長に渡した 「前もってご連絡をして下されば予定は付けます このホテルでしたら康太は喜んで視ると想います 何時でも構いません ご都合の良い日にお知らせ下さい そうしたら真贋を連れて僕が参ります」 副社長は榊原の名刺を受け取り胸ポケットにしまった 「でしたらお客様の少ない夜にお願い致します 伴侶様にご連絡致します。 では宜しくお願い致します」 副社長は深々と頭を下げて、その場を去った 「康太、ミルクはもう飲みませんか?」 「………もう良い…」 ほんの少ししか食べてないのに……康太はもう良いと言った 「あら、一生……」 と真矢が笑って言った 振り返ると、そこには一生と聡一郎、慎一が康太を見付けると、レストランの中へと入って来た 清四郎はウェイターに席を設けてくれと頼んだ 一生達の席を増やしてオーダーを頼んだ 一生は康太の前の皿に目をやった 「食えねぇのか?」 榊原に尋ねる 「ええ。肋骨が当たる程に痩せてました」 肋骨が……浮き出る程…… どれだけ食べてなかったのか…と心配になる 「一気には無理なので少しずつ食べさせるしかないです」 「……ぁぁ……それしかねぇな……」 「此処だと直ぐに解りましたか?」 「康太を連れて話し合うなら…… 此処しかねぇと想った……」 康太のお気に入り…… 海の見えるホテルだった 「話し合いました 何も心配は要りません!」 榊原はヒシャッと言った 一生は「そうか……それなら良い……」と笑った 「康太、プリンは食べれませんか?」 榊原が問い掛ける 康太は首をふった 「要らねぇ……」 「ならお昼用に美味しいプリンを頼んで持ち帰りましょうか……」 康太は要らない……と言った 「食べないとダメですよ?」 「………ん、でも吐く……」 康太の台詞に…… 「義恭先生に一度みせましょうか……」 と一生に問い掛けた 「だな。多分食ってねぇんだよ」 「………ですね」 榊原は困った顔をした 笙は「僕が病院に連れて行こうか?」と問い掛けた 「康太の事は人任せにしたくないので、僕が連れて行きます」 と、素っ気なく言った 「なら暇だし着いてく」 笙は笑って榊原に言った 「構いませんよ。 食事を終えたら病院へ行きます」 榊原が言うと清四郎と真矢も 「私達も今日は暇なのでご一緒します」 と言った 康太は嬉しそうに笑っていた 最近……そんな顔は見た事なくて…… 一生は康太を撫でた 「一生…心配かけた…」 「気にすんな! 俺等はお前が旦那といれば安心出来る」 「一生」 「あんだよ?」 「あにを動いてるんだよ?」 「………っ!………」 榊原が掴まらない程に…… 何を動いてるだよ……と問い掛ける 「俺等は俺等に出来る事をする!」 「………ほほう!オレの代わりに働いてくれるのか?」 康太はそう言い意地悪く笑うと 「オレは暫く休むわ お前等は仕事なんだろ?」 と虐めた 「………この子……お口縫ってやろうかしら?」 一生が零すと聡一郎は爆笑した 「康太、僕も休みます!」 聡一郎が康太と休む算段をする 慎一も「なら僕も休みます」と宣言した 一生は「俺も仲間にいれやがれ!」と噛み付いた 康太は笑っていた 久々の康太の笑顔だった 食事を終えると榊原は飛鳥井義恭の病院に連れて行った そして食事を受け付けない……と告げると 「点滴だな! 毎日打ちに来い! ついでに源右衛門も連れて来い」 と言った 義恭に点滴をブッ刺され……涙目で榊原を見た 榊原は康太を撫でた 「少しだけ我慢しなさい そしたらキスしてあげます」 「ん。我慢する」 甘い睦言が繰り広げられる そんなBGMさえ、懐かしかった 清四郎と真矢は笑って康太を見ていた 「榊清四郎殿」 義恭に名を呼ばれ……清四郎は嫌な顔をした 「何ですか?」 「過労一歩手前で御座るな」 ニヤッと義恭が笑う 「………私は元気です!」 清四郎はそう言い逃げようとした 真矢が清四郎を掴まえて義恭に差し出した 「康太の横で点滴でも打ってやって下さい」 ニコッと笑い義恭に言う   こう言う所は榊原は母親似なのかも知れない 「……真矢……私は大丈夫です……」 「もう若くないからね メンテナンスは大切よ!」 妻の言葉は容赦がなかった 腕にブスッと点滴の針を刺され、清四郎は観念した 康太と仲良く、清四郎は点滴を打たれた 康太は榊原に撫でられてスヤスヤ眠っていた 清四郎は妻を恨みがましい瞳で見た 仕方ないから息子の真似して清四郎を撫でた 笙はそんな両親を見て笑っていた 点滴を終えて薬を出して貰うと、榊原は自宅へと帰った 清四郎達も一緒に飛鳥井の家に帰って来た 久し振りだった 榊原は佐伯を呼び出すと、応接室まで仕事を運ばせた 「佐伯、僕は今日は此処を離れません 悪いのですが、仕事を此処まで運んで下さい」 「………解りました 此処まで運びます ……今日は康太と一緒なのですね」 「抱き潰したので今日は僕の膝の上で寝てます 僕は康太を寝かせたいので此処で仕事をします」 佐伯は笑って 「ならサクサク仕事をしやがれ! 私の主は飛鳥井康太! 彼が幸せで笑っているなら大目に見てやる」 佐伯はそう言い榊原に仕事を渡した チラッと笙を見て……断ち切る様に…… 佐伯は応接室を出て行った 康太はそれを目で追った 「伊織、怠い……」 膝に擦り寄る姿は猫の様だった 「何か飲みますか?」 康太は首をふった 「慎一、お昼には父ちゃんや母ちゃんを呼び出して昼にしようぜ!」 慎一は立ち上がると 「解りました。お弁当の注文に行きます」 と言い部屋を出て行った 一生は康太に 「んとにプリンが要らねぇのかよ?」 と尋ねた 康太は榊原を見上げた 「食べますか?少しでも?」 「……なら少し……」 「んじゃ、買って来るわ」 と一生は立ち上がると榊原が財布を渡した 一生は受け取り部屋を出て行った 聡一郎はテーブルを拭いたりと準備に当たった 榊原は瑛太に電話を入れた 「義兄さん、お昼はご一緒しませんか?」 『伊織……お昼ですか?』 「ええ。上に上がって来て下さい 義父さんと義母さんもご一緒にどうぞ」 『…母は…少し遠くですが?』 「義兄さんが呼んで下されば、大した距離ではないです」 『………解りました…お昼は自宅に帰ります』 帰ると聞いて榊原は、電話を切った 「伊織、じぃちゃんは?」 康太が聞くと清四郎が源右衛門の部屋をノックした 「父さん、皆でお昼を食べましょう」 「清四郎……久しぶりだのぉ……」 飛鳥井の家に人が消えて久しい 康太が真贋のお仕事を再開して、忙しく家にいなくなって…… 飛鳥井の家を尋ねる人間はいなくなった 家族も言葉少なく、源右衛門は部屋に引き籠もりがちになっていた 応接室へ行って源右衛門は驚いた 康太がソファーに寝そべっていたから…… 怠そうに榊原の膝の上に寝そべっていた その横で榊原は仕事をしていた 源右衛門が来ると康太は 「じぃちゃん、義恭が全然源右衛門は病院に来ない と、ボヤいてたぜ! 明日から病院に行けよ!じぃちゃん」 康太が言うと榊原が 「僕が乗せて行きます 丁度康太も病院に行かねばなりません」 「……わしは元気じゃ……」 「義恭が見たら即点滴だぜ! おめぇの息子は義恭に点滴されて来たんだからよぉ」 康太は笑った 清四郎はバツの悪い顔をした 「………私も少し休みます…… お盆明けから……仕事のし過ぎでした 父さん一緒に病院に行きましょう」 「………みんなが一緒なら……」 榊原は立ち上がると源右衛門を座らせた 昼になる少し前に清隆がやって来た 康太は榊原を跨いで座っていた 応接室へ入るなり清隆は固まった その後に玲香もやって来て……固まった 「………父さん……母さん……入り口を封鎖しないでください」 部屋に入れなくて瑛太はボヤいた そして部屋に入って……瑛太も固まった 康太が榊原の上にいたから…… 榊原は一心不乱に仕事をしていた 康太は榊原に跨がり肩に顔を埋めていた 瑛太は康太を抱き上げようとした…… 「……今は触るな……瑛兄……」 と、康太が拒んだ 「………え?康太……兄はダメですか?」 ショックを受ける瑛太に榊原は   「今持つと……義兄さんが心配するからだと想います」 と補足してやった 瑛太は榊原の方を見て…… 「………それ程?」 と問い掛けた 「………抱いてる最中……肋骨が刺さりました…」 「……え……そんなに……」 瑛兄はソファーの前に座った   「………康太……久し振りなのです…… 兄に抱き上げさせて下さい……」 と頼んだ 「………少しなら……」 瑛太は立ち上がると康太を抱き上げた その軽さに……目眩がした 「食べてなかったの?」 「……視ると吐く……」 瑛太は康太を榊原の上に戻した 康太の不在…… それは家族にも影を落としていた 応接室に家族が集まる…… お盆を過ぎてからは……なくなっていた 多忙になった康太が家族の前から消えると皆無になっていた 榊原の上から降りて、ソファーに座る 皆の所に弁当が配られたが、康太はなかった 「…………康太は?」 瑛太が問い掛ける 「食べれません…… 無理して食べると吐きます」 榊原は少しずつ康太の口に入れてゆくと、少しだけ食べた 「プリンは?」 榊原が問い掛けると 「食べる…」と康太は言った プリンを持たせると少しだけ食べた 残りは一生が食べた 甘いものが苦手な榊原に食べさせるのは酷だと思ったから…… 「一生、悪かったです」 「良いって事よ」 康太は少しだけ食べただけで食事を終えた 榊原は食後の薬を取り出すと康太の口の中に入れた そして水を口に含むと康太に接吻して飲ませた 「………旦那……」 それは流石にあかんやろ……と服を引っ張った 「一生何ですか?」 しれっと言う……本当に性格が悪い…… 清隆は「お二人はそうして仲良くしていないと…」と呟いた 玲香も「離れておる方が恐怖であるな」……と本音をポロッと吐露した 昼休みを終えると清隆と瑛太は会社へと降りて行った 玲香は少し離れたレストランへと向かった 源右衛門も部屋へと帰って行った 清四郎は康太に今夜泊まりませんか?と問い掛けた 「ん。じゃ清四郎さんちに行く」 康太が立ち上がると榊原は康太の腕を掴んだ 「少し待ちなさい! 仕事を終えたら僕も行きます」 「先に待ってたらダメ?」 「ダメです」 「清四郎さん後から行くから待ってて」 「ええ。ゆっくり来れば良いですよ」 清四郎達は康太を抱き締めて、飛鳥井の家を後にした 康太は榊原の膝に頭を乗せて榊原を見ていた 「どうしました?」 「愛してる! 伊織しか愛せない」 榊原はニコッと笑って康太にキスを落とした 「もう少しだけ待ってて下さいね」 「ん。急がなくて良い」 榊原の膝に乗ってゴロゴロしてると慎一が 「康太、貴方、携帯どうしたのですか?」 と問い掛けた …………康太は黙って胸ポケットから携帯を取り出すと榊原に渡した 榊原は康太から受け取り……唖然となった 着信がビッシリ許容をオーバーしていた 榊原は慎一に携帯を渡した 慎一は康太の携帯をリセットした 「康太に連絡が着かないと……電話が大変でした」 康太に掛からねば慎一の所へ電話をして来るのが定番になりつつあった 「今日は体調不良と言うことでお断りしておきます それで良いですね?」 慎一が言うと榊原が 「構いません。 今日は康太を動かす気はありません」 とピシャッと言った 「所で君達何をしてるんですか? 全く掴まらない……康太が動かしてると想えば 康太は動かしてないと言ってました」 慎一は「俺は須賀に着いてたり康太のスケジュールを力哉に変わってやってました」と言った 一生は「白馬に行ってたんだよ!」とふて腐れて言った 「俺は馬を作るしか出来ねぇ… 篠崎と藍崎と交じって調教に専念していた」 と白状した 聡一郎は「僕は飛鳥井蓮の所に行ってました」と白状した 「……蓮?」 「僕個人の株を動かしてました それで……須賀の入院費に充てようと…と想ってました」 「聡一郎……心配かけたな……」 「康太は言わないから…… 言わずにやられる方がしんどい! 見てるだけなんて御免です!」 聡一郎は言い切った その時応接室のドアを開け隼人が帰って来た 隼人は康太の姿を見ると飛び付いた  「……康太……会いたかったのだ……」 隼人はそう言いボストンバッグを康太に押し付けた 「何よ?これは?」 康太が聞くと、神野が答えた 「足りないでしょうが1000万円です」 と、答えた 「一千万……何よ?これ?」 康太が聞くと隼人は 「使え!オレ様の契約料だ!使え!」 と怒鳴って号泣した 康太は困って神野を見た 「……隼人がスポンサー契約した契約料です 一千万あります! 少ないでしょうが、お納め下さい」 康太は困った顔して榊原を見た 「神野……こんな事して康太が有難うと言うと想ってるんですか?」 「………想ってはおりません ですが、それは隼人の想いです 隼人は康太がいないのはお金がないからだ…… と泣いてました 来る日も来る日も……康太がいないと隼人は泣いてました 隼人は無理してでも康太を楽にさせてやりたかったんです……」 康太は隼人の頭を撫でた 「ごめんな……隼人」 「もっと稼いで来るのだ それで康太を楽にさせてやるのだ」 「隼人、そんなに無理しなくても良い 目処が立った…もう、消えないから泣くな…」 康太は隼人を抱き締めて言い聞かせた 「………隼人……もうお金の事は気にしなくて良い」 「嫌なのだ……オレ様は稼げる それで楽させてやりたいのだ 康太はお金がなくなると消えるからもっと稼いで来るのだ!」 お金がなくなると‥‥隼人が口癖の様に言ってたとすると‥‥ 「…………神野……お前、ひょっとして飛鳥井が危ないとか想ってない?」 お金がない…… それにはビックリした ひょっとして飛鳥井が危ないのか? と真野に聞いた すると飛鳥井建設は安定しています! 何を寝ぼけてるんですか!と怒られた すると康太個人の……真贋のお金がないのか? 色々考えた 隼人は必死で歯を食いしばり耐えた その契約金がこのスポーツバッグの中に入っていた 「………いいえ……一度真野に聞いて怒られました ですから飛鳥井建設は安定だと思ってます」 「馬は費用がかかる 白馬は妨害を受けて成果を上げれなかった それに須賀の入院もあったからな……少しピンチだった それがなきゃ……そこまで切羽詰まらなかったがな…」 「須賀の入院費、貴方が支払われたのですか?」 「あぁ。須賀は何年かかっても元に戻してやる」 「………俺も須賀の為に払います」 「………神野……もう終わった事だ……」 「須賀はまだまだお金が要りますよね?」 康太はため息をついて榊原を見た 榊原は神野に 「神野、康太は終わった事だと言いませんでしたか?」 と釘を刺した 「終わってません! 康太だけ背負って苦労して…… 黙って見てるなんて出来ません」 「神野、僕は父の家に行かねばなりません 君と不毛な議論している時間はないんです」 「………飛鳥井家真贋が動き出した… 政界財界芸能界……その噂で持ち切りです 真贋に視てもらうなら今とまで言わしめています」 「それは昨日までの話ですよ 今後は客を選びます! 僕が吟味した人間しか仕事はさせません」 伴侶として表に出る日はないと想われたのに…… 榊原は伴侶として表に出て管理すると言い張った 神野は黙った 「このお金は隼人のです! 隼人が納得するカタチで収めて下さい また来ます!」 神野はそう言いボストンバッグを置いたまま部屋を出て行った 榊原はため息をついた 「あの男は頑固ですからね…… 引かないと想いますよ?」 「今日は何も考えたくねぇ…」 「ですね。さぁ父さんの家に行きますか?」 榊原は立ち上がると康太に手を差し出した 康太はその手を掴んで立ち上がった

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