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第50話 優しさの先に

康太はゴロゴロと被害者を出したのに 戸浪を抱き締めて寝ていた 康太の優しい腕に抱かれ戸浪は深い眠りに落ちていた 田代は戸浪の携帯を鳴らし続けた 一生は悪いと想いながらも、戸浪の胸ポケットから携帯を取りだした 「もしもし」 明らかに社長と違う声に……田代は慌てた 『申し訳御座いません 貴方様はどちら様で御座いますか?』 田代の問い掛けに一生は 「緑川一生です」 と名乗った 『一生君、この携帯は社長の携帯で間違え御座いませんか?』 「おう!若旦那の携帯だ」 『社長は?』 「寝てる」 『………そうでしたか お迎えに伺いたいのですが 宜しいですか?』 「飛鳥井の家にはいねぇぜ 伊織の実家だ…場所は解るか?」 『一度榊様は送って行った事があります ではお迎えに伺います』 田代はそう言い電話を切った 一生は胸ポケット携帯を返した なのに戸浪は起きなかった 「……旦那……起こすのか?」 「………田代は迎えに来ると言ったんでしょ?」 「おう!でも、起こせるか?」 「………田代が来るまで寝かしときますか……」 榊原は起こすのを諦めた 暫くすると清四郎の家のインターフォンが鳴り響いた 笙は慌てて玄関に向かった 玄関のドアを開けるとそこには田代が立っていた 「笙さん大変申し訳ないです」 「父が呼び止めて呑ませたのです こちらの方が申し訳ないです」 笙は田代を家に招いた 客間になってる襖を開くと…… 康太と戸浪は一つの布団で仲良く寝ていた 他の布団は既に畳まれていた 「………伊織さん……私に起こせ……と?」 「僕も起こせずにいたのです…… 若旦那は携帯が鳴り響いてるのに起きないし… 若旦那は康太にしがみついてるし……起こせません」 「物凄く起こすのは気が引けます…」   「なら寝かせときますか?」 そう言う訳にもいかず田代は戸浪を揺すった 「………社長、社長!」 何度か声をかける すると寝惚けた顔した戸浪が田代を見た 「………え?田代??」 爆睡した頭が働かない 「社長……昨日は追ってくるな!と仰い消えましたよね? 朝になっても連絡がつかなくて困りました」 戸浪に抱き着かれ寝ていた康太が目を醒まし田代を見た   「悪かったな田代……」 康太は謝った 「康太さんが悪い訳ではないですから 謝らないで下さい 行き先も告げすに飛んで消えた社長が悪いのですから」 田代はそう言い笑った 「社長、着替えさせて戴いて会社に行きますよ」 田代が言うとやっと目覚めから醒めた戸浪が 「………田代、着替えは?」 「持っておりますよ」 戸浪は立ち上がった 榊原は自分の部屋へ案内した 「此処は僕の部屋です 此処で着替えて下さい 洗面所は奥です。では」 榊原は案内すると和室に戻った 康太を抱き上げると応接間へと向かう 「康太、何か食べますか?」 康太は首をふった 「薬が飲めませんよ?」 「………なら少し……」 康太が言うと笙が康太の前にミルクティーとサラダを置いた 戸浪が着替えて来ると戸浪の前にも置いた 「……私は会社に行きますから……」 要りません……と言う前に用意されて田代と共に朝食を食べた 小食の康太の姿が痛かった 田代は康太の姿に胸が痛んだ 食べられないのは一目瞭然だった 戸浪が駆け付けねばならなかったのが解った 「康太さん、食べられないのですか?」 田代が声をかけると康太は頷いた 「では近いうちにお粥の専門店にお連れします 待ってて下さいね」 「田代……」 「とても美味しいですよ うちの子は食が細くて食べられないんです その子供が食べれるお店なので康太さんも食べられると想います」 「田代……ありがとう」 「近いうちにお誘いいたします 榊さん、ご迷惑をおかけ致しました」 「私が誘ったのです お気になさらないで……」 食事を終えると戸浪は慌ただしく会社へと出向いて行った 榊原は瑛太に電話を入れた 「義兄さん、今日は康太と源右衛門を病院に連れて行ってから顔を出します」 『伊織、悪いですね 本当に君には手間を掛けさせます』 「今榊原の家にいます 一旦帰ってから病院に生きます」 『解りました。佐伯に言っておきます』 榊原は電話を切ると康太を抱き上げた 「父さん、本当にありがとう御座いました」 「また来なさい 私も本当に楽しかったです」 榊原は挨拶すると応接間を後にした 一生達も清四郎と真矢に礼を言い康太の後に続く 笙が見送りに出た 「笙、近いうちに撮影で逢おう」 康太はそう言い笑った 「え?撮影?康太が撮ってくれるんですか?」 「オレが撮らなきゃ誰が撮るんだよ?」 「………康太……無理なさらないで良いです」 「それは無理だ。神野に取りに行かせたCMなんだぜ? 家族全員で撮れるチャンスなんて滅多とねぇからな お互いの事務所にはそろそろ連絡が行く頃だ」 康太が言うと清四郎は 「家族全員でCMに出れるのですか?」 と驚いて問い掛けた 「おう!清四郎さんの願いじゃねぇかよ! やっとこさ撮れるチャンスが来たぜ」 「今から楽しみです…」 康太は笑った 「ならな清四郎さん また近いうちに連絡下さい」 康太はそう言い清四郎の家を後にした 歩きで飛鳥井の家に帰り、着替えると飛鳥井の主治医の病院へと出向いた 車の中で慎一が 「今夜6時、東城さんと今枝さんがおみえになる予定です」 と予定を告げた 「妥当ですね。 僕は康太を病院に連れて行ったら会社に顔を出します」 「康太はどうなさるんですか?」 「康太の自由にさせます 僕達はもう大丈夫です」 慎一は頷いた 飛鳥井の家に一旦着替えに行き、源右衛門も連れて主治医の病院へ向かう 点滴を打って貰って飛鳥井の家に帰る 榊原は慌ただしく着替えを済ませると 「康太、僕は会社に顔を出します 君はどうするつもりですか?」 と尋ねた 「今日はベッドで寝てる…」 「怠いですか?」 「ん。何処か行くなら電話を入れる」 「解りました。 では行って来ますね奥さん」 榊原はそう言い康太にキスを落とした そして会社へと向かった 康太は服を着たままベッドに入り込んだ 久し振りに榊原に愛された体躯が……重い 愛された朝から病院や清四郎の家に泊まったり… 落ち着く間もなかった ベッドに入り込むと……眠りに落ちた 一生は康太を見に来ると眠っていた こんなに痩せた体躯では…… 動くのもキツいだろう…… スヤスヤ眠る康太の頭を撫でた 聡一郎も慎一も顔を出し…… 疲れて眠る康太を案じて覗いた 康太は榊原が帰って来ても眠っていた 「…………ずっと眠っていたのですか?」 と思わず榊原が尋ねる程だった 「起きねぇからな……心配だけど それで起こすのも可哀相だからな… 寝かせておいた」 一生は榊原を見るとそう言った 「………そうですか 僕も寝かせてあげたいですが 予定がありますからね……」 榊原は康太を起こした 寝惚けた瞳が榊原を見る 「康太、起きて下さい 着替えないと東城と今枝が来ちゃいますよ」 「……ん……」 ん……と言いながら榊原の手に擦り寄り瞳を閉じようとしていた 榊原は強引に康太を起こすと服を脱がせた 「……犯るの?」 康太は榊原を見た 「………素敵なお誘いですけど…… 来客があります !着替えましょうね」 「………来客?来客……誰?」 康太は寝惚けていた 「午後6時に東城と今枝が来ると朝言いましたよね?」 「ん。聞いた」 「今はもう午後5時30分回ってますよ?」 「………え!何で? オレ、寝てた? そんなに寝てた?」 康太は榊原が昼を食べて会社に行くとのを見送った もう午後5時30分回ってる? 信じられなかった 「疲れてるんですよ 君には休養が必要です でも、来客があります 彼等は君に話に来ます 君がいなくちゃ話し合いにもなりません」 康太は起きた 「………服、脱がしてるの…それで?…」 「そうです。来客があるので着替えますよ」 榊原は軽装でも失礼のない服に着せ替え 自分も着替えた そして応接室に康太を運ぶとソファーに座らせた 暫く待つと榊原の電話が鳴り響いた 『東城洋人です。 唯今、ビルの下に着きました』 下のマンションの集合パネルには飛鳥井の家は入ってなかった 尋ねて来ても飛鳥井の家へ入るのは皆無の状態だった 「今、迎えに行かせます そこで待ってて下さい」 榊原が言うと慎一が立ち上がって部屋を出た 慎一は1階のマンション入り口へ迎えに行くと 東城と今枝に深々と頭を下げた 「お待たせ致しました」 慎一が言うと東城は 「急に予定をつけて戴いて本当にありがとうございました」 と慎一に礼を言った 慎一は二人を連れてエレベーターに乗り込むと階数パネルの一番上にある鍵穴にキーを刺した そして直通で最上階まで向かった 最上階でエレベーターが開くと応接室まで二人を連れて行った 応接室のドアを開けると 「お連れ致しました」と二人を招き入れた そしてソファーに座らせた 一生は聡一郎と共にキッチンに行きお茶の用意をした お茶とお茶菓子をそれぞれの前に置いてゆく すると、邪魔にならない場所に座った 全員が席に着くと東城は口を開いた 「飛鳥井家真贋 飛鳥井康太が真贋の仕事を再開された 誠しやかに噂が流れています 何故、今、再開されたのですか? それをお聞きしたくて伺いに参りました」 東城は単刀直入に言葉にした 「別に真贋の仕事を今まで休んでいた訳じゃねぇ」 だから再開と謂う訳じゃねぇと康太は言った 「ペースを上げて精力的に動かれてはいなかった それがこれ程に精力的に動かれているのは…… 何かあるのではないか……と今枝が調べておりました でも何も出ては来ませんでした 調べれば調べる程に君の噂は消えて行くのです 誰かが意図的に消している以外には考えられません 話しては戴けませんか?」 東城の真摯な瞳を受け……康太は諦めた 隠しても……ジャーナリストとして見逃しはしないだろう…… 「今まで真贋の仕事は吟味して、気に入ったのしかやらなかった 休んでいた訳ではない だから再開は当て嵌まらねぇ」 「なら何故今は精力的に動かれているのですか?」 「白馬を買収しょうと動かれてホテルの中は腐ってしまった そんな状況だったからな……白馬で調整付けねばならぬ馬が不調で成績が上がらなかった 馬は莫大な費用がいる 優勝を続ければ莫大な利益を生むが、負け続ければ莫大な損失に転じる 損失が続けば……馬の維持は難しくなる 今までのように悠長に構えていられない事態になった それが真贋の仕事を増やした訳だ」 康太は仕事を増やした理由を話した だが、今枝は納得はしなかった 「それもあるでしようが、須賀の入院費が莫大だった それもあるのではないですか?」 「…………良い線を突いてくるな! そうだ、それも否めないな」 「何故?何故ですか? 何故ご自分で総てを背負われるのですか?」 「須賀は何年経ってもオレが元に戻してやる それにかかる費用は莫大だった……としてもな 須賀を見捨てはしねぇ!」 無償の愛で……相手を生きながらえさせる こんな無償の愛を貰ったら…… 何としても応えねばと、なるだろう 「須賀を取材させて下さい」 今枝は康太に頼んだ 「取材?させてやったじゃねぇかよ?」 康太は言い捨てた 「今の今枝の状況を取材させて下さい」 今枝は一歩も引かぬ姿勢で食い付いていた 「須賀が皆の前に立つのは自分の足で立っていられるようになった時! 今じゃねぇ!」 康太は言い捨てた 取り付く島もない程に…… 冷徹な瞳を今枝に向けた そんな瞳を目にした事のない今枝は息を詰めた 「須賀に構うな! 須賀を引きずり出すなら… おめぇの息の根を止めるぜ!」 容赦はしないと言う瞳で貫かれた だが今枝は引き下がらなかった 「どうぞ!息の根を止めて下さい 私の命は貴方が握ってらっしゃる 違いますか? 私は貴方の掌で転がされてる駒に過ぎない」 「オレはおめぇを駒扱いした事なんかねぇぞ!」 康太が噛み付く 「貴方は書けと仰った! 私は書くが天性!書かねばならぬのです!」 今枝が言うと東城が 「安曇さん達が名を連ね須賀を援助なさるとか?」 「………何処から聞いたよ?」 「相賀和成が声明を出しました」 朝方、相賀は各界に電信した その紙を康太に渡した 「……物凄い……方が連名に加わっておいでですね 孤高の戦士……彼を知っておいでだったとは…」 康太は何も言わなかった 「須賀直人の不利益にはならない様に取材させて下さい この記事に関しては寄付も募ります そして須賀を応援して行ける様に克明に伝えるべきだと想います 貴方が総て背負うのでなく分散すべきです 相賀和成達はそう思い名乗り出た ならば、私達も須賀直人の記者会見の場をセッティングしたご縁でサポートすべきだと思いました」 東城は康太に訴えた 「………須賀を晒したくない……」 「晒すのではありません! 須賀直人は芸能界に身を置く者 彼が立ち上がり乗り越える姿を見せる事が 彼のためになる! 頑張って克服した須賀直人の姿を見せるべきです」 「………お前の所を許せば…… 他も取材させろと言って来る そのうち須賀の隠し撮りとか出る …………それは厭なんだ……」 康太の想いだった 慎一が康太に変わって口を開いた 「東城さん、今枝さん、同じ事を考えるのは貴方達だけじゃない 既に須賀直人の取材をさせろと言って来てる会社も後を絶たない 須賀の処へ行こうとすると後を付けて来るパパラッチと呼ばれる輩も多い 今の須賀を撮りたいと想ってすっぱ抜きたい輩は多すぎなんですよ」 慎一が言うと東城は 「なれば報道規制と言うのを張るべきです! 相賀和成が連名で声明を発表したのは、そんな意図もあります」 「…………東城……須賀を晒し者にしろと?」 「誰も晒せとは言っておりません! 貴方が一人で背負う分を、助け合い須賀の命に繋げて行きたいのです 一人じゃない……皆心配してる……と伝えて明日を紡ぐ これは私達、報道の仕事だと想ってます 康太さん、一人で背負わないで私達にも背負わせて下さい 貴方が無理するのを見るのを今枝が平気でいられると想いますか? 今枝に出逢った経緯を聞きました 魂が綺麗だと言うだけで、貴方は今枝の子供を救った それだけではなく、今枝の報道魂も救った 貴方がいなくば今の今枝は存在しません 貴方が作られたのでしょ?今枝を! ならば、今枝は貴方を救いたいと想ってる そんな今枝に貴方の手助けをさせてやって下さい 私も手助けをさせて戴きます!」 「………東城……今枝……」 康太は今枝を見た 康太が見とれた記者魂は今も今枝の芯に入ってキラキラ輝いていた 曲がらない男の苦悩を知った それで康太は今枝は見た 想わず手助けしてやりたくなる程に…… 今枝は色んなモノを抱えていた それでも想いは報道に携わりたいと輝いていた 珍しい魂を見せてくれた礼に、少しだけお節介を焼いた まさか……こんなにも康太の意向に沿った使える男になろうとは…… 想ってもいなかった 「康太さん、貴方の背負う荷物を少し下ろして下さい 貴方が今も私の魂が綺麗だと感じるなら…… 私に書かせて下さい」 「東城、報道規制はお前が張れ 今枝、お前は書け! それがお前の天性、真実を見抜いて書くが良い」 今枝は立ち上がると深々と頭を下げた 「康太さん……貴方がお一人で踏ん張られるのは恐怖です 愛していると広言して憚らない貴方が…… 伴侶殿と離れておられる姿は……苦しくて… 見ていられませんでした…… もう苦しまないで下さい…… その重い荷物を少しだけ下ろして下さい 私はその役に立ちたい……その為だけに私は生きてます」 「………今枝、何時見てもお前の記者魂は綺麗だな 曲がらず1本芯の入ったお前は……やはり融通が利かないか……」 康太は笑った 「貴方の側にいる方は皆頑固者なんですよ」 今枝も笑った 東城が康太に 「今度今枝が貴方との出会いを書きます」 と伝えた 「………え?出会いを?」 「一介の記者が出逢える相手ではないのですよ…貴方は……」 「……そうでもねぇだろ?」 康太は笑った 「貴方は御自分を知らない…… 今枝が言う通りですね」 東城はそう言い笑った そして姿勢を正すと 「貴方の意に添わぬ事は一切致しません 逐一ご報告をいれさせて戴きます それで宜しいですか?」 「あぁ、構わない」 「それでは会社に戻りまして直ぐに報道規制を引かさせて戴きます 今後協定違反は厳しくペナルティーを科します」 「オレは須賀の人権さえ守ってもらえれば何も言うつもりはねぇ」 「解ってます! それでは失礼します!」 東城と今枝は飛鳥井の家を後にした 須賀直人を生かそうと 優しさが繋がろうとしていた 優しさの輪が広がり 須賀直人の明日を生かそうとしていた 想いが繋がり明日へと紡ぐ希望を照らそうとしていた 須賀を優しさで包んでいた 「明日、オレは須賀に逢って来る」 「僕は仕事ですよ?」 「伊織、もう大丈夫だ 付きっ切りでいなくても大丈夫だ」 「本調子でない時位甘えてなさい」 榊原は康太を膝の上に乗せた 「本調子になるっても僕に甘えてなさい 僕達は離れては生きられないのですよ?」 「ん。解ってる。 何処か行くなら電話する」 「なら良いです。 何かあったら必ず僕を呼んで?」 「必ず呼ぶ。」 康太はそう言い榊原の胸に顔を埋めた 「僕が付き添える時は行きます」 「ん。病院もじぃちゃんと一緒に行くからな 伊織は会社に行ってて良いぜ」 「終わったら電話を下さいね」 「おう!電話する それかメールを入れる」 「僕も時間が出来たら君と合わせます」 「伊織…」 康太は榊原に抱き着いた 決して離れない 決して離さない その想いさえあれば生きて逝ける 共に…… この息が止まる瞬間まで…… 榊原は康太を抱き上げると寝室へと帰って行った 何時もの光景が戻って来て…… 一生達は胸をなで下ろした 優しさよ…… 刹那の恋人の上にも 優しく降り注げ 一生は願った 離れないなら明日を紡げる それだけを信じて生きて逝ける 一生は深く目を瞑った その背を優しく慎一が抱き締めた ソファーに座ってる聡一郎が抱き締めた 隼人も一生の膝に乗り 強く強く抱き締めた 東都日報が須賀直人を守るべく報道規制を引き、報道協定を締結させた 今枝浩二は飛鳥井家 真贋 飛鳥井康太との出逢いを書いた 当時映した写真と共に今枝が書いた本が売りに出された 発売と同時にミリオンセラーを打ち出す程の売れ行きだった 今枝浩二はその収益総てを須賀直人の治療費に充てると宣言した 須賀直人の【 今 】をテレビで放送するや反響は凄く、かなりの金額が東都日報に集まった 須賀直人はインタビューを受けて 立てない自分をさらけ出した 立てない 食事も自分で食べる事すら出来ない…… 生活の総てが出来ない自分をさらけ出すのは勇気がいる…… 須賀は敢えてその姿を見せた そしてカメラを見据えて 「次にお逢いする時は自分の足で立っている時です 私は飛鳥井康太に返す為に還ります 必ず還って第一線を走り出したいと想います」 と宣言した 血反吐を吐いても立ち上がる須賀の姿は…… 涙を誘った 「私は生かされてるんです あの人に生かされて、明日を繋いで行くんです」 汗を流し……リハビリ棒に掴まり歯を食い縛り…… 須賀は言った そこには……芸能事務所の社長の姿はなかった 「………明日……私は明日を生きるんです……」 今日ではなく明日を生きる 須賀の言葉が印象的だった 今枝はカメラ一台持って自分で撮りながら須賀と対話した ならばこそ紡げた言葉だった 今枝浩二は言った 「次にお目にかかる日は 貴方はフラッシュの向こうに立っていて下さい」 ……と。 須賀は笑った そして、手をふった それで番組は終わった 番組終了後、電話が鳴り響いた 何日経とうとも……励ましの手紙が後を絶たず 東都日報の東城は募金の経過を克明に示し 須賀の治療費に充てるべく支払いを行った 総て明確に示して、誠実に対応した 康太の負担を減らすべく皆が力を合わせた 力を合わ 明日へ繋げた優しさだった

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