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第56話 愛が始まる日 ②

飛鳥井の家に戻ると慎一が玄関まで出迎えてくれた 「源右衛門が話があるそうです」 「そうか。なら源右衛門を連れ出したら人払いしてくれ!」 康太はそう言い応接室へと向かった 応接室にいる源右衛門は清四郎や真矢、一生や聡一郎、隼人と仲良く座っていた 「じぃちゃん、オレの部屋のリビングに来い」 源右衛門を呼び寄せた 源右衛門は静に立ち上がると康太と共にリビングへ向かった リビングのソファーに座ると康太は 「あんの話だよ?」 と問い掛けた 「門前払いを食わされた… 逢う気すら寒山にはなかった…」 「なら破滅に進むしかねぇな じぃちゃんが行って拒むなら救いのステージは断たれた 後は破滅へと墜ちて行けば良い…」 「仕方あるまい…… 何故……何故あやつは変わってしまったのじゃ… わしには見えぬ……だから教えてくれ…」 「金だよ! 娘の婿と言うのがかなりの浪費癖のある奴で 寒山の資産を食い潰した 婿は借金があるから融和コーポレーションの言いなりだった 融和コーポレーションは貸金業もやってるかんな 寒山義継と飛鳥井源右衛門は旧知の仲…… と、知った融和コーポレーションが借金のカタに持ち掛けた話だ じぃちゃんは瑛兄に話を通させた 瑛兄は寒山の意向に沿って会食の場を設けてやった 会食の場は京極瑠璃子が来る手筈だった 京極瑠璃子は自分に自信があった 自分に靡かない男はいないと豪語するだけある女だ 伊織を誑し込む算段だった そして誑し込んだ伊織がクーデターを起こし 飛鳥井建設を乗っ取る絵図を書いていた 寒山は友を借金のカタに入れてしまった思いがある じぃちゃんに顔向け出来る筈はねぇ… 寒山も被害者だ…… だが、飛鳥井康太から榊原伊織を奪う手伝いをした 容赦はしねぇけどな」 「お前の好きにするが良い わしは何も言わぬ  友だったが……道を外せば…堕ちるしかあるまいて」 「どの道あの家は崩壊するしかねぇ… じぃちゃんも思ったろ? あの家、その物の家相が悪すぎる…… 何故破滅に進む様に建てた? 鬼門に玄関を持って来れば……栄華とは程遠い…」 「わしも玄関に立ち気付いた…… あれは誰かの復讐なのか? …………あそこまで家相が悪い家は…見たことない」 「滅ぶしかねぇんだよ じぃちゃん……友を惜しむなら……今夜電話してやれよ そしたら地獄へ突き進む道はなくなるかもな…」 覚悟を決めて見送る瞳は… 死相が消えなかった…… 破滅の先へ行く人間を止めれるのは…… 想いか…… 康太はそう言うと立ち上がった 「じぃちゃん、息子達が来てるんだ 側に行けよ! 近いうちに子供を戻す じぃちゃん孫の面倒を見てくれよ」 「………康太……」 「京香も戻し、仕事をさせる 来年には家も建つ そしたら飛鳥井は次代へ突き進むしかねぇんだ」 「解っておる」 「オレは隼人と寝てくる じぃちゃんは清四郎さん達と楽しんで来いよ」 康太はそう言いリビングを出ると隼人の部屋に行った 源右衛門は応接室に向かい 我が子との時間を満喫していた 夜になって榊原が飛鳥井の家に帰って来た 応接室を覗くと……康太の姿はなかった 「康太は?」 一生も聡一郎も隼人もいなかった 慎一が「隼人の部屋です」と榊原に教えた すると踵を返して応接室を出て行った 真矢が「………あの子の瞳には親は映ってないんでしょうか?」とボヤいた 清四郎も「………康太だけ探してましたね…」と苦笑した 「あんなに康太のストーカーばかりして嫌われないか……心配でなりません」 真矢は本気で心配する 慎一が「大丈夫ですよ。康太ですから!」と笑って答えた 榊原は隼人の部屋のドアを開けた すると床に雑魚寝する皆の姿があった 榊原は康太を抱き上げた 「康太、あれから寝てたのですか?」 「ん。寝てた……」 副社長室のソファーでも寝てた また熱でもあるのかと榊原は心配した 「康太、熱とか出てますか? それとも痛い所があるのですか?」 「違げぇよ伊織… おめぇが激しすぎるから怠いんだよ」 榊原は思わず頬を染めた そんな露骨に言われると少し恥ずかしいかも…… 「………愛が募りすぎてるんです…」 愛してる… そう思う上に愛が募ってゆく 愛のかたまりが莫大な量になり榊原は暴走する 愛してる…… その想いが止まれなくて…… 榊原を駆り立てる 「…………康太……嫌いにならないで……」 康太は榊原の首に腕を回し 「愛してるかんな!」 と接吻を落とした 「オレだけの伊織だかんな! 愛して止まないんだよ!」 康太は優しく笑っていた 康太を抱き上げ……紡がれる睦言に…… 一生は勘弁しろよ……と思った 「旦那…康太は夕飯を待ってる…」 と腹減りを伝えた 榊原は康太をキッチンに座らせて着替えに行った 仕事から帰った玲香は既にテーブルの前に座ってる康太に後退った…… 「もういたのかえ……」 早く支度をせねば……と想った 「母ちゃん」 「何だ、腹が減ってるなら沢庵でも食べるか?」 「京香を家に戻す そしたら母ちゃんも少しは楽になるだろ?」 「京香が戻るならな楽になるな  でも構わぬぞ!掃除は伊織がする 洗濯は各々がする! 我は食事の支度だけだ苦ではない」 「伊織が……我が子と離れていたくねぇと言うかんな 側に呼び寄せ様と想う 母ちゃん大変だけど……面倒を見てくれるか? コオも引き取って来ねぇとな」 「子守は楽しいからな苦ではない コオは裏から貰い受ければよい お祖父様が散歩に連れて行ってくれるだろう」 「母ちゃん、苦労をかけるな」 「我は飛鳥井の女 そんなのは苦労にも入らぬ きっと京香もそう言うであろう 京香も誰よりも飛鳥井の女だからのぉ…」 「………母ちゃん…ありがとう…」 「ほら、沢山お食べ! 一生、お祖父様と清四郎さん達を連れて参れ」 玲香が言うと一生は 「あいよ!」とキッチンを出て行った 暫くすると源右衛門と清四郎と真矢がやって来た 「あれ?伊織は?」 真矢が問い掛ける ガツガツ食ってる康太の代わりに一生が 「着替えに行った きっと洗濯でもしてるんじゃないかな? 掃除でも始めたら……中々来ないんじゃないかな?」 綺麗好きな榊原は常に掃除と洗濯は手を抜かない 「旦那は康太が何処にも行かねぇなら掃除と洗濯を優先する…… 不在が多かったからな……気になるんだろ?」 と言い榊原の分をラップした 清四郎は「良くある事なんですか?」と問い掛けた 何が何でも康太の側を離れないと想っていたから…… 「康太が動かないなら旦那は他をやる 最近は別行動も多い、常にベッタリは無理だからな」 榊原の立場を想う 「一生、一緒に飯食わねぇと今夜は隼人の部屋で寝るぞ!と言って来い」 康太が笑って一生に言うと、一生は席を立ち上がった 一生が榊原に告げると直ぐに榊原はキッチンに現れた 何という……現金なのこの子……真矢は呆れた 榊原はラップを外して食事をしてゆく 緑茶を飲んだ康太が動こうとすると掴んで膝の上に乗せた 自分が食べながら康太の口に沢庵を放り込む 見かねた慎一が康太にプリンを渡した 「父さん、母さん、今夜は泊まりませんか? 多分…家にいても落ち着きませんよ」 引っ越しのトラックが清四郎の家に着くと業者が出入りする そして、片付けを目の前に手伝わなきゃ……とか気を使う…… 「………なら泊めて戴きます」 清四郎は泊まる事を告げた 「飛鳥井は部屋なら沢山あります どの部屋でもお好きにどうぞ!」 「………客間で良いです……」 「賢明ですね。 僕は今夜も頑張って康太を愛すのに忙しいです その前に片付けておかなきゃならない事があります」 榊原は慌ただしく食事を終えると、食器を食洗機に突っ込み洗うセットをした そしてキッチンを出て行った 「………今夜もかよ……」 康太は肩を落とした…… 「………康太……愛で乗り切れ……」 一生はエールを送った 「愛なら溢れる程にあるけどな…… 伊織の体力について行けれる体躯がねぇんだよ 伊織はしっこいからよぉ……」 「………おい……」 「じじぃなみのしつこさだせ!」 愚痴る康太を肘で突っ突いた 「あんだよ?一生 オレは可哀相だと想わねぇか? 伊織に美味しく食べられてさ……」 嘆く康太の背後から…… 「なら今夜も美味しく食べさせて貰います」 と声がして……康太は飛び上がった 気配を消して来たのだ…… 「………伊織……何時から?」 「じじぃなみのしつこさ…からです」 榊原はニコッと嗤った 「気配を消すな……んとによぉ…」 一生が「だから、おい…って言ったやん…」 と零した 「………一生、オレ、美味しく食べられて来るわ」 一生は康太に手をふった 榊原に抱き上げられて持ち運ばれて行く康太を 心の中で拝んでおいた ………康太……堪えろ…… 真矢は……康太が可哀相だった 「……寝かせてあげれば良いのに……」 と思わず言う 清四郎も「………毎晩は……可哀相です」と康太の身を案じた 一生はお気楽に 「伊織の兄なら笙さんもかなりかな? 佐伯…可哀想に……腹の子大丈夫かよ?」 と呟いた 「…………腹の子の為に笙には言い聞かせねば…」 聞く訳ないけど……と清四郎は想った 「濃い兄弟だよな……」 一生の言葉を慎一は止めた 「一生!人様の下半身事情など気にしなくて良いです」 と注意した 「………ごめん慎一…」 一生は謝った 慎一は笑って一生を撫でると、源右衛門からの言伝てを清四郎と真矢に伝えるべく口を開いた 「清四郎さん、源右衛門がご一緒に寝ませんか? と言ってます。どうなさいますか?」 慎一は本来の要件を清四郎に言った 「父さんと……良いですね」 清四郎は楽しそうに返した 「源右衛門と清隆さんと清四郎さんとで寝ましょう!と言ってます 真矢さんは玲香さんと女同士でどうですか? もう直ぐ美緒さんも来ます 女同士で飲みましょうとの事です」 真矢は瞳を輝かせた 「楽しい一時を送れそうですね! では、美緒さんがおみえになったらご一緒させて戴きます あなたはお父様とお弟と楽しくね」 「真矢……ありがとう」 清四郎は妻にお礼を言い源右衛門の部屋に向かった 真矢は一生に 「誰の計らい?」と問い掛けた 「康太ですよ 真矢さんも休暇が必要です 女同士、花を咲かせて飲むと良いと義母さんに頼んでました」 「素敵な一時は康太からのプレゼントですか では楽しまないとね」 「康太から聞きましたか? 太陽と大空が帰って来ます 他の子供も帰って来ます  伊織が自分の子供と離れるのは耐えられないと  康太に言ったそうです」 「聞きました。 忙しくなるわね 翔はもうじき1歳ね 歩き始めたのよ?知ってる?」 「知りませんでした……」 「私はちょくちょく京香の所へ行くの そしたらね翔は歩いていたわ 今はね修行から戻されて全員京香の所にいるわ 流生はハイハイして元気よ 音弥は隼人にそっくり 流生は貴方にそっくりよ 皆大きくなって育ってたわ 今は慎一の子も京香の所にいたわ 和希と和馬も来年は小学生ね 北斗って子も来年は小学校だと京香が言ってましたね 北斗って一生の子なんでしょ? 授業参観は私か清四郎も行くわ どの子も可愛い、分け隔てなく育てます」 一生は立ち上がり真矢に深々と頭を下げた 「真矢さん、本当にありがとうございます 北斗は康太に託された俺の子です」 「そうなのね、知らなかったわ 一生、頭を上げなさい 康太の子は曲がらない様に見守る 他の子も曲がらない様に愛を注ぐ そうして受け継がれ育ってゆくの 愛が受け継がれ繋がってゆく 一生の愛も……そうしてわが子に受け継がれてゆくのよ 一生、皆がいる…だから大丈夫よ」 真矢は優しく一生を抱き締めた 一生は母の愛に包まれて……泣いた 美緒が来て玲香が応接室に呼びに行くと 真矢は菩薩のような優しい顔をして一生を抱き締めていた 「真矢、今夜は盛り上がろうぞ!」 玲香が言うと真矢は一生を離した そして玲香と共に応接室を後にした 「……ぁぁっ……伊織……もぅ許して…」 汗だくになり……康太の体躯が逃げだして離れようとする それを引き寄せ奥へと挿入した 「……ゃ……伊織……深い……」 康太を体躯の上に乗せ、榊原は夢の中の自分に負けない様に、康太の乳首に吸い付いた 乳首が痛いほどだった 吸われて痛みが快感に変わって康太を苦しめた 「夢での僕は頑張ってたんでしょ? なら僕も頑張って吸います 君の乳首を誰よりも美味しく食べます!」 そう言いチュッと乳首を吸った 真っ赤に色付いた康太の乳首が…… 美味しそうに尖っていた 「全部僕のモノです! 君の総ては僕だけのモノです!」 「……伊織だけの……ぁぁん……痛い…吸わないでぇ…」 「赤くて美味しそうになりました 乳首だけでイキなさい イケるでしょ?」 康太の性器は膨張して…はち切れそうになっていた ちょっと刺激を与えれば……イッてしまう 榊原は乳首を舌で転がした、そして甘噛みすると…… 「あっ……あぁん……イク………っ……」 榊原の腹に白濁を飛ばした 康太は意識を飛ばして……崩れた 榊原は康太を寝かせ足を抱えると、満足するまで腰を揺すった そして総て康太の中に吐き出すと……抜いた 康太を抱き締め、ゴロンと転がり込康太を胸の上に乗せた またギリギリ限界まで康太を酷使した 怠いと寝てるのに…… 止まれなくて……康太を抱き潰した 康太の乳首は赤く腫れ上がっていた 吸い過ぎ敏感になった乳首はピクピク震えていた 康太の頭を撫でキスの雨を降らせた 愛してる 愛してる……と思った想いの先から 愛が募る 離れていると不安で 顔を見ると欲しくなる 嫌われたら……と想うと…… 死にたくなる 愛して……康太 愛してるって……言って…… 康太は目を醒ますと榊原の胸に頬を擦り寄せた 「気付きましたか?」 「ん。オレまた気絶してた?」 「…………康太……嫌いにならないで……」 「……え?あんでオレが伊織を嫌うんだよ!」 「しつこい男は嫌われると……父さんが……」 「大丈夫だ!伊織 オレのお前への想いは遥か昔から揺らがない お前にされて厭な事など一つもない それより気絶ばかりするオレに愛想尽かされないか……その方が心配だ」 「僕の想いも遥か昔から揺らがないです! 炎帝だけを愛しています」 「………伊織……なら大丈夫だ オレ達は人の世を全うして魔界に還っても離れない この魂が消滅するその瞬間まで…… オレ達は共に在る……そうだろ?青龍……」 榊原は康太を強く抱き締めた 「ええ。ええ……炎帝……未来永劫、僕達は離れたりはしません…… 愛してます…君だけを。」 「………伊織…」 「何ですか?」 「………乳首が痛い…… 敏感になりすぎて…明日服を着ても… 感じる…どうしてくれるんだよ…」 「欲しくなったら言って…… そしたら君の欲しいだけ抱いてあげます」 「……伊織……寝よう……」 「ええ。僕のは掻き出しました 朝まで眠りましょう」 榊原は康太を抱き寄せた 康太は榊原の横に寝そべり胸に顔を埋めた 疲れに身を任せ…… 眠りに落ちた…… 朝、目が醒めると康太が榊原の髪を撫でていた 「……康太…」 「伊織おはよう」 優しくキスを落とし康太は笑った 「起きてたの? どうしたの?お腹痛いの?」 心配性の榊原はすぐに康太の心配をする 「伊織の寝顔を見てたかったんだよ」 「………なんか恥ずかしいです…」 「………伊織……やっぱし…乳首が痛い…」 吸い過ぎた思いはある 夢の自分に負けたくなくて……吸いまくった 「……ごめんね…… 今日はずっと側にいますか?」 「………いい…伊織は仕事しろよ」 「………気になって手が付きません…」 「………伊織、新婚旅行が中止になる… それは嫌なんだ…伊織と新婚旅行行きたい 一緒に温泉入りたい……伊織と……」 康太はポッと頬を赤らめた 「なら僕は頑張ります! 何かあったら直ぐに電話して下さいね」 「おう!今日は神野と飯に行く その後、繁雄と相談しなきゃならねぇかんな…」 「誰か連れて行って下さいね! 一人で動いて誘拐でもされたら…… 僕はソイツを殺します!」 「………伊織、大丈夫だ! 慎一の車で行くかんな!」 榊原は浴室に康太を連れて行き、中も外も綺麗に洗い上げる そして二人してお湯に浸かり寛ぐ 浴室から出ると康太の髪を乾かし支度をする   今日は康太にスーツを着せた そして支度が終わると抱き上げてリビングのソファーに座らせた 何時もの日常が戻って来ていた 榊原は自分の支度をして、掃除と洗濯に精を出す 飛鳥井の家をピカピカに磨き上げる 榊原の日常が戻ってきた 自分の部屋の掃除を終えると、キッチンの床とテーブルを磨き上げる そして玄関に行き床と靴箱を磨き上げる 廊下を磨き上げ、応接室を磨き上げてると真矢に出くわした 「………伊織……朝から元気ですね」 「康太を補充すれば僕は無敵です!」 爽やかに笑い台詞は際どい……真矢は苦笑した そこに玲香がやって来て 「キッチンは終わったのか?」 と問い掛けた 「ええ。終わりました!」 「なら朝を作るとする 康太が腹減りであろうて」 玲香は笑ってキッチンに入って行った 掃除を終えると榊原は自分の部屋に戻って行った リビングのソファーには康太と一生が座っていた 一生は康太の膝の上に顔を埋めていた 「……何かありましたか?」 榊原は康太に声をかけた 「調子が悪いんだよ一生は……」 「………え?大丈夫なのですか?」 「慎一に病院に行かせる オレは神野と話があるかんな」 康太が言うと一生は噛み付いた 「俺は大丈夫だ! 一緒に行く!行ける!」 「無理するな一生 熱があるだろ? 昨日、大人しかったのは調子が悪かったからだろ?」 「………いやだ……」 一生は泣いた 「………康太、三木は外せないでしょうが…神野は? 大切な用事なんですか?」 「伊織……次のCMの予算とか決める大事な話がある 詰めねば……ポシャるしかねぇかんな それだけは避けてぇんだ、だから外せねぇ!」 「そうですか…… 一生はどんな調子なんですか?」 「………今朝逃げる所を掴まえた この男は調子が悪いと…気付かせねぇ様に距離を取ろうとする」 榊原は康太の横に座った そして一生の頬に触れた 高熱と言う程の熱はない 榊原は康太の顔を見た 「嘔吐したんだよ ここ最近食事もあんまししねぇ」 「………一度病院に行かないと駄目ですね」 「だろ?一生は定期的に検査せねばならないと思う 慎吾も綾香も癌だ……気をつけねぇとな」 榊原は言葉をなくした 「伊織、会社に行け」 「一生は?」 「慎一か聡一郎がやる 慎一は兄で聡一郎は一生のモノだ」 「……康太は?一人で行くのですか?」 「下まで神野が来る 帰りも送って来てくれる 繁雄もそうだ……送り迎えしてくれる」 「……康太、何かあったら電話して下さいね!」 「解ってる!」 「伊織、オレは大丈夫だ オレを誘拐したとしても弥勒の瞳からは逃げられねぇ 弥勒はオレをお前以外のモノには渡さねぇ!」 「……康太……」 キッチンに顔を出さない康太に、慎一が呼びに来た 「康太、何かありましたか?」 慎一が呼び掛ける 「慎一、一生を病院に連れて行ってくれ」 慎一は具合の悪そうな一生を見た 「君、昨日は静かでしたね 具合が悪かったのですか?」 慎一は一生の髪を掻き上げた 「慎一、頼めるか?」 「貴方は?」 「オレは午前中は神野が迎えに来る 午後からは繁雄が迎えに来る だから気にするな!」 「………康太……危篤になっても一生は貴方の側に行きますよ?」 「………慎一、取り敢えず病院に連れて行け」 「解りました。義恭先生に連絡してみます」 そう言い慎一はリビングを出て行った 「一生、オレは腹が減ってる… キッチンに行かせてくれ…」 康太が頼むと一生は離れた その顔は青褪めて……生気をなくしていた 「康太、君は食べてらっしゃい」 「伊織は?」 「慎一が来るまで見ています」 康太は唇を尖らせた…… 「………食べて来る……」 そう言うとリビングを出て行った キッチンに行くと玲香が康太の前に食事を置いた 悠大がおかずを置いて準備する 玲香は「伊織はどうしたのじゃ?」と問い掛けた まさか……喧嘩じゃないだろうな……と心配する 「一生が体調悪いんだよ…」 康太が言うと聡一郎は走った そして清四郎や瑛太も一生の傍へ見に行った 「母ちゃん」 「なんじゃ?」 「ありがとうな」 玲香は康太を見た 「……何を改まって……」 「言ってなかったからな…」 康太はそう言い笑った 食事を終えると康太は神野に電話を入れた

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