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第6話 夢? それとも

 次の朝、俺はまたもや伊央利の声とドアを叩く音で目を覚ました。  この日の朝食当番は俺の方だったが、ダイニングへ行くと、既に伊央利が作ってくれていた。 「……あ、ごめん。伊央利」 「いいよ。昨夜はおまえ、疲れただろうしな」  きれいなキツネ色に焼けたトーストにバターをぬる伊央利にいつもと変わったところはない。  やっぱり、あれは夢だったのかな……ていうか、どこからどこまでが現実?  机に突っ伏して眠ってしまった俺を伊央利がベッドに運んでくれたのは……多分、現実。  そして。  まぶたに何度も何度も贈られ、最後にかすめるように唇へ贈られたキス。  伊央利からのキス……あれは現実だったのだろうか……?  真実が分からないまま一週間が過ぎた放課後、俺は親友の武義(たけよし)に頼まれて買い物の付き合いをしていた。 「大和、大丈夫かよ?」 「え? 何が」 「ここ数日、なんかおまえ心ここにあらずって感じだからさ。なにか悩み事でもあるのか?」 「別になにもないけど?」  そんなふうに親友には答えたものの、実のところ俺の心は一週間前の夜の出来事のことから離れてくれない。  伊央利……俺にキスしてくれた?    それがもし現実だったとすれば、もしかすると伊央利もほんの少しは俺のこと、好きでいてくれる?  いや、そんなことがあるはずない。あれは夢だったんだ。  俺はふるふると勢いよく首を振った。  よしんば現実だったとしても、単なる双子の弟に対する親愛の情というか、そういうので、そこに特別な意味などあるはずがない。 「大和、おまえ本当に大丈夫かよ?」  俺の様子を隣りで見ていた武義が少し引き気味に再び声を掛けて来る。 「だ、大丈夫。それより武義、もう買いたいものは終わり?」 「あとDVDが欲しいんだけど」 「じゃ、Rモールにある店がいいね。品揃え豊富だ……あっ」 「え? なに? 大和」 「ごめん。急用思い出したから、俺、帰るね」 「え? え? ちょー待てよ。やま――」  不思議そうな親友の声を背に、俺は通りを挟んだファストフード店へと走る。  ついさっき伊央利がそこへ入っていく後ろ姿が見えたのだ。

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