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第7話 ハンバーガーショップで
今日の晩ごはんの当番は伊央利である。
もしかしたら、めんどくさくなって今夜はハンバーガーを買って済ますことにしたのかもしれない。
それなら、ここで食べて帰った方が手っ取り早いし、二人きりで外食するなんて珍しいからプチデート気分を味わえるような気もする。
ファストフード店に入り、伊央利の姿を探す。
てっきりカウンターで注文をしているとばかり思っていた伊央利は、大きな観葉植物でしきられた一番奥にあるテーブルに背を向けて座っていた。
「伊央――」
声を掛けようとして凍り付く。
伊央利は一人ではなかった。入口からでは観葉植物が邪魔をして見えなかったが、向かいにさやかが座っていたのだ。
「…………」
俺はそこから逃げ出そうとして、思いとどまる。
二人がどんな話をしているのかが気になったからだ。
偶然会って、ちょっと立ち寄っただけかもしれないし。
自分を慰めるように俺は考えると、二人に見つからないように、すぐ後ろの席に小さく丸まって腰かけた。
騒がしいファストフード店の中、俺は耳に全神経を集中した。
しばらく話に聞き耳を立てているうちに、俺の心は徐々に安堵して来る。
どうやら伊央利とさやかがここで会っているのは参考書の貸し借りのためらしい。
尚も二人の話に耳をそばだてていると、さやかの口から唐突に俺の名前が出た。
「ところで今夜の食事当番は大和くん? またお鍋焦がしてないかな?」
「今日の当番は俺だよ。大和は友達と買い物」
「あら、いいのー?」
「なにが?」
「大和くんを他の誰かとデートさせて」
さやかが訳の分からないことを言った。
何で俺と武義が買い物することがデートになるんだ?
俺の怪訝な思いを双子の以心伝心か、伊央利が代弁してくれた。
「男友達の買い物につき合ってるだけだ」
少し不機嫌そうな声で。
「ふふふー」
さやかはなぜか意味深な含み笑いをしたあと、言葉を重ねる。
「それにしても大和くんって、本当にかわいいよねー。すっごいブラコンって言うのか。あんなにかわいい弟にあんなに懐かれて、うれしいでしょ、伊央利」
さやかのその質問に、俺は心臓が飛び出しそうな思いを味わっていた。
伊央利はなんて答えるんだろう?
伊央利の言葉を一言一句漏らさずにおこうと、俺は店内のざわめきをシャットアウトした。
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