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第9話 塞がらない傷口
俺はそれからできる限り伊央利を避け続けた。朝の補習も理由をつけて一緒に行くのをやめたし、伊央利が食事当番のときは時間をずらし遅くに食べ、俺が当番のときは逆に早く食べてさっさと部屋へと引っ込んだ。
形だけにしろ心配してくれる伊央利には、
「なんでもない」「今、眠い」「勉強中」の三パターンで応じた。自分でも可愛げがないと思いつつも。
学校では元々あんまり話はしない方だったから、俺と伊央利はもう随分まともに顔を合わして話をしていない。
でもこれでいいんだと思う。
このまま避け続けていれば、俺もきっとこの普通じゃない恋心を忘れられる日がやって来る……と思う
というか、思いたい。
しかし、そんな願いに反して俺の心の傷口はなかなか塞がってくれなかった。
伊央利の放った冷たい言葉が脳裏に蘇る度、傷口は深くえぐれていくばかりだった。
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