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第4話
ちらりとアキの方を見ると、彼は高崎の反応を伺うように両手でしなを作って、「いいから早く飲め」と視線で促した。
ジン・トニックはバーテンダーの腕前を知るには最高のカクテルとされている。実際、高崎が初めてアキに作らせたものもそれだった。彼の腕は想像以上だった。先にアキのだらしのない一面を見ていたので、過小評価しすぎていたのかもしれないが。
高崎は出会った当時を思い出しながら静かにグラスを傾けた。すっきりとしたジンにレモンの酸味が合わさって、喉の奥を伝っていく。炭酸の刺激がこの鬱陶しい季節には最適だった。
「美味しい?」
「普通だ」
「なら良かった」
アキはほっとしたように身体の力を抜き、目を細めて笑った。
「あなたがそう言うなら間違いないから」
「美味いとは言ってないが」
高崎は怪訝な顔をして眉を顰めたが、アキはそんな表情すら嬉しいとばかりに、さらに上機嫌になった。
「だって真人さんは好き嫌いハッキリしてるから、もし不味かったら、そもそも口つけた瞬間に飲むのやめちゃうでしょ? それに真人さんの普通は普通じゃないっすから!」
「そういえばお前、また飲んできたのか?」
話をすり替えるように高崎がそう尋ねると、アキは大げさにギクリと肩を揺らした。店に遅刻してきたこと、いつも以上に饒舌なしゃべり口。そして目の端がわずかに赤くなっていることから、高崎はそう判断した。もっともそんなに細かい変化に気づいたのは、彼のことを本人に悟られないように見ていたからだが。
これまでにも何度かこのようなことはあり、初めはその不真面目な態度をたしなめてはいたものの、回数を重ねられるたびに苛立ちよりも呆れが生じてきたため、今は彼の特性だと思ってそのままにしている。
だが、今日のようにしばらく間をおいてその話題を持ち出すと、アキは途端にあたふたと取り乱し、言い訳をするのだ。
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