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第12話
暗闇の中、白い光が煌々と照らす先に、屈みこむ影が見える。店から少し離れた一角、路地裏の電柱の脇にアキはうずくまっていた。
「……っ」
悪い予感は的中した。高崎が駆けつけた時にはすでにアキは虫の息だった。傍に駆け寄ると生気の抜けた表情で見上げてくる。目は虚ろで焦点が合わなかった。
「アキ……」
足元の水たまりは血に染まり、街灯の明かりに照らされてどす黒く光っている。アキは脇腹から大量に出血していた。傷の具合から察するに拳銃で撃たれたようだ。
「誰にやられた?」
低く落ち着いた声で高崎は尋ねたが、アキは首を振るだけで何も答えなかった。その態度から、アキは何かを知っていると悟ったが、今の彼を問い詰めることは高崎にはできなかった。アキの細い身体は寒さと失血で、嘘のようにガタガタと震え続ける。高崎は羽織っていたジャケットをその肩にかけた。雨に濡れ、重さを増してはいるが、何もないよりはマシだと思えた。
痛みで苦しいはずなのに、ジャケットを羽織らせた途端、アキの表情がわずかに和らいだ。
「まことさ、ん……」
「話さなくていい」
「来て……くれた……の?」
「黙れ」
高崎はアキの問いかけを遮り、ポケットに入れたスマートフォンを取り出す。だが、一度取り出したそれを、無言で元の位置に戻した。今更助けを呼んでも助からないことは、誰の目にも明らかだった。
せめて最期のひと時をふたりきりで過ごしたい。いつの間にか高崎の中で、アキの存在はかけがえのないものになっていた。今にも消えてしまいそうな灯火を、最期の瞬間まで見届けたかった。
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