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第16話

 その報らせを聞いたのは、アキとの最期のひと時を過ごしてから三日ほど経った時だった。その事実はある程度予測していたものだったが、正面から突きつけられると、改めて黒い感情が沸き起こる。  アキを襲ったのは、神谷と敵対する組織が差し向けた鉄砲玉だった。その男を捕らえ口を割らせようとしたが、なかなか吐かないらしい。部下からの報告を受け、高崎はその男を捕らえている廃工場へと車を走らせた。  目的地に着き車を停めると、外からドアが開く。潮風の匂いが、鼻をかすめた。 「ヤツはどこだ?」 「こちらに。この扉の奥です」  ドアを開けた男は腹心であり右腕でもある、高崎にとって、もっとも信頼できる西田という男だ。高崎が表立って動けない時は、西田が全ての指揮を執る。アキを襲撃した犯人を見つけたのも、この男の手柄だった。  彼が先導するままに廃工場へと進もうとした高崎だが、ふと足を止め、先を行く西田へ声をかけた。 「お前らはここに残れ。中の連中も全員外へ出せ。今すぐだ」 「おひとりでカタをつけると?」 「……」  西田の問いには答えず、高崎はジャケットの内側に手を伸ばした。その様子を見て、西田は無言でその場を後にした。

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