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第17話
工場内は閑散としている。歩みを進めるたびに革靴がコンクリートを叩くコツコツとした高い音が鳴って、埃が立ち昇る。
目標はすぐに見つかった。すでに拷問を受けた後なのか、男は座った状態で後手に拘束され、柱にくくりつけられたまま、ピクリとも動かなかった。顔面が血に塗れ、醜く腫れ上がっている。
距離を縮めるごとに鉄臭さが鼻につき、高崎は眉をひそめた。普段ならばどうってことはないが、この男がアキを手にかけたのだと思うだけで、憎しみにも似た怒りが沸々と湧き上がるのだ。
迫り来る気配を察したのか、ようやく男は顔を上げた。思いの外、幼い顔立ちをしている。アキと同世代なのかもしれない。だが、その事実は高崎の怒りを助長させただけだった。
「神谷のオンナに手にかけたのはお前か?」
低く感情を押し殺した声色で、高崎は男に尋ねた。男はその声に重い頭をゆっくりと持ち上げた。西田たちの拷問に耐えただけはある。黙りを決め込んだままだが、腫れた目蓋の下から覗く瞳は、不遜な光を灯していた。
「もう一度聞こう。神谷のオンナを殺ったのはお前か?」
「……」
「そうか……わかった、もういい」
男の態度が変わらないと悟った高崎は、無言で右手に持っていたものを標的に向けた。そして男が目を瞠る間もなく、脇腹を目がけて重い一撃を食らわせた。
刹那、ドンッという衝撃音が廃工場に響き渡る。男は数回瞬きをし、ゆっくりと視線を下ろした。じわじわと滲み出てくる痛覚。撃たれた、と理解した時にはすでに、高崎は目の前に迫っていた。
「痛いか?」
「ひっ……あぐっ!」
高崎は男の目線に合わせてしゃがみこみ、まだ熱を帯びたままの銃身を腹部に穿たれた銃槍にねじ込んだ。
「楽に死ねると思うなよ」
「い、っ、がぁあああ……っ!」
「苦しいか?」
男の腹の中で繰り広げられている惨劇は、灼熱の男根で直腸内を抉り出す感覚と似ている。銃身を上下左右に動かすたびに、ごぽりごぽりと鮮血が溢れ出す。先走りにも似たその光景は、この男の前では何の感動もない。アキを殺した男にかける慈悲など、ハナから持ち合わせてはいなかった。
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