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「寝るまで一緒にいるからね」  光伸はそう言って、ポンポンと優しく智治(ともはる)の腰を叩く。 「お兄ちゃんは優しいね」 「優しくなんかないよ」  光伸は苦笑する。本当に優しかったら、こんなところに弟を一人残したりはしないはずだ。 「優しいよ。お兄ちゃんだけだから、僕に構ってくれるのは」  元々近い身体を更に寄せられ、光伸は腰に腕を回し抱き寄せる。食事もまともに出されていないのか、智治の身体は男にしては細い。外に出て運動も出来ないのだから、筋力も相当衰えているだろう。 「お父様もお母様も、僕のこと嫌いなのかな」  腕の中で呟いた智治の言葉に、光伸は悔しさから奥歯を噛む。腕の力を強めて「そんなことはない」と宥める。 「きっと、智治に顔向けできないだけなんだ。こんなとこに閉じ込めなくちゃいけなくなって、智治に恨まれてるって思っているのかもしれないね」 「恨んでなんかないよ。だって、悪いのは僕だから」 「智治は何も悪くない」  堪らず光伸は声を上げた。悪いのはオメガだという理由だけで、厄介者扱いにしている周りの人間だ。 「僕がオメガに生まれたからいけないんだ」 「それは違う」 「お兄ちゃんみたいに、アルファだったら……お父様もお母様もこんなことする必要はなかったから」 「……智治」  か細い身体が小刻みに震え出す。光伸はそれを宥めるように摩った。 「いいかい? 僕はどんなことがあってもお前の味方だからね。たとえ命に代えてでも、お前を守ってやる」  光伸の言葉に智治が力なく頷く。  智治の寝息が聞こえるまで、光伸はか弱い身体を抱きしめ続けた。

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