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「――っ」  穿つように光伸は腰を打ち付ける。理性を失い、獲物にかぶり付く獣と化していた。  肌がぶつかる音。智治の悲鳴。汗と欲情の匂い。  思考を奪うような悦楽が全身を襲う。  光伸は智治を宥めるように昂ぶりを扱き、項に舌を這わせる。 「やっ……ああっ、おにいちゃん」  身体を震わせ智治が吐精する。濡れた後孔が痙攣し、光伸は堪えきれずに項を噛みつく。鉄の味が口腔に広がる。急激に身体の奥から込み上げる快楽と多幸感。智治の身体を力強く抱きしめ、奥で精を吐き出す。智治が再び掠れた声で悲鳴を上げると、ぐったりと光伸にもたれ掛かった。  荒い息づかいを繰り返し、光伸は智治の汗に濡れた首筋に顔を埋める。項にはしっかりと歯形が残っていた。 「智治、大丈夫か?」  声をかけるも智治は反応を示さない。慌てて身体を自分に向け、瞼を閉ざす智治の身体を揺さぶる。 「智治!」  光伸が再び名を呼ぶと、智治が僅かに身じろぎをする。疲れ果てたのか、眠っているだけのようだった。光伸は安堵の息を吐きだすと、智治を布団に横たわらせる。身体を拭いてやり、着流しを着せてやる。  自分の身なりを整えると、静かな寝息を立てている智治の隣に光伸も横たわった。  激しい眠気に瞼が重くなる。だが、やらねばならないことが残っていた。  男の死体を片付け、床の血痕を洗い流す。父が帰ってくるまでに、智治と共に此処を出る用意を調えなくてはいけない。  父がいない今、二人が逃げ出す好機でもある。父が戻れば、男の死体が見つかるが先か、二人が番になったことが知られるのが先か――どちらにしろ、ただでは済まされないだろう。

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