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第6話 記憶(5)

「ローウ。そんなに拗ねないで、もう出てきて?ごはん冷めちゃうよ。早く食べよう?・・・それとも、天使の作ったごはんなんて、食べる気になれない?」  扉越しに、恐らく中で布団にくるまっているであろうロウへと話しかける。 「そっんなこと、は、ない。」  少し焦ったような声で、ボソッと僕の問いへの否定が聞こえた。 「じゃあ、ごはん、一緒に食べよう?今日はロウの好きなハンバーグだよ。」  また、扉の向こうへと話しかける。 「・・・チーズは?」 「もちろん入ってるよ!」  小さく開いた扉から覗くその顔に、笑顔で答える。 「じゃあ、食べる。」  そーっと出てきたロウの表情は、笑っていた。 「美味しい?」 「・・・うん。」 「そっか、よかった。」  ロウは、ハンバーグを小さく切り分けながら、美味しそうに口へと運んでいる。気付いているのかどうかは知らないが、口に含む度に、頬が緩んでいる。 「・・・なんだよ。人の事ジロジロ見て。」  ロウが僕を少し睨んでそう言う。むすっとしていて、すこし頬を膨らませているのが可愛い。 (あんまり誰とも話してなかったからかな。庇護欲が湧く。)  心の中でそう呟いたが、口には出さない。もし口に出してしまったらきっと、「俺はそんな弱くないっ!」と言って、怒られるだろう。ロウの肘打ちは、けっこう痛い。出来ればもう食らいたくない。うん。 「ごめん。何でもないよ。」  表情を崩して謝る。きっと、笑みが含まれていたのだと思う。まだ少し、ロウがむくれている。 「ごめんって。」  頬を膨らませて睨み付けてくるロウの頭をなでる。 「・・・別に、怒ってない。」  すると、ロウは頬をしぼませ視線を下に落として、身をまかせてくる。お皿の上のごはんは、もう空だった。 「そっか、よかった。ありがとう。」  ふっと、頬が緩む。笑みが溢れて、零れる。 「何で礼なんか言うんだよ。」  ロウが上目遣いでこちらを見つめてくる。まあ、角度的にしょうがないんだけど。 「何となくかな。」 (本当、何でなのかな。)  僕はロウと初めて出会って、助けたときのように、少しだけ頬を緩ませて、笑った。  そして、僕とロウが暮らし始めてから、4年がたった。

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