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第7話 記憶(6)

「中学校?」  僕はロウに、人間たちが通う学校に行ってみるかどうかを尋ねていた。 「うん、そう。中学校。」 「俺が通うのか?その、人間たちが通っている学校に?」  ロウが、心底意味が解らないという顔で僕を見る。ついでに、首もかしげている。 「うん。人間界で暮らしていくなら、ある程度の知識があった方がいいし、学校なら、一定の知識をつけてくれるからね。どう?」  首をかしげているロウに、笑顔で尋ねる。 「・・・行く。その方がいいんだろ?俺たちにとって。」  ロウは、少し寂しそうに、まだ納得いかなさそうにボソッと答える。その仕草には、まだ子供の頃の面影があり、自然と顔が綻ぶ。 「うん。それに、ロウが同年代の友人を作るいい機会だしね。」  ロウは12歳。人間ではないもののまだ同世代が同じくらいの見た目でいる期間だ。 「でも、その同世代の奴らって人間だろ。」  ロウはそれと少し間を開けて、 「俺たちとは生きている時間が違う。下手に情が移っても辛いだけじゃないか?」  と言う。 (友達になれることは否定しないんだ。)  どうやら、人が信用できない訳ではないらしい。 「それでも、人間の知識は身に着けておいたほうがいいし、もう変化の魔法使えるでしょ?それに、利用できるものは利用しなくちゃ。」  天使が人を「利用」なんて、引かれるだろうか。少なくとも、人間は絶望するだろう。もしくは、焦がれる。「だましやがったな、この悪魔めっ!」「天使様、どうか私を使ってください。」そんなセリフが、容易に想像できる。人間は、愚かな生き物だ。 「・・・分かった。学校、行くよ。その方が都合がいいんだろ?」  しばらくして、ロウはそう決断した。 「うん。候補はいくつかあるんだけど、何か希望ある?」  あらかじめまとめてあった資料を棚から取り出してロウの前に並べてみせる。 「・・・この霧ケ峰中学校にがいい。設備がしっかりしていて、何よりレベルが高い。人間に紛れて暮らすのならどうせなら高度な技術とより多くの知識が欲しい。どうだ?」  ロウは、情報をより正確に分析し、述べる。さすがロウだ。 「うん、そうだね。じゃあ、ここで話を進めておくよ。」  そう言って、僕は自室に戻r・・・うとした。が、 「・・・どうしたの?ロウ。」  後ろからロウに抱き着かれて、それはかなわなかった。 「・・・何でもない。」  尋ねた答えが「何でもない」なのに、どうして身体はがっちりと固定されたままなんだろう。 「でも、もう少しこうさせて。」 (そっか、さびしいのか。) 「いいよ。」  珍しくロウが甘えてきたので、しばらくは好きなようにさせておくことにした。

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