9 / 18
第8話 記憶(7)
「じゃ、行ってくる。」
「うん、いってらっしゃい。」
ロウが指定した学校は私立で受験が必要だったのだが、ある程度勉強を教えていた上本人の吸収率が非常に高く、なんと首席で突破した。さすがロウ。うちの子スゴイ。
「・・・確かに、寂しくなるかも。」
ふと口から零れたその言葉は、誰にも届くことはなかった。
side ロウ
「これより、霧ケ峰中学校の入学式を始めます。一同、礼。」
入学式が、始まった。これで本当にレイと離れ離れだ。くそ。全寮制じゃなかったから妥協したものの、やはり不満が残る。
(レイは、寂しかったりしねえのかな。)
ぽつり。心に残った不満が、不安が広がる。
「入学生代表式辞、黒崎狼。」
「はい。」
考え事をしているうちに、それなりに時間が経っていたようだ。式辞で自分の名前が呼ばれ、前へと出る。
「うららかな春の日差しを感じる今日この頃、この霧ケ峰中学校に入学できましたこと、とても嬉しく思います。保護者の皆様も、本日はお忙しい中お越しいただき、ありがとうございます。さて、本日を以って、私たちはこの学校で共に学び合い、競い合う仲間となります。ここに集まることができた皆さんと、この学校で楽しい思い出が作れることを楽しみにしています。入学生代表式辞、黒崎狼。」
パチパチパチ。拍手が起こる。俺は一度礼をして席へと戻った。
「式辞、お疲れ様。」
「・・・誰だ?」
隣のに座っている奴が、急に話しかけてきた。名前は・・・知らない。そもそもレイ以外にあまり興味がわかない。だから覚える気もなかった。
「小泉敦人 だよ。黒崎狼クン?」
馴れ馴れしく名前を呼んでくるそいつに、あまりいい印象は抱かなかった。
ともだちにシェアしよう!