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第9話   記憶(8)

「で、何の用?」  小泉敦人とやらに返す。 「いや、ただ、同じクラスの首席様と仲良くしておこうかと思って。」  妖しい笑みをその唇にうっすらと浮かべて、妖艶に囁く。 「そうか。じゃあ、またクラスでな。」  レイ以外の奴のことなんかどうでもいい。小泉に軽く返すと、即座に意識をレイが座っている席へとむけた。視覚的情報がなくても、存在は十分に感じることができる。 (レイ・・・)  世界なんてどうでもいい。レイさえいれば、俺はそれでいい。 (・・・この感情は、なんだ?) 「・・・」  自分の世界に入り込んでいた俺が、それを興味深そうに見つめる小泉の視線に気づくことはなかった。

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