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第2話【僕等の朝】
光の遮断された世界を、明るく照らす方法なんて……存在するのだろうか。
光を遮断されたのなら、遮断された以外の光を持ち込めばいい。それが許されないのなら、光の代わりになる何かを作ればいいだろう。
人類は、そうやって進化してきた。月明りだけでは満足出来ないから、電気を発明し、光を生み出したんだろう? 違うのかな? ……ごめん。実のところ、そういった歴史には全く興味が無いんだ。引き合いに出してごめんね。
……さて、ここでクエスチョン。光の遮断された世界を明るく照らす際、一番手っ取り早い方法は? はい、シンキングタイム。
チッチッチッ、はい、終了。考えた? それじゃあ、答えを言うね。
一番手っ取り早い方法は――光を遮断している物自体を取っ払う事、でした。
『シャッ!』
頭の中でつまらない問い掛けを呟いていると、それに呼応するよう、窓から差し込む光を遮断してくれていたカーテンが、開かれる。
カーテンが勢いよく開かれた事により、抑圧されていたかの如く、容赦無く朝日が差し込んだ。
「ん、っ……」
寝ている人間を健康的に起こせるのは、太陽の光だとかなんとか……今はそんな御託、要らない。
――僕はまだ、眠いんだ。
――だからまだ、起こさないでくれないか。
そんな事を頭の中でぼんやり考えても、声にはならない。目も開けられなかった。とにかく、眩しくて仕方ない。
小さく呻く僕の声に、誰かの声が重なった。
「ねぇ、起きて。僕、僕……っ」
その声は、今にも泣いてしまいそうな響きに聞こえる。
――いや……もう、泣いているのかもしれない。
ベッドの軋む音が、鼓膜を震わせる。
「僕、起きて……僕の話を聴いてほしい」
「ん、ぅ、ん……っ?」
「僕、僕……ねぇ、僕……っ」
僕って、誰の事? それは一人称に使う言葉だ。人を呼ぶ時に使うものじゃない。……あぁ、小さな男の子を呼ぶ時には使っていいのかも。
――でも、僕はもう高校生だ。
「ぅ、んん……ねむい……っ」
「ねぇ、僕……お願いだよ、お願い……っ」
冷たくて、ゴツゴツとした感触が頬をなぞる。それはきっと、泣き出しそうな声の主から生えた手だ。
声だけじゃなく、手まで震えている。いったいどうしたと言うんだろう。こんなに温かな日差しを浴びて、何が悲しいのか分からない。
「僕、僕、僕僕僕……僕は、僕だよね? じゃあ、じゃあ、僕は僕じゃないの……っ? ねぇ、ねぇったら……! ……ねぇっ!」
『僕』を連呼している冷たい手の持ち主は、ヒステリックに叫び出す。
あぁ、ごめん、ごめんよ。分かった、分かったから少し待って。
知らないかもしれないけれど……首を絞められたら、声が出せないんだ。
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