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第9話【僕の答え(一)】

 ――さて、ここでクエスチョン。  整形手術や染髪のように、僕等が容姿を変えなくても、僕等が間違われない方法は何でしょうか。僕が求める答えを、三つ用意してね。  ……『三つは多い』って? じゃあ、一つだけ答えを教えるよ。  さっき……『一つになってしまえたら、ハッピーエンド』と僕が言ったのを、憶えているかい?   そう、まさにそれ。一つ目の正解は【一太郎君と僕が一つの個体になる】さ。  そうすれば、その個体は一太郎君であり、僕でもある。どちらの名前で呼ばれたって、何も間違いじゃない。  ……ちょっと狡いかな? でも、その通りだと思わない?  決して、一太郎君とドロドロに融けてグチャグチャに混ざり合い、一つになりたいから正当化しているとか、そんなんじゃないよ?  それじゃあ、二つ目の答えを張り切って探してね?  ――気が向いたら、答えを教えてあげるかも? 「……僕? どうかした?」  不意に一太郎君が僕を呼んだ。  場所は、ほぼ毎日通る通学路。僕等は朝から仲良し同士がする事をたっぷりと楽しんで、母親にせっつかれながら朝食を済ませて、身支度も終わらせて高校へ向かっている途中。ほんの少し腰と下半身が不調だけど、そんな痛みや違和感も原因が一太郎君なら、愛おしくて仕方ない。  物思いに耽る前に僕は慌てて顔を上げ、一太郎君に向けて笑みを浮かべる。 「ううん、大丈夫。……一太郎君は?」 「僕が大丈夫なら、僕も大丈夫。強いて言うなら……朝から、ちょっと疲れちゃったかも」  泣いている時は子供みたいで可愛いのに、平常時は隙が無くてカッコいいなんて……これ以上僕を好きにさせてどうするの? 放れられなくなっちゃうよ? ……あぁ、本よりそんなつもりは無かったっけ。ごめんね、ごめん。  薄く笑う一太郎君は、同じ顔なのに僕とは全然違うように見える。僕なんかより、断然カッコいい。  そもそも、僕は鏡で自分の顔を見て『一太郎君だ』なんて思わない。逆に、本物の一太郎君を見て『僕だ』って思った事もないんだ。  ……と言ったところで、周りもそうなるわけじゃないか。  隣を歩く一太郎君を、チラッと盗み見る。  すると、一太郎君は瞬時に気付く。小首を傾げて、一太郎君が僕の目を見つめた。 「ん?」  たった一文字しか発してないのにカッコいい。どんどん好きになっていく。好きに上限が無いなんて、教わってないよ。あぁ、もう、大好きさ。  僕と同じくセンター分けの前髪も、色合いは少し違うけれど形は僕と同じ細くて切れ長な赤い瞳も、襟足まで伸ばした後ろ髪も、顎まで伸びた後れ毛の一本一本も……全部が愛しくて仕方ない。  ……一太郎君の魅力は顔だけじゃないよ? 例えば首のラインが――。 「そんなに見つめて、どうかした? ……朝のだけじゃ、足りなかったかい?」  思考停止。  結論。  ――一太郎君は全部がカッコいい。

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