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第14話【僕等の別れ】
口では簡単に『死にたい』と言えるけれど、実際に死んでいる人なんてごく少数だ。自分をいかに可哀想だと思わせられるかの、アクセサリー。所謂『ファッション死にたい』というやつさ。
そう言う人を見ると、僕は不思議でならない。自分を被害者だと思っているなら、加害者を殺した方が円満じゃないだろうか。自分を、悲劇の主人公やヒロインに置き換えている頭の痛ぁい人には、言ったら怒られそうだけど。
辛いと感じているから、逃げる為に死にたくなるんだろう? だったら、生きて幸せになる方が素敵じゃないか。
まぁ、そもそも……敵が個人の奴等と、敵が世界の僕等じゃ、話が違うか。
そして……味方がいない奴等と、一太郎君という最高でしかない味方がいる僕とじゃ、気持ちも違うというもの。
――僕は殺れるよ。敵を殺すのも、僕を殺すのも。
――ただ、より現実的な方を選んだだけさ。
僕は死にたいわけじゃない。
一太郎君の幸福の為に、邪魔な奴を殺すだけ。
それが……僕だっただけさ。
愛おしそうに僕を抱き締める一太郎君の髪を、指で撫でた。僕と同じ髪質のくせに、僕とは雲泥の差だ。世界髪質選手権一位は一太郎君以外在り得ない。でも、そこで一位になる為には誰かが一太郎君の髪を触って、確認するんだろう? 嫉妬で気が狂いそうだ。だから、エントリーさせてあげない。
髪型を変えたら、僕等の見分けはつくだろう。でも、僕は一太郎君の髪型はこれじゃないと嫌だ。一太郎君も、僕に同じ事を言うんだから仕方ない。相思相愛だね、羨ましいかい?
瞼で隠されているけれど、瞳の色は若干違うんだ。一太郎君の瞳は暗い赤色だけど、僕はまぁまぁ明るい赤色。そんなもの、光の加減でどうとでも変わるけど。
自分を傷付けるなんて、絶対許さない。ピアスも染髪も、タトゥーなんて以ての外。一太郎君はこのままで十分魅力的さ。
「…………大好きだよ……っ」
想いが、胸では留められなくて、勝手に漏れ出る。
――あぁ、一太郎君……ッ!
――本当に、世界で一番……大好きさッ!
――愛しているよッ!
裸で抱き合って、同じ毛布に包まって、互いの事だけを感じ合って……今みたいに、世界が僕等だけだったら、幸せなのにね。
でも、もう終わりだよ。
痛いのも、苦しいのも、辛いのも。全部全部、終わらせてあげる。
「ん……っ」
上体を起こした僕のせいで、一太郎君が小さく吐息を漏らした。世界吐息選手権一位も確約だね。思わず、笑みが零れちゃうよ。
「……ばいばいっ」
お別れを笑顔で言わせてくれる一太郎君は、本当に最高な人さ。
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