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第2話

「こりゃひでぇな……」  全焼した家を眺め、ダグラスはポケットに手を突っ込んだ。  鉄筋コンクリートは黒焦げ状態で剥き出し。窓ガラスと思しきものは高温のあまり融けてしまって、硬い窓枠ですら奇妙な形にひしゃげていた。控えめに言っても、木っ端微塵というやつだ。  こんな状態では、家主も一緒に吹き飛んでいるに違いない。  ――一体どういう研究をしたらこんな爆発が起こるんだ?  ダグラスはやれやれと肩を落とした。  爆散したのは、若き科学者ケイト・キャラハンの自宅ラボである。ロボット工学の第一人者と言われていて、名門大学をわずか十九歳で卒業した天才であった。メディアにも「若き天才科学者」として何度か取り上げられていたのを見たことがある。  ただ、人間としてはこう――周りのことはまるで見えていないというか――猪突猛進な印象を受けた。悪い人ではなさそうだが、あれでは周囲に溶け込むのは難しいだろうな、と勝手に心配したものだ。  きっと友達もほとんどいなかったんだろうな……と思っていると、 「警部!」  若い刑事が一人駆け寄ってきた。そしてポケットからやや焦げた小さな欠片を取り出して、言った。 「マイクロチップを見つけました。データが生きているかはわかりませんが、重要な証拠になるかと」 「ほお……マイクロチップね……」  表面がやや焦げたマイクロチップ。スマホ等にも差し込める一般的なやつだ。  ――まあ、データが生きているとは思えないけどな……。  鉄筋コンクリートですらボロボロになるレベルの爆発だから、あまり期待はできない。が、万が一データが残っていたらそれは重要な証拠になる。  今回は自宅ラボで起こった研究事故の可能性が高いが、あの浮世離れした博士の脳内を少し覗いてみたいという気持ちもあった。 「わかった、ありがとう。確認してくる」  ダグラスは自分の車に戻り、スマホにマイクロチップを差し込んでみた。  ダメ元でやってみたのだが、幸運にもマイクロチップは生きており、いくつかのファイルを画面に出してきた。  ――って、おい……。これ、博士の日記じゃないか……。  文書ファイルに目を通していくにつれ、ダグラスの眉間にシワが寄ってきた。  そこにはケイト・キャラハン――本名・小平慧人(こだいらけいと)の後悔と懺悔が全て記録されていた。

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