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第4話
近くの公園まで散歩し、ブランコに乗ってしばらくぶらぶらしていたら、だんだん気持ちが落ち着いてきた。
――俺、何やってるんだろ……。
兄に反発して、一人になって頭を冷やした後は、お決まりのように後悔が襲ってくる。
何故あんなことをしてしまったのだろう。兄なしでは生きていけないのに、何故「放っておいてくれ」なんて言ってしまったのだろう。自分でもよくわからない。
――……帰るか。
俺はのろのろと公園を離れ、家へ帰ることにした。
どんなに強がったところで、中学生の俺はまだ兄におんぶに抱っこの状態である。
だから早く大人になって、いい会社に就職して兄に楽をさせてあげよう。今は兄に依存しっぱなしだけど、いつか俺が兄を食わせてやるのだ。それが最初の兄孝行だ。
そう思いながら、俺は家までの道を歩いた。
だが、アパート近くに来て驚いた。周辺には消防車と救急車が停まっており、何かが燃える音と焦げくさい臭いが充満していたからだ。
「危ないから下がってください! 住民の方は避難してください!」
消防たちが懸命に消火活動をしている。激しく出火しているのは、明らかに俺の家だった。
――何だこれ……!?
何故いきなり火事になっているんだ? 俺がいない間に何が起こったんだ? いや、そんなことより兄さんは無事なのか?
いても経ってもいられず、俺は近くの救急隊員に掴みかかった。
「兄さんは!? 兄さんはどこですか!?」
「兄さん? きみ、あの家の住人か?」
「そうです! 火事になってる家の弟です! 兄さんはどこにいますか!?」
身内ということで、救急隊員は救急車の中に案内してくれた。
だが、ベッドに横たわっている兄は、俺の知っている兄ではなかった。
――嘘だろ……?
全身が焼け爛れて顔がよくわからない。かろうじて人の姿は保っているものの、本当に兄なのかどうか、見ただけでは判断できなかった。素人が見てもあまりにひどすぎる火傷で、今すぐ病院に運んだところで助かるのか怪しく思えた。
「な、ん……」
見るに耐えなくて、俺は口を押さえて兄から背を向けた。
何故こんなことになったか。混乱した頭で考えた結果、ひとつだけ思い当たることがあった。
この二日ほど前、俺は独学で電子レンジを修理していた。当時はあまり裕福ではなかったから、新しく買い替えるお金ができるまでは、修理して使おうということになったのだ。
だが正規のパーツを使って修理したわけではないので、また故障する危険性があった。
もしやあの電子レンジが火を噴いたのではないか。兄は自分の分のコンビニ弁当を温めようとして、それで電子レンジの爆発に巻き込まれたのではないか……と。
――だったら……だとしたら、兄さんがこんな風になっているのは、俺の……。
吐き気がこみ上げてきて、俺は救急車の中で吐いた。救急隊員が別の救急車に連れて行ってくれたが、そこでも吐き気は治まらなかった。
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