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第7話
なんとかあの場所から無事に逃げ切った僕達は、あてもなく色んな所を彷徨っていた。
こっちにはΩの尾白がいるので、あまり人の多いホテルやネカフェには泊まれない。でもだからといって野宿もさせられない。
とにかく尾白がいつ発情してもいいように、人がいない場所を探し回った。
「尾白さん。大丈夫ですか?」
「あ、あぁ。でも、そろそろやべぇ……」
ヤバいというのは、多分発情期の事だろう。
尾白さんの顔がほのかに赤く染まりだし、身体はさっきよりも熱くなってきている。
「もう少し、辛抱してください」
もう随分山手の方まで来たおかげで、人は全くいない。けど流石にこんな外でするわけにもいかない。
「なにか、建物さえされば……」
その時。葉っぱに隠れた古びたラブホテルの看板が目に入った。
苦しそうにする尾白さんを背負い。僕は吸い寄せられるように看板にあった矢印の方へ突き進む。
するとそこには、廃墟となった大きなラブホテルがまるで身を隠すように建っていた。
「やっと見つけた。二人だけの隠れ家」
ホテルの中に入ると窓ガラスはあちこちひび割れていて、天井には蜘蛛の巣があちこちはっている。足を一歩ずつ踏み込むと、床は悲鳴を上げるようにギシギシと音を立てていた。
それでも僕は一部屋ずつ中に入り、一番まともそうな部屋を探す。窓が割れてない、ベットで寝れそうな部屋を。
「あった」
最上階まで来てしまったが、一番綺麗に保たれていた部屋をようやく見つけた。
掛け布団と枕さえ抜ければ、ベット自体に埃はほとんどないし。ここは蜘蛛の巣もはっていない。寝泊まりするには十分すぎるくらいに綺麗な部屋だ。
「尾白さん。とりあえずベットに」
とろんと溶けてしまいそうな眼が、僕を見つめる。
その瞬間、甘い匂いが急に強くなった。
「くろさき……もう、だめだ」
伸ばされた手が僕の頬に触れ。そして、薄く開いた唇が求めるように僕の唇へ齧り付いた。
熱くて、気持ちいいキス。
僕まで溶けてしまいそうになる。
「んっ……はっ……ぁ」
「お、じろ、さん……」
お互い味わうようなキスを繰り返しながら、ベットの中へ崩れ落ちる。
「んんッーーはっ、んっ」
ギシギシと軋む音を部屋に響かせながら、僕は何度も角度を変えては舌を絡ませ、わざと水音を立てるように舐めたり吸ったりを繰り返す。
その音に、尾白も少し恥ずかしくなってきたのだろう。
さっきまでの勢いはなくなって、僕のされるがままとなっていた。
「はっ……はぁ、くろ、さき。もうむり……はやく、おまえのが……」
「分かってますよ。今日は腰が立たなくなるくらいしますから」
「そ、んなに……うぁ!」
上擦った声が部屋に響く。
もっと聞きたい。その一心で僕は、尾白の後孔に指を入れていく。
「ひッ、ぅん……っ」
僕しか知らない尾白の小さな窪みは、一本から二本、三本まですんなりと僕を受け入れていた。
「ぁッーーぅンッ」
ぐちゅぐちゅと音を立てながら、何度も中を抜き差ししてやると、尾白はびくびくと痺れるように震える。既に勃起していた性器は、我慢汁でドロドロだ。
指だけでこの反応。
じゃあ僕のココを入れたら、一体どうなってしまうんだろうか。
そう考えた瞬間、ゾクゾクと血が騒ぎ。ごくりと喉を鳴らした。
「もう、我慢できません」
「はぁ、ふっ……あぁ、いいぜ。はやくきてくれ……はじめ」
「……煽ったのは貴方ですからね」
「っ……あ、あぁッ!」
尾白の腰に手を掴み、息をゆっくり吐きながら中へ挿入する。
「っ……」
あんなに慣らしたはずなのに、尾白の中はいつもより狭い。けど、その圧迫感がたまらない。
「ッ、う、くっ……んんッ!」
「はっ、おじろ、さん」
可愛い声で喘ぐ尾白の淫らな姿に僕の興奮はさらに高まり。気が付けば無我夢中で腰を振って、何度も何度も内壁に僕の性器を擦りつけた。
「くっ、ぁっ……ぁあッ」
「はぁ、はぁ……」
ただ尾白を痛めつけるためにしていたセックスとは違う。
熱くて、気持ちよくて、また違う心地よさ。
Ωとかαとか発情しているせいとか、そんなの関係ない。
単純に好きだから、繋がりたいと思ったから、僕達はセックスをしている。
「おじろ、さん……ぼく、もう」
全部出したい。
全部注ぎ込みたい。
尾白さんの中に、僕のをーー。
「だめだっ、さきに、やること……あんだろっ」
尾白さんは身体を横に傾けると、伸び切った後ろ髪を掻き上げて、汗でじんわりと濡れたうなじを僕に見せつけてきた。
「噛めよっ……俺のα様」
息を切らしながら今にもイッてしまいそうなくせに、それでも強気にほくそ笑むその表情は、尾白了史らしい。
前はそんなコイツが嫌いだった。憎たらしかった。
けど、今はもうそんな感情はない。
「後悔しないでくださいね。僕のΩさん」
そして僕は、彼のうなじへと噛みついた。
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