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第7話 AV鑑賞
家に着き。チラリと壁に掛かった時計を見れば、十時より少し前だった。
──あと、二時間余り。
もうそろそろ、兄とは物理的に距離を起きたい。
部屋に籠もってしまいたい。
……多分、無理だろうけど……
「心桜、ちょっと来い」
車内での空気を引き摺ったまま、兄が僕に手招きをする。
自室へ向かうという事は………アレしかない。
「………はい」
本当、嫌だ。もう。
あと少しなのに。二時間あれば充分ってコトか。
ああ、もう。早く帰ってこないかな。
両親 でも、居れば少しは抑止力になるっていうのに……
重い足取りのまま二階に上がり、兄の部屋へと足を踏み入れる。
瞬間。夕食前に見た光景がフラッシュバックし、益々気分を落ち込ませた。
ローテーブルの上には、閉じられ横向きになったパソコン。
兄が座っていたパソコン前は避け、ドア側のテーブル前に腰を落ち着かせる。
「……お前、見た事ねぇだろ。こういうの」
徐にそう言いながら、借りてきたDVDをデッキにセットする。
入れて直ぐ自動再生され、画面が一瞬フリーズした後、バックミュージックと共にダイニングキッチンが映し出された。
そこに現れたのは、鼻歌を歌う制服姿の女子高生。
どう見ても、実年齢より老けて見える。加えてのアニメ声。そのせいで、余計に年齢不詳だ。
胸の谷間や身体のラインを強調したセーラー服。その裾がやけに短く、動く度に臍がチラチラと見える。
『……お兄ちゃぁーんっ、ご飯冷めちゃうよぉーっ』
ダイニングテーブルには、女子高生が拵えたらしい和食が並ぶ。
そこに、よそった味噌汁の碗を置くと、女子高生……妹が大きな溜め息をついた。
『もうっ、お兄ちゃんったらぁ……』
やけに短いプリーツスカート。
下着が見えそうな角度で、妹が階段を上る。兄の部屋のドアノブに手を掛け、そっと開けた。
薄暗い部屋。妹の顔に緊張が走る。
『………お、お兄ちゃ、……』
兄を脅かそうとしたんだろう妹が、ハッと息を飲む。
そして、見開いた瞳の鏡に映し出されたものは──
「……っ!」
ビクッと身体が震える。
隣に座る兄をチラリと盗み見れば、画面を見据えていた黒目がこちらに動いた。
『……ゃだっ、お兄ちゃんったら………あッ!』
妹を盗撮したスマホを見ながら、ベッドの上でオナニーをしていた男──兄が、羞恥で顔を赤くする妹を鋭い形相で捕まえ、口止めとばかりに襲い掛かり、裸にして縛り付け……凌辱の限りをつくしていく。
その度に妹の口から漏れる、悲痛の叫び──
「……」
背筋が、ゾクッとする。
こんなものを僕に見せて……一体、どういうつもりなんだ……
『……あぁあんっ、……ぁあっ、気持ち、ぃいよぉ……お兄ちゃ……っ、』
快楽落ちした、妹の喘ぎ声。
それが、部屋中に響き渡る。
──耐えられない。
瞼を閉じ、耳を塞ぎたくなる。
こんな事なら、いつもの暴力を受けた方が……まだマシだ!
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