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第16話 足、開け
──ゾクッ
全身で感じる、恐怖。
総毛立つ……という表現がよく似合う。
逃れようのないこの体勢で、どうやって逃げたらいいというのか……
「心桜。……足、開け」
命令しながら、兄が僕の膝を立てて左右に押し広げる。
そしてそのまま膝裏に手を掛け、軽々と持ち上げた。
「………、」
いつの間に脱いだのだろう。
膝立ちをした兄の下半身は完全に剥き出され、その中心にあるモノが太く反り勃ち、ねっとりと濡れててらてらと赤黒く光っている。
静かに息づくそれは、兄自身とはまるで別の生き物──ドクドクと脈打ち、尖端にある口から涎を垂らしていて……
「──!!」
いやだ、……
本能的に足をバタつかせれば、兄の鎖骨辺りを強く蹴っていた。
その衝動にハッと我に返れば、視界に映ったのは──みるみるしかめっ面に変わる、兄の表情。
「………ッ、」
──怖い。
怖い……
次に来るであろう、報復が──
だけど今は、そんな悠長な事を言ってられない。
素早く手足を動かしてうつ伏せになり、床を這いつくばりながら必死に逃げようともがく。
「………てめぇ、!」
ガッ……、
片側の足首を掴まれ、ずりずりと引き摺り戻される。
大きな手が僕の髪を鷲掴み、ガンガンッ、と容赦なく床に顔面を二度叩きつける。
「………っ、!」
息が、止まる──
鼻の奥に鈍い痛みがし、生温かなものが滲み広がっていく。
それはすぐに二つの穴からドロリと垂れ流れ、ぽたぽたぽた…と床に滴り落ち、歪な赤い水玉模様を作る。
「……ぅ、う″っ、」
床に粘着する、鮮血──
咄嗟に片手で鼻を抑えるものの、その余裕さえも兄は許してくれない。
両手で僕の腰骨辺りを引っ掴み、乱暴に仰向けへとひっくり返す。
「……チッ。少しは手加減してやろうと思ったのによ。
バカにしやがって。……クソッ」
鋭く尖った双眸。
遠目でも解る血走った眼。
その縁まで赤くなる程怒りに満ち──もう逃れられないのだと悟る。
………はぁ、はぁ、
萎縮し、震える身体。
身体を横に向け、膝を折り畳み、背中を丸めながら兄を見上げる。
……い、いやだ……
やめて………怖い……
怖い──
見下げた兄の黒い眼が──僕の顔、首筋、脇腹、そして平たい尻の間へ……ゆっくりと舐めるように動く。
「……クソ……
あの変態野郎に、簡単に許しやがって……」
吐き捨てるように呟いた後、両手が伸び、僕のシャツを引っ掴かんで手荒く脱がす。
その服を近くの床に投げ捨てた兄は、脅えきった僕の二の腕を摑み、上から強く押さえつけた。
はぁ、はぁ、はぁ………
「………心桜。ヤらせろ……」
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