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第18話 …いやだ
その液晶パネルの数値を認識した瞬間──どこからともなく、秒針の動く音がした。
それは、僕の中で鼓動する心音と重なり、同じリズムを刻む。
──午前、零時。
両親 が、帰ってくる時間。
ああ、もうすぐだ。
もうすぐで、解放される……
僅かながら、痛みを逃す為の呼吸が柔らかくなる。
この痛みさえ、今なら我慢できる。
湧き上がってくる期待と希望が、絶望の闇を少しずつ取り払っていく。
もう一度、デジタル時計に目をやる。
まだ一分と変わっていない数字。
それでも……その数字を愛おしげに見つめた。
「力、抜いとけよ」
「………うん」
言われるまま空返事をすれば、まだ解れていないソコに、別の指が強引に捩じ込まれる。
「──い″っ、……」
「痛そうな面、すんじゃねぇ」
イラついた兄の怒号が飛ぶ。
二本の指が内臓 で蠢き、腹部分の内壁を強く引っ掛けば、偶然なのか──グリッと前立腺を抉った。
「……っ、!」
……なん、で……
痛みと不快感の中で芽生える、小さな快感。
それが、奥深い底から掘り起こされ、容赦なく湧き上がり、ゾクゾクゾク…と身体中を駆け巡る。
………いやだ。
意思に反し、敏感に作り変えられていく身体。
ぶるっ、と身体が戦慄き、もっと刺激が欲しいとソコが疼く。
熱い息を小さく吐き、羞恥と動揺を隠せないまま兄を見上げた。
「……感じてんなら、声出せよ」
「………っ、」
「気持ちいいんだろ?」
僕の変化を感じ取ったのか。
それとも、さっきの会話の続きか。
そんなの、どっちでもいい……
………絶対、嫌だ。
「……」
「心桜、こっち見ろ。……俺の目だ」
目を伏せ、視線を逸らせば……顔の横で両肘をつき、兄が身体を密着させながら顔を覗き込む。
兄の濡れた怒張。それが、僕の鼠径部付近に触れ、その硬度と熱をダイレクトに伝える。
「お前はすぐそうやって、俺を無視しやがる。
──昔のお前は、いつも俺にベッタリくっついて……
″お兄ちゃん″″お兄ちゃん″って、俺を見つけちゃあ、笑顔で追っかけてきて。
……凄ぇ、可愛かったのによ」
兄の瞳が濡れ、熱っぽい視線を真っ直ぐ僕に注ぐ。
「いつの間にか、俺から離れて。勝手に他所ばっか向いて。
……今じゃ俺の前だけ、虚ろな目ぇしやがって」
一瞬で──その視線が濁り、憂いの混じった表情に変わる。
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