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第3話

「とりは食いたいけど、服はどうする?」 「な、あそこ! コイーンランドリィに服あるだろ。あれかぶって、とり食おうぜ!」  コイーンランドリィは俺たちの好きな場所。あったかいし、籠があるし、落ち着く。  換気口から入り込んだら、ホカホカの服が入った籠があった。上にあったのを適当に咥えて引きずり、静かで暗いところに行く。この部屋は、キューケーシツ。ニンゲンがいて時々交尾してる。今日はニンゲンはいない。きっと、「とり食おう」をやってるんだろう。  ふんふん、って鼻面を寄せてあいつの匂いを嗅いだ。いつもと同じ、マンションのばあちゃんがこぼしてくれるカリカリの匂いだ。  ぺろっと舐めてやると、あいつの目が細くなった。ぺろっと舌が鼻を撫でた。  ふふっ、くすぐったい。 「あ、もうニンゲンになった」 「お前も」 「顔がつるつるで変!」 「体に毛が無い! 変!」 「おっぱいもちんちんも丸見えで変!」 「ぎゃははははは!」  ひとしきり笑って自分とあいつの身体を見比べると、似てるようでやっぱり違う。なんだか気恥ずかしくなって、あいつの口をもう一回舐めた。歯が小さいからぷにぷにして柔らかいや。  目を丸くしたあいつはペロッと舌を出して悪い顔した。 「へへっ、まずはとり食おうぜ!」 「うん!」  ニンゲンがやってるみたいに服をかぶって外へ出た。しっぽがあるから後ろ肢にかぶせるのがむつかしい。引っ張るとおおきくなる服と交換して何とかニンゲンみたいにした。 「とり、くお、とり!」 「とり、くお、とり!」  この言葉でご飯がもらえる。近くの家にいって、ニンゲンの子供と同じように鳴いてみた。  戸が開いた。中から出てきた笑顔のニンゲンと目が合う。自分でも背中が丸まるの分かる。隣のあいつは腰が引けている。 「と、とり、くお、とり?」 「ああ、黒猫になってるのね。子供じゃないから変な人かと思っちゃった。ファーを使った耳としっぽなんて、凝ってるわね。ちょっと待って」  女の手が何か持ってきた。 「はい、どうぞぉ」  カサカサ音がする隙間からいい匂いがした。食べ物だ!!  ひげがぴんぴんになってまん丸になってるはずだ。あいつを見ると、あいつも食べ物にくぎ付けになっていた。 「いくぞっ!」  俺の声に、あいつもはじかれたように駆け出した。  行先はいつもの駐車場だ。 「こらっ! ありがとうぐらい言いなさいよ!!!」  後ろからは怒鳴り声が聞こえた。

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