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 服を脱がされてる最中から、すでに聖南の目がギラギラしていた。  体洗ってやる──そんな優しい声に素直に頷く俺もどうなのって話なんだけど……。  聖南の力が強くて、俺もそんなに抵抗出来ないしで、腰をガシッと掴まれた時にはもう諦めた。  予告通り、聖南の目的はもちろんアレも込みで。  最近無添加のものを体を洗うのとは別で仕入れた聖南が、指先にそれを纏わせる。 泡立つ前に、逃げ腰のお尻の間に中指の腹が触れた。 「んっ……」 「力抜いててな」 「聖南さ、ん……俺、やっぱ自分で……っ」 「だーめ」 「うー……っ!」  抜けと言われても、今からされる事を考えたらそんなにすぐには気持ちが固まらない。  体が竦んで、どうしても聖南の指を受け入れたくないとお尻が逃げる。 「葉璃はいつも四つん這いでしてたんだっけ?」 「えっ?」  逞しい左腕だけで支えられた体が、ピクッと揺れる。  孔の周りをほぐすように、優しく指の腹で押してくれてた聖南が、急にほっぺたにチュッとしてきた。  わわ……っ、聖南もう、……っ。  ちょっと動いただけで、聖南の勃ち上がったものが俺のお尻や太ももに触れて……ドキドキした。 「葉璃、聞いてる? 立ってやるのと四つん這い、どっちが楽?」 「い、いや……あの、……っ! ……いつもは四つん這い、です」 「りょーかい」 「えっ、あっ……んっ」  微笑まれて、すぐに温かい床に手と膝をつくよう強いられる。  観念したわけじゃない。 しつこいようだけど、聖南の力が強い、から……! 「あぁ、ほんとだ。 こっちの方が入れやすい」 「んんっ……! 聖南さんっ」  呟いた聖南が、くぷっと指を入れてじわじわと内襞をこそぎ始めた。   体位を変えたら、力んでたそこも少しはほぐれる。 その上お腹に回ってた手のひらで、まだやわらかい俺の性器を揉む聖南は確信犯だ。  知ってるくせに白状させて、中を洗う指先に集中させてくれない聖南の表情は見なくても分かる。 「膝痛いよな? 早く終わらせような?」 「え、ちょ……っ、や、っ……! 聖南さん、見な、いで……っ」 「ここ触ってるのはいいんだ?」 「違っ……!」 「かたくなってきてんぞ? 気持ちい?」 「聖南、さん……っ」  やわやわと扱かれたら、気持ちいいに決まってるよ……っ。  恥ずかしいけど、お尻で感じるようになった俺の体は、聖南の指が中をぐちゅぐちゅしてるってだけでお腹の奥がキュンとなる。  出しっぱなしのシャワーも、聖南の甘い声も、ダイレクトな刺激も、洗うために蠢いてる指も、ぜんぶが拒否権のない強引な快感に繋がっちゃう。  クチュクチュと抜き差しされる卑猥な音と、俺の性器を扱く音と、時々気紛れにお尻に口付けてくる聖南のリップ音が、流水音にまじってバスルームにやらしく響き渡った。  目を閉じてジッとしていた俺は、自分がいま何されてるかも忘れて、聖南からの愛撫に酔いしれてしまう。  泡立ったそこが指の動きをスムーズにさせてくみたいに、知らないうちに腰が揺れていた。 「……お湯入れてくからな、苦しくなったら教えて」 「えっ……」  入ってた指がぬぷっと抜かれる。 扱いてくれてた手のひらが離れてく。 聖南の体温が無くなって、いきなりポツンと取り残されたような寂しさを覚えた。  そして、思い出す。 一本しか挿入されなかった指が、中を意味深に蠢いてたワケを……。  気持ち良くて忘れ去ってた恥ずかしい気持ちが、ぶわっと全身を包んだ。  シャワーのコックを触ってる聖南を振り返って、我ながら弱々しく「やめて」と呟く。 「う、うぅっ……やだ……っ、やだっ……」 「逃げんなって。 葉璃、大丈夫だから」 「大丈夫じゃない……っ、なんにもっ……!」 「キスしてれば、何が何だか分かんねぇうちに終わってるよ」 「やだ……っ……お湯、……入ってくる、……っ」 「ちょっと我慢して溜めとけよ?」 「……うぅ、っでる、……出ちゃうってば、せなさん……んっ」 「我慢して、あと十秒」 「むり、っ……んんっ……せなさん……っ」 「葉璃、舌出して」 「はぅっ……!」  注がれたお湯が泡と混じり合って、チロチロと孔から溢れて出てくのが分かる。  一回目だから、お腹いっぱいは注がれなかった。  でも恥ずかしい。 なんでこんな事したがるのって聖南を振り返って睨み付けても、ギラついた瞳の奥がすごく優しくて……素直に舌を出した。 「……いいよ、葉璃」 「んん、っ……んんーっっ!」  お尻の上からシャワーを当てられて、顎を取られたまま舌を吸われた俺は……聖南の言葉で二度目の醜態を晒した。  何がなんだか分からないうちに終わる、……それは本当でもあり嘘でもあった。  くちゅ、くちゅ、と舌を絡ませ合う。 吸われて、食まれて、〝飲め〟と唾液を送り込まれて、頭がボーッとなる頃には二回目のお湯を注ぎ込まれていた。 「葉璃……」 「……ぅぅ……っ」  我慢して出す、を三回繰り返すと聖南はようやく許してくれた。  四つん這いから解放された俺は、聖南に抱えられて膝に収まる。 後ろから抱きついてきた聖南が、シャワーヘッドをポイと床に放った。 「ありがとな、葉璃ちゃん」 「な、に……?」  自分の視界にも入るほど、唇が尖ってる。  俺いま、聖南にはとても見せられない顔してるよ……。 真っ赤になって、泣きたいのか怒りたいのか照れたいのか、自分で自分の感情が分かんない。  きっと、お湯にあたり過ぎてのぼせてるんだ。  だから、聖南の〝ありがとう〟の意味がさっぱり分かんないんだ。 「やだって何回も言ってたし……葉璃は恥ずかしいよな。 でもそれを俺に委ねてくれんの、めちゃくちゃ嬉しい。 俺にとっては何にも恥ずかしい事じゃねぇんだよ」 「ゆ、ゆだねてないですよっ! 聖南さんが強引に……! 俺、自分でしますって言ったもん! は、恥ずかしい、から……! 聖南さんが無理やりしたんだもん!」 「はいはい、俺が強引に洗いました。 葉璃ちゃんの意思を無視したけど何にも後悔してないし、これからも強引にさせてもらいます。 謝りもしませーん」 「なっ……!?」 「これが俺の精神安定剤なんだよ。 分かってんだろ、葉璃も」 「…………っっ」  そんなの卑怯だ……!  羞恥心とか含めて、俺の何もかもを曝け出せば聖南を安心させてあげられるのは知ってる。 でもこんなに開き直られると……っ。 「葉璃ちゃん、好き。 愛してる」 「……聖南さんっ……卑怯ですよっ」 「知ってる。 俺はガキだよ。 ……葉璃の前でだけ、な」 「…………っっ」  言葉でも、力でも、愛の重さでも敵わない聖南に、いつも俺は負かされる。  ぎゅっと縋るように抱き締めてくる腕の強さは、とても〝ガキ〟じゃないんだけどな……許してしまう俺は結局、聖南の事を本気では怒れないんだ。

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