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 俺はいつでも、策士な聖南に踊らされる。  チャームポイントの八重歯を覗かせて、ニコッと極上の笑顔を浮かべた聖南が言うことには、俺はなんでも「はい」って即答しちゃうんだよ。  よく考えもしないで。 「まだ本調子じゃねぇだろうから、負担かけねぇようにするよ♡」 「いや体はもう全然平気なんで……あっ、いや、そうですね! 本調子じゃないかもしれないです!」  慌てて訂正しても遅かった。  今度は二重の目を細めて、さらに笑顔を濃くした聖南が「へぇ♡」とニンマリだ。 「そうと決まれば風呂だな」 「ま、待ってください! そうくるとは思わなかったので、俺まだ……その、……っ」  ナカを洗ってないから、準備させてほしい。〝一人で〟。  一緒にお風呂に入るなら、そのあとでもいいじゃん、ねっ?  立ち上がった聖南に、俺は瞳でそう訴えた。  聖南が俺の瞳に弱いことを知ってから、意図的に利用してる後ろめたさはあるものの、初めて洗ってもらった日から毎回のように聖南はアレをやりたがって困る。  最後の手段、使わなきゃでしょ。 「葉璃ちゃん」 「はい……っ?」  ゆっくり立ち上がらせてくれた俺を、ニンマリからキリッとした表情に変わった聖南が見下ろしてくる。  そんなに必死で訴えてくるなら仕方ないなって……今日は引いてくれそうな雰囲気だったんだけど、実際は……。 「何回言ったら分かるかな? 俺らのセックスは洗浄込みでセックスなんだって」 「こ、込みでっ!? えっ?」 「言ったじゃん。俺は、アレを葉璃が一人でやってた期間があるってのが耐えらんねぇの。葉璃ちゃんはぐるぐるすんのかもしんねぇけど、俺は逆に頭下げてでもアレをしてやりたいんだ。恥ずかしいことなんか何もない。つべこべ言わずに風呂行こうぜ」 「えぇーっ!?」  仕事してる時と同じくらいの熱量だった聖南は、俺によく分からない力説をしてサラリと手を繋いできた。  「えっ」と戸惑いの声しか上げられない俺を、聖南は問答無用でバスルームに連れ込む。そして一分とかからず俺と自分を全裸に剥き、扉に手を掛けて決め台詞を吐いた。 「観念しな、葉璃ちゃん」 「えぇーーっっ!」  気障で強引な聖南も好きだけど……っ!  俺まんまと丸め込まれてるよねっ?  こんなのアリっ? とせめてもの抵抗で聖南の腕を引っ張ってみるも、むしろ抱き寄せられてドキッとする羽目になった。 「あっ……」  あったかい……。  素肌が密着するこの感じ、たまんない。  主張の激しい聖南のものがお腹辺りに当たってくすぐったいんだけど、あっさり絆された俺はしがみつくように広い背中に腕を回した。 「こうやって抱き合うのも久しぶりだよな」 「……はい」  しんみり頷いた俺の頭を、聖南が優しく撫でてくれる。  真冬でもぬくぬくな浴室だからって、裸でただ抱き合ってるだけの俺たちは客観的に見るとすごく滑稽だ。  でも……ホントに久しぶりだもんな。  番組出演をキャンセルするほど俺を気遣っていた聖南は、今日までまったく手を出してこなかった。  退院の前日、みっともなく俺が盛っちゃっても、聖南は挿れるのを我慢してくれた。我慢出来ない気持ちは聖南の方が強かったはずなのに、俺が最後の手段を使ってもその時ばかりは効き目が無かった。  ……目を合わそうとしてくれなかったからなんだけど。  それから一切エッチなことはしてない。  俺を抱き枕にして寝てる時、聖南は毎日、今にも暴れたそうなモノを腰に押し当ててきてはいた。でもそれだけだ。  聖南はどうだか知らないけど、「一人でするくらいなら俺を呼んで」としつこく言い渡されてる俺は、それを律儀に守ってる。  だから……こうして抱き合ってるだけで、聖南のにおいで興奮する俺も……ムクムクしてきちゃうよ。 「あ、……っ! 聖南さんっ」 「ん?」  モゾモゾっと腰を揺らした直後、お尻を鷲掴みされて小さく飛び上がる。聖南をじっとり見上げると、「なに?」と首を傾げられて返り討ちに遭った。 「葉璃、四つん這いなって」 「え、あ、あの……っ、ホントにするんですか……?」 「するよ?」 「…………っ」  最終確認は二秒で終わった。  こうなったら、誰も聖南を止められない。  仕方なく従ってる感を出しつつ、俺は温かい床に膝をつき、手をついて……聖南を振り返った。  最後の足掻きでうるうる見つめても、聖南は〝目を逸らす〟という古典的かつめちゃくちゃ効果的な策で、俺の最終兵器を回避する。  シャワーを手に取ってすぐさまコックを捻った聖南が、跪いて温度を調節し始めた。  今からナカを洗われるって状況じゃなきゃ、うっかり見惚れそうなほど真剣な眼差しだ。 「う、っ……」 「いつ見てもかわいーお尻」 「あっ……! うぅっ……、そんなに、見ないでください……」 「分かった分かった」  そこは、こんなに明るいところでジロジロ見られていい場所じゃない。むにゅっとお尻を掴んで開かれたら、キュッと窄んだ穴がヒクついてもっと恥ずかしくなる。  声からして上機嫌な聖南は、いたたまれなくてぷるぷるする俺が「かわいー」んだって。  ……そんなので誤魔化されたりしないもん。  聖南が絶妙な加減に調節したお湯が、すぐそこまで迫ってる。 「ひぅっ……!」 「ん、めちゃめちゃ力入ってんな」  そ、そりゃそうだよ……っ。  エッチが久しぶりってことはこれも同じだけ久しぶりで、俺いつもどうやってたっけって戸惑ってる。  聖南の滑った指が穴をツンっと刺激した瞬間、ヘンな声が出ちゃって背中がブルッと震えたくらいだ。 「……ヤバ、今日相当キツそうだな」  うんうん、俺も先が思いやられるよ……!  妙なところで聖南と意見が合って、ちょっとだけ気が抜けた。

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