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♡ ♡ ♡
昨日は一日中、ずっと寝てた。
完全には落ちきれないまま、外が明るくなってきてやっと解放されたんだけど、ベッドから起き上がれない俺をよそに聖南はハツラツと仕事に向かった。
寝ないで大丈夫なのって質問は、エッチの後の聖南には愚問だった。
『葉璃ちゃん、行ってきます♡』
『聖南さん……寝ないで行くんですか?』
『合間で寝るから大丈夫♡ フル充電したから今なら二徹くらい出来そうだぜっ』
『元気ですね……』
『俺の愛に付き合ってくれてありがと、葉璃』
『いえ、そんな……』
そんな言い方するなんて、聖南らしくないなと思った。
だけど、気が付けば七時間もエッチしてて、聖南に抱っこされてお風呂に入った俺は玄関までお見送りする気力も無いまま、寝てしまった。
テッペン間際に帰ってきた聖南に頭撫でられるまで寝てたなんて、自分でもビックリだ。
昨日たっぷり睡眠が取れたおかげで、体調もバッチリ。
今日からまた〝ハル〟として仕事を頑張らなきゃ。
「葉璃ー! 葉璃ちゃーん!!」
「はいはーい! なんですか、聖南さんっ」
スッキリ爽快に目覚めてトイレを済ませ、歯磨きまで終わったところでベッドから聖南の声が轟いた。
呼んでるっていうより叫んでると言った方が正しい。
俺が聖南より早く起きた朝は、大体こんな風に名前を叫ばれてビクつく。
ベッドルームを開けると、トップアイドル様にあるまじきムスッとした表情で、布団の上であぐらをかいていた。
「……おはよ、葉璃」
「おはようございます。……って、なんでそんな怒った顔してるんですか、聖南さん」
理由は分かってるんだけど、聖南が毎回ちゃんと答えてくれるからつい俺もいじわるしちゃって。
「葉璃が隣にいなかった」
「…………」
「葉璃だと思ってぎゅってしたらコイツだったし」
「…………っ」
俺が隣にいなかった……そう言って眉間にシワを寄せ、下唇を出す聖南は大きな子ども。
世間にはとても見せらんないくらい赤茶色の髪が寝癖でボサボサで、可愛くてたまんない。
しかも枕を俺だと思ってぎゅってしたんだって。
最近は聖南が俺に言ってくれる「かわいー」を、そっくりそのまま返したいくらいだよ。
「ごめんね、聖南さん。漏れちゃいそうだったんです。ついでに歯磨きしてきました」
「起こしてよ」
「そんなこと出来ないですよ。ぐっすり寝てる聖南さんを起こすなんて」
「俺は四六時中 葉璃といたい男なんだ。寝てる間も葉璃の夢見てるくらいなんだぞ」
「わわっ……!」
ベッドサイドに寄って行くと、グイッと腕を引っ張られて聖南の胸に飛び込んでしまった。
こうなったらあとが大変なのに。
「葉璃……好き」
「ちょっ……聖南さん、あたってますっ」
「あててるんですー」
「あ、っ……!」
抱っこされてギュッと抱きしめてくれたまでは良かった。
聖南は俺の腰をやらしく撫でて、昨日はおとなしかった暴れん棒を俺のお腹に押し当ててくる。
朝から凶器並みにガチガチなんですけど……。
「葉璃ちゃん、……いい?」
「えぇっ!? だ、だめです! 一時間後には出ないといけないんですよっ」
「十分で終わらせる」
「えぇぇっ!? 聖南さんは十分じゃムリでしょ!」
「ンなことないよ。楽屋でヤった時は十五分で終わらせたよ。覚えてる?」
「が、楽屋……?」
「忘れたのかー? 本番終わりの俺の衣装姿にムラムラして誘ってきたのは誰だっけ?」
「あっ!」
……思い出した。
俺が聖南に「現場ではしないっ」と宣言するきっかけになったあの時のエッチは、確かに俺から誘ったよ。
モフモフのでっかい尻尾みたいなのを肩に引っ掛けた聖南が、どこかの王子様に見えてたまんなくムラついてしょうがなかったんだもん。
俺が出した精液と聖南の唾液で穴を濡らして、狭いソファで大急ぎでエッチしたことを忘れるわけない。
終わったあと、ひどく後悔したんだから。
廊下ではスタッフさんも演者さんも行き交っていて、いくら鍵閉めてたからってあんなところで……って。
バレちゃいけないドキドキ感で間違いなく興奮はしてたけど、やっぱりよくない。俺や聖南みたいな職業の人にとっては、ああいう現場は聖域なんだから。
本番の衣装姿がいくらかっこよかったからって、盛ったのは反省してる。それもこれも、聖南が何着ても似合うからいけないんだって責任転嫁しつつ、ちゃんと俺も〝二度とムラつきません〟って心に誓った。
「あー、またコスプレエッチしたいな」
「えっ……? お、俺には聖南さんのコスプレは刺激が強いので……」
「あはは……っ、俺が葉璃のコスプレ見たいんだよ。今年の決算月パーティー楽しみだな♡」
「…………」
誓ったそばからそんな魅力的なことを言われちゃうと、「え、いいんですか」なんて意志の弱い発言をしちゃいそうになった。
俺が聖南限定でコスプレ好きなのがバレて以来、聖南もそこから派生した〝イメプレ〟を大層気に入ってるしね。
決算月パーティーは通称コスプレパーティーと言っても過言じゃないし、次の日は必ずオフにしてもらってるから、……うん。三月が楽しみ、かもしれない。
「あ、ちょっ、聖南さん! それは卑怯です!!」
今年はどんな聖南のコスプレが見られるんだろう……とニヤついていたら、どこから取り出したのか眼鏡聖南に変身していた。
「その気になるっしょ?」
「その気にっていうか……っ!」
「相変わらず葉璃ちゃんは、俺の眼鏡姿に弱いご様子♡」
「〜〜っっ!」
あたりまえでしょ! かっこいいんだから!
ヤンチャそうに笑ってても、どこか理知的で隙のない学校の先生みたいで(化学とか数学を教えてそう)、言うことを聞かなきゃいけないような気になるんだよっ。
パーカーの隙間からやらしい手のひらが忍び込んできたとしても、その手のひらがパンツの上からお尻をモミモミしてきたとしても、逆らえない雰囲気になるのっ。
新人アイドルが大事な仕事始めに恋人とエッチしてから出掛けるなんて、きっと許されないことなんだろうけど。
何たってそれにノリノリなその恋人が、俺の大先輩なんだから……乗せられた俺はちょっとしか悪くないと思う。
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