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40♡7※

◇ ◇ ◇  後ろから激しく揺さぶられて、とうとう膝が震え出した。洗面台についた手にも力が入らない。 「はぁっ……んっ……せな、さん……っ! も、やだ……っ」  相変わらず立派なモノで俺を貫いてる聖南を、縋るように振り返った。けれど聖南は素知らぬ顔で、「メッ」と小さい子に叱るように言って俺の耳たぶを食んだ。 「何してんの、ちゃんと前向いてな?」 「な、っ……!」  ひ、ひどい……! そんなこと出来るわけないじゃん……っ!  顔を上げたら、すぐそこに涙とよだれを垂らして悲惨な顔をしてる俺が鏡に映ってるんだよ。  俺の体を抱いてルーズに腰を振ってる聖南のことまでバッチリ見えるし、視点を合わせたら俺の真っ赤な顔が嫌でも目に入るし。  どうしてこれを、直視しなきゃなんないのっ? なんでこんないじわるするの……っ? 「や、やだ……っ、せなさんっ! やだってば……っ」  せめてバックでするの、やめて。  自分の乱れた顔なんか見たくないよ。  聖南は、いつでもどんな時でもかっこいいからへっちゃらかもしれない。けどね、俺はひたすら半開きの目から涙を流して、飲みきれなかった聖南の唾液を口の端からこぼしてる。  鏡に向かって自分に喘いでるみたいで、どうしようもない気持ちにもなる。  だからせめて……せめて、ここでするのは許してあげるからこの態勢だけはやめて……! 「せなさ、……っ! おね、がっ……これ、やだっ……!」 「ん〜そうだなー。やだなー」 「あっ……んぁっ……あっ……!」  後ろ手に聖南の腕を掴んでみた。でも俺のナカを堪能中の聖南は、思いっきり欲情した甘い声を出すくせにまともに返してくれない。  そうだ……今は、俺の「やだ」が聞き入れられない時間だった……。 「んんっ……!」 「葉璃ちゃん……締めすぎ。俺のちぎれる」 「ひぁっ……あっ!」  そんなこと言われても、立ったままグチュっとナカを抉られるとついお尻に力が入るんだもん。  聖南は背が高いから、俺が自然とつま先立ちしなきゃならなくなって、ふくらはぎが攣りそうになるんだ。  すでにその足も限界が近い。聖南が背中にキスしてくるだけでガクガク震えが止まらない。  聖南が俺の腰を持って支えてて、しかもやらしい場所が繋がってる状態だからへたり込みはしないけど、色々ツラくて前のめりになるのはしょうがなかった。 「葉璃が見たいって言ったんだから、ちゃんと見なきゃ」 「えっ……!? ちょっ、それ……っ!」 「さっき風呂入ってイチャついてた時言ってたじゃん。〝俺ってエッチのときどんな顔してるんだろ〟って」 「…………っっ!!」  うぅ……っ、そんなこと俺言った!? たしかに心の中では思ってたよっ? でも口に出してたとは思わなかった!  ──って、いまの聖南に何を言っても無駄だ。  たとえ俺の心の声がダダ漏れしちゃって、地獄耳の聖南がそれを聞き逃さなかっただけだとしても……。 「んっ……、あ、っ……あぁっ……!」  鏡越しに見えた聖南がニヤッと笑った瞬間、俺は今日も全身が蕩けるまで愛されるんだってことが分かってしまった。 「はぁ……気持ちいー……」  早く動いたりゆっくり動いたり、ぐちゅ、ぐちゅっと音を立てて抜き挿しする聖南の声が、俺の鼓膜と腰を震わせた。  ため息まじりの「気持ちい」が、俺の心臓をぎゅっと萎ませる。こういう時の聖南の声は、ただただ心臓に負担がかかる。 「葉璃……」 「んっ、……」  聖南のモノがぴったりとナカに収まったまま、動きが止まる。そして顎を取られた。身動きできないように。  俺の背中と聖南の体が密着した途端、心に緊張が走った。  さっきお風呂に入ったばかりなのに、もう聖南の肌はしっとりと汗ばんでいて、俺は……聖南の先走りとローションで太ももまでぐっしょり。  次は何されるのっ? なんで動かないの? なんでぎゅって抱きしめてきたの?  貪欲な聖南が次に何をするのか分からなくて、ゴクっと息をのむ。 「……、だろ」 「え……?」  な、何……? 聖南、耳元で何か言ってるけど聞こえない。  でもたぶん、それは俺がそんなに喜ばないことだと直感的に思った。 「……っ、せなさん、何か……言ってます?」 「葉璃の悶え泣き、そそるだろ。……って言った」 「──っっ!」  聖南の囁きで反射的に自分の顔を見てしまった俺は、ドキドキしながら開いた瞼をギュッと閉じた。  顎を取られてるから、どこも向きようがないんだもん。自分で遮るしかないでしょ。  しかもドロドロになった悲惨すぎる自分の顔にそそられるわけもなくて、いつもこんなヒドイ顔してるんだってことを見せつけられた気もして、恥ずかしさのあまりカッと頭に血が上った。 「〜〜っっ! せなさんっ!!」 「はーい? てかプンプンしてる顔もさいこー♡ 葉璃はどんな表情もかわいーなぁ。……キスしたくなる」 「う、っ……んむっ……!」  怒って振り向いた俺に待ってたのは、熱いキスだった。  ぬるっと口の中に入ってきた聖南の舌が、我が物顔でほっぺの内側をメロメロ舐めてくる。お尻を突き出したあられもない態勢で、聖南の立派すぎるモノが俺を容赦なく貫いてるこの状況。  立ってるのも限界ギリギリなのに、聖南は俺の呼吸まで奪おうとしてくる。  やっぱりエッチの時の聖南はとことんいじわるだ。 「ふ、っ……んっ……」 「葉璃の悶え泣きは俺しか知らない。そうだろ?」 「ん、っ! んーっ! ん、んっ……!」  ふと聖南が離れた隙に、俺は好き勝手舐め回されていた口をムッと閉じた。

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