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 聖南はいつかの宣言通り、俺の前でだけ〝日向聖南〟に戻る。  理不尽にキレたり、玄関で襲ってきたり、ワガママなくらい甘えてきたり、まるで子どもだ。  それが悪いってわけじゃないよ。  どんな聖南も受け入れられる自信が、俺にはあるから。  むしろ可愛いとさえ思う。  他の誰にも見せない顔を見せてくれるのは、単純に嬉しいもん。俺に嫌われちゃうかもっていう不安を少しも抱かずに、全力で甘えてくるところなんて可愛くて仕方がない。  受け止めてあげなくちゃって思うんだよね。  〝どんな〟聖南でも。 「なぁ、俺どんな顔してんの?」 「…………っ」  言い渋る俺の体を、聖南は自分のモノを押し当てるようにしてやらしく抱きしめてきた。  見ないようにしてたのに、熱を持った固いモノがグイッと俺に押し当てられた瞬間、これだけはどう控えめに見ても可愛くはないや……と考えを改める。  「なぁなぁ」としつこく応えを迫ってくる聖南に、真逆のことを言って仕返しをしようかとも思った。  でも、……。 「どんな顔って……。俺のことが大好きって顔……ですよ」  尻尾をブンブン振って待ってる聖南に、俺がいじわる出来るはずないじゃん。  聖南は分かってたはずだ。  俺への想いを少しも隠せていないってことくらい。 「自分じゃ分かんねえけど、多分正解ー♡ だって大好きだからなー♡ 俺って従順だと思わねぇ? ちゃんとこうして葉璃ちゃんのご要望聞いてんだぜ? 俺らバスルームでのセックス率高いよな」 「なっ、だっ……だってそれは……っ!」  たしかにそうだけど……!  その話を蒸し返されると、俺も反撃しちゃいそうになる。  丸ごと俺を食い尽くしそうなギラついた目をしてるくせに、聖南はこれでも、精一杯がっつかないように理性を保とうとしてくれてるのが伝わるから、俺だってそう強くは拒否出来ないんじゃんっ。  聖南は、俺がイヤだと思うことはしないっていつも気遣ってくれるし、逆を言うと、俺が望むことは何でも叶えようとしてくれる。  どさくさに紛れて股間をグイグイ押し付けてくるのだって、俺が本気で嫌がったらきっと二度としてこない……はず。 「う、あ……っ? 聖南さん……っ、お、お尻……っ!」  だから、ちょっとくらい強めにお尻を揉まれようと、俺は嫌じゃないから抵抗はしない。  ただそのやらしい手のひらが、割れ目に侵入してきたらヤバイ。焦って身じろぎする俺のせいにして、すぐこんな事を言い出すからだ。 「ここに俺を連れ込んだってことは、もち洗浄は俺にやらせてくれるんだよな?」 「い、……っ!? い、いや、いやいやいやいや! 連れ込んだのは聖南さんじゃ……っ」 「お風呂でシたいって言ったのは葉璃ちゃんだぞ? 忘れた?」 「お、お、俺は、シたいなんて言ってないですよ!?」 「じゃあシたくない?」 「あっ……、聖南さん待っ……!」  さっきまで理不尽にキレてた聖南はどこに行ったの。  ニッコリ笑顔で可愛い八重歯を見せた聖南が、俺の腕を掴んでグイッと引っ張った。 「もう待てない」  ムリ。と呟いた聖南の声は、起き抜けのセクシーに掠れた時のものによく似ていた。  磨りガラスの扉を開いて、いそいそとシャワーのコックをひねる聖南の嬉しそうな顔。  とうとう流されてしまった俺は、全裸の羞恥心なんか遥かに上回る行為を前に、足を踏んばって無駄な抵抗を試みる。 「あ、あの……っ、聖南さんっ」 「ん〜?」 「あのですねっ? 聖南さんがお尻洗うの当たり前みたいになってますけど、お、俺は許した覚えないですからねっ?」 「ん?」 「……んっ?」  真剣にお湯の温度を確認する聖南が、キョトンと俺を見下ろした。  それからフッと表情を崩し、「何言ってんの」とまた可愛い笑顔を浮かべる。 「今さらそんなこと言われても」 「えっ!?」 「初めてコレを許してくれた日から、当たり前になったんだ」 「えっ、うっ!? そうだったんですか!?」  そんなの初耳だ。  お互いに恥ずかしいところを見せ合える関係になれたらいいって、たしか聖南は言ってたけど。  俺はいつ、それを許したかな?  朦朧としてる時に言質を取られた、とか? 「観念してお尻出しな、葉璃」 「うぅーーっっ!!」  いつかに聞いたセリフを、その時の記憶そのまま魅惑の手銃付きで言い放たれた俺は、小さく足踏みして最後の最後まであがいた。  でも、聖南はやる気満々。  お尻を洗うことを「当たり前になった」と断言されたら、俺は何も言い返せない。  ご機嫌な聖南がシャワーヘッドを手に取った。  もう始めちゃうのかと身構えた俺の体に、ぬるめのお湯がまんべんなくあてられる。 「四つん這いでもいいし、立ったままでもいいし、それは葉璃が決めていいよ。俺準備するから」 「うぅ……聖南さん〜〜っ」 「あ、そうそう。言い忘れてたけど、今日は俺も譲歩してやるよ?」 「えっ、譲歩っ?」 「うん」  聖南がエッチの前にそんな事を言うなんて、初めてかもしれない!  い、いや……待って、でも……。  四つん這いがいいか、立ったままがいいかっていう、俺にとってはどっちもどっちな二択を迫ってくるような聖南の譲歩なんて、期待できない。  今だって、隙だらけの俺のお尻をモチモチ触ってるんだよ。  壁際に追いやられて逃げ場を失った俺を、整い過ぎた顔で見下ろして舌なめずりしてる。  もちろん、聖南の下半身は直視できないほど元気いっぱい。当たり前になった洗浄を前に、俺には理解できない特別な興奮を覚えてるらしい。  そんな聖南の譲歩なんて、たぶん……いや絶対に、期待しちゃいけないやつ。 「今日は、洗うことだけに専念してみる」 「……え?」 「洗う時、ナカをあんまイジってほしくないって言ってたからな。ホントは指三本入るまでほぐしときたいんだけど、それやっちまうと葉璃ちゃんヘトヘトになるんだろ? 二回くらい甘イキするもんな?」 「なっ……なっ……譲歩ってそれですか……!?」 「そうだけど?」 「〜〜っっ!!」  やっぱり譲歩でも何でもなかった!!  俺のお願いを覚えててくれたのは嬉しいよ? でもそういう事じゃないんだよ……っ!  そもそも聖南にお尻を洗わせるのが嫌なのに、しつこくイジってくるからヘトヘトになるんであって……。 「てか、立ったままで大丈夫?」 「あ、いっ……いや、違っ……」 「まぁやってみるか」 「え!? あっ……やだ、聖南さんっ……!」  グダグダと考えを巡らせてる間に、聖南が俺の体をくるりと反転させてシャワーヘッドを手にしゃがみ込んだ。 「葉璃、お尻ぷりってして。ぷりって」 「やっ、ちょっと待っ……!」 「これ以上は待てない」 「あ、そんな……っ! う、んんっ……!」  言う通りに出来ないでいると、聖南の手が俺の腰に伸びてくる。その手は、恥ずかしくて無理だと躊躇っていた〝ぷりっ〟を問答無用で強いた。  しゃがんだ聖南の顔の前にお尻を突き出すことになって、俺の羞恥ゲージはこの時点でMAXにまで跳ね上がる。 「聖南さんっ! こ、この格好、ものすごく恥ずかしいんですけど……!」 「あぁ、そうなの。……恥ずかしがってんのもそそるから無闇にそういう事言わない。ほら、壁に手ついて、力抜いて」 「うぅっ! んっ……!」  言われなくても、壁に手をついてなきゃバランスを取っていられない。  少し余裕が無くなってきたように聞こえる聖南の声にドキッとしながら、逃れられない事を悟った俺は目を瞑った。

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