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突き出したお尻に、マッサージでもするみたいに優しく聖南の手が添えられた。それから、柔らかくお湯をあてられる。
いつそれがナカに入ってきてもいいように、俺はギュッと目を閉じたままその時を待った。
入ってきたら、意識してお湯を留めておかなきゃいけない。何回も何十回もしてるうちに慣れてきた……と言ったらおかしいけど、その感覚はもう体が覚えてる。
「んっ……」
流れ出たお湯が床を弾く音と同じくらい、自分の心臓の音が大きく聞こえた。
自分で準備するのと、聖南にしてもらうのとじゃやっぱり全然違う。
恥ずかしい。いろんな音や気配が、とにかく恥ずかしい。
「……っ、ん、……んっ」
ただお尻にお湯をあてられてるだけなのに、何だか気持ちよくなってきた。
なかなかお湯を注入してこない聖南が、やたらと俺のお尻をさらさらモチモチ触ってくるから、どうしたってヘンな気分になる。
たまにグイッと揉まれては「んっ」と声が出てしまう俺を、聖南は今、いったいどんな顔で見てるんだろう。
目を瞑ってるから、確かめようがない。
力を抜いて、と言われてからしばらくの間、俺はただただお尻を温められて触られ続けた。
やるならいっそすぐにやっちゃってほしいのに。
ちょっと変態っぽい聖南の手付きに、何だかやらしい気持ちと一緒に不安が湧き上がってきた。
「あ、あの……っ? せな、さん……?」
いつまで痴漢ごっこしてるつもりなの?
勇気を出して、恐る恐る振り返る。
もしかして、急に洗うのが嫌になっちゃったのかもしれない。聖南に限ってそれはないと思うんだけど、ずっとお尻をぷりっとしてるのはさすがに恥ずかしいから、俺は「自分でしましょうか」と声を掛けようとした。
呼んでも少しの間反応が無かった聖南は、ジーッと俺のお尻を凝視している。
やだ……恥ずかしいって言葉じゃ足りないくらい恥ずかしい。
なんでそんなに見てるの。
ちょっと、……こわいよ。
あと、……お湯出しっぱなしはもったいないよ。
「── 葉璃、マジで今日は頑張ったな」
「えっ? んっ、……んぅぅ……っ!」
優しい労いの言葉をかけられた俺は、そこで三度目の不意打ちを食らった。
むにっとお尻を掴まれて咄嗟に足を踏ん張ったと同時に、すっかり油断していた穴に指を入れられたんだ。
「んぁっ……ちょっ、っ……!」
洗うんじゃなかったの、と聖南を振り返る間もなく、第一関節だけ入れた指がナカでぐにゅぐにゅんとうごめく。
入り口を拡げるようにしてぐるっと動かされると、とても声を抑えられなかった。
「なぁ葉璃ちゃん。俺がなんで、あの言葉言わせなかったか……もう分かってんだろ?」
「ふ、うっ……うぅっ……? そんな、の……わかんな……っ」
ゆっくりな口調とは反対に、浅いところをうごめいてる聖南の指は忙しない。
お尻に力を入れられないからと、目の前の平らな壁に縋ろうとした手のひらが勝手に握り拳を作った。
聖南、きたないよ、だめ……それ以上かき回しちゃ……っ。
弱々しく握り込んだ拳を壁から離し、すぐにやめてほしくて後ろ手に聖南に触れようとした。
でもその拳は、直後壁に舞い戻ることになる。
「あぁっ……う、うーっ……!」
やさしい勢いのお湯が、とぷとぷとナカに入れられ始めた。 聖南が指を引き抜いてくれて安堵した瞬間だ。
そして聖南から、「もっとお尻突き出して」と無茶な要求をされる。
そんなの無理だよっ、と涙目になって振り返るも、まったくもって余裕無さげな聖南と目が合った。
── あ……これはもう、何を言ってもやめてくれない時の瞳だ。
俺の「やだ」が、通用しなくなった。
何かを尋ねられても、行為に必死で返事が出来ない俺の無言をとってもポジティブに解釈して一人で話を進めてく、聖南の独壇場のはじまりだ。
俺は、そんな聖南に毎回苦情を言いたくてしょうがないんだけど、いつもドキドキする方が勝っちゃって何にも言えなくなる。
さっきも同じ状況だった。
大好きの気持ちいっぱいの顔して、「葉璃」とたっぷりの想いを込めて呼ばれちゃうと、〝聖南になら何をされてもいい〟っていう危ない心境に陥っちゃうんだ。
「葉璃、腹触るぞ」
「んぇっ? あっ、あっ……なに、やっ……」
少しずつ入ってくるお湯をこぼさず受け止めていた俺は、そう言われてハッとした。
触るってどういう事。
もしかして……、と閉じかけた瞼を薄く開くと、聖南の右手がヒタとお腹に添えられた。
「……どこまで入ってんだろうな?」
「うっ、うぁ……っ」
添えるだけじゃなく、聖南は何かを確認するように数回下腹を押した。「うわ、やわらけぇ」と呟いた声が、あまりにエッチだった。
ていうか、溜めてるお湯がどこまで入ってるかなんて俺には分からないし、構造的にどころまで入るのかも当然知らない。
そんな事より、たぷたぷになったそこを無邪気にぷにぷに押されちゃうと、おしっこを我慢してる時みたいに切羽詰まってしまう。
〝やわらけぇ〟で気持ちいいのか、止めなきゃずーっと下腹の弾力を確かめていそうな聖南に向けて、俺はなんとか声を絞り出した。
「くっ……くるし、……っ! せなさんっ……押しちゃだめ……っ! だめだってば……!」
「ん、ごめん。触り心地よくてついな。頑張って溜めとけよ?」
注がれていたお湯が、お尻から遠のいていく。興味津々に俺のお腹を確かめてた手のひらも、案外あっさりと離れていった。
お湯のせいで膨れた気がする下腹を、あのままぷにぷにされてたらヤバかった。
い、いや……今も充分ヤバイ、かも……。
久しぶりだから……っ、どうしよう、溜めとくのツラい……っ!
「う、くっ……うぅっ……せな、さん……っダメ、出ちゃう、出ちゃう……っ!」
「心ン中で十秒数えるんだ。ちゅーしてたらあっという間だろ」
「へっ? ん、んむっ……!」
ゴトン、とシャワーヘッドが床に置かれた。
足元にあったかいお湯が絶え間なく触れてくるなかで、立ち上がった聖南から顎を取られた俺はそのまま唇を塞がれる。
「ふ、っ……んっ……」
ぬるっと入り込んできた聖南の舌に、応える余裕が無い。
それなのに、聖南は執拗に俺の舌を舐めてきた。漏らさないように意識を集中したくても、甘い舌がそれを邪魔する。
後ろからすっぽりと抱きしめられてるのもたまらなくて、壁から手を離した俺はお腹に回った聖南の手のひらに自分のを重ねて背伸びした。
「ちゃんと数えてるか?」
「んっ……んっ……」
とろけるような甘い声に、キスに夢中だった俺は下腹の違和感をいつの間にか垂れ流していた。
十秒ぽっちがこの時の俺は長いと感じていて、慣れた体は意思より感覚の方が正確だった。
「んんっ……んっ……!」
羞恥を聖南に見られたくなくて、自分から濃いキスをせがんだ。
軽くなっていく俺の違和感に、聖南も気が付いてたと思う。でも見ないフリ、気付かないフリをしてくれた。
はじめは縮こまってた俺の舌が積極的になるにつれて、聖南もエンジンをかけてくれて助かった。
上顎はいいとして、喉の奥間近を舐められた時はさすがにビックリした。だけど俺も、奥まで入ってきた聖南の舌の裏側を舐めて返したからおあいこだ。
深いキスをしながら口角を上げた聖南が、負けじと激しく舌を絡ませてくる。
合間に何回も「んっ」と声を上げる俺と、こんな俺のすみずみまで見たがる変わり者な聖南は、タガが外れたように無茶な態勢でのぼせるまでキスをし続けた。
一回目の羞恥のあとを、足元に転がったシャワーがぜんぶ洗い流してくれた頃。
唾液で濡れた唇を艶めかせた聖南が、ポツリとこう言った。
「──〝ありがとう〟なんて、明日には思えなくなってるよ」
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