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54♡遭遇※

─葉璃─ ♡ ♡ ♡  いつでも心と体の準備が出来てる聖南に、「待って」が常套句になった俺は散々おあずけを食らわせていたらしい。  会えばこうなるって分かってたから、一応俺だって心の準備はしてきた。  準備しないと、心臓がギュッてなるから。  久しぶりの聖南の破壊力は、凄まじいから。  それなのに料亭の個室の扉を開けて聖南の姿を見た瞬間、よく分からない感情がぶわっと押し寄せてきて何気ない顔をするのが大変だった。  アキラさんとケイタさんが居たから、まだ良かった。たぶん、普通を装えてた。  記者が追ってるからって堂々と助手席に座った時も、さり気なく当たり前みたいに手を繋がれて心臓がうるさくてかなわなかったんだから。  レイチェルさんとの通話で動揺してるんじゃないかって、聖南は心配してるんだと思う。  やたらと俺に「絶対に放さないから」としつこく言って抱き締めてくる聖南の行動に、俺は本音を言ってしまいたかった。  全然、……いやまったく動揺しなかったわけじゃないけど、レイチェルさんの通話は普通を装えなくするにはもってこいの内容で、あれがあったから俺はドキドキしてる胸を押さえて自分を宥めていられた。  こんなにカッコ良かったっけ……と、前回と同じ感想を抱いて悶えるなんて、付き合って三年目に思うことじゃないよね。  でもしょうがない。  聖南が懐かしい匂いをまとって、どこまでもカッコいいのがいけない。  俺の心臓が壊れちゃいそうなくらい、至近距離でジッと見つめてくるあざとさにやられちゃった俺は、せっかくの広いお風呂を楽しめなかった。  だってずっと、触ってくるんだもん。  二人きりになってから、触れてない時がなかった。  そして終いには、耳元で「挽回させて」と何回も言ってくるんだよ。  何のこと? って不思議に思うじゃん。 「挽回したい、って、……んっ、何の話、……っ、ですか」  後ろから時間をかけて挿入ってきた聖南が、また「挽回したい」とぼやいた。  息を詰めて聖南を受け入れてた俺は、枕を握り締めて少しだけ振り返る。  覆い被さってきた聖南の体温にうっとりしながら問うと、何回目か分からないそれの答えがようやく聞けた。 「……俺こないだ寝落ちしたじゃん。そのせいで葉璃を悶々とさせちまうし、俺は不完全燃焼だし。騎乗位は良かったけどな。でも俺、あんまり葉璃を愛せてない」 「んんっ……! あっ、待っ……」  話を続ける聖南が、クンッと腰を動かした。  半分くらい抜いて一気に挿れるそれを何度かされて、中を強く擦られる感覚に声が抑えられない。 「それなのに、だ。洗うの自分で済ませてるし」 「だっ、……て、見せたく、なかっ……あぁっ」 「俺がするって言ったのに」 「やっ、やっ……せなさ、んん……っ!」  突かれる度に、腰が浮いていった。  シーツと距離が出来たせいか、いつの間にか俺のモノが聖南の手のひらに包まれてゆるゆると扱かれている。  勃ち上がって揺れる性器は、触れられるだけで喜んじゃってお尻が落ち着かなくなった。  俺のモノは聖南の手のひらにすっぽり収まるから、大して扱かれなくてもあったかくて気持ちがいい。だからそんなに動かさないでと心の中で思ってしまうのは、聖南が俺を先にイかせる気なんだって分かったからだ。  無意識にお尻を高く上げてしまう。聖南が動けば、俺の体も揺さぶられる。  ほんのちょっとの刺激だったのに、一回目の射精はあっけないほどすぐに上り詰めてしまった。  でもそれも当然なのかもしれない。  頑として譲らなかった聖南が後ろを拡げてくれてる時から、俺はその指にすら興奮してイくのを我慢してたくらいだ。 「ふぅっ、……っ……っ」 「葉璃、もうちょい頑張れ」 「い、え、……っ? ひぅっ……!」  ぴたりと動きを止めた聖南は、俺がイった後もずっとソコを柔く握り続けている。  射精すると視界がぼやけて、頭の中が真っ白になって、感覚という感覚が何十秒か鈍くなる。声をかけられてるのは分かっても、その意味まではちょっと考えられなくて。  何をがんばるの。なんでまだ聖南は俺のを握ったままなの。──枕を抱えるようにして突っ伏した俺がぼんやりとそう思ったのは、聖南の手付きが明らかに怪しくなってきたからだ。 「俺の手に集中して」 「やめっ……それヤだ……! ヤだ! だめっ、だめ……っ」  丸みのある先端を重点的に、揉んだり捏ね回したりするこの手付きは、ついこの間された事だからよく覚えてる。  イったばかりで敏感なソコをそんな風にされたら、言われなくても集中せざるを得ない。 「頑張れ♡」 「がんばるものじゃ……っ! うぅっ……! あっ……だめ、だめ、漏れる……!」 「そういうもんだ」 「あっ……ひぁ……っ、漏れる、……ってばぁ!」 「いいって。俺たちのベッドはぐっちゃぐちゃのグッショグショになってナンボだ」  だめ、といくら言ってもやめてくれない聖南の声が、すごく楽しげだ。  体の中を駆け抜ける謎の波に合わせて、腰が上下に揺れる。  そんなに時間はかからないものなのか、単に俺がこの手の事に弱いからなのか分からないけど、聖南が支配する下半身を一回目の射精と同じくらいのスピードで何かが襲ってきた。 「あぁっ……あっ、だめ、も、もう……うぅ……っ!」  その瞬間は、止めることが出来なかった。  聖南の手のひらやシーツが濡れてしまうことなんかどうでもよくて、イく時とは少し違うのに自分の意思じゃどうにもならないのは同じで。  漏れたって表現が一番正しいコレは、聖南との行為の中で断トツで苦手かもしれない。  ベッドの上なのにプシュッと漏らした感覚が、とんでもなく恥ずかしい。それを聖南に促された事も、見られた事も、恥ずかしい。  中の聖南をギュッと締めちゃって、自分で自分の首を絞めた事も、とんでもなく恥ずかしい。  どうにかせき止めたいのに出来なかった事に、なぜか項垂れる。  自分で濡らしたシーツの上にへたり込むと、タオルで手を拭った聖南が俺の頭をよしよしと撫でてきた。 「頑張ったな」 「……っ、はぁ……っ、はぁ……っ」  ……俺は何もがんばってない。  そんなに優しく頭を撫でられるようなこと、してない。  むしろベッドを汚してしまった事にも罪悪感を覚えてしまって、俺は呼吸を整えるフリでちょっとだけ聖南のことを無視した。  促されたとはいえ、漏らしちゃった俺はどう答えたらいいの。  恥ずかしくて聖南の顔見られないよ。 「今度は俺の番。ゆっくり動くからな。ちゃんと呼吸してろよ、葉璃ちゃん」 「ふぁ……っ、うぅっ……」  言うなり俺の返事を聞かないまま動き出した聖南は、うなじにキスを落として、その流れで背中にも口付ける。  唇の感触が痕をつけるためのものに変わった時、ビクビクっと背中が震えた。  言ってた通り、ゆっくり動いてくれてる。  だけど、それはそれで体がおかしくなりそうだった。  中を優しく擦られる感覚が、じれったい。  もう少し奥まできてほしいのに、聖南が激しくしないから中途半端に快感が溜まってムズムズする。  気持ちいいんだけど、何だか分からないけど呼吸が浅くなっちゃうし、明らかにまた俺は元気になってるし、……。 「葉璃、へばるの早過ぎ。どしたの、体力落ちた?」 「ん、……っ、それもある、けど……っ! 漏らすの、疲れ、る……から……」 「あぁ、それでか」 「せなさん、……いじわる……」  自分で言ってて気付いた。  やわらかでじれったいような快感の波の原因は、さっきのお漏らしが尾を引いてるから。  聖南が嬉しそうなのが、ちょっとだけ悔しい。  意地悪しないで、と思った心そのままを口にしてしまうと、緩く中を擦りながら聖南がクスクス笑った。

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