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54♡②※

「意地悪してるつもりはねぇんだけどなぁ。潮吹き気持ちよくない?」 「……微妙です……」 「そなの? じゃあ頻度少なめにしような」 「少なめっていうか……もう、ヤです……」 「それは無理な相談だ」 「なんでですか! は、恥ずかしいんですよ、あれ! あぅっ……!」  動きが止まってるから、油断してた。  振り返って抗議した俺は、力んだ拍子に聖南を締め付けてしまって、ぽふんと枕に沈む。  聖南はというと、自滅した俺を見て肩に口付けてきたあと、何とも可笑しそうにククッと笑った。 「その顔が見てぇから、無理♡」 「やっ……あぁっ……!」  俺が嫌だと思う事はしないって言ったのに、「無理」しか言わない聖南はやっぱり意地悪だ。  〝その顔〟がどんな顔か知らないけど、俺はまた聖南を喜ばせるような表情をしてたのかな……。 「動くよ」 「……んっ……っ」  ゆっくり動き出した聖南が、少しだけ腰を回してぐにゅぐにゅと中を拡げるように挿入ってくる。  もう充分なのに、指で慣らしてる時みたいに丹念なそれは、限界まで拓ききってるはずの入り口から中にかけてをためらいなく押し開いた。  めずらしく最初からこの体位で攻めてくる聖南の考えは、俺には分からない。  でも最中の表情を見なくて済むから、俺は助かった。ほんとは後ろからされるのイヤなはずなんだけど、それはこんなに聖南にドキドキする前の、図々しい俺だった時の話だ。  なんで平気だったんだろ、と今になって何度も思う。  あの聖南が、今、俺の中に居る。  俺の腰を掴んで、たぶん繋がってるところを凝視しながらゆっくりの挿抜を楽しんでる。  前の俺だったら、どんな顔してるんだろうって振り返って見る余裕が、ちょっとだけあった。  だけど今の俺はそんなのムリだ。  聖南の声にも、触れられてる感触も、立派なアレを抜いては挿れてのエッチなこの行為も、背面の至るところへの口付けも、何もかもにドキドキして頭がおかしくなりそうだ。 「葉璃……葉璃……」 「んんっ……んっ、んっ……!」  目を閉じて、されるがままになる。  主導権は完全に聖南の方にあるから、俺はこの方がいいんだ。  何も考えられない。考えたくない。  前を触るだけじゃ足りなくなった俺の体は、聖南に挿れてもらって始めて最高の快感を得る。  その上あの顔で、あの目で見つめられたら、全身の血が猛スピードでかけ巡って失神しちゃうかもしれない。 「葉璃、……葉璃……」  少しずつ速くなってきた動きについて行くのに必死で、聖南から呼ばれてるのにしばらく気付けなかった。 「なに、なに……? せな、さん……っ?」 「呼んでるだけ。俺の恋人はな、見た目も中身もかわいーけど、名前までめちゃめちゃ、かわいーんだ」 「……っ、んっ……」  そんな甘いことを囁く聖南は、わざわざ体を密着させてそっと奥を突いた。  そんなことない、と全力で言い返したくても出来なくて、肌のぶつかる音がする度に息を詰める羽目になる。  ゆっくりがじれったいだなんて、よく思えたもんだ。  聖南の腰が止まらなくなると、今度はちょっと休ませて……と言葉にならない心の声が俺の中だけでぐるぐると渦巻く。 「葉璃、体起こせる?」 「ふぇ……っ? あっ、ちょっ……」  言ったそばから、聖南はじわじわと凶器を抜いた。そしてロクに返事が出来ない俺の体を抱き上げると、腰掛けた聖南の太ももに座らされる。   「キスしたい」 「んっ……待っ、……んん……っ!」  〝挽回したい〟聖南は、今日は俺の返事を聞かない日みたいだ。  この態勢は恥ずかしい……なんてモジモジ言ってる暇も与えてくれなかった。  重なった唇から、すぐに舌が忍び込んでくる。逃げ腰な俺の舌を見つけて、めいっぱい絡ませて唾液を送り込んでくる。  飲まなきゃ溢れてしまうから、隙を見て喉を動かそうとするんだけど、聖南の舌がそれをなかなか許してくれない。  熱烈な舌が俺の口の中で動き回って、逃げても逃げても捕まってしまう。 「もう忘れてんじゃん」 「ふ……んっ、んっ……んっ……」 「さっきいっぱいしたのになぁ? 復習足んなかった?」  キスの合間に喋ることが出来る聖南から、バスルームでの復習が成ってない事をさりげなく窘められた。  いや……そう言われても、さっきもこんな調子で俺は何も出来なかったよ。  お風呂上がりで少しのぼせた体が、さらに熱くなって呆けてたんだ。  足りなくはなかった。  ポカポカになった体を寄せ合って、背中を丸めた聖南が俺のほっぺたに手を添えてドラマのワンシーンみたいなキスをたくさんしてくれた。  すぐ近くで熱い視線を感じた俺は、これ以上ドキドキしてたら倒れてしまうと察してずっと目を閉じてはいたんだけど。  今も、その時の状況とあんまり変わらない。 「ん……っ! む、んっ……!」 「でもま、……また葉璃に俺のキス教えられんの、気分いいけどな」 「…………っ!」  鼻先でキスをする聖南が、至近距離でふわっと微笑んだ。  その瞬間、一生懸命逃してたドキドキが復活してしまった。 「なん、なんでそんな……っ! そんなこと、言うんですかっ!?」 「ん?」 「お、おれ、こんなに……がまん、してるのに!」 「我慢? 葉璃、何か我慢してることあんの? ダメじゃん。我慢はダメ。葉璃ちゃんは、どんな我儘も言っていい」 「いや、ちが、……あっ……!」  違う、違う……! そういう意味じゃない!  ぐえっと変な声が出てしまうほど強く抱きしめられた俺は、まったく違う角度の勘違いをした聖南の背中をパシパシと叩いた。  しかも俺だったらどんな我儘も言っていいなんて、甘やかしもいいとこだ。  聖南はずっと、ずっと、出会った頃から俺に甘い。  表情も、視線も、言動も、ぜんぶ。 「何のために俺がいると思ってんの。我慢してるとか聞き捨てなんねぇよ。……ほら、言って。何を我慢してる?」 「そ、そうじゃ、なくて……っ」 「俺には何でも打ち明けろって言ったじゃん。いい事も悪い事も、イケてるとこもカッコ悪いとこも共有してこその恋人だろ?」 「それはそうです! 俺もそう思います……っ」 「じゃあ話して。何を我慢してんのか、マジで気になる。セックスどころじゃねぇよ」 「えぇ……っ」  聖南にとって俺が何かを我慢してるって事は、エッチを中断するくらい重要なことなの……っ?  俺はそれにビックリだ。  優しい、甘い、……そんな言葉じゃ足りないくらいの重たい愛情を感じる。  俺、別にそういう我慢はしてないんだけど……。  そう改まって、どちらかというと心配そうな表情で見つめられると、俺の〝我慢〟がものすごく打ち明けにくいものになる。 「葉璃、言って」 「いやあの……っ、そういう風に聞かれると言いにくいんですけど……」 「言うまで挿れてやらないからな」 「えぇ!?」 「ヘロヘロになるまで潮吹きするか?」 「えぇっ!? い、イヤだ! それはすごくイヤです!」 「じゃあ言え」 「うー……っ!」  交換条件がヒド過ぎる……!  ほんとに大した事じゃないのに、聖南の言う通りにしないと俺のアソコが壊されてしまうかもしれない。  言ったところで『なーんだ、そんな事か』ってその程度のことなのに……。  言わなきゃダメなら、言うしかない。  俺は思い切って、聖南の視線から逃れるためにぎゅっと抱きついた。 「が、我慢って、聖南さんが思ってるようなことじゃないです……。いちいち、言うじゃないですか。聖南さん、ドキドキするようなことをサラッと言うでしょ。電話でも言ったはずです、俺……。ポッて照れるようなこと、あんまり言わないでください……ドキドキしないように我慢するの、大変なんですよ……」

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