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58❤︎⑤※

 本気で抵抗したい行為でも、快楽には抗えない。それも可愛い恋人が、一番敏感な場所に顔を埋め、そればかりか咥え込んでめろめろ中なのである。  聖南は漏れ出そうになる声を必死で殺し、葉璃の頭を撫でて何度も息を詰めた。  勝手に溢れ出る先走りも、自身の唾液と共にすべて舐め取って飲み下してくれる。  思えば最初に『舐めたい』と言ってからというもの、葉璃は少しも嫌がらずに聖南の性器を咥えているが抵抗は無かったのだろうか。 「…………っ」  気を逸らすために、そんな事を考えていなければやり過ごせない。  大事そうに握られた性器は、彼の小さな両手を駆使して扱かれている。限界まで咥え込まれた敏感な先端は、絶え間なく舌で愛撫され続け、時折ジュッと吸われて腰が震えた。  木材で出来た天井やシンプルで控えめな照明を仰ぎ見る聖南の瞳は、薄く開いてはいるが恍惚としている。  温かな感触に集中し過ぎると、葉璃の後頭部を押して嘔吐かせてしまう恐れがあるので、出来るだけ気を散らすしかなかった。  喉奥まで挿れるにはコツが要る。だからといって聖南主体で動きたくもない。  いくら強い快感を伴う行為であっても、葉璃を苦しませてまで味わいたいものではないのだ。  まったくもってそこまでの事を望まない聖南は、ディープスロートという単語やその意味すら知らないであろう葉璃には、わざわざ教えない。これからも教える事は無い。 「ふむっ……んっ……」  葉璃がただ一生懸命に、聖南を気持ち良くしたいと考えながら〝めろめろ〟してくれているだけで、不思議とたまらない幸福感が脳内に溢れてくる。  舌使いは拙い。扱いている両手もぎこちなさがある。時間を忘れて休み無く施してくれる葉璃は、顎が疲れてしょうがないのではないかと要らぬ心配をしてしまうほどだ。  だが聖南は葉璃に舐められていると、自身でいくらか制御できるはずの射精をほとんど我慢出来なくなる。 「ふっ……んっ……んっ……」  葉璃から漏れ出る吐息が喘ぎ声に聞こえてしまい、さらにはなぜかお尻を小さく揺らしている光景でさえ煽られ、聖南はとうとう堪えきれなくなった。  ヤバッと焦った次の瞬間には、葉璃の両頬を捕らえて無理やり性器を抜いてしまう。 「んぁ、……なん、……」 「ダメ。もう出る」 「飲みますよ!」 「ドヤ顔するとこじゃねぇよ」  夢中で聖南の射精を促していた葉璃は、突然にストップがかかって不満そうである。  どこぞのうさぎのキャラクターのように唇をバッテンにし、聖南をじっとりと見詰めて「飲みたかった」とのたまった。  純朴な恋人が言うには過激な台詞だ。刺激が強過ぎるからやめろとたしなめても、おそらく葉璃から返ってくるのは鼻息だけだろうが。 「……ゴム付けるか?」 「えっ」  そんな彼を満足させるには、別の事に意識を移して施しの続きをさせればいい。  放られていたコンドームを手に取り、途端に分かりやすくドキドキし始めた葉璃にそれを手渡す。 「開けて」 「は、はい」 「そんでそれを出しますー」 「はい……っ、わぁ……ぬるぬるする……」 「こっち上にして先っぽつまんで」 「えっ、これ向きとかあるんですか」 「あるよ。そのまま俺の先端に乗っけて、シュルシュル〜っと」 「シュルシュル〜?」  葉璃には馴染みの無い行為だからか、レクチャーの間ワクワクしているように見えた。  実際にコンドームに触れさせ、聖南の性器にあてがい装着までを任せる。そのたどたどしい手付きに、いじらしさと熱心さを感じた聖南は否が応でも興奮した。  しかし葉璃は、何故か物珍しそうにまじまじと性器を見ながら上体を引き、「わぁ……」と繰り返している。 「こ、こんな感じなんですね。わぁ……」 「なんだよ。微妙な顔して」 「いえ……なんか生々しいなって」 「今の今まで俺の咥えて離さなかった子がよく言うよ。葉璃の方がよっぽど生々しかったぞ?」 「えぇ!? だってアレはあぁいうものでしょっ?」 「そうだけど俺は葉璃にさせたくないって言ってんじゃん」 「そんなこと言われても……聖南さんだって俺のめろめろしたもん……」 「クッ……」  ──クソッ、マジでこういう事を素で言うんだもんな。俺のめろめろしたのはさっきの仕返しだっていうのか? あーもう、かわいー……。  葉璃と話していると、こうした不意打ちを度々食らう。  打算の無い葉璃の発言にいちいち感情を揺さぶられる聖南も大概だが、無邪気な本音がいかに男心をくすぐるかを彼には滾々と説いたはず。  例によって胸元を押さえた聖南は、仕返しの仕返しをするために葉璃を恨めしそうに見やった。 「……あぁ、だよな。葉璃のめろめろ、気持ち良かったよ。マジでイきそうだった」 「え、ほんとですかっ? イっちゃうまでもう少しって感じでした?」 「ん。もう出るって言っただろ」 「あ……あれ、下手くそだからもうやめろって意味かと……」 「ンなわけねぇじゃん。この小せぇ口いっぱいに俺の頬張って、この舌でずーっとめろめろされて気持ち良くないわけねぇだろ」 「あっ、……いやそんな……」  華奢な顎を取り、親指で彼の唇に触れる。そのままグイッと唇を開くと、舌の先端にも触れて聖南はニヤリと笑った。  次第に顔が赤らんでくる様を見られて、非常に満足そうな笑みだ。 「俺の先走り、どうだった? 全部飲んでくれたんだろ?」 「え、っと……いつもと同じで独特な味でした。美味しくはないけど、俺にはそんなにイヤな感じがしなくて、……」 「いっぱい出てた?」 「へっ? い、いや、分かんないです……夢中だったんで……。自分の唾液も飲んでたし……」 「そっか。こうしてる今もゴムの中に溜まってんだよな」 「えっ!? そんなにですかっ?」 「さぁ? 見てみる?」 「あ、ちょっとそれは……生々しいんでやめときます……」 「葉璃の照れ基準が分かんねぇよ」  精液を飲みたいとドヤ顔で息巻いていた彼も、聖南の口撃にすっかり勢いを失くした。  葉璃が装着したコンドーム越しの凶器を直視するのは躊躇いがあるらしく、「見てみろよ」と促しても顔を背けて照れるばかりだ。  他愛もない会話の最中である今も、興奮の証として聖南の性器はまったく衰えないが、早く繋がりたい気持ちと葉璃を揶揄って愛でていたい気持ちが競り合い、なかなか先へ進めない。  葉璃が〝まろまろ〟を好む気持ちが、聖南にもよく分かる。……と思いつつも体は正直だった。 「あ、あの……っ、聖南さん、俺明日は十時からお仕事があって、……!」  聖南はゆっくりと、葉璃を横たえる。  すると、以前レッスンを欠席した事をかなり気にしている様子の葉璃は、行為が始まるや己の体力自慢の如く時間の概念を忘れてしまう聖南へ、釘を刺すつもりでそう言った。 「分かってる。ちゃんとセーブするよ」 「……聖南さんは? お仕事何時から……あぁ……っ」  葉璃のスケジュールは、言わずもがなしっかりと頭の中に記憶してある。  心配要らないと微笑んでやったと同時、彼の両腿を抱え上げた聖南は性器を後孔にあてがい、腰を使ってぐぷんと挿入した。 「明日は十時から事務所で会議だ。ここんとこ二日おきに会議入ってんだよ。開催地とツアー日程は決まったんだけどまだまだ決める事多くてなぁ」 「あっ、あっ……せな、さん……っ!」  じわじわと先端を埋めながら回答する聖南を、葉璃が瞳をまん丸にして見上げた。着々と挿入ってくる存在にたまらず声を上げ、後ろ手にシーツをクシャッと握っている。  何事もないように語っている聖南もまた、絶妙な温かさと窮屈な襞にうっとりし、意識が飛びかけた。

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