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58❤︎⑦※

 時折僅かな会話を挟みつつ時間をかけて後孔を慣らし、気紛れのように髪や素肌を撫で、いざ挿入となってもそこからがさらに長い。  結果的に長時間のセックスに及ぶためには最初が肝心だからと、聖南は前戯も怠らないよう努めている。  挿入した性器が葉璃の中にピッタリと収まっても、すぐには動かない。  敏感かつ繊細な場所に聖南のモノを馴染ませている今も、実はかなり我慢を強いられている状況ではあるが、性急に事を進めて葉璃に苦痛を与えるくらいならば聖南はいくらでも耐えられる。  繋がったままふわりと抱き締め、密着したところからじわじわと体温までも繋がっていく瞬間がたまらない。  決して小さくない存在に慣れようと、聖南を抱き締め返しながら甘く吐息を溢し、「痛くない?」、「ツラくない?」、と何度も耳元で問う聖南に頷いて応える葉璃を、心の底から愛おしく思う。  聖南は細い首筋に鼻を埋め、時が止まっているかのように静まり返った情緒ある雰囲気に浸っていた。  その時ふと、腕の中で葉璃がか細い声で聖南を呼んだ。 「せなさ、ん……」 「ん? どした?」 「特番用って……何ですか?」 「あぁ、……」  葉璃の頭元に両腕をつき、「その事か」と呟いた聖南はじわりと体を起こす。  まさか今この状態でその説明を求められるとは思わなかったが、聖南発信の話題に葉璃が食い付いているので、まろまろを好む彼のために聖南は喜々と話してやった。  ヒナタの公表を予定している特番用に聖南が一曲書き下ろす事、それはCROWNだけでなくETOILEも絡んだパフォーマンスになる事、葉璃が気にする世間の負の反応をかき消す目論みがある事等々、時間にして数分だが葉璃はうんうんと頷いて真剣に聞いていた。 「そう、なんですね……思い出しました。アキラさんとケイタさんにお話してたの、その特番の事だったんだ……」  伏し目がちに薄っすらと笑み、聖南の話に納得がいった葉璃はいくらか緊張が解れているように見えた。  葉璃の頑張りを称えるという大きな名目の他に、忘れてはならないのが、どんなパフォーマンスをすればファンを楽しませられるかという事。  アキラとケイタに協力を仰ぎ二つ返事で共感してもらえたのも、絶対にCROWNとETOILE両方のファンが納得するステージにすると聖南が豪語したからであった。  その上で、これまでの葉璃の頑張りが報われればいい。  ヒナタの公表もさる事ながら、思い描くステージでのパフォーマンスにも相当に胸踊る聖南だった。 「葉璃ちゃんあの時トイレ我慢してたんだよな。ずっとソワソワモジモジしてて可愛かったの思い出したよ」 「そうなんですよ。ちょっと限界迫ってて、アキラさんとケイタさんの前でほんとに失礼な話なんですけど、気もそぞろだったんで……。ていうか聖南さん、何でも可愛いって言いますよね……俺おしっこ我慢してただけなのに」 「しょうがねぇだろ。葉璃はいつでもどこでもどんな時でもかわいーんだから」 「……でも、俺だって……いつか可愛くなくなる時がきますよ……?」 「…………?」  ふいに視線を外した葉璃から、儚い笑みが消えてしまった。雲行きの怪しい会話に聖南の心がざわつき始める。  葉璃の好きなところ、可愛いと思うところなど考えなくてもいくつも浮かぶ。けれど結局は『全部』になってしまうのだが、だから余計に〝可愛くなくなる時〟がピンとこない。 「……それっていつ?」 「え? いや、ほら、……俺もどんどんおじさんになりますし、おじいちゃんにも……」 「なんだ、そういう意味? だったらそれは俺も同じじゃん」 「そうですけど、聖南さんはなんか老けない気がします」 「なんでだよ。俺も順調に年齢重ねてますけど?」 「ま、まぁ……」 「よく分かんねぇけど、俺は葉璃のこと見た目だけで好きなわけじゃねぇから、妙な心配はしなくていい。そんな事言ったら俺だって確実にオッサンになるんだし、いつ葉璃に愛想つかされるか分かったもんじゃねぇよ」 「そんな……っ! 聖南さんはカッコいいおじさんになるからいいんです。いつまでもいい匂いがしてて、清潔感あって、セクシーなおじさんです。あっ、まさにパパさんみたいな!」 「……はぁ?」  ──パパさんって……まさか康平? なんでここで康平が出てくんだよ。  年齢を重ねても聖南は若々しいままだろうと、爛々とした瞳で言われたのは嬉しい。  しかし解せない。  未だ認めたくはないが、よりによって血の繋がった父親を対比に出されるとは思いもよらなかった。 「いや待てよ。葉璃ちゃん、康平のことめちゃめちゃいいように言うじゃん。いい匂い? セクシー? 康平のことそういう風に思ってたの」 「あっ、えっ!? いや違……っ、パパさんをあえてそういう風に見てたわけじゃなくて、聖南さんは将来パパさんみたいになりそうだなって思ってたんで……!」 「はぁ!? いつからそんなこと思ってたんだよ!」 「わりと最初からですよっ? 聖南さんとパパさんが再会した日、俺パパさんにブチギレちゃったじゃないですか。あの時心の中でビックリしてたんです! あっ、なんとなく聖南さんに似てる! って……」 「はぁ〜!?」 「ちょっ、聖南さん! 興奮しないで、お、落ち着いてくださ……あっ」  解せぬ思いでいっぱいになった聖南の声は裏返り、顔は真っ赤になっていた。  これが落ち着いていられるかと、腰を動かして性器をゆるゆると挿抜し、動揺を言い訳にまろまろタイムを強制的に終了させた。 「なんかイヤだ……すんげぇイヤだ……」 「あぅっ! うぅっ……! んっ!」 「俺がアイツに似てるって? バカ言うな」 「ひぁ……っ、ごめ、なさ……っ、そんなに、イヤがるなんて、思わな……っ、バカなこと、言って……ごめ……んっ」  腰を引き、ずちゅっと滑った音を響かせて性器を抜く。先端まで抜いてしまうと、それからすぐに三分の一ほど挿れ、また抜くを繰り返す。  その浅い位置での挿抜が葉璃には覿面である事を知る聖南に、迷いは無い。  葉璃の前立腺の場所は体が覚えている。  くびれた腰を両手で捕らえ、先端で引っ掛くようにしてそこを重点的に狙うと、早くも悶え始めた葉璃が啼きながら許しを請うた。 「せなさ、……っ、あっ、やだ……っ! おこらな、いで……!」 「怒ってねぇよーだ」 「ごめん、なさい……! ごめ、なさ……っ」 「マジで怒ってるわけじゃねぇから、そんなに謝んなくていい」 「でも……っ、ん、んっ……やっ、やだ、それだめ……っ!」  前立腺ばかりを攻められ、次第に下腹部の感覚が曖昧になる葉璃の視点が定まらなくなっている。  聖南はそんな葉璃をしっかりと瞳に焼き付けつつ、絶えず腰をゆるく振った。 「複雑なんだよ。……ま、そんなことはどうでもいい。葉璃ちゃん、今はこっちに集中しよ? 怒ってねぇからさ、マジで」 「んっ、んっ……んっ……でも、俺……っ」 「ぶっちゃけ拗ねてる……だけだし」 「……んえっ? あっ……だめっ! せなさん……っ、そこ、ばっか……んんっ」  当たり前だが、康平が聖南に似ているのではなく、聖南が康平に似ているのだ。  ある日渋々と幼少期の葛藤を語った聖南を思い出しでもしたのか、軽い気持ちで口走った事に罪悪感を抱いているのは葉璃のその苦々しい表情で伝わってくる。  ただ聖南は、本当に怒っているわけではなかった。過去に確執があったからというのも違う。  漏れる嬌声と共にしつこく詫びられると、聖南の方が何やら悪い事をした気になってくる。  それはもっと解せない。  この状況下、二人以外の登場人物は要らないのだ。  彼の言葉に裏など無いと知りながら、聖南以外の男を褒めた事も気に入らない。血は争えないと改めて思わされた事も、気に入らない。  複雑だと言うしかなかった聖南は、つまりは単に拗ねて不貞腐れているだけに過ぎなかった。

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