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58❤︎⑧※
「ひどいこと、言って……っ、ごめん、なさい……っ」
幼少期、愛情に飢えた聖南がどれだけ康平との関係に悩み、悲しみ、家族というものを無意識的に欲していたかを知る葉璃は、ついに瞳を潤ませていた。
聖南に揺さぶられながらも、詫びずにはいられないとばかりに喘ぐ間の「ごめんなさい」を止めない。
葉璃の苦悩を知った気でいた聖南が〝ヒナタ〟を頼み込んだように、葉璃もまた自身の発言は軽はずみだったと後悔しきりだ。
揃って自身の軽率さを悔やみ合う事になるとは、それぞれが発端の皮肉な話である。
「もう謝んなくていいって言ったろ。俺も過剰に反応し過ぎた。ごめんな」
「そん、な……ぁあっ……! 俺が、わるい、のに……っ」
素直に聖南もそう詫びると、顔をクシャクシャにして葉璃は頭を振った。
そもそも聖南が大人げ無く大袈裟な反応を見せたために、まったく悪気の無い葉璃が心を痛めてしまった。
本意でない事が起こり、今夜二度目の反省を促されて我に返った聖南だったが、あくまでも『怒っていない』だけで盛大に拗ねてはいる。
浅い挿抜で葉璃が身悶えする様を見ながら、大人げ無い聖南はニヤリと笑って上体を倒した。
より近くで葉璃の表情を伺い、仲直りのキスを仕掛けるためだ。
「ん、そうだな。葉璃もちょっと悪いかも。俺以外の男をセクシーだとか言いやがって」
「うぅ……っ! んむっ……!」
油断していた葉璃の舌を捕まえて思いきり吸い、ねっとりと絡ませていく。
その間もピストンは続き、ネチネチとローションの擦れる音が二人の耳に届いていた。
葉璃の二発目を誘うように、性器を半分ほどまで中に収め、素早く腰を引く。性器が抜けるギリギリのところで止まり、間髪入れずに挿入してはまた引く。
勢い余ってうっかり奥まで埋めてしまいそうなものだが、内襞に僅かな引っ掛かりがあるのでちょうどいい。
前立腺を押すように腰を動かしていると、言わずもがな葉璃は悶え、聖南もまた絶妙に亀頭部が擦れて気持ちが良かった。
おまけに葉璃の唾液を無理やり奪って飲む事で、それが性癖である聖南の興奮はさらに増す。
声と呼吸を殺されている葉璃は可哀想だが、とはいえ頬を紅潮させて聖南の性器を締め付けているからには、苦しいだけではないはずだ。
「……フッ。……でもま、似てる似てねぇは置いといてアイツはあの歳にしちゃイケオジってやつだからな。俺もあぁなるって、葉璃は言いたかったんだよな?」
「んっ……そう! そう、なんです……っ! せなさんはっ、あっ……今でも、色気ムンムン、なのに……んっ!」
「……葉璃ちゃん、締め過ぎ」
「あっ、あぁ……っ、だめ、せなさん……っ、そんなにしたら……! イっちゃうからぁっ、イっ……うぅ……っ!」
執拗にピンポイントで攻め続られた葉璃は、ギュッと瞼を閉じ一際甲高い声で啼いた。
繋がったまま、葉璃の腰が小さく上下する。性器を締め付けられて目を細めた聖南の下で、葉璃はビクビクと体を震わせた。
葉璃の顔に見惚れていて射精の瞬間は見逃してしまったが、おそらく今、肩で呼吸をする彼の腹は二発目の薄い精液で濡れている。
その姿態に目を奪われつつそっと下腹部に触れてみると、先端を濡らした性器が可愛くやわらかくなっていた。
「はぁ……はぁっ、うぅー……っ、うぅっ……」
「なぁなぁ、葉璃ちゃん。俺カッコいい?」
「へっ? ……っ、はい、……それは……誰よりも、すごく……」
息も絶え絶えな射精後なので出来れば話しかけてほしくないのだろうが、聖南は我慢出来なかった。
薄っすらと目を開き、しっかりと聖南を見詰め、まさしく望む答えをくれた葉璃は律儀だ。
呼吸を整えながらも即答したのは、少しでも言い淀めば聖南が不安に駆られると知っているからだろう。
機嫌良くニコッと微笑んだ聖南は、年下の恋人に気を使わせてでも言質を取りたかった。
「それならいいや。葉璃がカッコいいと思ってくれてんなら、それで充分」
「せなさん……もう、怒ってない……?」
「最初から怒ってねぇって言ってんじゃん」
「なっ、怒ってたもん……! 俺がひどいこと言ったから……!」
「ンな風に思ってねぇって! 怒ってんじゃなくて拗ねてたんだ! 葉璃が俺の前で俺以外の男を褒めてたんだぞ! ……何回も言わせるなよ。恥ずかしい、っつか情けねぇって自分でも分かってんだから……」
「えぇ……! か、かわいい……っ」
お伺いを立てるように聖南の顔を覗き込んでいた葉璃は、日頃のレッスンの成果か立ち直りが早かった。
今もなお大事な所で繋がっているというのに、息巻いた葉璃に応戦するように気持ちを曝け出した聖南は、口元を両手で覆った恋人からさらなる反撃を食らう。
「聖南さん、そういうとこですよ……! いつもは何でも頼りたくなっちゃうお兄ちゃんて感じなのに、そうやって俺の前では駄々っ子になるの、ほんとに可愛いです! 聖南さん可愛い……っ」
「……俺はカッコいいの方がいい」
「もちろん〝カッコいい〟が大前提ですよっ? 聖南さん以上にカッコ良くて色気ムンムンな人はいません! ドキドキしちゃうんで、あんまり見つめてほしくないくらいです! ていうか俺、プチ遠距離恋愛始まってから聖南さんの目をジーッと見れなくなってるし! だって聖南さんも俺の目をジーッと見てくるじゃないですか、あれほんとに心臓に悪いんですよ! あっ、でもそれはもうバレちゃってますよね! へへっ」
「ちょっ、葉璃……! 元気いっぱい喋ってんのはかわいーんだけど、あんま腹に力入れるな。痛え」
何やら興奮気味に力説され、聖南は照れくさい気持ちを抑えきれずプイと顔を背けた。
「すみません」と言いながら微笑んでいる葉璃はやはり悪感情など皆無で、拗ねた自分がひたすらに子どもじみていると痛感した聖南である。
照れ混じりにひとたび腰を動かせば、たちまち状況は一変する。こんなにも聖南をたじろがせている葉璃は、次の瞬間から会話すらまともに出来ず、笑顔も容易くなくなるだろう。
しかし聖南は、その儚く尊い笑顔をいつまでも見ていたいと熱望する性分だ。
「葉璃、……愛してるよ」
「えっ……あ、……はい。俺も……大好きです」
急ですね、とはにかむ葉璃に、聖南も思いの丈を伝えるべくやわらかに抱き締めた。
二人ならば少々の小競り合いも、他者が聞けば惚気のような言い合いも、ご愛嬌だ。
それが分かっているからこそ、葉璃は聖南との〝まろまろ〟が好きだと言っていて、聖南も当然のようにその他愛もない時間が何よりも大切だと思っている。
聖南はそのまま数分間、葉璃を抱き締め続けた。
中の窮屈さに今にも暴れ出しそうな我が分身にはさらなる我慢を強いる事になったが、温かな体温と葉璃のにおいを感じられて、聖南は幸せな気分に浸れた。
セックスは二の次で構わない。
葉璃とは情欲のみで繋がっていたくない。
六つも下の恋人にいくら情けないところを見せようが、『可愛い』の一言で片付けられようが、葉璃がそんな聖南を好意的に見てくれてただただ嬉しいのだった。
「……葉璃。動いて良かったら、俺のこと力いっぱい抱き締めて」
「えっ! そ、それって……俺のタイミングでってことですか……?」
「そう」
「……分かりました」
愛し合う行為は、互いが気持ち良くなければいけない。
すでに葉璃の両腕は聖南の背中に回っている。
セックス開始の合図を葉璃に託した聖南は、彼が頷いてすぐに自身の体に加わった愛情に途方も無い愛おしさを感じた。
「あはは……っ、すぐじゃん。いいの?」
「だっ、だって……! 聖南さんの……ずっと中にあってかわいそうだから……っ」
「そうなんだよ。お前らいつまでイチャついてんだコノヤローって、そろそろお怒りになられてる」
「ふふっ、ですよね」
微笑んだ葉璃に、聖南もすかさず笑み返す。
己の欲望のままに動いて良いという了承を得た聖南は、やはり葉璃のこの笑顔が大好きなのだ。
「そんじゃ、これから三時間は覚悟しろよ」
「え……そんなに……あぁ……っ!」
どこまでも優しく笑んだ表情にうっかり見惚れそうになった葉璃が、一瞬の後に顎を仰け反らせ嬌声を上げた。
気絶しても叩き起こすからな、とまで付け加えると瞳を見開いて絶句していたものの、奥まで挿入しグリグリと腰を回す聖南にはそれ以上の文句は聞こえてこなかった。
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