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第31話 聖夜の契り

「ん、……ん、ァ、まって、そんなの、イく、っ……から」 「奥、こうされんの好きやなぁ。イって見せて……な?」 「ん、ァ! ぁ、んっ……イく、イクっ……ん、あんっ、ン……!!」  真人のものを根本まで受け入れながら、そのさらに奥を暴くように腰を突き上げられる。真人にきつくしがみつきながら、周はぶる、びくっ……! と腰を跳ね上げた。真人の精液を欲しがってひくつく内壁が、絶頂の余韻に震えている。  クリスマスイブの夜。  プレゼントなど期待していなかったのだが、真人は周にスマートフォンをプレゼントしてくれた。ヴァンパイアだが、周も今時の若者だ。キラキラした真新しい最新式のスマートフォンに大喜びである。  そして、予告通り夕飯時に届いた山盛りのフライドチキンを、テレビでアクション映画を流しながらのんびり食べた。シリーズ映画の一挙放送で、合間合間ににぎやかなCMを挟みながら、終始ハイテンションに続いていくハリウッド映画である。  派手なアクションに感嘆の声をあげたり、無茶な演出にツッコミを入れたりしながら映画を楽しんでいるうち、真人との距離が徐々に近づき――  軽いキスから始まったスキンシップは、あっという間に熱を帯びた。 「は……ハァっ……ン、も……なんで、真人いかねーの……ヨくない?」 「ううん、めっちゃ気持ちええよ。でもな、もっともっと……コレで乱れる周くんを見てたいねん」 「あ、あっ……」  リビングのソファの上であられもなく脚を開かされた周を見下ろしながら、真人は興奮に揺らめく瞳で微笑んだ。窓際に飾られたツリーの明かりが、真人の汗ばんだ肌を艶めかせて見せている。 「ん、ん……あん、っ……」 「かわいい……ほんまに」 「も、はやく、中出ししてよ……」 「……まったく、またそんなこと言うて」  通常、アナルセックスでの中出しはご法度だ。本来、性行為のためにできていない器官なのだ。出された方は腹を壊してしまうのが普通だが、どういうわけか、周が体調を崩すことはないのだ。真人の精液を腹の中で受け止めることに喜びを感じるだけでなく、まるで養分を吸収するかのように、すべてを飲み込んでしまう。  本来ならば、人間は人間の血液を飲むことはできない。あたかも共食いを忌避するかの如く、催吐性が発動するためだ。だが、周はヴァンパイアだ。真人の血液を喜んで飲み干す周の肉体は、精液でさえも自分のものにしてしまうらしい。  ということが分かって以来、周は真人がコンドームをつけることを許していないのである。  真人の膝の上に乗り、ゆっくりと腰を揺らしながらキスを交わす。きらきらとまろやかに瞬くツリーの電飾を見て、周にはふと思い出すことがあった。 「路生……桐堂さんと一緒にいるのかなぁ……」 「さぁ、どうやろ。……ていうか、ほんまにそういう関係なんやろか」 「エロい関係かどうかは分かんねーけど、気は合ってそーじゃん……。けど、隆太も、いるのに……ン、ぁ」  腰を抱き寄せられ耳たぶを甘く噛まれて、周はびくんと軽く震えた。真人は舌先で周の耳孔をねっとりと舐めくすぐりながら、再び腰を使い始める。 「僕としてんのに、路生のこと考えてんの?」 「ン、っ……ぁん、そ、そーじゃなくて……っ」 「ん?」 「あん、ァっ……ん、んっ……まさひと」  尻たぶを掴まれぬちぬちと下から激しく穿たれる。周はへたりと真人にもたれかかって、声を上げながら身悶えた。 「ぁ、はぁっ……!」 「あかんで? よそ見したら。……な?」 「ごめ、……っ、あん、ん、っ、ァ」 「も……イキそうや。出すで、中……」 「ん、うん、っ……だして、だして、まさひとのいっぱい、……ん、ァっ……」  ドク、ドク……ッ……と熱いものが腹の奥へと放たれる感覚に、周はうっとりと目を閉じて酔い痴れた。  真人の一部が、こうして周の一部になる。この一体感は、周に深い恍惚感を与えてくれる。さらに奥へと胤を植えつけようというのか、射精したあとも周の最奥を抉る真人の動きに、いいようのない愛おしさを感じるほどに。 「……ハァ……はっ……」  周はのろのろと身体を起こし、シャツをはだけただけの真人から着衣を抜く。改めて抱きしめ合うと、汗を孕んだ肌と肌がとろけあい、全身で真人の温もりを感じることができた。すごく、安心する。  吸血時のフェロモンなど関係なしに、セックスをするようになったふたりだ。二週間に一度の吸血セックスもいいが、触れたいときに触れ合うだけの穏やかな時間も、そのまま盛り上がって場所を選ばず致してしまうセックスも、周はとても好きだった。  だが、こうしてゆったりとした時間を共有しながら集中したセックスに溺れていると、むらむらと吸血欲も湧いてくるのがまた事実だ。周は指先で真人の首筋をなぞり、もはや消えることのない吸血痕を舌で撫でた。 「ねぇ、噛んでいい? ……ここ」 「え? こないだ飲んだばっかりやろ」 「ちんぽハメられながら、噛んでみたいなって」  いったん離れた身体だが、真人の存在を間近に感じ、匂いに包まれているだけで疼いてしまう。周は真人をソファに押し倒し、引き締まった腹の上に跨った。 「ねぇ、だめ?」 「……そんなかわいい顔で『だめ?』とか言われて、あかんとか言えへんやろ」 「ふへっ、そーかぁ?」 「天使なんだか、小悪魔なんだか……」 「吸血鬼だよ、俺」 「うん、そやった」 「へへ」  ローションや精液でとろとろになった尻の谷間で、真人のペニスを愛撫しながら、周はぺったりと真人の上半身にくっついて甘えた。持ち上がった真人の手が髪を梳く。顔を上げると、クッションにもたれて微笑む真人と目線が絡んだ。 「いいよ、噛んでも」 「まじ? やったね」 「ほな……自分で挿れてみ? 出来る?」 「ん……ちょっと待って」  尻の下に感じる真人の屹立はすでに力を取り戻している。周は上体を起こして膝で身体を浮かせると、硬いペニスを窄まりにあてがう。そして、ゆっくりと腰を落とし始めた。 「あ、あ――っ……ハァ……」 「ん……」 「んんっ……すげぇ、すき……挿れたときの、かんじ……っ」 「僕も、好きやで。……はァ……、めっちゃ上手」 「ん、あん……っ、あ」  うまく呑み込まれてゆく真人のペニスが、周の腹を満たしてゆく。周は顎を仰いて声を漏らしながら、硬くそそり勃つ真人の怒張を受け入れた。 「ぁ、はァ……っ、も、いきそ、いれただけなのに、……ん」 「まだあかんよ。僕の血、飲むんやろ?」 「ん、うん……っ、ァ、こし、うごいちゃう……ん、ぁん」 「ふふ……えっちやなぁ、周くんは」 「だって、きもちいい、まさひとの……っ、ハァ……」  自分勝手に腰を揺らして、真人から与えられる快楽を貪ってしまう。すると真人は肘をついて身体を起こすと、しなやかな周の背中に片手を添え、もう片方の手で周の勃ち上がったモノを包み込んだ。 「あ! ァ、だめ、さわんなよぉ……っ」 「こんなに漏らして……。お行儀悪いんちゃうか?」 「そんな、こといわれても、っ……何回も、イかされた、からっ……」 「来年から高校行くんやろ……? こんなどエロい身体になってもて、大丈夫かいな」 「や、しこしこって、されたらっ……ぁ、だめ、でちゃう、ン、だめ、」  ちゅくちゅくと音を立てながら周を扱いている真人の表情は、どこか意地悪で、愉しそうだ。手を止めてくれたのはいいが、きゅっと根元を戒められて、周は力なく真人を睨む。そして、口を開いて牙を見せた。 「も、噛む、からっ……」 「……どうぞ、好きなだけ」 「ん……」  牙を剥き、真人の肌に食らいつく。とっくに熱く熱く興奮していた周の身体に、びりびりと新たな刺激が駆け巡った。 「ん、んぅ……ッ……。ん、ぁはっ……んく、っ……」  真人の血液が溢れ、ねっとりとした甘い味が喉を通り抜けてゆく。細胞に染み渡ってゆく真人の味と、温もりが周を歓喜させ、気づくまもなく絶頂していた。  だが、根元を真人に握り込まれているから、びくびくと腰を震わせながらの中イキだ。きゅ、きゅぅっと真人のペニスを締め付けながら、周は無我夢中になって血を飲み下していた。 「っ……は……は……ッ」  真人の吐息にも、猛々しさが宿り始める。周を抱く腕に力がこもり、大人しくされるがままになっていた腰が動き始める。下からずん、ずん、ずんと深く突き上げられながら、周は真人に縋って溢れる鮮血を舐り続けた。 「ハァ、ハァっ、ハァ……ぁ、あんっ、ん、」 「周、くん……っ、も、あかんよ。……は、ァ」 「まって、もっと、もっとほしい、ン、んく、……ん、あん」  全身がとろけて、なくなってしまいそうだ。身体と身体の境界線がぼやけて曖昧になってしまいそうなほどに、真人の肉体を近く感じる。どちらが腰を振っているのか、どちらが喘いでいるのか、絡めあっている舌がどちらのものなのか、それさえも分からない。とろけてしまいそうなほどの一体感に酔いながら、周は真人とのセックスに溺れていた。 「ぁ! ァん! ぁ、はぁっ……ァ、イク、いぐっ……ぁ、ああああっ……!!」 「ハァっ……イイ。……周、ハァ……あ」 「も、とまんない、ン、ァっ……イク、また、ハァっ……あ、ぁん、ン……!」  気づけばソファの上に押し倒され、真上から激しくペニスを抽送する真人に見下ろされていた。こうまで野生を剥き出しにして周を責め立てる真人の姿は初めてで、周はただただ激しく揺さぶられながら、蕩然と快楽に酔った。 「は、はァ、はっ……ン、いく、っ……」 「だひて、……いっぱい、まさひとの、せーえき……っ、のませて」 「ンっ……く……っ」 「ふぁ、ァっ……ン、ぁ、しゅご……いっぱい、……ッ」  最奥に注ぎ込まれるたびに、真人の力を感じた。深く深く愛され、与えられ、周は歓喜のあまり涙を流して快楽を叫びながら、何度となく達していた。目の前が真っ白にぼやけ、全身が性感帯になってしまったかのようだった。真人の熱を孕んだ吐息にさえ感じてしまい、汗ばんだ肌が触れ合うだけでイってしまう――  果てのないような激しいセックスに、二人は深く没頭していた。いったい、どれほどの時間が経ったのだろう。  汗や体液で濡れ、火照り切った身体を抱きしめられながら、周はうわ言のように真人に愛を伝えつづけていた。 「まさひと……すき、すき、……すき」 「僕も、好きやで。……きみを、愛してる。ずっと」 「……愛……って」  そんなくさいセリフを言うなんて、と茶化して笑ってやりたかった。でも、そんなことができるはずがない。  境界を失ってとろけ合う肌と肌。そこからじかに伝わってくる真人の愛情が紛れもなく本物だと、疑うことなく分かってしまうから。 「うう、うぇえ……」 「え、どないしたん?」 「うえぇえん、ばか、なんでそんなことばっか……」 「ええ?」  嬉しすぎて、幸せで。安堵のあまり、またしても子どものように泣いてしまった周を見て、真人が目を瞬いている。理性を取り戻しつつある真人の優しい瞳を見上げていると、また涙が溢れてしまう。 「うう、うぅえ……っぐ、うれしいもん。泣くよ、そんなの、うれしいじゃん」 「……ふふ。そうか」 「ばか、好きだよ、うぇえ……」 「うん、知ってる」  愛おしげに周の頭を撫でながら、真人が優しく囁く。  惜しげもなく与えられる柔らかなキスに、周はあたたかな涙を流し続けた。

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