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《3》

 シオンに大きな仕事が舞い込んだ。以前、シオンが生きたまま捕らえて組織に引き渡した窃盗犯の半妖が、仮釈放されていたものの再びどこかの詐欺グループと手を組み金品の窃盗と殺人を犯したらしく、指名手配されているらしい。それを今回はもう命ごと消して欲しい、という話だ。 「オレ一人っすか?」  協会から携帯端末にビデオ通話が来ると、シオンはその依頼に二つ返事で了承した。問いかけたシオンに、連絡を寄越した協会の男、タクイは渋い顔をする。 「あぁ、本当は誰か一緒に付けようと思ったんだけど、元々バウンティは人が少なくてね……強さだけで選ぶならトレジャーの結城くんを相棒(パートナー)に宛てたいんだけど……」 「げ。あいつは無理っすわ……」 「そう? いい男だし、仕事も出来るんだけどなぁ……」 「ウデはいいのかも知れないっすけど、オレとは合わないっす」 「そうか……まぁ後続で誰かヘルプに行かせるから、無茶はするなよ? あと、誰が来ても文句言わないこと」 「りょーかいっす」  ピコン、と受信音が鳴って、携帯端末にデータが送信された。 「……ところで水上くん」 「ん? なんすか?」 「ギルドに入る予定は本当にないの? 個人連絡って面倒だから、どこか入ってくれたら助かるんだけど……」  本当に困っていることが分かるタクイの表情が画面いっぱいに映り、シオンは苦笑しながら首を横に振った。 「だから、5年前にも言ったじゃないすか。オレに複数人での行動は合わないんですって。協力は努力しますけど、ファミリーとかペアとかパートナーとか、らしくないっすわ」  タクイが何か言う前に、シオンは通話を切った。 ――オレは、独りでいい。 *** (あ、いたいた)  時刻は0時ちょうど。シオンは港の倉庫街にいた。その倉庫の一つに、数人のヒトに化けた妖の姿が見えた。1時までには応援が来るとは聞いているが、眼前の人だかりは一人でも突破出来そうだとシオンは判断した。今回のターゲット――二度目の指名手配である半妖の男、和久井(わくい)ケントはその中心に立って指示をしていた。 (やっぱり行くか……)  応援を待っていては時間が足りないかもしれない。そう判断したシオンは黒いパーカーのフードを深く被り、クナイを握った両手をパーカーのポケットに突っ込み、ケントが倉庫内に姿を消したのを確認してから倉庫に向かって歩いた。 「おい! 貴様何者だ!」 「部外者は出ていけ!」 「誰か和久井サン呼んでこい!」  チープな定型文を並べる妖たちの群れにシオンは鼻で笑うと、ポケットから手を出して彼らに飛びかかった。 「うわぁっ!」 「ぐえ……っ」  シオンの刃によって、十人近くいた妖たちは一瞬で霧散した。携帯端末に次々と表示されていく報酬金額を確認すると、倉庫の中へ入っていった。 「おーい! 和久井ケント! 出てこいよ!」  倉庫の中は、段ボールが天井ギリギリまで高く積み上がっていた。その積み上がったタワーがいくつも並べられていて広さが分かりにくい。夜中なのもあって、シオンが歩く音以外には何も聞こえず、とても静かだ。 「聞いてんだろ! いい加減出てこいよ和久――!」  再度大きな声をあげた刹那、シオンは背後から何かで後頭部を殴られ、意識を飛ばして倒れた。

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