ケントが声のした方を振り返ると、そこには今までと比べ物にならない冷たさを含んだ瞳(め)をしたアズマが立っていた。シオンには見えていないが、氷のように真っ直ぐケントを射ている。背中には今まで見たことがない、彼の身長とほぼ同じ大きさのランチャーを背負っていた。 「……またハンター？」 「正解。生憎、お宝専門だけどな」 「興味ないし。てかどちら様？　今ボク”たち”お楽しみ中なんだけど」 「それは邪魔して悪かったな。ただ、俺も用があるから来てるんだ……」 　アズマは背負っていたランチャーを頭上に向かって構えた。 「用？」 「言っただろ？　俺はお宝専門のハンターだって」 　天井に向かってランチャーを放つ。高く積まれた段ボールが爆発しながら崩れ、ケントを狙う。 「うわっ、」 「水上シオンは俺の今日の獲物だ」 　激しく煙が上がり、ケントがその場に蹲(うずくま)る。シオンのことはもう忘れているのか、煙から崩れた段ボールの隙間を縫って逃げようと床を這った。 「俺の名は、結城アズマだ。冥土の土産に持っていくがいい」 「っひ！」 「……さようなら、来世はマトモな人間になることを願うよ」 　アズマは頭を抱えて震えるケントの眉間を小型銃器で撃ち抜き、彼が死んだことを確認するとシオンの手足のロープを彼のクナイで切って下ろした。己のジャケットを全裸のシオンに掛ける。 「だ、れ……っ？」 「喋るな、煙を吸うぞ。話は後だ」 　アズマはシオンを抱き上げると倉庫から飛び出した。数十メートル離れた所で、大きな音を発して倉庫全体が爆発を起こし、炎上した。 「大丈夫か？」 「……結城、アズマ……」 　目隠しの布を外すと、真っ赤に腫れた目が薄く開いた。 「意識はハッキリしてるな」 「なんで……てめーが……」 「どっかの誰かさんの尻拭いだ。相変わらず狩りの下手くそなチワワだな」 「……頼んでねーよ、ばーか……」 「とりあえず後始末は協会に頼んだ。ここから離れるぞ」 　アズマはそのまま、自分の居住区へシオンを運んだ。室内には必要最低限の家具以外に何も無く、その家具も全て真っ黒に統一されていた。アズマはキングサイズのベッドにシオンを下ろし、キッチンに向かうとペットボトルの水を冷蔵庫から取り出した。 「おい、これでも飲ん――！？」 　ベッドに戻ると、シオンは掛けられていたアズマのジャケットを剥がして裸で丸まっていた。さっきまでよりも顔は真っ赤で、荒い息を吐いている。 「わりーんだけど……ちょっと、ヤバい薬、で……オナニー見るの、趣味、じゃねーなら、ちょっとだけ……一人、に……っ」 「ダメだ」 「は……？」 「どうせあの変態のやることだ、一度や二度出しただけで終われるようなモノじゃないんだろ？」 「そう……だけど」 「じゃあ俺にやらせろ」 「はぁ！？　てめー、何言って……っ」 　着ていた黒いシャツを脱ぎ始めるアズマに、シオンはベッドの上で逃げようともがいた。アズマはベッドに上がり、シオンの腕を掴むと身体をシーツに沈めた。 「っあ……」 「逃げるな。いいから手伝わせろ」 「……なんで、てめーが泣きそうになってるんだよ」 「うるさい、自分でも分からん」 「なんだよそれ」 　赤くなるアズマに、シオンは微苦笑した。アズマはその口を塞ぐようにやや乱暴に重ねた。