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4.守れなかったモノ。守りたいモノ。(2)
それは、たまたまだった。
高校のクラスメイトの一人が、要と同じ中学出身だった。どういうきっかけだったか忘れたが、そいつと、その友達と遊ぶ約束をして、そいつの中学まで行った。
それは確か春。桜はもう散ってしまっていたけれど、あの嫌な思い出と同じ春だった。
「おお~、若いね~」
クラスメイトはグランドを駆け回ってる中坊たちを、面白そうに眺めてた。私服でサッカーボールを追いかけている奴らは、明らかにサッカー部とかではなく、不器用にボールをコントロールしていた。
「へったくそ~」
楽し気に声をかけるクラスメイトに、つられてそいつらを眺めていると。その中の一人が、猛ダッシュでボールをとりに行った。
すぐに、わかった。
要だ、と。
要が走ってる姿。要が笑ってる姿。要が怒ってる姿。
その一つ、一つが、俺の目を釘づけにした。そして、やっぱり、俺は要が好きだ、と急速に自覚した。あんなに忘れようとしたのに、要の姿を見ただけで、こんなに胸がドキドキするなんて。すぐにでも、捕まえて、抱きしめたくなるなんて。
そして、思い出す。あの時の、要の恐怖の眼差しを。
俺は、要に声をかけることもできずに、ただ、その姿を見つめるだけだった。今の要は、とても幸せそうだったから、このままで、いいのかもしれない、そう思った。
だけど、あの要の笑顔を見てから、どんなに集中していても、要の顔がちらつくようになった。自分がこれほどまでに、要のことばかり考えるようになったということに、驚きを隠せない。
それでも、普段通りに生活していたけれど、祥吾は何か感づいているような気がした。時折、心配そうな顔で、俺を見つめることがあった。悪いな、とは思うけれど、こんな気持ち、誰にも話すことなんてできなかった。
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