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4.守れなかったモノ。守りたいモノ。(12)

***  試合を終えて、部員全員が集まっている。顧問から、今日の総評を聞いていると、私服の女子が鴻上の元に駆け寄って何か話している。驚いた顔をして、少し心配そうに彼女と話し続けている。  河合は、その姿を見て、苛立ちを隠せない。どんな相手でも親し気に話している姿を見てしまうと、ついついイラっとしてしまう。  そして、二人の漏れ聞こえる会話から、アイツが動いたんだということに思い至る。鴻上と主将の朝倉が、慌ただしく顧問に声をかけて離れていく。無意識に、口元が緩んでいるところを、手で隠す瞬間を、女子部の一宮に見られていた。 「それでは、これで解散。気を付けて帰れよ」  顧問のその言葉に、部員全員の返事が響き渡った後、三々五々にその場を離れていく。  河合も荷物を肩にかけて、一人、駅に向かい始めた時。 「河合くん」 「何?」  後ろから声をかけてきた一宮が、冷ややかな眼で見つめてきた。 「あなた、何か知ってるんじゃないの」 「何が」 「……遼子は素直に信じるかもしれないけど、私は、あなたのこと、それほど信用してないから」 「……ひどいなぁ」  クスッと笑ったその顔は、無邪気を装っていたけれど、一宮の瞳は冷たいまま。 「獅子倉くんが鴻上先輩に迫ってるみたいな話だったけど、今までの状況考えてみれば、鴻上先輩のほうが獅子倉くんのこと好きみたいじゃない」  ピクっと眉を動かす河合。 「確かに、絵面的には、河合くんのほうがいいかもしれないけどね」  クスッと笑う一宮。 「腐女子って言っても、私は、鴻上先輩が幸せなほうがいいと思ってるんで」  冷たい瞳は、ジッと河合を見つめる。 「遼子にも手をひかせるから。そのつもりで」 「お好きにどうぞ」  フッと笑って、一人駅に歩き出す。しかし、河合の顔は、笑っていない。 「鴻上先輩を幸せにできるのは、俺だけだ」  瞳には青い炎がチラチラと蠢いているようだった。

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