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5.気づいてしまった気持ち(5)
* * *
部屋に戻ってみれば、ベッドで寝ろって言ったのに、うちの母親からでももらってきたのか、客用の布団の上に横になっている。それも、掛け布団もかけないで。
「ったく、ベッドで寝ろって言ったのに」
すっかり寝入ってしまっているのか、俺が入って来たのに無反応。
「……どんだけ安心してんだよ?」
苦笑いしながら、要を抱きかかえて、ベッドに移した。掛け布団をかけてやると、"うーん"と言いながら、俺のいるほうに寝返りをうった。
……かわいい。
……やばい。
さっきの要じゃないけれど、写真を撮りたい。要を抱きかかえるときに机に置いたスマホを、もう一度手にとると、カメラモードに変えた。
「クスッ……寝てるほうが悪い。」
シャッターを押す。俺の腕もまんざらでもない。こうして、また、俺の宝物が増えた。
見覚えのない電話から着信があったのに気が付いたのは、風呂を出てからだった。このタイミングでかかってくるのは、亮平かもしれない、と、予想はしていた。折り返すべきか、無視するべきか、迷ってるうちに寝てしまったけど。折り返してみたら、案の定、亮平で、要のことが心配でかけてきたらしかった。
「今日は、うちに泊まってるから、心配するな」
『……違う意味で心配だけどな』
「お前に言われる筋合いはない」
『クククッ』
淡々と言い返してたつもりでも、ちょっとしたところで感情が出てしまう。お互いの気持ちは、いやというほどわかってるから。あの時から。
「要件はそれだけか」
『要から、話は聞けたのか』
「……いや」
『そうか』
「さっきだって、何かを思い出してしゃがみこんでたんだぞ。聞けるわけないだろっ」
『……』
素っ裸の要を見るのは小学生以来……すっかり、大人の身体になっていて。
『おい』
「っ!な、なんだよ」
危ない。つい、要のきれいな白い背中を思い出してドキドキしてた。
『何考えてたんだよ』
亮平のどす黒い嫉妬の声。昔と変わらない。
「別に」
『……話聞けたら、教えてくれ。こっちでも調べるから』
「……ああ」
亮平の両親は、それぞれ会社で社長をやってる金持ち。金でなんとかできることは、なんでもやる。要の事件の時も、そういう考えが端々に見えた。その影響が亮平にも、少なからずある。でも、今回は、それを利用させてもらう。亮平の罪悪感とともに。
それにしても。
目の前で寝ている要の寝顔は、今の俺には、目の毒でしかない。それでも、こうして安心して眠っている要を見ている時間は幸せを実感する。サラサラな茶色の前髪をあげて、広くて白いおでこにキスをした。
「これくらいは、いいだろ?」
それ以上は、しないから。キスの跡にコツンとおでこをあてた。
「……今日は、ゆっくり休めよ」
部屋の灯りを消して、俺も布団に潜り込んだ。夢で、要と会えることを願いながら。
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