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5.気づいてしまった気持ち(12)

* * *  "ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……"  家路を急ぐ人の流れとは、逆方向に走る俺。  帰り際に、あんなことを言ってしまったことが、恥ずかしすぎて、逃げるように要から離れて走り出した。要の視線がいつまでも追ってくるようで、怖くて、走るのを止められない。  今日の俺は、自分でも変だと思う。でも、あんな弱ってる要をどうやって慰めたらいいかなんて、思いつかないから、ただひたすら、抱きしめてやるくらいしか、俺にできることなんかない気がした。 「はぁっ……」  ぐちゃぐちゃ考えながらでも、走り続けたら、あっという間に駅前に着いた。息を整えながら、地下道を通って西口に向かう。簡単に"また明日"なんて言っておきながら、内心、要がどう思ったか、それを考えるだけで怖くなる。  それでも、要のそばにいたい。  もっと、触れたい。  抱きしめたい。  要のことを思うと、心も身体もざわくつ。 「俺、やべぇな……」  見上げた夜空には、白く輝く丸い月。それすらも、要に見えてくる。 「重症だわ……」  トボトボと家に帰るしかない俺だった。

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